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Web誌友会 板/2

2275復興G:2013/07/13(土) 04:34:14 ID:AB6RqYXc

 無門關の第五則に、「香嚴上樹(きょうげんじょうじゅ)」の公案というのがあります。

 「千仞の谷の上に懸かっている樹の枝を口でくわえてぶら下がっている人がある。手は枝をさわってはならない、脚は樹を踏んではならない。その時に返答しなければならぬ問題を問われて、返答しなかったら首を切るぞ。返答したら口が枝を離れて千仞の谷底へ落ちて死んでしまうぞ。さあ、どうするか」

 という公案(禅の悟りの試験問題)を、香嚴(きょうげん)和尚が出したのですね。

 谷口雅春先生は、『新版 真理』 第3巻で、これについて次のようにご指導くださっています。


 禅は「全」である。禅の悟りは、自分が全局の支配者となることである。対境(対する境遇)に支配されるようではいけない。上の公案では、自分で自分を勝手に縛っている。「手は枝をさわってはならない、脚は樹を踏んではならない」と。ありもしない公案をあるかのように想像して、自分で勝手に「板挟み」に陥っている。それが人生の困難のすべての場合であるのである。

 人生にどんな難問題があるように見えても、本当は問題というものは解決し得るためにあるのである。

 「口で樹の枝にぶら下がっていて、さあ返答せよ」と言われる場合、口をひらいたら千仞の谷に落ちるというが、それは自分で、自分の手は動かないと信じて、枝を握ることを忘れているだけのことである――と。


 『無門關解釋』には、戦時中にあった体験として、次のような話が書かれています。

   ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 何故この公案がそんなにも馬鹿々々しいものであるかというと、机上の閑(かん)空想の葛藤であるからである。

 葛藤本来なく、進退両難本来なしであるのに、わざとわが心で葛藤を作り、進退両難を爲(つく)っているからである。

 「口に樹枝をふくみ、手に枝を攀(よ)じず、脚に樹を踏まず、樹下に人あって西来意を問わんに……」というのが、何故に進退両難であるか。

 手が枝に触れなかったら、みずから能動的に手を動かして枝を握れば好いではないか。枝を握って口を離して、さてそれから祖師西来意に就て応答すれば好い。何処にも事実上進退両難はないのである。

 進退両難の原因は「手は枝を攀じず」と自分自身本有の自由自在の力を限ってしまったところにある。それは白墨の線を自分を縛る綱だと思って身動きの出来ないような自己暗示に陥った鶏の不動金縛りと同じことである。

 不動金縛りは自分の心の中に在る。心から不動金縛りを取り去ったとき、吾々はいつでも進退両難の窮境から脱却することが出来るのだ。何故なら、

 進退両難の窮境は実相に於ては無いものであって、唯空想の中にのみ存するものに過ぎないからである。


 太平洋戦争中の事である。ある日、私はいつになくAKのラジオのスイッチを拈(ひね)って見たら、そこに語られている話は航空兵田中曹長の美談であった。

 話の前半は聞き洩らしたので何処の戦闘の時であるかは知らない。上官下方(しもかた)准尉の操縦せる飛行機は不幸にしてそのエンジンの一つに敵弾を受けた。味方の陣地に帰還するには距離が遠いし、予備のエンジン一個のみの力では力が足りずにズンズン機体が下降して行く。

 下方には敵軍が待ち設けていて、飛行機が落下したら、それを鹵獲(ろかく)し、乗組員を捕虜にしようと待ちかまえている――まことにこれこそ進退両難である。下方准尉は捕虜になり機体を鹵獲せられるのは残念であるというので、潔(いさぎ)よく機体と共に自爆せんものと、既に自爆の準備を行っているのが田中機からは見えたのである。

 田中曹長はそれを見ると大声で「自爆しては可(い)けない。死するばかりが忠義ではない。生きられる限り生き伸びて最後の一分間までも自分の任務のために尽くすのだ。低空飛行をして続く限り味方の陣の方へ引返せ」と呼ぶけれども、それは無論聞えはしないのである。田中曹長は仕方がないから空中に大きく字を書いてその旨を合図する。

 下方准尉はその合図に気が附いたものか自爆を中止して、エンジンが傷ついて浮揚力の少い飛行機で低空飛行を続けて味方の陣地へ引返そうとするのだけれども、機体は愈々浮揚力を失って、敵陣の中へ滑走状態で墜落した。田中曹長は上空から見ていると、下方機は道なき道へ滑走状態で墜落したと見る間に、地面の凹凸に衝突して顛覆して破壊した。
<つづく>


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