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NO.10 数珠 浅葱(すず-あさぎ)(古参)

45ε:2011/06/07(火) 09:18:51
 翌日、帰莢はいつもと同じように、浅葱の元へとやってきた。
 浅葱はいつもと同じように、軒下にただ、座っていた。
「浅葱くん」
 珍しく帰莢が彼の名を呼んだ。
「あのね、昨日、誰か来たの?」
 そう問う帰莢に対して浅葱は「来たな」とだけ告げた。
「何か言われたの?」
 帰莢はさらに問う。
「多少、言葉を交わしたな。ただそれだけだ」
「私のことについて聞かれた?」
「ああ」
「なんて……答えたの?」
「愚問だな」
 浅葱はそう答えた。
 帰莢はそれ以上、浅葱にこのことを問いはしなかった。
 こんなやり取りがあった後も、帰莢は時間を見つけては、浅葱の元へやってきた。
 二人は一切の会話をしなかったが、不思議と二人の間に流れる空気は優しいものだった。


「お前、この前、何ていった?」
 あのときの少年が再び、浅葱の前に姿を現した。
 浅葱はただ黙っていた。
「おい、言ってみろよ!? てめえ、前、俺に何ていった!?」
「……しつこいな」
 浅葱は呟いた。
「何だって!?」
「俺は何もしていないが? 何か問題があるとすれば、それはお前自身であると俺は思うがな」
 少年は絶叫し、怒りを露にして浅葱に殴りかかった。浅葱はそれをひょいと避けて、腰の脇差を抜く。そして、その切っ先を少年の首元に突きつけた。
「……!!」
 浅葱は無言のまま、動かない。
「お、お前、め、眼が見えないんじゃ……?」
 浅葱は答えなかった。
 そのときだった。
「……何してるの?」
 帰莢だった。
「道場はどうした?」
 浅葱が問う。
「父さんが戻ってきたから。それより……」
「帰莢……!」
 少年が帰莢にどたどたと駆け寄る。浅葱は脇差を鞘に戻した。
「み、み、見てただろう? こいつ、俺に刃物を……!」
「大丈夫、浅葱くん……?」
「え……?」
 少年の脇を通り過ぎ、帰莢が浅葱に駆け寄る。
「大丈夫だ」
 浅葱はそう答える。


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