>>43
Martin なんかは松本説を通時的な変化の説明として取りあげています。
Martin によると、Paul Sato という人が松本説とは独立にオ段甲乙の同一起源
を主張しており、オ甲とオ乙はもと自由変異音で、通常の形はオ乙であったが、
有坂法則によって特定の語でオ甲が固定されていった、という筋道を考えている
らしいです(もとの論文を見ていないので、まちがっているかも)。
オ段の甲乙分化以前に有坂法則があった、というのは無理な気がしますが……
>>60>>62
どちらも、そんなに異様なことを語ってはいないよね。
日本祖語の音韻論は、a i u ə を軸に大筋では収束しつつあるように見える。
巨視的に見れば、大野4母音説(a i u ö )の修正発展版と言ってもいい。
やっぱりここでは大野が一番本筋を外さず射程の長い卓見を展開していたんだよ。
その上で、どの段階でもう少し複雑な音素をどこまで認めるかという対立であるように見える。 >>62は、祖語にかなり複雑なものを立てているが、そこまで言えるのか吟味が必要だと思う。
(俺自身は、protoのほうが自然で、OJの音韻推定のほうにすさまじい違和感を感じるが、
これは>>62OJが半母音(拗音)音節を大量かつ非体系的に認めているからで、案外重大な問題ではないのかもしれない)
8. ねぎ
上代の用例なし。古くは単にキというが、甲乙不明。
日本国語大辞典は単純に「ネ(根)」+「キ(葱)」とする。
Martin は na(root/earth)-Ci-ki(onion) と分析する。たぶん日本国語大辞典
と同じことを言っているのだろうが、この na は「ね(根)・なゐ(地震)・なへ
(苗)・たかんな(筍)」などから帰納されたもので、実際の文献に na という語
があるわけではない。
9. ねこ(1) 霊異記訓釈「狸 禰古」(ただし「禰己」とする本もあり)
Martin は ne を mimetic とする。ko(1) は「子」で、琉球語のマヤーも鳴き
声+指小辞で同じ語構成だという。
大野や松本も ne を擬音であろうとする。
10. へそ
上代の例なし。ホソ poso(2) の方言形?
Martin はホソのソの甲乙を記さないが、日本国語大辞典によると「トボソ」を
戸細・戸斉と書いており, 斉が臍のことであると考えれば乙類だという。
Martin はヘソについて、ホソの最初の o が s の前で変化して e になっ
たか、異化によりヘソになったかもしれないが、逆にヘソが元で、同化により
ホソになった可能性もあるとする。