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独占板

3916シャンソン:2015/08/25(火) 16:40:53 ID:Gj6SjWF2
    「見返り」をあきらめる

 生きて行いく上で「相手からの見返りを諦める」という姿勢は大切です。
見返りを求め始めると、自分をかえって苦しめることになるからです。
 心優しいVさんの例をお話ししてみましょう。

 ある日、Vさんのもとに「倒産しそうだから、100万円を貸してくださいませんか」と、
小さな会社を経営するWさんが訪ねて来ました。一般的に、お金を貸しても戻らないことは多く、
その後の人間関係にヒビが入ることは珍しくありません。

 Vさんは最初、「父からお金を貸してはいけないと教えられた」と、キッパリ断りました。
でも合計で10万円ほどかき集めて、「返さなくてよいので、これで頑張ってください」とWさんに渡しました。
 それから数年後。Wさんの会社は見事に立ち直り、人を呼んで盛大にお祝いの会を開きます。
風の噂で、それを知ったVさんは驚きます。なぜなら、VさんはWさんを金銭的に援助してあげたはずなのにその会に招かれなかったからです。
それどころか、Wさんからお礼状や時候の挨拶状などを受け取ったこともありません。

 そのとき、温和なVさんに「あんなにしてあげたのに、お礼もないなんて!」という感情が、初めて湧いてきたのです。
10万円をかき集めるのはいくら善意からの行動とはいえ、当時のVさんにとって決して楽なことではありませんでした。
「なぜ、私がお祝いの会に招かれないのか」あまりの理不尽さにVさんは怒りの気持ちすら覚えます。

 私はTさんに、こう伝えました。
「Wさんを悪く思って自分の心を乱す代わりに、Wさんに対する期待なんて消してしまいませんか。『Wさんは、感謝の気持ちを表そうとしない』という事実を受け入れて、
『お礼を言ってくれるのではないか』という期待なんて、さっさと手放してしまいましょう。そして『あのとき10万円を渡す親切ができて、うれしかった』と喜ぶを感じてしまいましょう。
そして『あのとき10万円を渡す親切ができて、うれしかった』と、喜びを感じていきましょう。
自分に感謝したり自分に自信を持てば、幸せをかみしめることができますよ」

 このように、人への期待は自分自身をひどく苦しめます。自分を痛めつけないためには、相手への期待そのものを諦めるしかありません。
でもそれは、自分の感情を探ろうとすることだからとても難しいことです。私も長い間生きてきてそれなりに訓練をしてきたつもりですが、「期待を諦める」ということは
なかなか大変な作業です。

 そんなときに、よい方法があります。
「ありがとう」と声に出してみてください。「ありがとう」は、魔法の言葉です。
たとえばVさんの場合。「私に親切をさせてくれたWさん、ありがとう」
 これだけでよいのです。大切なことは「口に出して、自分の耳で自分の声を聞くこと」です。

 それには、脳の仕組みが関係しています。心の中が怒りの気持ちでいっぱいのときに「ありがとう」という感謝の言葉を耳にすると、
脳は、感情と口にした言葉が食い違っていると大きなストレスを感じ、どちらかにすり合わせてようとします。
 しかし、「ありがとう」という言葉を何度も口にすればするほど、その言葉に感情を合わせざるをえなくなってきます。
脳の仕組みとして、感情は聴覚に従いやすくなっているのです。

 たとえ「Wさんはひどい人だ」「Wさんにひどい仕打ちをされた」と怒りの感情でいっぱいでも、
「Wさんありがとう」と繰り返していると、脳はだまされて少し受け入れにくいことでも素直にそう思えるようになっていきます。
脳はうまく〝カン違い〟させることができるのです。
 このように脳の仕組みを知っていれば聖なるあきらめは、ぐんと身近で簡単なものになります。

 私たちは、誰一人として聖人君子ではありません。他人に勝手に期待をしたり、一方的に誰かを恨んでしまうことだって避けられません。
せめて聖なるあきらめで、そのような感情はうまく手放していきましょう。それが、人の気持ちを素直に受け止めたり相手を許すことにもつながります。

『「聖なるあきらめ」が人を成熟させる 』 鈴木秀子 著


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