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NO.10 数珠 浅葱(すず-あさぎ)(古参)

40ε:2011/06/07(火) 09:16:20
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*努々 明里(ゆめゆめ-あかり)/海辺の町/剣道の道場主の娘/両親はすでに亡くなっており、祖父と二人で暮らしている。
 浅葱に助けられた少女。はじめは浅葱を気味悪がっていた。
 彼女の祖父、努々 草月は、剣客でもある浅葱の祖父とは、旧知の仲である。


 明里の住む町に来た浅葱であるが、風当たりは冷たく、餓死寸前で駅の前に倒れていた。
 そこにたまたま現れた草月に助けられ、浅葱はしばらく彼の家に身を置くことになる。


 そろそろ、次の町へと発とうと考えていたころ、草月と彼の友人が、この町で現在起こっている異変について話しあっているところに出くわす。
 彼の友人は、浅葱を避けるように、その場から立ち去ってしまう。
「虫の居所が悪かったんだろう」と、その場を取り繕う草月をいぶかしみながらも、浅葱は「そうか」と応え、余計な節介は無用と解釈する。


 しかし、その晩、用事を終えた浅葱が、草月の家に戻ると、家の中から異様な気配を察知する。
 家の中に入った浅葱は、全身をどろどろに溶かされて虫の息となっていた草月を発見する。
 浅葱の目には、全ての気配と性質、またその軌跡が見えており、何がその場であったのかをその瞬間に推理し悟った。
 そっと草月の体に触れてみると、草月の体に付着した草月とは異なる''何か''の体液は、まだかなりの湿り気を帯びていた。やはりまだそれほど時間は経っていない、と浅葱は瞬時に状況を把握する。
 
「無理はしなくていい。いったい何があった?」


 そう問う浅葱に対して、ただ、一言、草月は、


「明里を……」


 とそれだけを述べる。草月の言葉を聞き、浅葱はすぐさま階段を駆け上り、明里の部屋へ向かう。
 悠長に考えている時間はない。浅葱はそう判断したのだ。


 明里が浅葱を避けているのは、誰の目にも明らかだった。浅葱が帰ってくるこの時間帯、浅葱と顔を合わせないように、明里はいつも部屋に閉じこもっていた。
 草月は「年頃だから」と、取り繕っていたが、浅葱は単純に余所者を警戒しているのだと感じた。得体のしれないものに対し、警戒心を抱くのは自然なことだ。こちらから無理に近づいて、警戒心を煽る必要もないな、と浅葱は関わらないようにしていた。


 浅葱が二階に上がると、明里の部屋のドアは溶かされ跡形も無く、そこから灯りが漏れていた。浅葱の四眼には、すぐ目の前を「青白い」気配の''何か''が横切るのが見えた。それを追いかけて、浅葱は明里の部屋へ入った。
 浅葱の四眼が、部屋の中の明里の気配を捉える。


「た、たすけて……!!」


 消え入るような明里の声が、浅葱の耳に入る前に彼は動いていた。
 両手で、脇差に手を添え、抜刀する。それと同時に、''何か''は、この世のものとは思えない背筋を這うような悲鳴をあげた。


 浅葱は思う。確かに、両断した。その手応えはあった。しかし、''何か''の気配は、未だにこの空間の中で蠢き、活発に収縮を繰り返している。
 浅葱は、両手に携えた脇差を床に突き刺した。そて、静かに息を吐き、呼吸を落ち着かせる。
 
 浅葱は、生まれながらに背に痣を持って生まれてきた。血を塗りたくられたようなその痣からは、六つの腕が浮かび上がっている。
 現世の万物には、決して見ることも、触れることもできないそれは、冥府の六道の門を預かる。六腕と浅葱はそれを呼ぶ。


 浅葱が、その両眼を開いた刹那、六腕のうち一本が、浅葱の胸を貫いた。
 
 浅葱の心臓が、突如として、活動をやめる。浅葱は頭を垂れ、その体は前のめりに倒れこもうとした。しかし、何かに吊るされているかのように、浅葱の体が床と平行となることはなかった。
 何も動かない。部屋にかけられた時計の針さえ進みはしない。全ての時間が止まっていた。その空間は、まるで凍りついたかのように――四眼――に支配されていた。


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