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NO.10 数珠 浅葱(すず-あさぎ)(古参)

31ε:2011/06/06(月) 22:21:17
*数珠 刹那/浅葱の祖父/名の知れた剣客であり医者


 刹那と旧知の仲であったもので、浅葱のことを知らぬものはいない。
 しかし、刹那に子がいたという話を知っているものは誰もいない。だが、そういうこともあるだろう、とそれを不審に思うものもいなかった。
 なぜなら、刹那は好色家であった。刹那は色男であり、常に女性を側に侍らせていた。
 代わる代わる女を抱き、女の嫉妬を買い、そのために友人の家にずらかりこんでは、昨晩の情事について語り出すのであった。
 とは言っても、刹那は女を暴力で屈させたことは一度もなかった。刹那は一度抱いた女は最後まで目をかけたし、また、言い寄ってくれば誰でも何度でも何晩でも何人でも抱いた。何十年とそんなことを繰り返してきた。
 旧知の仲であった草月など、娘を嫁がせるという時期にあっても。
 それが刹那のすごいところでもあったが。
 しかし、それ以上に、刹那は強かった。刹那の友は、そのあまりの強さに、普段の情けの無い姿を見ても、刹那を見限ることはしなかった。
なにせ、剣客であるにもかかわらず、素手でもって郎党何百人を相手に大立ち回りをしたというのだから、本分である刀を持たせれば敵はいなかった。


 そんな訳で、刹那がある日突然、浅葱をという孫を連れて歩くようになっても誰一人不思議に思わなかった。
 むしろ良い傾向だと友人たちは暖かく見守っていた。すでに五十歳
 それに、浅葱は目が見えない。誰かが連れて歩かなければならなかった。


 いつまでも若々しく枯れることのない刹那に対して、浅葱はまるで老人のような気性の子どもであった。
 刹那が連れ出さなければ、一日中庭を眺めているようなこともあった。
 そんなこともあり、刹那の友人たちは妙な節介を焼いて、浅葱に刹那の剣術を覚えさせようとした。  
 しかし、浅葱の剣術はすでに浅葱の剣術として一定のレベルに達していたことと、刹那の「猿真似させんのは趣味じゃねえ」という言葉で、目論見は失敗に終わる。
 
 ・
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「今日はすまねえな」
 刹那は、お猪口に口をつけた。
「ある意味、驚いたよ。まさか、あんたが孫を連れてくるなんてね」
 女性は遠い目で微笑む。
「なぁに、俺も見た目相応、歳を取ったってことさ」
「何を今さら。まだまだ現役のつもりのくせに」
 刹那と、女性は互いに顔を見合わせ笑い合う。
 女性の名はユウナと言う。刹那とは幼馴染であり、五十年来の仲である。
「浅葱。ちょっと向こうの姉ちゃんと遊んでてくれねえかい? このお姉さんとお話があんだよ」
 刹那がそう言うと、浅葱は小さく頷き、控えていた女性と共に、部屋の外へと出た。
「いくらなんでもお姉さんはないだろ。お世辞を言ってもらって喜ぶ歳でもないよ」
「へへ、俺の目にはいまでも、おめえはあの頃のまま変わらねえよ」
「はいはい。で、今日は何のようだい? まさか、本当にあの頃のようにってつもりでもないだろう?」
「まぁ、俺はそれでも構わねえんだけどなぁ」
 ユウナは目を伏せ、寂しそうに笑った。二人の間に沈黙が流れた。
 刹那は気まずそうに頭をかきながら言った。
「ま、おめえとは一番付き合いが長えからな、挨拶くらいと思ってよ」
「挨拶?」
 ユウナは怪訝な顔をする。
「そんな畏まって、あんたらしくないね」
「もう、長くねえんだよ」
「何を言って……」
「冗談じゃねえんだよ。俺は死ぬ。分かるんだよ。死期ってのかな。最近、妙に体の調子が悪ぃしな」


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