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NO.10 数珠 浅葱(すず-あさぎ)(古参)

46ε:2011/06/07(火) 09:19:17
「なめやがって……!!」
 浅葱が見ると、少年はまだそこにいた。そして、能力を増大させている。
 何かをしようとしているのは、誰の目にも明らかだった。だが、浅葱は少年の能力を見誤っていた。
「……!!」
 浅葱が危険を察知したとき、少年の右手が帰莢の胸を貫いていた。
 少年は、ぐったりとした帰莢をぐっと抱き寄せ、そっとその髪に鼻をつけた。そして深く息を吸う。
「ずっと、ずっと、見てたんだ。好きだった。触れたかった。一つになりたかった。なのに。お前さえいなければ……」 
 少年は、ぎょろりと浅葱を見る。
「帰莢……!」
 見えなかった。少年の動きを彼は見切ることができなかった。その事実が浅葱を慎重にさせる。何かある。しかし、それ以上に、目の前の帰莢の惨状が彼の思考を鈍らせていた。
「悔しいか? 悔しいよなあ? 俺は、今、帰莢と一つになってるんだ」


「ごふっ……!」


 帰莢がわずかに顔を上げる。


「きみ……、ま、えに、私の、瞳術が見てみたいって言ってた、よね……?」
 帰莢の瞳術――浅葱は、それを知っていた。
「言った! 覚えててくれたんだ!」
 少年は顔を綻ばせる。
「なら、今、見せてあげる……。浅葱くん、君は、どっか言ってて……」
「ハハハ! 浅葱ぃ! だってさぁ!」
 少年は血の臭いに酔っていた。浅葱は拳を握り締め、さっとその場から去った。
 その瞬間、少年の悲鳴と、何かがずたずたに引き裂かれる音が聞こえ、浅葱はすぐに戻った。


「帰莢……」


 少年はすでに肉塊と化していた。
 そして、帰莢の息もすでになく、浅葱はただ膝から崩れ落ちた。


 浅葱は、それ以来、町から町へと放浪する日々を始めた。






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 それが、草月らが知る、浅葱の業であった。


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