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NO.10 数珠 浅葱(すず-あさぎ)(古参)

32ε:2011/06/06(月) 22:22:27
「医者には、見せたのかい?」
「必要あるか?」
「……」
「一つ、頼みがある」
「なんだい?」
「浅葱のことを頼みたい」
 刹那は、改まったように向き直り、ユウナに深く頭を下げた。
「……いったい、何のつもりだい?」
「俺は、このまま姿を晦まつもりだ。だから、お前に浅葱を頼みたい」
「……そんなことを訊いてんじゃないよ。」
「いきなり、孫なんか連れて歩きだして、しかも浅葱って……」
「そりゃ、あいつは浅葱だからな」
「あんた、歳取って耄碌したんじゃないの? あの子は死んだのよ。あの子の代わりなんかいやしない」
「代わりなんかじゃないさ。あれは浅葱だよ」
 刹那はそう言ってお猪口に酒を注ぐ。
「もちろん、信じてもらおうなんて思っちゃいないさ。だけどな、あれは間違いなく浅葱だ。その魂は受け継いでるよ」
「あんたの口からそんなオカルトが出るなんてね……」
 ユウナはやれやれと首を振った。
「だから、信じてもらおうとなんて思っちゃいないさ」
 しばらくの沈黙。刹那が口を開く。
「で、答えはどうなんだ?」
「あんな得体の知れない子を二つ返事で預かれるほど、私はお人好しじゃないんでね」
「……そうか。すまねえな」
 刹那は立ち上がる。
「どこ行くんだい」
「さっき行ったろ」
「あんた、本当に最低の父親だよ」
「……浅葱を頼むな」
 刹那はそう言い残して、浅葱を置いて行方を晦ました。


 行方を晦ます直前、刹那をたまたま見かけた友人が、彼に話しかけた。
 刹那は「時間がねえんだ」と取り合わず、先を急いでしまったという。


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