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上代特殊仮名遣い

49名無しさん:2011/02/21(月) 00:17:06
オ乙の音価として推定される音の祖音がエだという実例はどんなものがある?
英語やドイツ語でエが弱化してシュワーになった例とか?
ドイツ語のöはoの変化だよな?

50名無しさん:2011/02/21(月) 00:47:31
>>49
ドイツ語のöは大部分はoのiウムラウトからできた。
一部löweのようにeから例外的にöにかわったものがある。

ドイツ語のようなエのあいまい化は強弱アクセントとかかわっていると考えられる。
強音節と弱音節で大きく差をつけて発音される傾向があればこそ弱音節があいまい化する。
歴史上ずっと高低アクセントだった日本語にそれと同じことがおきるかどうか、そこはあやしい。

51名無しさん:2011/02/21(月) 00:51:12
>>49
朝鮮語のeoがそれ。古風な発音では中舌またはシュワー。現代語(ソウル方言)では完全な後舌。これが金思菀からの示唆なんだけど、
俺自身は彼の構築したがっていた系統論(日鮮同祖語論的なもの)には全面反対なので、
おおっぴらに挙げると誤解を招きそうなので、あまり言わなかった。
金思菀はかなり必死で主張していることなので、ひょっとすると朝鮮語学ではウケが悪いのかもしれないが、
eoの古い音価が、日本語のオ乙ほど遡らなくても、朝鮮語の漢字音受容時には/e/と見てよいということは、
ここだけ取り上げれば、トンデモではなくかなりの支持は得られると思う。
日本漢字音が漢音としてエ段で受ける核母音は、朝鮮語がeoで受けるのが一般法則になっている。

52名無しさん:2011/02/21(月) 00:58:31
ia > eとなって元のeが追い出されたというのは問題があると思う。
iaから来るeと元のeでは数としては元のeのほうが多いわけだろう。
なら元のeが追い出されるのではなくてiaから来るeのほうがとりこまれるのが自然じゃないか。

53名無しさん:2011/02/21(月) 01:33:28
>>52
アを含むiaをオ乙に取り込むと、有坂法則違反というか「母音陣営の鞍替え」になってしまうんだ。
俺の発想は、なんだかんだ言って母音調和的発想をベースにしているので、こういう説明になる。
ア&ウ/オ乙(おそらく本体はア/オ乙)という大きな対立があって、ここを議論の出発点にしている。
これ自体がそもそも可笑しいというのなら、立論そのものが無意味になることになる。
そういう発想はあり得るとは思う。

54名無しさん:2011/02/21(月) 20:30:16
>>53を具体例で補足すると、こんな感じになる。
「前(まへ1)」という単語がある。
祖語の音は*mapiaで(厳密な語源論ではなく、再構成された音韻という意味)
これには異論はないはず。
これが、*mapjaとなり、pjaが許されないので*mapeとなる。
ここで、オ乙が/e/のままでこちらに吸収されたのだとなると*mape(つまりマホ乙)は有坂法則違反。
母音調和法則が逆行同化で働くことはあり得ないので、*mepe(*モ乙ホ乙)は無理。
従って、どちらかが道を譲るほかはない。
なぜ、「本来的母音のオ乙がイス取りゲームで劣後したのか?」が、真の問題となる。
俺は元々は祖語音が[œ]としていたので、この考慮をする必要は無いと理解していたんだが、
[e]だとすると問題となる。松本講義の例としてのaiueはどういう意味で「安定しているのか」を訊いてみたい気もする。

55名無しさん:2011/02/21(月) 20:41:43
そういえば、松本説の>>35の部分が、音素論なのか音声論なのか、
どういうつもりで引用発展させているのか、どうもハッキリしないところなんだよな。
わざと焦点をぼかして話しているように見える。
もしこれが音声論だとしたら、東京方言の母音の「音声」は、aeioɨの5つであって、
「三角形は頂点から埋められる」という法則がすでに崩壊している。
(これは名古屋以東の東日本方言はすべて同じ。東北だと、iも頂点にならない。
世界的に見ても、古典ギリシア語が東日本方言とよく似た母音構造をしている。)
他方、もし音素論であるとするなら、音声としては中舌でも、音韻としては頂点や辺上ということもあり得るわけで
森推定「音声」を勝手に音素論として用いることはおかしい。(服部や大野説の料理のしかたでも同じ)

56名無しさん:2011/02/22(火) 00:31:43
イシジチヂニリヰ・エセゼテデネ江レヱ・オホボヲの甲乙の区別は本当に無かったのか?
実は8世紀時点でも区別があったが、中国語に対応する字音の漢字がなく、
区別して表記できなかっただけという可能性は否定されてるの?

イ段とエ段は露出形と被覆形や動詞活用の関係、オ段は有坂の法則から、
上に挙げた音節でも「甲乙が予想できる」ものがかなりある。

例えば「手」はテ2、「口」はクチ2、「風」はカゼ2、
「立ち」はタチ1、「立てば」はタテ2バ、「立て」はタテ1、
「頬」はホ2ホ2、「丘」はヲ1カのはずだろう。

5735:2011/02/22(火) 02:40:49
>>55
そのへんの説明は例外的タイプの説明でやっていたのですが、私がはしょって
しまいました。

*5:1 というパターンを検討してみる("*" は、母音配列が均整でなく、すきま
のある構造を意味する)。確実でないものが多い。

Ruhlen によると Evenki は *5:1 だが、池上によると 6 つか 7 つの母音がある。

Nez Perce は u が内よりで、日本語と同じ。このようなものは 5:0 とも見なせる。

Seneca は a æ e i o で u がないが、子音にも唇音がない。何か特殊な言語習慣に
よるのかもしれない。
http://en.wikipedia.org/wiki/Seneca_language

中国語(官話)は *5:2 とされているが、音節から切りはなして母音だけ取りだ
しても問題にできない。

呉語(常州方言)は 6:1 で a e i o u y。このパターンで円唇の y が現れるの
は Ruhlen ではこの言語だけ。非常に珍しい。ただし中世ギリシャ語はこの型
であり、トルベツコイは他にも同様の例をあげている。

58名無しさん:2011/02/22(火) 13:07:26
麻呂(マロ2)、百・股(モ1モ1)のような有坂の法則の例外になる語の存在はどう説明する?
こういう例がある以上、少なくとも崩壊の直前にはオ甲とオ乙は別音素とみなさざるを得ないと思うが。

5935:2011/02/23(水) 05:22:19
松本氏の講義ではあまり個々の例にふれていなかったので、著書のほうに
よりますと、

>>41
イ段乙類およびエ段甲乙が加わる前の母音の構造について、松本氏は i e a
ə だったと考えているようです(p.146)。ただし ə が a との交替によって
発生したと考えれば3 母音だったかもしれないとも言っています(p.115 ほか)。

>>42
単音節語においては独立的な語にオ段甲類があらわれ、非独立的な語に乙類
が現れるとしています(>>37)が、その理由としては、単音節語が後世と同様に
長めに発音されていたため、それが表記の上で反映されたものであり、一見対
立しているようでも音韻的には同音と見なせるとしています(p.120)。
その証拠として、甲類のはずの「戸・砥・野・夜」などが、乙類のはずの助詞の
「と・の・よ」を表す万葉仮名として使われていることがあることをあげてい
ます。
ただし「世」については確かに非独立的とは言えないかもしれないとも言って
います(p.120)。

>>58
「麻呂」のような a と o が一語に共存するものは、そもそも本来的な語幹で
はなかった(主に複合語。あと方言とか外来語とか)と考えているようです(p.52)。
ただし「麻呂」という語自体には何も説明をつけていません。

「百」については、o の連続で甲類が出るのが「毛毛・古古・古胡・蘇蘇岐」
のような同音反復の例しかないので、「通常の二音節語幹」からは除外してい
ます(p.13, p.107。個人的にはそれじゃいかんのじゃないかと思いますが)。

>>43
Martin なんかは松本説を通時的な変化の説明として取りあげています。
Martin によると、Paul Sato という人が松本説とは独立にオ段甲乙の同一起源
を主張しており、オ甲とオ乙はもと自由変異音で、通常の形はオ乙であったが、
有坂法則によって特定の語でオ甲が固定されていった、という筋道を考えている
らしいです(もとの論文を見ていないので、まちがっているかも)。
オ段の甲乙分化以前に有坂法則があった、というのは無理な気がしますが……

6035:2011/02/23(水) 05:29:09
>>59

> 松本氏は i e a ə

すみません。わかるとおもいますが、a i u ə のまちがいです。

61名無しさん:2011/02/23(水) 13:01:55
そういえば、こういう本があって:

Proto-Japanese: Issues and Prospects
http://www.amazon.co.jp/dp/9027248095

これに "Evidence for seven vowels in proto-Japanese" という日本祖語
7 母音説(特殊仮名遣いとは一応別のやつ)が載っているらしい。

62名無しさん:2011/02/24(木) 11:44:01
>>61

これと多分おなじ話らしい。
http://conf.ling.cornell.edu/whitman/VowelsofProto-Japanese.Martfest.pdf

まとめると、

日本語でイ段なのに奄美方言が i でなく ï が出るものは *e に由来すると
考える(服部ほか)。e は上代には語末以外で i になった。
メ(女)/ヲミナ・オミナのようにイ段と交替するのは *e の痕跡。

ウ段と交替するオ(甲)は *o に由来すると考える。o は上代では語末以外で
u に変化した。

オ(乙)はイ(乙)と交替するもの(コ/キ(木))とエ(乙)と交替するもの(ソ/セ(背))
の二種類がある。前者を *ɨ、後者を *ə に由来すると考える。

以上により、日本祖語には *a *e *ə *o *i *ɨ *u の七母音があった。

63名無しさん:2011/02/24(木) 19:12:51
現状分かってる奄美方言ってのが明治以後のものだろ。
1200年後の発音を証拠にして上代の母音を構成するのはきわどくないか。

64名無しさん:2011/02/24(木) 19:18:26
奄美方言から与那国方言まで共通して見られる特徴なら、少なくとも琉球祖語までは遡れると考えられるものもあるけどね。
例えばイとエの母音の区別が残っている方言などを見れば、「水」「木」は琉球祖語で*medu、*keだったことが推定できる。
ただ、7母音を再構できるかというとかなり怪しい。再構できるのは5母音までだろう。
日本祖語と琉球祖語で食い違う母音の部分を、日琉祖語で別の母音だったと考えることでようやく7母音体系の存在が示唆できるんだろう。

65名無しさん:2011/02/24(木) 19:49:00
>>60>>62
どちらも、そんなに異様なことを語ってはいないよね。
日本祖語の音韻論は、a i u ə を軸に大筋では収束しつつあるように見える。
巨視的に見れば、大野4母音説(a i u ö )の修正発展版と言ってもいい。
やっぱりここでは大野が一番本筋を外さず射程の長い卓見を展開していたんだよ。
その上で、どの段階でもう少し複雑な音素をどこまで認めるかという対立であるように見える。
>>62は、祖語にかなり複雑なものを立てているが、そこまで言えるのか吟味が必要だと思う。
(俺自身は、protoのほうが自然で、OJの音韻推定のほうにすさまじい違和感を感じるが、
これは>>62OJが半母音(拗音)音節を大量かつ非体系的に認めているからで、案外重大な問題ではないのかもしれない)

66名無しさん:2011/02/28(月) 09:43:47
>>56
馬淵和夫がほかにも区別があるようなことを言っていたはず。

中国語のほうに区別がなかったというのは無理だと思う。森博達のいう書紀α
群だとエ段甲は斉祭(4)韻、乙は灰咍韻ということだが、それに従えば、セなら
「祭/載」、テなら「帝/戴」のように簡単に区別できる。それ以外の「倭音」
なら、さらに使える韻が増えるので楽勝だろう。

67名無しさん:2011/03/02(水) 21:54:27
>>62
語末以外のe や o って結構あると思うんだがどう説明するの?

68名無しさん:2011/03/03(木) 16:43:00
>>67
e ができてから作られたか借用されたってことでいいのでは。
「けさ(今朝)」は「き(?)」+「あさ」なんだろうし、「ねこ」は鳴き声?
「てら」は借用語だろう。

69名無しさん:2011/03/04(金) 07:28:44
語末以外のe (複合語由来で元々語末と明らかに推定できるものも除く)

ebi (HH) 蝦
ke1ca (LH) 今朝
keta (LH) 桁
ke1pu (LH) 今日
cemi1 (HL) 蝉
ceri (LL) 芹
tera (HL) 寺
negi2 (LL) 葱
neko1 (LL?LF?) 猫
pe2co2 (HH) 臍
peni (LH) 紅
pe1mi1 (RH) 蛇
pera (LH) 箆
me1pi1 (LL) 姪
jeda (HH) 枝

kaperu (LHH) 蛙
karepi (LLH) 鰈
keburi (HHH) 煙
keyaki (LLH) 欅
nezumi (LHH) 鼠

ke2cu (HL) 消す
ceku (LF) 堰く
teru (LF) 照る
neru (LF) 練る
peru (HL) 減る
mecu (LF) 召す
wepu (LF) 酔ふ
wemu (LF) 笑む

cemu (LF) 攻める

erabu (LLF) 選ぶ
kacegu (LLF) 稼ぐ
kape1cu (LLF) 返す
kape1ru (LLF) 帰る
kezuru (HHL) 削る
cemaru (LLF) 迫る
conemu (LLF) 嫉む
nage2ku (LLF)

70名無しさん:2011/03/04(金) 07:35:24
途中で投稿されてしまった…
erabu (LLF) 選ぶ
kacegu (LLF) 稼ぐ
kape1cu (LLF) 返す
kape1ru (LLF) 帰る
kezuru (HHL) 削る
cemaru (LLF) 迫る
conemu (LLF) 嫉む
nage2ku (LLF) 嘆く
negapu (LHL) 願ふ
netamu (LLF) 妬む
nemuru (HHL) 眠る
pagemu (LLF) 励む
pineru (LLF) 捻る
pukeru (LLF) 耽る
pusegu (LLF) 防ぐ
maneku (LLF) 招く
mucebu (HHL) 咽ぶ
me2gumu (LLF) 恵む
meguru (HHL) 巡る

urepu (LLF) 憂ふ
kegaru (LHL) 汚る
pe1datu (LLF) 隔つ

これらの語例の説明が欲しいな。
アクセント付きで見ると妙に低起式の語が多い気もするが、他の語と比べて有意なほど多いのかよく分からない。

71名無しさん:2011/03/07(月) 07:46:35
>>69

とりあえず名詞について、日本国語大辞典・大野(岩波古語辞典)・松本・
Martin を見てみました。(Martin は基本的に先行の説をまとめてるだけで、本
人の独創は少ないと思う)

1. えび
日国・大野・Martin は(植物または動物のいずれかまたは両方の)ビを甲類とす
るが、根拠を記していない。Martin は「えひ・かれひ」を参考としてあげてい
るが、どういう関係なのか不明。

2. け(1)さ 万3947「家佐」
大野はコ(此)の転のキと、アサ(朝)との複合語の約であろうとする。Martin も
ki(this)-asa(morning) とするが、第一要素は「けさ・けふ」から帰納したも
ので、あるいは ke だったかもしれないという。

3. けた
ケの甲乙不明。松本は索引で ke(1)ta とするが、本文では単なる keta。索引
の誤りか。
Martin は語源不明とするが ita(板)、kida(段) を参照としている。

4. け(1)ふ  記「祁布」、万870「家布」
大野はキ(此)アフ(合)の約かとする。
松本は ke(1)(此 <ko(2))-pu(日 <pi(1)) と分析。ただし音声上に問題がある
ことは認めているようで、万4047・4330 からケは乙類が本来かともするが、
前者は問題が多いことで有名な巻18で、後者は防人歌なので、それは難しいだ
ろう。
Martin は、松本・大野の説を引くのみ。

5. せみ
日本国語大辞典の語誌には「蝉」の字音説と擬音に由来するという説をあげる。
大野はミを甲類とする。
新撰字鏡「世比」。

6. せり 紀「制利」万4456「世理」
特になし。

7. てら
朝鮮語由来と言われる有名な語。中期朝鮮語 tiəl。

8. ねぎ
上代の用例なし。古くは単にキというが、甲乙不明。
日本国語大辞典は単純に「ネ(根)」+「キ(葱)」とする。
Martin は na(root/earth)-Ci-ki(onion) と分析する。たぶん日本国語大辞典
と同じことを言っているのだろうが、この na は「ね(根)・なゐ(地震)・なへ
(苗)・たかんな(筍)」などから帰納されたもので、実際の文献に na という語
があるわけではない。

9. ねこ(1) 霊異記訓釈「狸 禰古」(ただし「禰己」とする本もあり)
Martin は ne を mimetic とする。ko(1) は「子」で、琉球語のマヤーも鳴き
声+指小辞で同じ語構成だという。
大野や松本も ne を擬音であろうとする。

10. へそ
上代の例なし。ホソ poso(2) の方言形?
Martin はホソのソの甲乙を記さないが、日本国語大辞典によると「トボソ」を
戸細・戸斉と書いており, 斉が臍のことであると考えれば乙類だという。
Martin はヘソについて、ホソの最初の o が s の前で変化して e になっ
たか、異化によりヘソになったかもしれないが、逆にヘソが元で、同化により
ホソになった可能性もあるとする。

72名無しさん:2011/03/07(月) 08:10:41
つづき。

11 べに 和名抄「閇邇」
上代の例なし。語源不明。

12 へ(2)み(1) 仏足石歌「閇美」
この語も中期朝鮮語 p i'iam と関係づけられることがある。
ハブと関係?

13 へ(1)ら 歌経標式「弊羅」
Martin はヒラの第一母音が部分的に第二母音に同化したものかとする。
大野は中期朝鮮語 pi t (犂)と同源とする。Martin が "loan from Korean?"
としているのはこれを指したものだろうが、意味も音もかけはなれている。

14 めひ 令集解引古記「乎備売比」(をひめひ)
日本国語大辞典はメヒの甲乙を記さないが、ヲヒのヒは乙類とする。
大野はヲヒ・メヒとも甲乙を記さず。
Martin メヒのメを甲類(ヒは不明)、ヲヒのヒを乙類とする。
いずれにせよ、「め」が「女」であることはたぶんまちがいないだろう。

15 え(ye)だ 記「延陀」
大野はエ(枝)にカラダ(体)のダのついた語とする。
Martin は琉球語(与那国 duda、今帰仁 yudaa) などから、*yo(2)daが元の形で、
yo(2) 「四」と ta 「手」に由来すると考える。

16 かへる kape(1)ru 万3494「加敝流弖」(楓)。ただし東歌
語源不明だが、和名抄に「弁色立成云雞頭樹加比流提乃岐」とあり、「かひる」
の形も古くからあったかもしれない。

17 かれひ karepi 和名抄「加良衣比・加礼比」
上代の用例なし。
Martin は和名抄に従って karefi < kara-efi に分解するが、語源は不明と
する。

18 け(2)ぶり 新訳華厳経音義私記「気夫利」
松本は漢語 ke(2)(気) の派生とする。
Martin は甲乙を記さず。

19 けやき keyaki
上代の用例なし。キが「木」であろうということ以外は不明。

20 ねずみ(1) 歌経標式「禰須弥」
「ね」だけでも鼠を意味するが、複合語の中(「ノラネ」)か、十二支の子など、
特殊。
Martin は na (earth,ground,root) か no「野」に「住み」がついた形かとす
る。na については「ねぎ」参照。
なお琉球語では首里ウェンチュのように別の語を用いる。

73名無しさん:2011/03/07(月) 08:14:01
>>72
ありゃ、文字が消えた。
12 中期朝鮮語 p i'iam → pʌi'iam
13 中期朝鮮語 pi t → piət
16 弁色立成云 頭樹 → 雞頭樹
です。

75名無しさん:2011/04/23(土) 11:02:58
倭人伝とか金石文の日本語表記には上代特殊仮名遣いの区別は見られるの?

76名無しさん:2011/04/28(木) 12:21:37
奈良時代より前は固有名詞ぐらいしか記録が残ってなくて、
後の時代の普通名詞との突き合わせが難しいのが困るな。

77Youwee:2011/07/22(金) 10:02:54
「上代特殊仮名遣い」は百済人が朝鮮語の音韻感覚で日本語を聞き取って記述したものです。
その最も解りやすい証拠がこれ↓です。
http://www.youtube.com/user/Youwee5847?feature=mhee

78名無しさん:2011/08/26(金) 11:09:39
言語学板が落ちてるので、向こうのスレのログを貼っておく。

上代特殊仮名遣い
http://unkar.org/r/gengo/1305988303

81名無しさん:2012/03/01(木) 20:24:11
>>75
獲加多支鹵 ワカタキ1(ケ1)ロ1(ル)=幼武
意富比垝 オホヒ1ク(コ1)=大彦
弖已加利獲居 テ(ト2)ヨ2カリ(ラ)ワケ2=豊韓別?
(稲荷山古墳鉄剣銘)

古墳時代には上代特殊仮名遣いに近い区別があるといっていいんじゃないかな?
ただしこの時代に日本で行われた漢字音についてもっと突っ込んだ研究が必要かと思う。
倭人伝はさすがに時代が遠すぎて厳しいね。

97名無しさん:2013/08/22(木) 19:42:02
age

141uKWoYyUWEM:2014/12/21(日) 22:34:15
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142名無しさん:2015/04/06(月) 16:25:58
2chが専ブラで見れなくなったんでこっちに今までの試案を書いてみる。
ここ、まだ生きてるよね?

上代特殊仮名遣いの音価としては森博達の再構をひとまず全面的に採用する。すなわち以下の7母音

ア a
イ甲 i
イ乙 ɨ
ウ u
エ甲 e
エ乙 əi(二重母音)
オ甲 o
オ乙 ə

ただしこれは8世紀、近畿地方の日本語

143名無しさん:2015/04/06(月) 16:33:17
同じく8世紀でも、関東から東北地方で喋られていたいわゆる上代東国方言は様子が違っていた

ア a
イ甲 i
イ乙 i
ウ u
エ甲 e 一部はa(完了りの直前など)
エ乙 e
オ甲 o
オ乙 o

すなわち上代特殊仮名遣い崩壊後の音価はほぼこの東国方言をもとにしていた

徴税や防人で全国に広がった東国人がその後の日本語に影響を与えたのかも?

144名無しさん:2015/04/06(月) 16:45:54
ただし東国方言としてまとめられている中に静岡甲信あたりの中部の方言があり、ここは関東とはまた違う崩壊のしかたをしていた

ア a
イ甲 i
イ乙 ə
ウ u
エ甲 e
エ乙 ə
オ甲 o
オ乙 ə

こちらは中舌母音はすべてəになるかたち。現代日本語には生きていないけど、
名古屋弁でやたらに中舌母音が多いのは基層にこの時代の方言があるのかも

145名無しさん:2015/04/06(月) 16:59:09
最後に琉球諸語。この言語の元となった日本語は、8世紀辺りではまだ西南九州で喋られていたと考えている。
資料に残っていないので推測するしかないが、2chで有名だったペラールの説を引用すると

ア a
イ甲 i または e
イ乙(ui) i
イ乙(oi,əi) e
ウ u または o
エ甲 e
エ乙 e
オ甲 o
オ乙 ?

オ甲乙が崩壊していたのかは不明なんだけど、とにかく他の方言で区別を失っていたはずのuiとoi,əiの区別が保たれていたり、イ甲やウに二種の音があったのが特徴。
これとアクセントから、上代以前の日本語の形がわかりそう、かも。

146名無しさん:2015/04/06(月) 17:55:58
で、ここまでが8世紀の崩壊終盤にあった上代特殊仮名遣いの概略。
ここから上代以前の日本語音韻史に踏み込んでいく。

この時期の音韻は大野晋説をだいたい踏襲する。
すなわちいくつかの母音は他の母音の融合により発生した。

エ乙 a+i
イ乙 ə+i,o+i,u+i
エ甲 i+a

ただしオ甲は母音融合で発達したのではなく、遡れる最古のかたちまで遡っても本来的単母音だったという立場をとる。

理由としてはオ甲だけ有坂の法則を構成することができる母音だということ、
エ乙イ乙に見る動詞の活用形のような有力な証拠がみえないこと

ただしオ甲は8世紀では比較的発現頻度が低く、何らかの原因があると思うのだけどこれがペラール説により説明がつきそう

147名無しさん:2015/04/06(月) 19:33:34
ペラール説とは何か。

日琉祖語の音韻として*e *oがあったことを想定する説。
理由は琉球諸語でイ甲やウに当たる音に2種類の変化があるから
琉球諸語と分離した日本語の方で *i *e → イ甲、 *u *o → ウ という合流を起こしたという立場。

俺の説では *o はオ甲の直接祖先である可能性が高いが、
*eはエ甲乙いずれの祖先でもなく、最低でも畿内の日本語では一時期全く消滅してしまったと見る。
理由はイ乙の融合の仕方。

琉球諸語ではイ乙は2つの区別を持って融合していた
u+i → *i
o+i → *e
ə+i → *e
が、これが畿内では
u+i → ɨ
o+i → ɨ
ə+i → ɨ
という風にすべて同じ音に吸収されている。
これは、畿内の日本語ではeにあたる音がなかったために広舌母音も狭舌母音も同じ音に集約してしまったのだろう。

148名無しさん:2015/04/06(月) 20:27:49
ちなみに*oは一部はuに合流し、一部はoのまま残ったためオ甲の出現頻度が低くなったんだろうと思う。
傍証として森博達が分析した魏志倭人伝の日本語ではオ甲に出現頻度が日本書紀に比べて有意に高かったことがあげられる。
出現割合から考えて、おそらく2音以上の語頭のoはほぼ機械的にuに融合したのだろう。他にもアクセントなどで融合した例があるかもしれない。
時期は魏志倭人伝〜日本書紀の間、つまり3〜8世紀の間。

これは畿内の日本語だけで起こったことで、関東の日本語では起こってないと見ている。
ペラールも似たようなことを考えていて、形容詞の連体形 -eや動詞の連体形 -oは融合を起こさなかった音形だって書いている。

つまり動詞の連体形とは、語根に [何らかの子音]+oが下接したものが原型ではないだろうか。
[何らかの子音]をCと置くと、

四段動詞<<書く>> kakCo → kako (重子音は許されないため消滅) → kaku (o→u融合)
下二段動詞<<建てる>> tataCo → tataro (子音が確定) → taturu (o→u融合 + 母音が前に影響)(ちょっと説明苦しい?)
上二段動詞<<過ぎる>> cugəCo → cugəro (子音が確定) → cuguru (o→u融合 + 母音が前に影響)(ちょっと説明苦しい?)
上一段動詞<<見る>> miCo → miro (子音が確定) → miru (o→u融合)
ナ変動詞<<死ぬ>> cinCo → cin -oro (子音が確定、渡り音が挿入される) → cinuru(o→u融合)

というように、子音で終わる音の中でnだけ動きが違う
このため、[何らかの子音]Cはnで、n+nの子音重複を避けるために渡り音を挿入したのではないかと考える。
そこで、連体形の接辞は「no」ではないだろうか。


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