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NO.10 数珠 浅葱(すず-あさぎ)(古参)
33
:
ε
:2011/06/06(月) 22:23:27
*もう一人のアサギ/女性/刹那とユウナの娘
刹那は、剣客として名が通ってはいたが、優秀な医者でもあり、名医と言われていた。しかし、横暴な発言が多かったため評判はよくなかった。
自ら犯した医療ミスでユウナとの間にできた一人娘であるアサギを亡くして以来、ユウナとも縁を切り、医者としての自分を捨てた。
刹那に娘がいたことを知るものはいない。その理由としては、正式に婚姻を結んでいなかったこと、挙式をあげなかったことなど多々ある。
だが、一番の理由は、二人が夫婦として共同生活をしていた期間がなかったことがあげられる。
ユウナは、刹那との間に娘ができたことを話さなかった。
アサギは十四年間、父親の存在を母から知らされすに過ごしてきた。しかし、病にかかり、その治療が難しいことが分かり、ユウナに「お父さんに会いたい」と話す。アサギは、自分の父親のことをユウナに内緒ですでに調べており、父が刹那であることを知っていた。
そして、刹那が優秀な医者であることも。アサギはユウナに自分の治療を、刹那にしてもらいたいと願う。しかし、アサギも、女性がらみで節操のない刹那に対して、自分が実の娘であることを明かすのは躊躇れられた。
結果、自身が娘であることを隠してアサギは刹那に依頼する。
刹那はそれを知らず、アサギに「分かってると思うけどな。さすがの俺でもお前の病気を確実に治すのは無理だ。まぁ、できて5%ってとこか」と発言する。
傷つくユウナを尻目に、さらに多額の医療費を要求する刹那に、ユウナは怒りを露にする。しかし、そのユウナが刹那にとって、以前に何度も抱いた女であったため、「一度抱いた女は身内も同然」と発言し、治療費は無料でいいと言い出す。
アサギはその発言に引く。そして、刹那の娘は、「医療費はきちんとした額できちんと払います」と強情を張ってしまうことになる。
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アサギは苛立っていた。
「不潔」
刹那はその言葉に目を丸くした。
「おまえ、まさか処女か?」
そう口に出す刹那にアサギは顔を赤くし、大声で叫ぶ。
「うるさいな!」
刹那は激昂するアサギの手首をそっと掴み、その肩に手を回した。
「悪かったな。けど、そう怒るなよ。今から、俺が手ほどきしてやるから」
アサギはぽかーんと、刹那のその言葉に口を開けていた。刹那の指がそっとアサギの頬に触れる。そして、無駄のない動きで、刹那の唇がアサギの唇に接近した。それがまさに触れんとしたとき、
「ほんっとあんたってサイテイ!! キモイ! 気持ち悪い! あっちいけ!!」
アサギは両手で、刹那の胸板を押しのけた。そして、手近なものを掴むと、次々と刹那にそれを投げつけていく。ペンの先が、刹那の頭に突き刺さり、血が吹き出る。
それでもアサギは、投げる手をやめず、刹那を部屋から追い出した。
「いったい、何だってんだよ」
刹那は頭をさすりながら、ユウナの隣に座った。
「あんたが悪いんだよ」
「まぁ、多分そうなんだろうな。けど、ああいう女も中々、こう、いいもんだな」
ユウナはため息を吐いた。
「いいかげんにしとくれよ」
「ん? なんだ、嫉妬なんてお前らしくもない」
「……ほんっと、あんたは変わんないよ。昔から」
悲しそうな目をするユウナに対して、刹那は笑う。
「俺から言わせりゃ、みんな変わりすぎさ」
「……あんたからすれば、そう見えるのかもね」
刹那はユウナの手の甲に自分の手の平を重ねる。そして、もう片方の手で、そっとユウナの顔を自分の方へ向けると、そのまま無言で、唇を重ねようとした。
それをユウナは顔を逸らして避ける。
「そういう気分じゃないんだよ」
刹那はユウナから手を離し、首を傾げた。
「……分からねえなあ」
「あんたは無神経すぎるんだよ」
「それが俺だからな」
刹那は笑った。
「失敗だよ」
刹那は笑った。泣きじゃくるユウナに対して、刹那は頭を撫でた。
「期待させて悪いことしたな」
そして、そっと抱き寄せる。しかし、ユウナは、それを突き返した。
「ふざけんな!」
「……不謹慎だったか?」
そう問いかける刹那に対して、ユウナはわなわなと震えた。そして、無言で出て行った。
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