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NO.10 数珠 浅葱(すず-あさぎ)(古参)

34ε:2011/06/06(月) 22:24:17
 アサギが目覚めると、そこにはユウナがいた。
 ユウナは膝を突き、アサギと視線を合わせた。
「……おはよう。アサギ」
「ダメだったのね」
「……」
 ユウナは答えられなかった。
「覚悟はしてたからいいの」
「ごめんなさい」
 ユウナは謝る。
「何を?」
「……」
「パパのこと? パパのことは仕方ないわ。私がママに、どうせ無理ならパパに治療してもらいたいって言ったんだから。それとも、ママは私を産んだことを後悔してるの?」
「そんなこと! そんなことない……!!」
「なら、もういいの。もう、いいから。だから、ママ、もう泣かないで」
「アサギ……」
 ユウナはそっとアサギを抱き寄せた。そのときだった。
「どういうことだよ」
 突如、刹那がドアを開けて入ってくる。
「どういうことだよ……!」
「どうもこうもないわ」
 ユウナが立ち上がり、刹那に詰め寄る。
「ママ……」
「もう出て行くわ。あんたの顔なんか二度と見たくない」
「おい、説明してくれよ……!」
「分からない? あんたと話すことなんてないって言ってるの」
 刹那は悲愴な面持ちで、アサギに視線を移す。
 アサギはユウナの袖を引っ張る。
「ママ、刹那をあまり邪険にしないであげて。刹那も最善を尽くしてくれたんだよ」
「……アサギ」
 ――刹那。
 その呼び方の違いに、刹那はアサギとの間の埋められない時間を感じた。


「ねえ、刹那。刹那はママのこと好き?」
 アサギはある日刹那にそう尋ねた。
「もちろん、好きだよ。当たり前だろ」
 刹那はそう答える。
 刹那は言えないでいた。先の手術の際にくだらないミスを犯してしまい、それが原因で手術が失敗してしまったことを。
 誰にも言えないでいた。
「ならさ、どうして刹那は、節操がないの?」
 刹那は答えに困った。そんなことに今まで疑問など抱いたことがない。
「さぁ、どうしてだろうな」
「自分のことなのに分からないの?」
「自分のことだからこそ、あまり意識したことないな」
「じゃあ、ポリシーとか、そういうもんでもないんだ?」
 刹那は考えてみるが、ポリシーなどと言う大それたものではない。
 特にそういうことを意識せずに過ごして来た結果が、現状であると思っている。
 だが、刹那はこの話の流れを考えるに、それを素直に言うのをためらわれた。
 しかし、刹那には負い目がある。
「どうなの?」
 刹那は思わず言ってしまう。
「そういうのじゃないと、思う……」
「そうなんだ。ならさ、私のパパになってくれない?」
「パパ?」
 自分はすでに父親だと思っていた刹那は面食らった。
「そう、パパ。ママだけを愛してあげて欲しいの。そうしたら、刹那のこと許してあげるよ」
「許す?」
 刹那はドキリとした。アサギはにやりと笑う。


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