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正直は一生の屍
1
:
名無しさん
:2012/11/17(土) 18:32:14
――ヤクザになる。
と、直也が思い立ったのは、中学2年にさかのぼる。
そこは喫茶店の中である。
その喫茶店はヤクザが経営する店であり、直也が大男数人と喧嘩した後であった。
「修行してみるか」と、ヤクザの若い衆は勧めた。
2
:
名無しさん
:2012/11/17(土) 18:32:49
聞くと、直也は名門麻布中学の生徒らしい。
親が東大卒の造船業で、家柄も良かった。
夢を持った友人達が将来を語っていて、自分には夢がないと知ったとき、その鬱憤を喧嘩で晴らしていた。
3
:
名無しさん
:2012/11/17(土) 18:34:13
直也の凄さは、中学2年で大人相手ばかりと喧嘩をしていて、戦後以降の日本史の感覚では、得体の知れぬものがある。
赤井英和がそうであろう。
自分より強い男に会いに行く。
4
:
名無しさん
:2012/11/17(土) 18:34:58
直也は無力になった。
ほとんど虚位ともいうべきもので、たとえば喧嘩をして強くなろうと、あるいはなるまいと、将来なんの役も立たない。
直也にとって目の前の利、いわば虚業に手を出すよりも、将来何になるかの方が大切であった。
5
:
名無しさん
:2012/11/17(土) 18:35:54
しかし中学2年程度の年では学業に専念すると言うほどの動機もない。
いずれカタギの如く、当たり前の大人になっていくだけだ、直也は思った。
「だからヤクザになるのか」直也は考えた。
6
:
名無しさん
:2012/11/28(水) 18:47:40
それからしばらく経って、直也は母玉枝にともなわれイギリスに行った。
寮に案内され、そこに住むことになった。
直也がやがてグレるということを、さきばらいのそういう行動をすることによって阻止したのである。
7
:
名無しさん
:2012/11/28(水) 18:48:41
不良少年の場合、寺に預けるが、それに類したものがあるかもしれない。
イギリスとはいえ、寮生活の厳しさがある。
8
:
名無しさん
:2012/11/28(水) 18:49:36
イギリスに来るや、暴れ出した――とやりたいとこであったが、ありようは日本人と欧人に腕力の差がありすぎる、というところであった。
やがて直也はボクシングをはじめた。
9
:
名無しさん
:2012/11/28(水) 18:50:46
「危険だ」
直也は思った。
直也が国外へ踏み出したとたん、敵どもは日本人、あるいは直也は日本人だ、と言うかもしれない。
直也の見るところ、日本人は悪の限りを尽くした野蛮人で、それがバレたら大変な事になると思った。
10
:
名無しさん
:2012/11/28(水) 18:52:11
直也は寮のある丘のふもとの道で、ボクシングジムに通った。
揃えられた靴を足にうがち、はじめてボクシングを知った。
神聖なる道場というよりも汗臭い感じだった。
ジムは狭い。
3LDK程度の広さである。
11
:
名無しさん
:2012/11/28(水) 18:53:01
その狭さの中にリングがあって、20人もいると息苦しい。
(ボクシングジムはもっと華やかなものだと思った)
直也はちょっと身がすくんだが、今日からここが俺の道場なのだ、と思いなおした。
12
:
名無しさん
:2012/11/28(水) 18:53:45
直也にひとりのトレーナーが目をつけた。
トレーナーは直也にボクシングを叩き込み、奥義を伝授した。
大抵の場合、ボクシングジムというのは伸び伸びさせているのが慣例であり、テレビや漫画みたいにトレーナーが熱心に指導はしない。
13
:
名無しさん
:2012/11/28(水) 18:54:52
(おそらく俺を中国人と思ってるのではないか)
直也は東京生まれだが、幼き頃はイギリスに住み、英語はペラペラだった。
日本人とバレれば殺される。その場合、逃げればよい。世陰に紛れて、逐電すればいいであろう。
14
:
名無しさん
:2013/02/23(土) 18:47:30
現にトレーナーは直也を中国人と思っていた。
日露戦争にはじまり、帝国主義で領土拡大をした日本人は嫌われている。
正義も名文もない。
意味もなかった。
しいて言えば、古くから続いた島国からの解脱に意味があったかのようである。
15
:
名無しさん
:2013/02/23(土) 18:48:04
(いつか分かり合える)
と、渦中にある直也は思っていたが、その日本人となると、トレーナーもわからなかった。
この時代の世界的教養は、日本人=野蛮人 ということになっている。
16
:
名無しさん
:2013/02/23(土) 18:48:38
ある日、直也は顔を洗っていた。
直也はすでに髭を剃って、手で顔を洗っていたから、トレーナーは気付き「日本人」と叫んだ。
息のいい若者は歓迎だが、かと言って、日本人を指導しようとは思っていない。
17
:
名無しさん
:2013/02/23(土) 18:49:14
――なぜ日本人とバレたのか!?
顔の洗い方である。
日本人は手で顔を洗う習性だが、中国人はそうでなかった。
中国人は老いも若きも、手の平に顔を振る。
18
:
名無しさん
:2013/02/23(土) 18:49:45
直也は破門になった。
この破門には、ボクシングというシキタリも律もなく、日本人という差別的な要素だった。
それをのぞけば、荒くれ者が、高低様々の荒くれ者と結びつき、リングで戦うことになっている。
19
:
名無しさん
:2013/02/23(土) 18:50:22
直也のように日本人は、欧のほうでは相手にしなかった。
しかし、直也には性根がある。
――イギリス人め。
と、直也が言うのは、彼がよほどイギリス人に絶望している事でもあった。
20
:
名無しさん
:2013/02/23(土) 18:51:00
直也にはイギリス人の恋人がいる。
直也は恋人のいる寮に忍び込み、夜這をかけた。
「試合に勝ったら、リングの上で君の名を叫ぶ」
直也はベットの中で言った。
が、夜這いがバレて、女子寮から逃げる。
途中、心臓が喉から飛び出しそうになる。
21
:
名無しさん
:2013/02/23(土) 18:51:48
直也はボクシングの試合に何度が出ていた。
観客の中に恋人がいる。
試合に勝った直也が恋人に手を振り
「あのふたりは出来ているのか?」
と誰かが言った。
これが疑惑になったにちがいない。
22
:
名無しさん
:2013/02/23(土) 18:52:23
直也は、留学も取り消され日本に帰った。
リングの上で手を挙げたのはやりすぎだった気がする。
直也は問い詰められ、白状という形で、退学になった。
(ばかな話だ)
と、直也は思い、何ということだ、とあらためて思った。
23
:
名無しさん
:2013/02/23(土) 18:53:42
ヤクザの組長は、直也の入門を留保していたが、ついに部屋住みを許可した。
まだ、中学生2年で、許可しないそぶりを見せていたが、武闘派ともいうべき加藤組(仮名)が、「弾避け」のために、ついつい許可した。
24
:
名無しさん
:2013/02/23(土) 18:54:14
その時の、加藤組組長の言葉は下記のとおり。
入門を許可する。組織の名を汚さないよう、加藤組の自覚を以って、男を磨くべし。
25
:
名無しさん
:2013/02/23(土) 18:54:56
余談だが、部屋住みとは、部屋に住み込んでのヤクザ修行である。
入門試験のようなもので、この時代はそれが普通だった、
さらに、余談だが、弾避けとは、数も威勢のうちで、人数が多かれば親(組長)に弾は当たりにくい意味である。
26
:
名無しさん
:2013/02/23(土) 18:55:45
直也はヤクザに入門した。
が、入門した以上は、部屋住みを経なければならない。
初めての兄貴分の名は錦吾と言った。
直也は錦吾にヤクザの道を乞うた。
その結果、苦労を背負い込むことになる。
27
:
名無しさん
:2013/02/23(土) 18:56:30
ヤクザ業界では、親分、兄貴の嫁を姉さんと呼ぶ。
部屋住みの直也は早起きをし、姉さんの飯の支度を手伝う。
その後、外の掃除である。
この時、他の家の前の掃除もする。
28
:
名無しさん
:2013/02/23(土) 18:57:42
ヤクザは他人に迷惑をかけているため、積極的に善を尽くするらしい。
――幻想だ。
直也は思った。
生意気盛んなやんちゃ坊主に理解しろ、と言っても無理な話である。
29
:
名無しさん
:2013/10/30(水) 21:43:38
ヤクザは、テレビのように、お小遣いはくれない
。働いてもらっているのではなく、ヤクザの道を教えてやっているのである。
しかも、親分、兄貴分には、絶対服従という形式である。
30
:
名無しさん
:2013/10/30(水) 21:45:11
ヤクザ修行は、ごく黙々と使いパシリで、炊事洗濯、便所掃除ら、雑用というもので、失敗すれば殴られる。
暴力団なのである。
暴力が基本である。
余談だが、もともと「パシリ」はヤクザの業界用語で、いまでは女子高生ですら使っている。
31
:
名無しさん
:2013/10/30(水) 21:46:18
ヤクザに休日はない。
休息を取るには、隙を見てサボるしかない。
大物親分も、そういう修行を経て男になっている。
20代半ばまで、朝から晩まで使いパシリをして、やっとゆっくり出来る。
代わりに雑用をしてくれる舎弟が出来るまではパシリは続く。
32
:
名無しさん
:2013/10/30(水) 21:47:26
――看板持ち。
拘置所をみれば、看板持ちか、そうでないかはスグわかる。
看板持ちは、毎日使いパシリで疲れ、横になって寝ている。
拘置所こそが一番の休息の場なのである。
33
:
名無しさん
:2013/10/30(水) 21:48:13
ヤクザは働いても、小遣いをくれないため、直也は自分で小遣い稼ぎをしなければならない。
小遣いをくれないことが、ゼニを稼ぐ工夫を見つける口惜さでもあった。
34
:
名無しさん
:2013/10/30(水) 21:49:49
直也は考えた。
ゼニを稼ぐならバイトをが必要だが、そんな時間はない。
あらゆる策を弄して考えたことは、駅前で10円を貰うことだった。
通行人に、「10円ください」というのである。
数当たれば、で、1万円貯まることもある。
35
:
名無しさん
:2013/10/30(水) 21:51:04
ヤクザのシノギというのは、意外にこんな方法で、不特定多数の者にオレオレ詐欺をするのに似ている。
数を撃てば当たる。
工夫を重ねれば、案外いいシノギになることが多い。
36
:
名無しさん
:2013/10/30(水) 21:52:15
直也は家を出た。
というより、出ざる得なかった。
父親が東大出のエリートのために、居場所が無くなった、
直也はイラだっている。
なにしろ直也を、姉、兄は無視、父はゴミを見るような目で、母親は毎日泣いていた。
37
:
名無しさん
:2013/10/30(水) 21:53:25
その頃、直也は慶応義塾高校に通っていた。
入るには入ったが、素行不良のために、「除籍」になっている。
退学ではない。
除籍である。
除籍と言うのは、退学とちがい、入学した事実も抹殺される。
38
:
名無しさん
:2013/10/30(水) 21:54:34
「一度でも、入学させたことを恥じている」
と、慶応義塾の校長は言ったという。
きくところでは、直也は大勢の男達とたった3人で勝ったという。
直也は、あまりの見事な勝利に銅像でも立つかと思ったが、そのことが学校側にバレて「除籍」になった。
39
:
名無しさん
:2013/10/30(水) 21:55:47
余談だが、直也は校長室に殴りこみ、
「除籍なら入学金返せ」
と言った。
除籍なら、入った事実が無いわけであり、入学金は無効だ。
と、直也は言うのである。
40
:
名無しさん
:2013/10/30(水) 21:56:38
直也は、夜間高校を探した。
さきの話になるが、7つの高校を渡り歩いて、やっと卒業した。
ここまでくると高校オタクで、ヤクザの身内に言われたという。
41
:
名無しさん
:2014/07/08(火) 18:32:16
直也は20過ぎの頃、中国人を殴り倒し、懲役8年、執行猶予5年の刑を受けている。
この刑について、裁判長は直也がヤクザだということで、重たい処罰を課した。
しかし、直也は騙されたのである。
拳銃を格安で売ってくれるというので待ち合わせ場所に行った。
が、ゼニを持ってきた直也を拉致し殺そうとした。
直也は、命からがら返り討ちにし、拳銃を奪っただけである。
――執行猶予5年
直也は5年だけカタギになりたいと親分に頼んだ。
42
:
名無しさん
:2014/07/08(火) 18:33:32
ある日、彼女がキャビンアテンダントの仕事の話を持ってきた。
彼女がその職についていたのである。
直也は有頂天になり喜んだ。
しかし、ヤクザの直也がどうやってキャビンアテンダントになれたのか。
学歴詐称である。
当時、今のようにパソコンもインターネットもなかった。
麻生中学出身であり、慶應高校に受かった教養もあり、さらにキャビンアテンダントの彼女のアドバイスもあった。
43
:
名無しさん
:2014/07/08(火) 18:34:40
余談だが、当時はキャビンアテンダントではなくスチュワート、スチュワーデスと言った。
のちにその彼女とは別れ、別のキャビンアテンダントの女と結婚する。
その彼女は、直也に結婚相手を探すために職を世話したようなものである。
44
:
名無しさん
:2014/07/08(火) 18:35:41
直也がカタギになるならこの時だった、
親分はマル暴に狙われていたらしく、直也がキャビンアテンダントをやっているうちに、組は解散した。
直也からすれば、カタギの生活は退屈で、それならヤクザをやっていた方がマシだ、という思いがあったであろう。
が、もともと商売上手な男だから、マジメに金儲けをしていればそこそこいい生活は出来たであろう。
45
:
名無しさん
:2014/07/08(火) 18:36:37
直也は、人柄から渡世を生き抜き、知識をエグリ獲った男である。
経験豊かで一個の渡世人というのにふさわしい。
ただ彼は、才能あるだけに後先を考えず生きた。
突然キャビンアテンダントになり、クビになるとレストランを開いた。
店が繁盛しているのにも関わらず、小金井一家に呼び止められると、再びヤクザに戻ってしまうのである。
この冒険者の意識、また思いつくままに世を渡り、その行動すべてを知識に変えていた。
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