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NO.10 数珠 浅葱(すず-あさぎ)(古参)
41
:
ε
:2011/06/07(火) 09:16:41
死。
絶対的な死が浅葱に満ちていくとともに、彼自身の気配が変わっていった。満ちていく死を糧に脳に巣食う四眼が神経を伸ばし、彼の両眼を侵食していく。浅葱の肉体の内部を破壊しながら根を下ろしていく。浅葱のその髪は老婆のように白く、その瞳は、血のように紅く染まっていく。
死が浅葱の体を支配したとき、浅葱の体は、四眼によって支配されていた。操られるように再び力を取り戻す浅葱の存在は亡者と化す。それと同時に動きだす時間と空間。
六腕が彼の胸から抜かれ、浅葱の意識が、再びその肉体の元に帰った時、''何か''が、「何か」言葉めいたものを発しているのを、浅葱は本能的に理解した。
しかし、浅葱はそれに耳を貸しはしなかった。それもまた浅葱の本能であった。
浅葱は、そっとその''何か''に触れた。
その瞬間、全てが決した。
その''何か''は、吐き出すように、巨大な仮足のようなものを天に伸ばした。そして、その仮足の内部から、一人の少女を吐き出し、さらに中空に捧げた。
少女は安らかに眠っていた。その神々しささえ抱く光景に、様子を見守っていた明里さえ見とれていた。だが、浅葱は違った。そっと瞳を閉じ、それに背を向ける。その瞬間だった。弾けるようにして、少女の体は破裂し、その肉片を周囲に散らした。
浅葱はじっとその場に留まり、その光景を背にしたまま表情を変えなかった。
''何か''と少女の肉片は、ぱちぱちとさらに爆ぜ続け、やがて消えてなくなった。
明里はその後、静かに意識を失った。
気づいたとき、浅葱の姿は無かった。明里は病院で目を覚ましたときは、集中治療室で草月が治療を受けており、それ所では無かったのもある。それ以来浅葱に会っていない。
草月は、なんとか一命を取りとめ、また、道場で剣を奮っている。
明里の中には、もやもやがあった。彼女は、浅葱にお礼を言いたいと思った。しかし、草月に尋ねても、草月は彼の行く先を知らなかった。
草月は言う。
「彼は業を背負っている。いや、自らそれを背負いこんでいる」
明里は草月から浅葱の話を聞く。
明里は思った。
「それは違うよ」
そして、もう一度浅葱と会って話がしたかった。しなくちゃいけないと思った。
それ以来、明里は浅葱を探している。
「この人知りませんか!?」
きちんと、お礼を言って、そして――。
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