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「うのはな」さん 専用掲示板

1163シャンソン:2016/12/02(金) 20:57:36
      〝編集へのお手紙〟

 外国の新聞は日本に比べると概して読者の投書がすぐれている。
だいいち、投書、などと言わない。〝編集の方への手紙〟(Letters to the Editor)と
呼ばれることが多い。

 イギリスの最高級紙「ザ・タイムズ」、俗称ロンドン・タイムズのレターズ・トウ・ザ・エディターは、
社説とならんで同じページに載っている。おもしろいことを言うな、と思って読むと国務大臣だったりする。
生活者のちょっとした発見を伝えるものもある。

 かと思うと、うちの庭先のライラックが今年は例年より早く咲き出したが、少し勢いがないようで....といった素人ばなれした
文章もある。いずれにしても、レターである。エッセイなどと気取らない。反対、攻撃の叫びではない、やさしくあたたかい文章が見られる。
アメリカの新聞は、少し味わいが欠けるように感じている日本人もいるようだが、それは誤解である。アメリカのレターズ・トウ・ザ・エディターにも、
びっくりするような良い文章が見られるのである。

「ニューヨーク・タイムズ」に読者寄稿の文章が載った。イギリス人の手紙好きを実にうまく紹介する文章で、おもしろかった。
この筆者は数年、イギリスで生活してアメリカへ帰った女性である。隣りは大会社の社長だった。会ってことばを交わしたことはほとんどないが、ときどき、手紙が来る。
うちのバラ、今年は、とくに美しく咲いています、といった挨拶である。

 少し離れたところに親しい家族ができたが、実に心豊かな生活をしている。近くにひとり息子がいて、ときどき、両親のところへ食事に来る。
息子が帰ると、両親は別々に、息子へ手紙を書く。今日はよく来てくれました。実に楽しかった。ありがとう、といったものらしい。息子も帰ると両親あてに、礼状を書くらしい。
そういう話を聞くだけで、心豊かな暮らし、というものが感じられる。このアメリカ婦人はひどく感心してアメリカの記者に伝えようとしている。いかにも清々しく、心を打つ文章であった。

    『新聞大学』 外山滋比古 著


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