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Web誌友会 板/2

1657復興G:2013/06/07(金) 21:06:38 ID:AB6RqYXc

<つづき>

  前門の虎を防ぎ後門には

 国体明徴派を嫌い抜いた人たちは、これで狂信的愛国者の、根を絶つことが出来たと考えたであろう。何んぞ知らん、それは前門の虎を防ぐことに急であったため、後門に狼を招きよせたことに、気づかなかったのである。

 もっと明白にいえば、うるさいと思う皇道派を徹底的に叩きつけたことは、軍隊の指導権を皇道の何んたるかを知らぬ統制派に渡したことである。やがてその者等は大元帥陛下の御命令をも奉じなくなって「兵馬の権」は統制派の手に帰し、「また中世以降の失態」を招くに至ったのである。

 そうして「兵は国の大事、死生の地、存亡の道、察せざる可からず」という兵法第一の戒めさえ弁えぬ者たちが、妄りに功を急ぎ事を構えて、遂に陛下の御心にもなき戦争に突入し、敵味方も多くの生霊を殺して、無数の寡婦孤児を造ったのちの、敗戦降伏までに至ったのである。


  争民なくんばその国危し

 それにしても、あれほどの事件から――いわば叛乱将校たちに死の直観から、何の教訓も学び得なかった、元重臣たちの失態は最も大きい。

 若し諸君も尊王の大義に徹し、その奉公において欠ける処のない人であるならば、手段を誤ったとはいえ、先の相沢中佐や(昭和10年8月、永田軍務局長を斬殺した人)今回の叛乱将校たちに対して、深刻悲痛な同情心を持つべきはずである。又その間にしばしば陛下に御進言すべき事もあったはずである。

 明治天皇にお仕えした山崎侍従や、藤波主馬ノ頭の如きは、陛下の好ましからぬ御嗜好をお諫めするためにさえ、一身を賭している。況や国家の非常重大事においておやである。国に争民なくんばその国危うしという、古人の金言も思い合わせられて残念至極である。

 若し日本国が私の先にしばしばいうが如く「各国間に大調和あらしめて、等しく万人の栄える時代の招来」を国是として、実際その如くに行動をしているならば、その国が止むに止まれずして起った時、天佑が伴うのは当然である。然らざる場合には天佑が伴わぬことも当然である。

 戦争は好む処ではないが、既に戦争に臨む以上は、「正しい国の戦争には必ず天佑が伴うのである」ことを示すのも、日本が人類文明史上に貢献する一つの道であるが、過般の戦争は日本の歴史上それとは全く逆の汚点を残した。

  嗚呼天佑なき戦争よ

 下記に掲げるのは広島県江田島の旧海軍兵学校に保存されている、特攻隊勇士の遺書の一つである。広島市山仲一二氏より送られたものである。

     ○

お父さんお母さん
この世に生まれて死を厭うことは、今昔ともに変わりありません。故に万人が長寿を願った昔話が今も残っています……けれども若干二十五歳で戦死しても決して驚いてはなりません。悲しんではなりません。
たとえ私が敵艦とともに砕けなくとも、私の運命はその時に止まっているのです。父上にはそのことが十分解っていただけるとは思うのですが、お母さん!やさしいお母さんでした。ある時は私の寝顔に、夜具をかけて下さいました。久喜(本人の名であろう)は、あれほど可愛がられ、何の報いもせずに散るのが、母上にすまないと思います。
然し私の胸の奥底には、大きな願いがあるのです。それは大義に生きることです。お母さん、決して悲しんで下さるな……その悲しみに打ち耐えて、強く生きる一億の母がいることを思い起こしてください。(下略)

     ○

 遺書の残っていない他の特攻隊の勇士の感想もこれに似たものが多いであろう。天佑なき戦争でかかる純真可憐な青年を殺して、申しわけがたつであろうか。戦時中に生きた私たちは、深く深く責任を感じて、天佑なき戦争は、将来絶対にしないことを誓わねばならぬ。その反面に、戦う時は必ず天佑のあるようにこの国政を運用すべきである。
<つづく>


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