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非武装信仰板
1217
:
シャンソン
:2017/09/18(月) 14:41:36
泣いてもよい時には泣くのがよい
東日本大震災の一か月後に被災地を訪問した折、息子を亡くした一人のお母さんに出会いました。
南三陸町のそのお宅では、お父さんが一年前に交通事故で亡くなり、母子二人で寄り添って暮らしていました。
三月十一日当日、十歳の息子は風邪をひいて家で休んでいました。そこに激しい地震が訪れ、大津波が来るという報せを受けて、
避難することになったのです。
着の身着のままで外に出ようとしていた時、お母さんはふと思い立ちました。
「お母さんは大事なものを取ってくるので、ここにいてね」
病気の息子のために、二階から防寒具を取ってこようとしたのです。すると、
「僕が大事なもの、持ってきたよ」子供が見せたものは、仏壇から持ち出した父親の遺影でした。
「そう、お父さんは一緒なんだ。じゃあすぐ戻るから待っててね」
そう言い残してお母さんが二階に駆け上がるや否や、津波が一階をのみ込んだのです。
あっと思う間もなく息子の姿は消えましたが、水が引いたあと、どこを捜しても息子の姿は見つかりませんでした。
震災から一か月後、辛い記憶を振り返ってお母さんはこう語りました。
「あの子にとって、最も大事なのはお父さんでした。息子は先にお父さんのもとに行きましたが、あの子は、家族がいかに大事かということを
身をもって私に教えてくれました。子供を失ったことは、胸が張り裂けるぐらい辛いです。その悲しみのなかでも、自分がよい家族をもったことが唯一の慰めです。
子供が最後に言った言葉を、私は一生忘れません」
この話の中に、私は厳しい現実と正面から対峙しながらも、悲嘆に溺れることのない、前向きな姿勢を感じました。心を偽らずに嘆き悲しむことは、前に進むための一つのプロセスです。
けれども泣き叫んだ後には、止め処のない憂いの淵に沈んでいかないよう、自身を律する力を持つことが必要なのです。
想像を絶する苦難に見舞われた時、再び立ち上がる力を得るためには、心の深いところに潜む人間性を生かさなければなりません。
能面のような顔で感情を押し殺しては、持って生まれた人間性が壊れてしまいます。
泣いてもよい時には涙をいっぱい流すことが大切なのです。家族の前など、感情を剥き出しにしても安全な場において、辛い思いを吐き出す。そうすることで、自分の気持ちをしっかり捉えることができるのです。
『自分の花を精いっぱい咲かせる生き方』 鈴木秀子 著
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