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女が男を金的攻撃で倒すSS

1管理人★:2017/01/18(水) 12:30:15 ID:???0
2chスレッドの避難所になります。

版権(漫画・アニメ・ゲーム)・オリキャラ等の
金蹴りや電気按摩といった金的攻撃があるSSならなんでもOK!
ただし女→男でお願いします。

それ以外は別所でお願いします。

125名無しさん:2017/10/21(土) 09:03:47 ID:rBd7hXNw0
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当日、夜。


疼きと吐き気で目を覚ます。
見やると、俺の下半身は何も纏っておらず、キンタマは野球ボールのように晴れ上がっていた。
その上に、手製であろう氷嚢が載っていて、疼痛のなかで少し快感を感じる。

部屋を照らすのは、月明かりのみ。

「あ、起きた?」

上から声。ハヅキさんの顔が逆さまに写る。
何故逆さ、と考えて、後頭部の枕が体温を帯びていることに気付く。

「おっと、暴れないでよ。とりあえず、キミのタマタマは二つとも無事だったよ。おめでとー。
 ま、もし潰れてたとしても、急所が減っておめでとーっていうつもりだったけど……なんて、冗談。
 よく頑張ったね。オトコノコだね」

――――俺は、負けたのか。
股間の痛み、そして胸に沈む重い後悔。
初手に油断をしなければ。もっと慎重に戦いを組み上げていれば。
無数のたらればが浮かび、像を結ばずに霧散する。

「……キミの根性に免じて、合格ってことにしてあげるね」

と、唐突に、蜘蛛の糸のような救いの言葉が齎され、思わず彼女の顔を見つめる。

「うん。今もタマタマがついている時点で、キミは合格。
 実はね、もし、アタシを騙してナツキに会いに行こうとしたり、夜にアタシに変なコトしようとしたりしたら、容赦無くタマタマ潰すつもりだったんだ。
 でも、キミは信義を通した。ナツキを尊重してくれた。

 だから、ね。一度、真剣に向き合って、アタシを打ち倒してくれたら、それで良し。
 もし駄目でも、最後までタマタマが潰れなかったら、それでも良しってしようと思ってたの。

 ……勝手だよね?最後の一撃は、もう潰れても構わないと思って蹴り上げたんだけど」

しおらしい態度で、ゾッとする言葉。
思わずキンタマを抑えようとして、その手を制止させられる。

「まだ痛いよ、きっと。それに、もうキミのオトコノコは隅々までみちゃったし、今更隠さなくてもいいじゃない?」

イタズラっぽく笑うが、その顔も俺の恐怖を誘う。

「後で、アタシのオンナノコも見せてあげるから、オアイコってことにしてね☆
 オトコノコに隅々まで見せるなんて、初めてなんだから」

む。むむむむむむ。

そこから、彼女の独白がはじまる…………

126名無しさん:2017/10/21(土) 09:04:28 ID:rBd7hXNw0
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あのね、ウチは元々は5人家族だったんだ。
お父さん、お母さん、お母さんの妹(叔母って言うのかな?)、アタシ、ナツキで5人。

でも、お母さんは身体が弱くて、ナツキが物心つく前に死んじゃったの。
叔母……あの女はお母さんに随分可愛がられてたから、そのときは随分と憔悴してたっけなぁ。

叔母はね。アイツはお母さんと随分年が離れていて、私と3歳ぐらいの差しか無かったんだ。
良い中学を卒業して(ウチから通えないから全寮制ね)、そのまま都会の高校に進学したらしいんだけど、
そこでドロップアウトしちゃってさ。お母さんが死んじゃった時にウチに転がり込んできて、そのまま居座ったの。

アイツ、大っ嫌いだったけど、子供のときの3歳差なんで絶対的じゃない。
ニートの癖に、ウチの中ではまるで暴君でね。外ではとても大人しかったらしいんだけど、眉唾。

外面は良くてね。スタイルも、出るところは出て、引っ込むところは引っ込むって感じ。
顔だって良かったみたいよ?コレは、ナツキの評だけど。
でも、精神的にはもう、子供からとうとう抜け出せなかったんだと思う。誰もが自分をちやほやしてくれないと、許せない人。
他人に何をしようと、許されると信じ込んでいる、哀れな人。


そんなこんなの時に、お父さんも死んじゃったの。アタシは、未だにあの女が殺したんだと思っているけど。
そこからよ、ウチが徹底的におかしくなったのは。

キミも体験したでしょ?ウチの古武術。アレって、お母さんの家のものだったの。
お母さんは、あんな粗大ゴミ(コレは私も同感)って忌み嫌っていたけど、叔母はそうではなかったのね。

粗大ゴミって……だってそうでしょ?
昔、刀とか槍とかで戦ってたときはワンチャンあったのかもしれないけど、今、戦争って鉄砲とかミサイルの時代よ?
刀の時代だって、基本的には勝てなかったっていうし……まぁ、当たり前よね。
それに、素手での喧嘩であんなのつかったら、どう足掻いても過剰防衛にしかならないじゃない。

あ、話がそれちゃったね。
あの女、このゴミを使って、ウチに君臨することにしたのよ。

アタシはまだ良かった。生まれたときから、キンタマついてなかったから。
悲惨だったのはナツキよ。中学は通信制だったから、ずっと家に居たんだけど、もう、毎日タマタマを苛められてた。
あっちでぴょんぴょん、こっちでうーうー。毎日が心配だったなぁ。アタシ達はもう、奴隷同然。
今思えば、お父さんの死亡通知を届けてなかったんだね。誰も、ウチに助けにくることなんて無かった。

ナツキもね、何度か反抗しようとしたこともあった。
でも、ね。キミも知っての通り、このゴミは対男性専用みたいなところがあるから……タマタマが無い彼女とタマタマが付いてるナツキじゃ、
全然勝負にならなかったよ。アタシは、いっつも怖くて震えてた。可笑しいよね、アタシは女だから、まだナツキよりも大丈夫なハズなのに。

さっき戦ったときの言葉も、あの女の受け売り。

『ナツキちゃん?タマタマ痛いの?そんなもの付けてるからですよ?私が潰してあげましょうか?』
『ウフフ、ナツキちゃん?タマタマってどんな感じに痛いのかしら?私に上手く説明できるまで、コレ、もみもみしてあげますからね?』
『男の子は金的があって大変ね。私にも、ハヅキちゃんにもそんなモノ無いのですよ?貴方もいらないんじゃないかしら?』

あの頃は、どうにかしてナツキのタマタマを切り落として、この地獄から解放してあげたかった。
可笑しいよね、あのコは被害者なのに。でも、そんなコトには気が回らなかったの。
今にして思えば、あの女はナツキを苛めることで、自分を受け入れなかった社会に仕返ししてるつもりだったんだと思う。
本当に、幼稚。

127名無しさん:2017/10/21(土) 09:05:06 ID:rBd7hXNw0
そして、4年前。ナツキが中学三年生の時。
未成年のくせに、さんざん酔っ払ったアイツが、ふらふらの知らないオトコを連れてきた。

これで、良くあるDV家族の出来上がりと思うでしょ?それが、違ったの。

アイツ、アタシとナツキを集めてから、なんの躊躇も無く、そのオトコのキンタマを潰した。笑いながら。
「ついてない」アタシでも、縮みあがるような苦しみようだった。「ついてる」ナツキは、どれだけ震え上がったか。

そして、ナツキの後ろに覆いかぶさって(あすなろ抱きって言うんですって)、あのコの耳元で囁いたの。

『ナツキちゃん?私は優しいでしょう?その気になれば、ナツキちゃんをああすることも簡単なんですよ』
『ほら、あの愉快な姿。タマタマついてるナツキちゃんは、明日は我が身と思っていなさいね?タマタマが無い私には、完全に他人事ですけど』
『つかまえちゃった、ナツキちゃんのタマタマ。こら、そんなに嫌がらないの。あの人は、もう、一生その感覚を味わえないんですよ』
『男の方って、皆、この出来損ないの部分を持ってるのに、なんであんなに偉そうなのかしら……ナツキちゃんはそんなことないですよね?』
『ほら、何をしてるの?手を後ろに回して、私の股間を弄りなさい。女の股間に、タマタマあるか探してみて?』
『ウフフ、ナツキちゃん苦しそう。タマタマそんなに痛いのですか?私のタマタマを握って仕返ししてみたら?なんて、女にはタマタマないんですよ』
『ナツキちゃんは苦しそうですけど、私はとってもキモチイイんです。タマタマが無いから、やり返される心配も無くて安心です』
『タマの痛みなんて絶対に味わうことはないんです。羨ましいですか?でも、駄ー目。ナツキちゃんはタマタマつけて生まれちゃったんだから』
『ナツキちゃんのタマタマは、私のものなんです。私が潰さないでいてあげてるから、まだ、ナツキちゃんはぶらさげていられるだけ……』
『ほら、ハヅキちゃん。私のブラを外して、貴方が自分を慰めるときみたいに揉みしだいて?ナツキちゃんはもっと、私の、金的が無いアソコを弄り回して』
『死ぬほど男を実感しているあの方の前で、私に死ぬほど女を感じさせて』

あれ、性癖だったのかしら。
可哀想な男の人は、翌日には居なくなってた。きっと、裏の焼却場であの女が焼いたんだと思う。
物取りでもない、単なる行きずりの犯行ってことで迷宮入りしたんじゃないかな。
警察に駆け込めば良かったんだけど、あの頃はこの家が全てで、それにすら気付けなかったの。

もう、滅茶苦茶だった。このままだと、本当にナツキが駄目にされてしまうと思った。
アタシは通信制の高校を辞めて、浮いたお金と、隠してあったなけなしの遺産で、ナツキを都会の高校に送り出した。あのコ、頭が悪かったから苦労したけれど。

もし、アタシが殺されても、あのコが幸せなら、それでいいと思ってた。

その後、ナツキが戻ってくるまでは、たいしたことは無かったわ。
あの女、一年に一度ぐらい、どこかから男を連れてきては、私に接待させた。
男のアソコに詳しくなったのも、それから。自分の身を守るために、このゴミを身につけたのも。

アイツ、連れてきた男を気まぐれに潰したり、寝たり、やりたい放題やっていたけれど、
自分の気分次第で、あの人たちの運命を変えられるという事実に酔っていたみたい。最低。
それでも良かったの。あのコが、この家から離れた、それだけで。



でも。

先月、あのコは帰ってきてしまった。
新しい武術を身につけて、アタシを解放するんだって。

128名無しさん:2017/10/21(土) 09:05:50 ID:rBd7hXNw0
叔母と、ナツキはさっきの道場で一騎打ちをしたの。
あの女の中では、ナツキは中学のときのまま。対して、ナツキはあの女を叩きのめすことだけを考えて、修練を積んでいたのね。

一方的だったわ。丁度、さっきのキミとアタシの逆ね。
キミも気付いていたでしょ?最初の奇襲で、キミの金的に一撃いれてなかったら、きっと負けたのはアタシ。
正面きって。奇襲が通じない時点で、あの女に勝ち目は無かった。


ナツキは、あのコは優しすぎた。
あの女を平伏させたあと、この家から出て行くことを約束させて、手切れ金まで渡そうとしていた。

――あぁ!!あの女がボコボコにされたときに、アタシが止めをさしておけばよかった!!!!!





それから数日後の晩。あの女が、ナツキの前に現れた。全裸で。
ナツキが言うには、一瞬、頭が真っ白になったって。ただ、その一瞬であの女には十分だった。

結果として、ナツキは金的を入れられ、さっきのキミとアタシの焼き直しのようなことになってしまった。

『ナツキちゃん?叔母さんは、とても悲しいです』
『あんなに面倒をみて、色々と教育してあげたのに、男の方が優れていると誤解してしまったのですね』
『もしかして、常に金的を防御できると思っていたのですか?そんなことは不可能なんです』
『金的をぶらさげている限り、何時何処でどんな不意打ちを受けるか、全て予測できると思っていたのですか?』
『金的の警戒をしなくても済むのは、元から無いオンナの特権なんです。貴方は、もとから「あります」よね?』
『その踊り、オトコノコって感じで、とってもセクシーで、滑稽。オンナは絶対しない踊りです』
『さ、私の身体を見てください。ウフフ、スタイルには自身があるんです。金的を心配する必要が無い、綺麗な身体でしょう?』
『貴方のために、陰毛まで処理したんですよ?ほら、私の股間、きれいな一本線しかないでしょう?貴方の股間の、その薄汚い袋はなんですか?』
『蹲っていますけれど、貴方のタマタマよりも、私の心の方がもっと痛いんですよ』
『それに、その痛みを感じられるのは最後なんですよ?オトコをもうちょっと堪能したら如何ですか?』
『それじゃ、4年前の授業の続きです。もう、優しくはしませんよ』
『ナツキちゃんのタマタマ、没収させていただきます。いいですよね?私のなので』
『ほら、見えますか?これが、これから貴方の『オトコノコ』を没収する女の股間ですよ。貴方が復讐することは不可能なんです』
『貴方の器にふさわしい、ちっちゃなタマタマ。こんなに小さいなら、無くなっても違和感が無いかもしれませんね』
『苦しんで、苦しんで、反省してくださいね。私を見下したこと、そして男に生まれただけで偉そうだったことも』
『ウフフ、来世はメスのロバですね。えいっ』


アタシが二人を見つけたのは、この時。
頭が真っ白になった。似た者姉弟ね。でも、この時、私はアイツに踊りかかってた。
恍惚の表情になっていたアイツの背中に馬乗りになって、胴着の帯で首を締め上げていた。

アイツは、もがきながら、アタシの股間に手を差し入れてきたけど……アタシにはタマ無いからさ。
結局、アイツは死ぬまでアタシの股間を弄ってた。それも、どうしようも無く哀れだったけど、自業自得ね。



―――応急処置はしたんだ。でも、ナツキは、もうタマ無しになってたよ。
もう、前みたいな元気は無いんだ。時々、ポツリポツリと話してはくれるけど……

129名無しさん:2017/10/21(土) 09:06:25 ID:rBd7hXNw0
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―――そんな。
――――――そんな、馬鹿な。

「皆伝なんで嘘っぱち。でも、あのコは、アタシを解放することには成功した。
 アタシは、駄目ね。あのコを守ることが出来なかった」

目を伏せ、ハヅキさんは続ける。

「アイツを殺したとき、警察に自首することも考えた。それでも、アタシが牢屋に入ったら、誰がナツキの面倒を見てくれるのかを考えると、それも出来なかった。
 だけれども、きっとコレも、我が身可愛さで理屈を捻り出しただけかもしれない。そんな時に、キミに会ったの」

ハヅキさんの言葉は続く。

「キミに会ったあの温泉ね、お父さんとお母さんの馴れ初めの場所でもあるんだ。
 だから、キミに会ったとき、キミがナツキを探しにきてくれたと言ったとき、運命的なものを感じた。
 アハハ、柄じゃないんだけどね。それで、キミに賭けてみることにしたんだ、勝手にね」

また、彼女の存在が薄くなっていく気がする。

「虫唾がはしるけれど、アタシにもあの女と同じ血が流れてる。アタシの中には、アイツが居る。
 もし、同じような状況になって、アタシも自分に歯止めが掛けられないと分かったら……ナツキと一緒に死ぬつもりだった」

「それでも、貴女は、踏みとどまった」
「ギリギリよ。一歩でも間違ってたら、キミもタマ無しになってた……血は、争えないのかな」
「俺は、まだ、男です。そして、それが全てだ」
「優しいんだね。でも、アタシは、自分が許せない。だから―――

聞いていられない。動かない身体を引き起こし、彼女の口を、俺の口で塞ぐ。
うおー、ちょっと思い切る方向が違うくね?でも、だってさ。

彼女は、指で俺の袋をつつく。電撃的な痛みが走り、思わず口を離す。

「もう、口説くなら、女を抱けるぐらい回復してからにしなさい。
 ―――それじゃ、歩けるようになったら、ナツキのところに案内するね」

「貴女は―――?」
「アタシは、自首しようと思うの。……今はキミが居る。キミになら、任せられる。少ないけれど、財産だってあるよ」
「だ・か・ら!!ふざけるな!!!!」

彼女を押し倒す。
俺がのしかかり、彼女が見上げるような格好。

「もし、嫌なら、今、蹴り潰してもいいんですよ」
「キミは……潰されたオトコの凄惨さを知らないんだよ」
「一生知りたくないです」

数呼吸の間、見つめあう。

「ハヅキさん、貴女はが自首しようとしているのは、自分が怖いからですね?」
「……嫌なところで鋭いコね」
「貴女は、耐えた。俺が五体満足なのが、その証拠です」
「ギリギリだったって言ったでしょ?」
「それでも、です」

視線が、絡む。

「決めました。ナツキのことも心配ですし、俺、ココに住みます。
 ただ、一つ条件があります。貴女も、ココで一緒に暮らすこと」
「えぇ!?何を勝手に―――
「先程の口ぶりだと、俺がココに住み着くことを、貴女は望んでいたんでしょう?
 ナツキが心配だから。それについては、俺も同感です。ですが……
 ナツキのことも心配ですけど、なによりも貴女のことが心配だ」
「……酷い女よ、アタシは」
「もし、我慢が出来なくなったら、俺と立ち会ってください。
 俺は、何回でも貴女を叩き伏せてみせます。そうすれば、貴女が自分を信じられないなら、俺を信じてください」
「さっきまでタマタマ押さえて唸ってたのに?」
「と・に・か・く」

再度、彼女に口付ける。今回は、邪魔は入らなかった。

130名無しさん:2017/10/21(土) 09:07:29 ID:rBd7hXNw0
夜の帳と闇の演台。
行く先は見えない、それでも。この月明かりの下をあるけば、きっと何処かに辿りつける。
無責任極まりないことは自覚している。それでも、そう、信じることにした。

131名無しさん:2017/10/21(土) 09:09:53 ID:rBd7hXNw0
以上です。
思いつくままに書くと、締めに苦労しますね。

もっと明るく馬鹿なノリのSSが読みたい……
女性の口調が丁寧だとモアベター、みたいな感じです。

132名無しさん:2017/10/21(土) 18:36:46 ID:Psl8WRmM0
GJ!文章力も高いし、自分の好みにドンピシャです!冷静に男の急所を狙う女、最高ですね。潰れちゃうのも容赦がなくていいです。あなたの書くバトルものがまた見たいです!

133名無しさん:2017/10/21(土) 20:15:50 ID:W7MRm2AQ0
最高でした
ツボを押さえた台詞、性差表現、しかも純粋に話も面白くて非の打ちどころがない
特に「急所が付いてるせいで男が女に逆らえない」というおいしい状況が物語の中で説得力をもって展開されてるのが凄く良かった
これだけの質と量を両立した作品を連続で書いてくれるとは本当にありがたい事この上ないです

134名無しさん:2017/10/22(日) 03:31:54 ID:aM0kk9eM0
すごい作者が現れたな
二人の結末が気になる

135名無しさん:2017/10/22(日) 08:24:10 ID:nN7WJN260
乙です
もう最高でした(語彙力不足)

136名無しさん:2017/11/05(日) 05:34:25 ID:QAaNXXxY0
<一日目、深夜>
Zzzzz……

「タカダ様、タカダ様、そろそろ到着します」

―――うぅん。

擦れた声を出しながら、一つ大きく伸びをする。
ガタンゴトンと車は揺れ、その揺れがまた俺の眠気を誘う。

「そろそろ起きてください」

うううぅうう。
寝ぼけ眼を擦りながら、どこにいるかを確認する。
窓ガラスはスモーク加工されており、肉眼で外の様子を伺うことは出来ない。
ケータイは没収されており、機械を持って現在地を知ることもできない。

俺の名前はタカダ リョウスケ。
職業は夢追人……実際のところは単なるフリーターだ。
今回、俺は仲間内で噂のバイト……所謂絵画モデルに紹介され、現場へと向かっているところだ。

人里離れた山奥で、芸術家志望の令嬢が絵画モデルを探している。
実働数時間で、信じられない額の報酬がもらえる。但し、そこで知ったことは他言無用。
条件は、ただ一つ。健康な男性であること。

いや、俺にうってつけだ。頭は悪いし、カネも無いけれど、身体の頑丈さだけには自信があります!

はじまりは一ヶ月前。
手持ちの金が底を尽き、病院の治験バイト(高額報酬で有名だ)に応募しようとしたら倍率が目の玉が飛び出るほど高く。
折り悪く、日払いのバイトの口も残っておらず、これでは来月を迎えられない……
一縷の望みにかけてパチンコで手持ちを増やそうとしていたところで、数年振りに再会した先輩。
不思議と羽振りのいい彼に、ワリのいいバイトの情報を請い願っているときにふと漏らした『噂のバイト』の真相。

『いや、悪くなかったぜ?バイト代もいいし、スタッフは可愛いし』
 顎の傷(先月、タイで喧嘩に巻き込まれたらしい)を摩りながら、先輩は語る。
『ま、ヌードモデルとかもやるから、人を選ぶんだろうが……俺なら、治験でモルモットになるより、コッチを選ぶね」
 ―――何か、大変なこととかは?
『ルールが凄ぇ厳しかったような記憶があるけど、普通にしている分には大したことなかったぞ?
 あ。一週間近く、世間と没交渉になっちまうが、どうせオマエは暇だろ?プー太郎だし』
 うるせぇよ!

聞けば、あの人は去年に一度経験をしていて、連絡先も知っているとのこと。
持つべきものは人生経験豊富な友人だ。年がら年中、ふらふらしている浮浪者だと思ってたことを謝罪。

噂は事実で、治験並みの給料が貰えると聞かされ、頭を下げて下げて頼み込んだのだ。
先輩も最初は渋っていたものの赤貧に喘ぐ俺を見かねたのか、いつものようにフラりと居なくなる前に、
俺とバイト先とを取り持ってくれた。

137名無しさん:2017/11/05(日) 05:34:55 ID:QAaNXXxY0
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「あちらが、お嬢様のアトリエとなります」

運転しているのは、若い女性。
連絡から丁度一ヶ月後の先日。彼女から、数枚の切符が届いた。
指示された経路は、ちょっとした小旅行のよう。日が暮れるころについた無人駅に、一台のリムジン。
リムジンだぜ、リムジン。金はあるところにはあるもんだよな。

そして、高級そうなパンツスーツに身を包んだ、こんな田舎駅にはいっそ場違いな女。
涼しげな目元、スレンダーな体型、手入れの行き届いた髪やら小物やら。
首から提げたIDと相まって、都会のオフィス街からテレポートしてきたような彼女は、アトリエからの使いと名乗った。

そこから、リムジンの後部座席で揺られること数時間。
運転席との間、それに全ての窓はスモークガラスで覆われていて、時間も場所も分からない。
曰く、雇い主は自分のことを知られるのをとても嫌がるらしい。

なので、バイト中は通信機器類は全て没収(特に、GPSとカメラ類がダメなんだそうだ)、外出は遭難に繋がりかねないのでNG、
他にも細々とした注意事項(細かいことは現地で聞けとか)はあったが、気にすることもないだろう。

重々しい音をたてて、リムジンのドアが開く。
降車した俺を待ち構えていたのは、また威圧感に満ち溢れた塀と門。
鉄条網が、まるで鉄の茨のように絡みついていて、どこか幻想的な、眠り姫でもいるような雰囲気を醸し出す。

「こちらは、過去の廃病院を買い取らせていただいたものです。訳有って、内部から外部へは隔絶されています」

あー、皆まで言わなくてもいいって。そういう病院ね。
でも、何で態々こんな所に居を構えるのか……芸術家って連中の考えることは分からんねぇ。

彼女が首からさげたカードを翳すと、門は軋りながら開いていく。
その先には、狭いながらも庭園のような作りになっており、その先にコンクリートで覆われた四角い箱が目に入る。
女が言うには、あれが『アトリエ』らしい。

連れ立っての到着。この建物も、彼女のIDカードで解錠。
半円の形をした玄関ロビーに、今は使われていないだろう受付カウンター。
そして、ロビーの正面には、無数の小さな額縁が飾られていた。



―――怖い。怖い怖い。怖い。




得体の知れない恐怖が、俺のケツから背筋を舐め上げる。

あれは、何だ?なんの変哲も無い額縁に、抽象的な幾何学模様が描かれているだけ。
それなのに、それぞれの絵の幾つかが、抗いようの無い、本能的な恐怖を煽る。

「あれは、お嬢様の作品です」

と、俺の心を呼んだかのように、彼女が話しかけてくる。
どうやら、あの絵は彼女に対して何の効果も齎さないらしい……ま、慣れているだろうからな。

「詳しい絵の説明は、本人から聞いてください。きっと喜びます」

使いの女はそれだけ語ると、先頭にたって歩き出す。
玄関ホールを抜けると、不吉な予感は霧消する……なんだったんだ、アレは。

138名無しさん:2017/11/05(日) 05:35:32 ID:QAaNXXxY0
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そのまま少し進むと、談話室に着く。乱雑に詰まれたクロッキー帳と、革張りのソファ。重厚な木材のテーブルと食器棚。
こういうコトには疎い俺でも、豪奢な調度品だということは見て取れる。本当に、金はあるとことにはあるのな。

部屋の中には、女性が一人、コーヒーを啜っていた。

「お嬢様、新しいモデルの方をお連れしました。
 ―――タカダ様、こちらの方が、貴方の今回の雇い主となる方「ヒトミだよ、宜しく」……ヒトミお嬢様となります」

ショートカットの少女。コイツが『お嬢様』か。
年の頃は18〜20ぐらいか?かなりのスタイルの持ち主だが、身体にそぐわない童顔で、年齢を推し量りにくい。
オーバーオールの上に白衣を羽織り、その上には、年季の入った複数の染み。
頭にはベレー帽(室内なのに!)、顔にはセルフレームのメガネをかけていて―――正直、幼い容姿も相まって何かのコスプレにしか見えない。
先程の作品を見て抱いていた、芸術家のイメージが音を立てて崩れていく……。

「あ、なんかボクに対して失礼なこと考えてないかい?」

その上、一人称が『ボク』と来た。うーん、作品と作者はここまで乖離するものなのかね……

「此方の方が、タカダ リョウスケ様。以前、モデルをしていただいた、ハヤカワ様からのご紹介になります」

「あー、ハヤカワ様って、この人でしょ?」

お嬢様が持ってきたのはクロッキー帳。その中には、ハヤカワ―――紹介してくれた先輩の名前だ―――の精緻な肖像画があった。
見慣れた傷跡……そう、その人の紹介で間違いない。

「再度となりますが、改めて御説明をさせていただきます。
 業務内容は、ヒトミお嬢様のデッサンのモデルと、作品制作の補助。期間は5日間で、途中退出は許可できません。
 
 また、私物の持込みも、ご遠慮頂いております。特に、GPS機能を持つものや、カメラなどを持ち込んだ場合は、
 契約に基づき懲戒の対象となりますのでご注意ください」

この説明は、最初にもされたな。

「また、現在この屋敷には私とお嬢様しかおりませんので、猥雑な行動はくれぐれもお控えください」
「大丈夫だよー。ボク、これでも護身術は一通り身に付けてるんだから。
 リョウちゃんも、ボクが魅力的だからって、エッチなことしようとしたらブッ飛ばしちゃうからね♪」

何かを蹴り上げるような素振りをしながら、ヒトミが口を挟む。
いや、それでも無用心に過ぎるだろ……アンタ結構可愛いんだからさ。

「最後の注意点ですが、ココで行ったこと、ココでのアルバイトについては、くれぐれも他言無用でお願いいたします。
 
 お帰りの際に連絡先をお渡ししますので、再度応募したくなった場合は、『御自身』で連絡をお願いしますね。
 その他、この屋敷の詳細については、ヒトミお嬢様にご確認ください」

それだけ伝えると、彼女は踵を返して、奥の扉に消えていく。
残されたのは、俺と『お嬢様』の二人だけ。

「それじゃ、改めて宜しくね、リョウちゃん。ボクのことは、ヒトミって呼んでね」

「気安いな、アンタ「ヒトミ!」……ま、こちらこそ宜しく頼むわ」

握手を交わす。
彼女の手は小さく、ヒンヤリとした女性の手だった。

139名無しさん:2017/11/05(日) 05:36:06 ID:QAaNXXxY0
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<二日目、昼前>

Zzzzz……

「リョウちゃん、リョウちゃん、そろそろ起きてよ」

―――うぅん。

擦れた声を出しながら、一つ大きく伸びをする。
ユサユサと身体が揺すられ、その揺れがまた俺の眠気を誘う。

「そろそろ起きてってば!」

うううぅうう。
寝ぼけ眼を擦りながら、どこにいるかを確認する。

そうだ、俺はバイト中なんだっけ。
今居るのは、金持ちのボンボンの典型例(女性だが)のお嬢ちゃん自慢の、山奥のアトリエ。
ここは病室を改装した客間(縁起が悪いにも程がある)で、俺を揺すってるのは当の『お嬢ちゃん』である雇い主「ヒトミだってば!」

「あ、やっと起きた……もう朝御飯できてるよ!」

うぅぅ、なんか、一昔前のゲームみたいな展開だな。
欠伸をかみ殺しながら考える。


談話室で朝食。
朝はクロワッサンとソーセージ、ゆで卵「ボイルドエッグ!!」とポテトサラダ。食後のコーヒーまでついてくる。
いや、朝食なんて何年ぶりか。何時も、夕方近くまで寝てるからなぁ……いや、美味い。美味いよ、コレ。

ヒトミは欠食児童のようにがっつく俺をニコニコしながらスケッチしている。
こんな姿を描いて、一体なにが楽しいんだか。

「いや、キミが『楽しい』ときの印象を描いているんだよ」

『楽しい』、か。いや、確かに、こんな人間らしい食事は久しぶりだし、楽しいっちゃ楽しいけどな。

「人間らしい食事って……呆れた。どんな不健康な生活してるんだい?」

いやいや、オトコの生活なんて大体こんなもんだって。

「キミの自堕落な生活態度を、男性全般に広げるのは感心出来ないよ……」

他愛ない会話を交わしながら、食事をたいらげる。
うーん、ヒゲが伸びてきたなぁ。あとで洗面所の場所を聞いておこう。と、ヒトミがキラキラした目で此方を見つめているのに気付く。
何だ?惚れたか?

「惚れはしないけど……ね?ね?そのオヒゲ、触ってみてもいい?ね、お願い」

返事を待たずに、彼女は俺の頬から顎にかけてを撫で回す。

「うわー、ジョリジョリしてるよぉ。何か、男の人って感じする」

こんなモンがそんなに珍しいかね……まぁ、普段は女しか居ないみたいだしな。
て、もしかして、髭剃りとか無かったり?

「いや、そこら辺はお風呂場にあるから。とりあえず、身奇麗にしてきてよ。
 それが終わったら、早速お仕事お願いするからさ」

りょーかい。

140名無しさん:2017/11/05(日) 05:36:44 ID:QAaNXXxY0
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朝食を終え、大浴場に向かう。
デッサンの前に身嗜みを整えろという話で、確かに一理ある。

湯船も既に用意されているとのことで、あまりの至れり尽せりっぷりに、こちらが恐縮してしまう。
鼻歌の一つも歌いながら、浴場のドアを開くと―――

「お待ちしておりました」

え?

そこには、エプロン姿の一人の女性。案内人の彼女が待ち構えていた。きゃっ。

「……気色悪いので、そのポーズは止めていただけますか?
 初心者の方では無駄毛の処理が上手くいかないので、私にて代行させて頂いているのです」

うん、成程。うん?

「それでは、タカダ様。こちらに来て、仁王立ちになってください」

うん?うん?

逆に、彼女は手馴れた様子。素早くボディソープを泡立てると、俺の身体を撫で回すかのように洗っていく。
首筋から背中、腕、ケツ、足……ちょっと、前は、前が自分で出来ますから!!
これ以上やると、俺だってアンタを丸洗いしますよ!!

「お構いなく、私は既に身支度が終わっていますので。それでは、四つん這いになっていただけますか?

俺の抗議も馬耳東風。有無を言わせず犬のような体勢にさせると、エプロンのポケットから、よく切れそうな刃物を取り出した。
―――マジかよ?!

慌てて逃げ出そうとした瞬間、彼女の手が伸びて、俺のタマ袋を握る。それだけで、俺は身動きが取れなくなる。

「危ないですので、じっとしていて下さいね?特に男性は。
 少しでも手元が狂うと、大変なことになってしまうので……女には分からないデリケートなところですから」

耳元で囁かれ、俺の動きは封じられる。

彼女は満足そうに微笑むと、剃刀で俺のチン毛からケツ毛までを丁寧に剃り落としていく。
抗議の声を上げようとしても、身じろぎしようとしても、俺の行動は全て彼女が握ったタマによって阻害されてしまう。

「動かないでといいましたよね?私やお嬢様が相手なら、少しぐらい手が滑っても、最悪切り傷ぐらいで済みますが……
 男性の場合、もし間違って傷つけたら、取り返しがつかなくなるかもしれないんですよ?

 分からないなら……ペニスは一つしかないし……そうだ!丁度、睾丸なら二つありますし、一つで実演してあげましょうか?」

冷たい剃刀の先で、俺のタマをつつかれると、心の底から震え上がってしまう。

「ウフフ、睾丸が縮みあがってしまいましたね。安心してください、冗談ですよ?
 でも、これ以上暴れると、冗談ではなくなってしまうかも」

彼女は悪戯っぽく笑うが、こちらとしては生きた心地がしない。
そのまま冷たい剃刀で俺のタマ袋の毛を剃っていくのを、祈るような、縋るような眼差しで見守る。

「はい、おしまい。次は、脇と胸板の毛を剃りますからね」

俺は既に虚脱状態。委細構わず、彼女は俺の体中の毛を剃っていく……気がついたときには、俺は完全にツルツルの赤ちゃん肌になっていた。
恨めしい視線を彼女に送ると、さすがにバツが悪そうな表情をすると思いきや、笑いを堪えているようだ。

「ゴメンなさいね…フフッ。ツルツルの子供おちんちんで凄まれても、ちょっと……」

何言ってやがるか!テメェが――――う!
彼女に詰め寄った瞬間、死角から、再度タマ袋をつかまれ、思わず腰を引く。

「もう、男でしょう?そんなに細かいことで怒らないでください。間違って、コレを落としてしまったワケでも無し。
 逆に感謝して欲しいくらいです。私の腕が悪かったら、貴方のこの『宝物』、取れちゃってたかもしれないんですよ?」

裸の急所を握られて、屈辱感と気恥ずかしさが膨らむ。相手は、普通に服をきているから尚更だ。

「それじゃ、アトリエに向かいましょうか。あ、そのままの格好で結構ですよ」

141名無しさん:2017/11/05(日) 05:37:14 ID:QAaNXXxY0
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アトリエ。ヒトミがスケッチブックをイーゼルに載せ、一人鉛筆を何本も研いでいた。
俺たちの気配を感じたのか、こちらを見やると、彼女もまた笑いを堪える。

「お、リョウちゃん。クールさに似合わない、可愛いおちんちんになったね……ブフッ」

ふざけんなよ!と怒鳴ろうとした俺の機先を制するかのように、ヒトミは続ける。

「おっと、そのまま。キミの『怒った』ときの印象、頂くね?ちょっとボクの前に来て、その剣幕のまま止まっていてくれるかい?」

何だコイツ……と考えている俺は眼中に無く、ヒトミは一心不乱にスケッチブックに何かを殴り描きしはじめる。
あまりといえばあまりな行動に、思わず俺の身体から毒気が抜ける。

「おおっと、残念。キミの身体から、怒りが抜けちゃったよ……軽い素描は出来たけれど。
 ちょっと、細部を詰めるから、その表情と体勢のまま、一時間ほど止まっていてね?」

はいはい、分かりましたよ。つまり、もう仕事ははじまってるってことなのな。
問いかけに答える声は無く、暫く響くは鉛筆の走る音と衣擦れの音。彼女の視線は忙しなく俺とスケッチブックを行き来し、
俺は間抜けな怒り面を晒し続ける……動かないというのは結構辛い。

「―――よし!とりあえず、ラフは完成、と。
 で、どうしたんだい?なにか、すごいオコだったみたいだけど?」

オコ……?あぁ、怒か。
いや、そりゃ怒だよ。このねーちゃん、問答無用で俺の全身脱毛しやがったんだぜ?
あろうことか、その。なんだ。あー。

「あ、分かった。タマタマも痛い痛いされちゃったんだね?メイちゃん、聞き分けの無い子はそうやって躾けるんだって言ってた。
 ゴメンねー、ボク達にはそれ付いてないからさ、丁度いい加減っていうのが想像できなくて」

メイちゃん「メイドのメイちゃんって覚えてよ」?この時代にメイドってか?

「うん、まぁ、実際はボクの助手なんだけど……メイドっていった方が、オトコノコ受けっていいんじゃないかなって」

いや、それはどうでもいい……というか、ヒトミ、アンタも近いな!!

「それじゃ、よく見せてよ、キミのタマタマ。

 ……何時見ても、不思議。ズボン履くときに邪魔になったりしないの?締め付けられて痛かったりとか。ほら、すっごく弱いところみたいだし。
 ボクにもメイちゃんにも付いてないし、無くて困ったことも無いからさ。謎に満ちた部分なんだ、オトコノコの証拠って。
 おー、キミのは結構大きい方なんじゃない?分かんないけど。それとも腫れちゃった?ほら、ツンツン」

息のかかる距離に顔を寄せ、ヒトミは無遠慮に俺のタマをつつく。
う。触んな、この変態娘。

「変態って……折角心配してあげてるのに。そんなコは、こうだ!」

パチン、と。
かるく指で弾かれ、思わず蹲る。痛みの分かる男なら、絶対にしない行動だ。

「いや、ボクには分からないから。……今のでもそんなに痛いんだね。軽く弾いただけなのに」

「お嬢様、男性の睾丸はとてもデリケートなんですから、手荒く扱ってはいけませんよ?
 先程のお嬢様のお言葉の通り、私達には加減が分からないのですから……何時の間にか使えなくしてしまうかもしれません」

ゾッとする声が背後から響く。
振り返ると、そこにはメイと呼ばれた女。いや、それはいい。
一糸纏わぬ姿。先程の衣擦れの音は、コイツが脱衣をする音も含まれていたのか―――じゃなくて!

「あ、お毛毛を剃ってもらったのは、キミだけじゃないよ。
 モデルになってもらう人には、皆、剃ってもらっているんだ。描くのに邪魔だから。

 丁度いいし、メイちゃんのお股を良く見せてもらったら?お風呂場での仕返しで、オンナノコをじっくり観察しちゃえ♪」

「お嬢様?あまりお戯れが過ぎるようであれば……」

「おおっとぉ?リョウちゃん、見ときなよ。ボクにはタマが無いから、お仕置きされても―――んぐっ」

142名無しさん:2017/11/05(日) 05:37:49 ID:QAaNXXxY0


ゴスッ

鈍い音とともに、メイの拳が、ヒトミの脳天にめり込む。
拳はそのまま振り下ろされ続け、ヒトミの身体は前のめりに床に沈む。躊躇も加減も無い一撃。
うわぁ、あれは痛そうだ…

「キンタマは無くとも……失礼、代わりにアタマをぶん殴らせていただきました。反省出来ましたか?」

「うぅぅううぅぅぅ……これ以上バカになったらどうしてくれんのさ……」

「ご安心ください。既にお嬢様の知能は下限です。もしかしたら、オーバーフローしてマトモになるかも」

ヒトミは涙目で頭を抑えている、と、此方を拝むような目で見上げ、早口で不平をぶち撒ける。
鬼気迫る様子で、絵を描いていたときとはまるで別人。


「リョウちゃん、見た?あの暴力女!ボクが雇い主なのに、全力でぶん殴ってきたよ?!どう思う?
 可笑しくない?可笑しくなくなくなくなくない?女の子に手を上げるなんて最低じゃない?どう思う?どう思う?」

いや、今のはアンタが悪いだろ「リョウちゃんまで!ヒドイ!」……というか、絵描いてるときと、まるで別人だな、アンタ。

「タカダ様、ご理解有難うございます……ヒトミお嬢様も、いい加減にしないともう一発いきますからね?
 ……念の為に言っておきますが、タカダ様もお戯れが過ぎるようなら、同じ目にあいますからね?場所は違いますが……」

冷たい目で俺の股間を見詰めながらの言葉に、思わずタマが縮みあがる。コワイ!!

知らず、俺とヒトミは互いに抱き合ってガタガタと震える。
若い女が睨めつける中、抱きあって震えるハダカの男と女……絵面にすると、どうしようもないな。

「ねー。なんだか、ボク達、不倫ばれしたカップルみたいだよねー。
 メイちゃんは、気性の激しさから旦那に見捨てられた古女房役ね。うわー、コワいくらいにピッt『ズドン』……なんでもないです」

メイが床を踏みならすと、空気が震える。
いや、今のは俺関係ないっスよね?そんな、ゴミを見るような目で見詰めないで欲しいっス……

「うぅ、メイちゃんがこれ以上ぷんぷん丸「センスが古いな」ほっといてよ!、になる前に、早速はじめちゃおっか?
 それじゃ、メイちゃんはそこで囚われた姫のポーズ。リョウちゃんは、ここをこうして―――

ヒトミの指示に従い、俺たちは生きたデッサン人形になっていく。
メイは、流石のプロ。一度、役に入ると身じろぎもしない。ヒトミの指示とは言え。俺は彼女の腰や肩に手を回すたびにドギマギしているのに。

「次は……あ、リョウちゃん!さっきとおちんちんの形が変わってるよ?仕事中くらいは我慢できないの?!」

無茶を言うなよ……今、俺はメイの股間に頭を押し付けるように縋り付くポーズなんだぜ。
ヒトミはご立腹のようだが、生理的なものは仕方ありませーん。

「そんなのボクには分かりませ-ん。早く小さくしないと、お仕置きだからね?!」

彼女は俺の傍らに来て、ムスコを弄繰り回す。
ヒトミなりに、なんとか小さくしようと考えているみたいだが、そもそも『無い』彼女の行為は逆効果だ。

「むむ、ちょっと、コレどうやったら小さくなるの?」

ムスコを摩り、タマを撫で……お、お、ちょっと、やめ、ヤバイって!

警告の声を上げる暇も無く、俺の暴れん棒から射出された精液が、彼女の顔を汚す。
エロいな……じゃなくて、ゴメン!ゴメンなさい!申し訳有りません!!

恐る恐る彼女の顔を伺うも、笑顔。
ただ、ケツの穴がキュッとなるような種類の笑顔だ……理不尽じゃない?

「リョウちゃーん…………サイッテー」

次の瞬間、俺の股間で恒星が爆発したかのような衝撃が走り、激痛が閃光となって視界と意識を洗い流した―――

『ちょっと、ヒトミ?!まだ―――
『うわ、リョウちゃん大丈夫?!やりすぎち―――

一光年先の世界で、彼女達の声が朧に響いていた、気がする。

143名無しさん:2017/11/05(日) 05:38:39 ID:QAaNXXxY0
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<三日目、早朝>

鳥の声と共に、目を覚ます。

昨日、目が覚めたのは夕刻。顔を床で摩り下ろすように頭を下げるヒトミを見ていると、怒りも萎える。
仕事の続きは難しいということで、そのまま夕食。手持ち無沙汰もあり、通常では考えられない時間に床についた結果がコレ。

気持ちのいい朝だ……我ながら、あっという間に健康的な生活に順応しちまったな。
自分の単純さに半ば呆れながらも、風呂場に向かう。

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「あら、お早う御座います、タカダ様。本日はお早いですね」

そこに居たのはメイ。ほぼ昨日と同じ状況だが、違うのは、今日は彼女も生まれたままの姿というところか。
って、うわっスンマセン!!直ぐ出て行きますんで!!

「いえ、お気遣いなく。私の身体なんて、昨日さんざんご覧になられたでしょう?
 それよりも、一緒に身支度を整えたほうが効率的です」

彼女の手には昨日と異なり安全剃刀。曰く、一度剃った後は、コレの方が楽とのこと。
どうやら、それで自身の体毛を処理していたらしい。

「私も、見えないところの体毛を処理するのは難儀しますので……お互いに剃りあうことにしませんか?」

えぇぇ…まぁ、いいですけど。
大量の湯気と湿気に当てられたのか、高い温度に血迷ったのか。俺の口は思わぬ言葉を紡いでしまう。

「それでは、まずはタカダ様の方から処理しますね?
 今回は、陰嚢を躾けずとも、大人しくしていただけるとよいのですが」

はいはい、もう二度とゴメンです。
彼女の言葉に逆らわず四つん這いになると、またタマ袋を握りこまれる。ちょっと!話が違いませんか?!

「いえ、陰嚢の毛を剃るなら、この方が安全なので。痛かったら教えてくださいね?
 男の方のタマは、時々、よく分からない傷み方をするみたいで……変に我慢すると、潰しちゃうかもしれませんよ?」

待って。待ってください。

「ウフフ、冗談です。それでは、処理をしていきますね」

ヒンヤリとした女性の手と、ヒヤリとさせる剃刀の刃。
彼女は手馴れた様子で、昨日と同じように俺の体毛を剃っていく。俺は、昨日と同じように古今東西の神に、俺のオトコの無事を請い願う。

「さて、と。それでは、次は私が四つん這いになりますので、背中とお尻から前にかけての処理をお願いします」

俺の処置が終わるや否や、メイは手を床に着き、腰を大きく持ち上げる。
彼女の女性自身が眼前に迫り、思わず凝視してしまうが、誰が俺を責められよう。

毎日処理してるであろう彼女のソレはほぼ無毛で、綺麗なソコは自身が女性であることを全力で主張しているかのようで。
やわやわと肉を掻き分け、彼女の体毛を捜すたびに、色っぽい声がその口から零れる。

お、黒子みっけ。あ、ケツに一本剃り残しの毛がある……剃っとこっと。
うわ、だんだん穴が濡れてきてる……おや?クリトリスも少し大きくなってきてるじゃ―――

―――タカダ様。実況をやめますか?それとも、オトコをやめますか?」

ヒッ!
見ると、メイの額には青筋が。これはマジだな……お口チャックするので勘弁してください!!

144名無しさん:2017/11/05(日) 05:39:12 ID:QAaNXXxY0

「そこまでとは言いませんが……仕事なのですから、厳粛に」

真面目だなぁ……だったら、それこそ、脱毛剤?みたいなものを使えばいいのに。
それか、思い切って永久脱毛するとかさ。

「一度、脱毛クリームを試してみたこともあるんですが、どうにも肌に合わなくて……
 あの時は、痒いやら痛いやらで大変でした。それ以降は、ちょっと不便ですが、確実に剃ることにしているんです。

 永久脱毛は―――そんなことしたら、今後温泉とか行けなくなるじゃないですか」

いや、そうでは無くて。刃物を持った知らないオトコに、その、局部を晒すってことに抵抗は?

「そりゃ、少しはありますけど……男の方みたいに即効で動けなくなる弱点はないですからね。
 ほら、私のソコにはタマ付いてないでしょう?男性は、タマ握られるだけで動けなくなっちゃうみたいですけど。
 変なコトをされたら、死ぬ前にその方の金的を道連れにする覚悟です」

物騒な覚悟だな!オトコのソコは大切に扱ってくださいね!

「男の方には大切かもしれませんが、私には関係無くないですか?うーん、睾丸の大変さって、理解は出来ますけれど、共感は全然出来ないんですよね。
 なまじ、付いてないものですから。何で無くなるだけであんなに悲しむのでしょう?私だったら、無くなっても全然平気な気がするんですけど……
 エッチなことが出来なくなるだけじゃないんですか?」

それでも、です!ハイ、終わり!!
風呂場でハダカの男女が一組。お互い無毛で向き合うと、どちらからともなく笑ってしまう。
と、彼女は極自然な動作で俺のムスコに片手を伸ばし、もう片方の手で俺の右手を乳房に導く。え?アレ?

「それじゃ、一回抜いておきましょうか?昨日は、このコきかん坊で苦労したみたいですし」

小悪魔じみた笑顔で、彼女は俺のモノを扱く。
乳房は指に吸い付くようで、俺は右手を離せない。

「なーんて。さっきからアソコを弄られて、私も我慢が出来なくなってしまいました。お嫌ですか?」

微笑みに対して、口付けで返す。
左手を、彼女の股間に差し込むと、そこは熱と蜜に満ちていた。





―――あの時、彼女の言葉に気付けなかったことを、俺は死ぬほど後悔することになる。

145名無しさん:2017/11/05(日) 05:39:48 ID:QAaNXXxY0
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アトリエ。ヒトミがスケッチブックをイーゼルに載せ、一人鉛筆を何本も研いでいた。
デジャヴュ。いやこの言葉であってたっけ?まるで、昨日にタイムスリップしたような感覚を覚え、思わず股間を抑える。

「もう!昨日、散々謝ったでしょ!今日はあんなことしないってば!
 ……アレ?今日は、なんか嬉しそうだね?なにかイイコトあったの?まぁいいや、とりあえずその表情キープしてよ」

目聡い…ヒトミは俺の表情の微妙な変化を捉えると、それをスケッチブックに落としていく。
本当に、絵を描いているときだけは美人なんだけどな。

「ム。またボクをバカにしたでしょ?……よし、それじゃ、キミの『喜び』の印象、頂きました!」

既に、俺もメイも全裸。だけれども、先日の轍は踏まない……といか、踏めないほど楽しんでいたり。

「アレ?メイちゃんもツヤツヤしてるような?」

気にするなって。今日の俺は機嫌がいいから、どんなポーズだってやってやるぞ?
ニヤケ面を引き締め、メイの表情を盗み見る。彼女は変わらずに仏頂面だが、頬に僅かに朱が挿しているように見えるのは
果たして欲目か現実か。

結果として、想定以上に早く本日のノルマを消化。ヒトミの作品についての論を拝聴することになる。

「いや、今日はスムーズだったねー。リョウちゃんも、出来るなら最初からやってくれればいいのに」

お子様には分からないかも知れないけど、色々あるんだよ、オトコには。なぁ、メイ?

「私は女なので、同意を求められても困ります」

「えー、何か、二人仲良くなってない?何かあったの?ねぇ?ねぇ?」

「何もありません!」

二人のやりとりも微笑ましい。と、そうだ。
ヒトミ、アンタのスケッチ、俺にも見せてくれないか?

「いーよー。ほい。これが、今日の分」

彼女から受け取ったスケッチブックには、俺とメイのシルエット。
かなり線が少ない印象なのに、俺とメイだと判別できるのは、彼女の腕前によるものか。

「で、コレが昨日のヤツね?まだ作りかけなんだけど……」

ヒトミが持ち込んだのはカンバス。そこにあったのは、玄関で見たような抽象画。
雰囲気の問題か、初日のような不気味な、危険な印象は微塵も受けない。

「そりゃそーだよ。コレね、リョウちゃんの『楽しみ』の印象だけを、抽出しようとしてるんだもん」

どういうことだ?

「いや、まだ未熟なんだけどね?ボクは、『感情』を、こう、何ていうのか、気恥ずかしいな。
 こう、『感情』が好きで、それをね?なんとか、カンバスに落とし込むのが夢なんだ」

そういえば、毎日そんなこと言ってたな。XXの印象を頂くとか何とか。

「お嬢様の絵画論は意味不明ですが、作品は好きですよ」

と、メイが口を挟む。ヒトミの顔が紅くなるが、それについては俺も同感だ。

それから俺たちは、ヒトミの頭っから湯気が出るまで彼女を褒めちぎったところ、逆上した彼女にアトリエから追い出される羽目になった。
やれやれ。メイと顔を見合わせ、どちらからとも無く笑う。

初日はどうなることかと思ったが、悪くない。悪くはないというのが、ココまでの俺の印象だった。
今にして思えば、何故、俺は自分の印象を信じてしまったのだろうな。

146名無しさん:2017/11/05(日) 05:40:25 ID:QAaNXXxY0
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夕食を食べて、夜。
自室で物思いに耽っていると、控えめなノックの音が響く。

「リョウちゃん、起きてる?」

招き入れたのは、ヒトミ。
薄い肌着のような寝巻きを身に着けた彼女は、日中と違ってとても儚く見えた。

「リョウちゃん、今日のデッサン中におちんちん小さいままだったじゃない?
 昨日のアレで、大変なことになっちゃったんじゃないかって、心配になってさ……だって、タマってとっても柔らかいんだもの。
 それで、ね。確認しようと思って来たの」

おいおい、もうソレは散々謝ってもらったし、もういいよ。
アトリエでもその話をしただろ?

「それでも!」

彼女は詰め寄ると、豊満な胸に俺の頭を掻き抱いた。
何コレ?モテ期到来ってヤツ?混乱する俺に構わず、ムスコは硬度を増していく……オマエは本当に自由だよな。

「あ、硬くなった。よかったぁ」

頭上から、安堵の声が響く。見れば、彼女の片手は俺の股間に差し込まれている。
硬い下着の感触と、柔らかい乳房の感触。相反するそれを感じ、俺のモノはもう、天を突かんばかり。
いや、今日はエロくていい日だ!

今朝のことを思い出し、今の感触を堪能していると、ヒトミは俺の顔を持ち上げ、覗き込む。

「リョウちゃん……今、ボクじゃない、別の女のこと考えてなかった?」

げ。鋭い……というか、エスパーか何か?
いや、今なら分かる。彼女は、人の『感情』に、とても敏感なのだと。

「以前の彼女さん?今付き合ってる人が居るの?それとも……メイちゃん?―――そっか」

彼女に瞳を覗き込まれ、詰問されていく。
以前、メイが寝取られた女房役といっていたが、どうやら、ヒトミこそがそれに相応しいみたいだ。言わないけど。
というか、何で、俺が浮気したみたいになってるんですかねぇ。

「ボクだって、メイちゃんほど美人じゃないけど、おっぱいだけは負けてないんだから」

おもむろに、服を肌蹴ると、質量の暴力のような胸が露になる。
彼女は、そのまま胸を差し出し、暗に下着を外すことを要求してきて―――俺は、それに応じた。

「メイは、いいのか?」
「あのコは、明日の準備をしてもらってるから……邪魔は入らないよ?というか、また別の女―――

吸い尽くすような接吻で、彼女の言葉を遮る。
互いに技量も前戯もなにもなく、ただ、本能での我武者羅な愛撫。
互いに獣のように、相手の肢体を貪りあう。

ヒトミは、執拗に俺のタマを愛撫し、彼女の股間を足に、手に、擦り付けてくる。

「リョウちゃんの『オトコノコ』、無事でよかったね」

そんなにソレが好きか。

「キミの『オトコノコ』の部分、これが壊れちゃったら、身体の他が無傷でも、もう『オトコノコ』としてダメになっちゃうの。
 ボク達と、オトコノコの唯一つ違うところ。これがあるから、おヒゲだって生えるし、おちんちんだって大きくなるんだよ。
 あぁ、もっと、ボクにオトコノコを感じさせて!!」

掻き抱き、差し挿れる。
往復のたびに彼女は喘ぎ、俺の俺はますます硬度を増していく。そして。

-------

ピロートークもおろそかに、睡魔が俺の瞼を下ろす。

『エヘヘ、これで、十分、オトコノコを満喫できたよね?』

眠りに落ちる前に、そんな声が聞こえた、気が、した。

147名無しさん:2017/11/05(日) 05:40:59 ID:QAaNXXxY0
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<四日目、日中>


アトリエから、家具が全て無くなっている。これが、ヒトミの言う準備だろうか?
メイとヒトミの雰囲気は何時も通りに見えるが、何処か高揚した空気が肌を刺す。

部屋には、二人の女と一つの飾り箱。
前日までと異なり、二人とも全裸だ。見慣れたとはいえ、メイの手入れされた瑞々しい裸体も、ヒトミの自然のままの若々しい裸体も、共に俺の劣情を煽る。
飾り箱の蓋には、いつもの抽象画……これも、昨日のものとは異なり、玄関に飾られていた作品と同じく、凶々しい、背筋に氷柱を差し込まれたような感覚を与えてくる。

相反する感覚に、脳味噌が混乱して言葉が出てこない。

「さて、リョウちゃん。一日早いけど、今日は最後!リョウちゃんの、『哀しみ』の感情を頂こうと思います。
 ワー。ドンドンパフパフ〜〜☆」

ヒトミは、何時にもましてテンションが高い。メイも、何処と無く呼吸を荒げているような。
それにしても、哀しみ?これこそ、どうやって表現すればいいんだ?

「タカダ様は何も心配することはありませんよ?男性の『最大の哀しみ』、引き出す術は十全に心得ております」

冷静なメイの声に、興奮が滲む。彼女等の雰囲気は、まるで、肉食獣のようで。
俺の心の深い部分から、静かな、とても静かだがハッキリとした警告音が鳴り響いてくる。

「ルールを守ったコからは、『哀しみ』の印象は貰わないようにしてるんだ。ボク達には分からないけれど、それでも可哀想だから。
 そういういいコは、バイト代もらって、ゲームクリアー♪って感じ。よく、再挑戦の連絡もくるんだよ?
 でも、でも、ね。リョウちゃんは2回もルールを破っちゃったでしょ?」

ルール?何のことだ?
肌を刺す危機感に突き動かされながら、問いを返す。

「『猥雑な行動はくれぐれもお控えください』……警告、しましたよね?」

メイから返答。猥雑……あれはアンタ等から誘ってきたんじゃねぇか?!
あ、アレ?これって、アタシと彼女のどっちを選ぶの的な修羅場か何か………いや、何かですか?

「いやー、ボク達も、あんな単純な誘いに乗ってくるとは思わなかったんだけどさ。お陰で一日余っちゃったし。
 それでも、ルールはルールだから。一回違反するごとに―――

―――睾丸を、一つ頂くことにしています」

身勝手な。あまりに身勝手な言葉に、二の句が継げない。

「簡単に誘惑に負けちゃって、ルール違反するオトコノコって危険でしょ?だから、実社会で間違いを犯す前に」

「男性を放棄してもらう、ということです」

ふざ、ふざけんなよ?!そもそも、そんなルールは聞かされていないし「言ってないもの」なら、無効だろ!?

「リョウちゃんはそんな細かいコト気にしなくてもいいよ。『取られちゃった』哀しみだけ、全身で表現してね☆
 そもそも、キミの先輩―――ケンちゃん「ハヤカワ様のことです」が、最大のタブーを犯して、ココのこと言いふらしちゃった時点で」

「あの人に紹介された方々には、高難度に挑戦してもらおうと決めていましたので」

「あ、ケンちゃんにはもう強制参加してもらったよ?証拠もあるんだ。メイちゃん?」

メイが飾り箱を開けると、小瓶を取り出す。その中には、液体に浸かった小さな何かが入っていて―――

「こちら、ハヤカワ様の男性器となります。ご覧になりますか?」

「で、蓋に描いたのが、ケンちゃんが『取られちゃった』ときの『哀しみ』だよ☆
 凄いよねー、こればっかりは、『元から無い』ボク達には全然想像出来ない。無いほうがいいんじゃない?とか思っちゃうのに」

弾かれたように駆け出し、ドアに取り付くも開かない。
その姿を、哀れむような眼差しで見ていた彼女等から、またも言葉が投げつけられる。

148名無しさん:2017/11/05(日) 05:41:34 ID:QAaNXXxY0

「無駄だよ?その扉は、このカードが無いと開かない」

「逆に言えば、私達からこのIDを奪うことが出来れば、貴方様のオトコは奪われない、ということです」

言われて見やると、確かに彼女達の首からはそれぞれ赤と青のIDカードが下げられている。
そうか、コイツ等をぶっ飛ばせば、それで何も問題無いということか。
二人とは言え、相手は女性。喧嘩の経験が無い俺でも何とかなると安心し、動悸が少しおさまっていく。

相手は二人。一人ずつ処理できれば、それに越したことは無いが……
彼女等を睨めつけつつ、円を書くように移動、間合いを詰めていくが、彼女達はこちらを見やるのみ。

密集されると、手が出せない。
アトリエを片付けたのも、想定外の武器を使わせないためか、と、今更ながら合点がいく。


睨みあうこと、数呼吸。
無造作に、ヒトミがこちらに歩を進めてきた。

「もー、リョウちゃんってば、一対二だと怖いの?それでも男?金玉ついてるのかい?
 ……ということで、優しいボクが、一対一で遊んであげるね?金玉取られちゃう覚悟はできた?」

返事はしない。
無思慮に俺の間合いに踏み込んできた瞬間、腰を後ろに引く―――と。
一瞬前までタマがあった場所に、ヒトミの足が飛んできていた。

「アレ?勘がい―――

―――当たり前だろ!あれだけ言ってりゃ、アホな俺だって、どこ狙ってるのか分かるわ!
そのまま彼女の足を掴んで、引き寄せる。ヒトミは逆らわず、片足で俺の側まで近寄ると、そのまま手をタマ袋に伸ばしてくる。だから、甘いって!

ヒトミの足を解放すると、彼女の手首を掴む。そのまま、彼女の顔面に頭をぶつけ、顔を覆うのに合わせてボディに一撃。
喧嘩の仕方もしらない俺の一撃は、我ながら不恰好。力の込め方だって分からないが、それでもダメージはある筈。

間髪居れずに、彼女の首からカードを奪い取ろうとした瞬間、ヒトミは尻餅をつくように床に沈んで―――
弾けるような痛みが、俺の急所で炸裂した。殴られた、理解したのはその後。

一撃。何度も殴ったヒトミの、ただ一発の反撃で、俺は床を舐めることを強いられる。

「護身術ってさ。基本的に、変態の隙をついて、金的を狙うものだけど……金的が無い変態、金的を狙ってくる変態には
 一体どうすればいいんだろうね?金的を狙われちゃった、金的を打たれちゃったリョウちゃんはどう思う?」

はるか天上から、酷薄な声が響く。
たった一発。それまでは、完全に俺が優勢だったハズなのに、たった一撃で形勢が逆転する。

「雄性は辛いねー。なんて、ちょっとした駄洒落だけど……聞こえてないかな?
 どうする?諦めるには、ちーっとばかり早いんじゃないかな?」

俺の、オトコの苦痛を全く理解していない声。
床でのた打ち回りながらも、良くない頭をフル回転させる。痛みが引くまで、いや、痛みが小康状態になるまででもいい。
曲がりなりにも動けるようになっても、それでも床でもがき続ける。
そう、彼女に理解できないのであれば―――

「ありゃりゃ……やっぱ、自分に無いところだから、加減が難しいなぁ。もっと楽しめると思ったのに。
 ホラ、リョウちゃん?苦しんでる顔をもっと見せてよ」

149名無しさん:2017/11/05(日) 05:42:08 ID:QAaNXXxY0
―――かかった!!
彼女が俺を覗き込んできた瞬間。身体を捻り、渾身のヒジを彼女の側頭部に入れる。
力が入らないながらも、そこだって人体急所の一つだ……と聞いたことがある。

小さな悲鳴を上げたヒトミの首から、IDカードを毟り取る。
追撃をいれたいところだが、先程の一撃で、オトコの脆さを思い知った上でだと、そこまでのリスクは取れない―――

手早く、悶絶するヒトミから距離をとり、立ち上がると。



ゴスッ!!



一瞬、身体が浮いた。そして、途轍もなく悪い予感。
数呼吸後、とてつもない苦しみに覆われるという確信。それはすぐに現実へと変わった。


「私を除け者にして、そこまで盛り上がられると、正直嫉妬してしまいます。
 ホラ、今回は跳ね回ってください?ウフフ、とっても可愛い」

身も世も無く、股間を押さえて跳ね回る。
俺の後ろに、音も無く忍び寄っていたメイに、金的を蹴り上げられたのだ。

「ヒトミお嬢様も、何時までも悶えていないで、シャキっとしてくださいよ。そこまで手酷くやられたわけでもないでしょう?」

「うぅぅう……いったーい。リョウちゃんってば、酷いや!」

ヒトミは首を振ると、頭を抑えて立ち上がる。
同じ急所のハズなのに、俺は無力化されていて、彼女は既に回復している。その差が、絶望的な感覚を刻み込んでくる。

「酷いというのは、今の彼のような状態を指すのです。ほら、あのユーモラスな様を見てください」

「うわ、ぴょんぴょんしてるね。一体、どんな感じなんだろう?痛みでぴょんぴょんするっていうのも、全然理解出来ない……」

「生まれたときから金的がついていない私達では、きっと一生理解出来ませんよ。
 もしかしたら、これだって演技かも……ほら、ヒトミお嬢様?」

メイは俺の背後に回ると、俺を羽交い絞めにする。抵抗しようとしても、身体に力が入らない。

「あ、そっかぁ。危ない危ない、さっきもそれで騙されたんだったよ。金玉だって、全然腫れてる様にも見えないし……
 ほら、お返し!」

ドスッ

慈悲の無い一撃が、重なり合った俺とメイの股間に叩き込まれる。
俺は絶叫するが、背後の女性は涼しい声だ。俺の股間が壁になって直撃は免れているとはいえ、
男であれば、それだけで腰を引くような一撃なのに。

150名無しさん:2017/11/05(日) 05:42:44 ID:QAaNXXxY0

「全然ダメです。私は、ほとんど痛くありませんよ?お嬢様の蹴りに、腰が入っていないのでは?
 タカダ様も。オトコノコなんですから、もっと頑張りましょう?」

「えーいっ!とりゃ!こなくそっ!」

ドスッ!ドスッ!ドスッ!


痛みを知らないからこその、躊躇いの無い連撃。
後ろで俺を支える女も、俺のタマを蹴り上げる女も、この痛みを一生味わうことがない。
この場で、タマの痛みが分かるのは自分だけ……絶望とともに、足から力が抜けていく。

「おぉっと。コレは効いたかい?『無い』ボク達には実感できないけど……」

「私は全然効いた気がしないのですが「だって、メイちゃんにも『無い』じゃない」ウフフ、そうでした。
 タカダ様も、おっしゃってくれればいいのに」

うつ伏せに倒れた俺に覆いかぶさるように、メイが嗤う。
昨日は天女に見えたが、今日は彼女が悪鬼羅刹よりも恐ろしい。

彼女は、体勢を入れ替えると、両脚で俺の頭を抱え込み、その股間に顔を擦り付けさせる。
ヒトミはしゃがみこんだのか、俺の急所を両手で包み込む。初日と同じ、小さく、ヒンヤリとした女性の手だった。


「それでは、タカダ様。失礼ですが、私のソレ、舐めていただけますか?
 どうせ、これから下は使えなくなるのですから、せめて、舌でオンナを悦ばせる術を学んでくださいね」

「真面目にやらなかったら、オマエのムスコのイノチは無いぞー、なんちって」

選択の余地は無く。遮二無二彼女の性器を舐める。
舌の動きにあわせ、彼女は絡めた両脚を緩め、締め付け、こちらに反応を返してくる。

「逆らえなくなることを、『金玉を握られる』っていうけどさー、まさにそんな感じだね。ボク達にはピンとこないけど。
 こんな小さな、ゆで卵よりも小さなタマを握られてるだけなのに、何でそうなっちゃうの?」

「不思議、ん、ですよね。そんなに大切なところなのに、性交をするときに、ん、しゃぶらせようとする方もいるとか。
 『ついてない』オンナはいいですけど、う、『ついてる』オトコの方は、あん、怖くないんでしょうか?」

「どうなんだろーねー。その流れで行くと、金玉が痛くて、金玉が守れないっていうのも、ちょっと間抜けだよね。
 それともー、本当は気持ち良かったりなんかして。だから、潰されたがってるんじゃない?うりうり」

「あはん、どうなんでしょうね?あ、イイ。リョウスケさん、ソコ!ソコです。そこ、私の、ソコをなぞるように、あぁん!
 ……昨日の、独り善がりな性交よりも、ああ、全然上手じゃないですかぁ!!」

好き勝手な言葉を交わしてくれるが、こちらはもう必死だ。
吸い付くように舐めまわしていると、首をもぎ取るように両脚が締め付けられる……メイが絶頂を迎えたようだ。
俺も、既に半死半生で疲労困憊。ようやく一息つけると安堵すると―――

「次はボクだよ?あ、安心して。ボクがイったら、楽にしてあげるからね?」

メイとヒトミは場所を入れ替え、今度はヒトミの股間を擦り付けられる。ジョリジョリとした感触。
諦観と無力感に後押しされ、俺は再度舌を伸ばす。

151名無しさん:2017/11/05(日) 05:43:18 ID:QAaNXXxY0

「あぁぁ、イイ。ホント、昨日の下手糞なセックスが嘘みたい……
 ホラホラ、ちゃーんと気合を入れないと、タマキン痛い痛いでちゅよー。でも、ボクがイったらタマキン無くなっちゃいまちゅよー。
 ほら、どうするの?ねぇ?ねぇ?」

ヒトミとは違い、メイは絶えず俺の急所に力を加え苛んでくる。
酸素を求めるかのように喘ぎ、悶え、呻くが、ヒトミとその女性器はそれを許さない。

「あぁぁん、全身全霊で、キミがボクを求めてきているのを感じるよぅ!!
 ボクがイったら、ん、『オトコノコ』が摘み取られちゃうのに!!苦しみの分からないボク達には、最初から『無い』ボク達には、
 同情しかしてあげることができない苦しみ、う、なのに!!他人事の、あん、同情なのに!最初から『無い』、ああ、ボクのアソコを一生懸命に舐めてるぅ!!
 ほらほら、もっと舐めてよぅ!コレが、オンナノコの、タマタマがついてない、一生潰されないオンナノコなんだよぉ!!
 
 あぁ、愛しいよぅ、可愛いよぅ、あん、儚いよぅ!!」

「ウフ、大丈夫ですよ、リョウスケさん。まだ、まだ、かろうじて潰れてはいませんよ?ほら、コリコリしているの自分でも分かりますか?
 潰れたら、このコリコリも無くなっちゃうんですよ……ウフフフ、た・の・し・み♪」

メイは、手首の付け根と床で挟み込むかのように、俺のタマを持ち替える。
ヒトミは、自身の語りで興奮したのか、股間に押し付ける腕と脚に、尋常では無い力を加えだす。

「楽しみだよぅ、あぁ、一昨日壊しちゃわなくて、う、ホントーに良かったよぉ!思わず、全力でヤッちゃったから、あん、心配だったけどぉ!!
 早く、ああ、早く、キミの、哀しみの顔が、オトコノコ最後の顔が見た、ん、見たいよぉ!きっと、とっても可愛いんだろうなぁ!ぁん!
 あんなに好き勝手、あは、やってたおちんちんも、もう、使えなくなっちゃう、ううぅ、けど、キミは、舌の方が上手だから、安心してもいいよぉ!
 キミの、キミの最後の表情も、ちゃーんと、おぅ、ちゃーんと、作品にして、玄関に飾ってあげるから!キミのオトコノコは、永遠になるんだからぁ!!
 ボク、18年間、タマ無しで生き、あん、生きてきてるんだから、あ、分からないことがあったら、あは、なんでも聞いていいからねぇ!

 あ!あ、あ、そろそろ、そろそろ、あ、リョウちゃん、オトコノコに、あ、お別れを、あ、もう、もう、ダメ……ダ…あぁぁあぁぁああぁぁッ!!」










グシャッ
 


何か、決定的な一線が切れたと、本能的に悟る。顔にかかる、暖かな飛沫の感覚と共に、俺の意識はブラックアウトした。

152名無しさん:2017/11/05(日) 05:43:57 ID:QAaNXXxY0
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<5日目、日中:メイ視点>

あぁ、今日もいい天気です。

お嬢様は、昨日、オトコノコを卒業された方のお見舞いに。
彼女が言うには、『オトコノコ』じゃなくなったということを実感させると、それはもう、いい表情をするとのことですが、
私には正直分かりません。

どこかで育て方を間違えたのでしょうか……あのサディスティック振りには、空恐ろしいものを感じます。

私?私は正常ですよ。
ただ単に、潰れちゃう瞬間の感触が好きなだけ。無くなった後の方には、微塵も興味が湧きません。

おっと、閑話休題。

応募者のリストを開き、次の犠牲者……もとい!モデルの方を物色します。

横の友人関係が無く、居なくなっても分からない方。
日雇いなどで食いつないでいて、定期的な社会参画をされていない方。

なんだかんだで、丁度いい方を見繕うのに、これでも苦労しているんです。ヒトミお嬢様は分かってくれないですが。

さて、と。
この方なんで、条件にピッタリじゃないでしょうか?
今度は、若い方のを摘み取ってみたいですし……ジュルリ、って、いや、違います。きっと、お嬢様の良い経験になることでしょう。

電話を取り上げ、発信音を聞く。

ウフフ。きっと、明日もいい天気になることでしょう。

153名無しさん:2017/11/05(日) 05:45:52 ID:QAaNXXxY0
以上です。

>>132のバトルものというのがリクエストかと勝手に思って書いてみましたが、
やっぱ難しいですね。

導入は長いのに、バトルはあっという間に終わってしまう……
でも、一発で大勢が決まらないと、金的っぽくないというジレンマ。

154名無しさん:2017/11/06(月) 02:58:59 ID:d1rxyU8s0
今回もよかった
性差に対する意識とか女に欲情してしまう男とか倒錯的な部分に肉薄してるのがすごいし、バトル描写も丁寧で金的のえげつなさにリアリティがある

あと女性が睾丸を蹴って欲情するという所にすごく拘りというか嗜好を持ってるように感じるので、個人的にはその辺りを爆発させたSSなんかを読んでみたい
女が男の股間を蹴りたいという欲求を当たり前に持ってて、実際そういう事件が性犯罪として日常的に起こる世界とか

155名無しさん:2017/11/07(火) 19:32:03 ID:8Xm1FUSg0
導入がしっかりあって、文章力もあるからいつ金的がせめられるのかワクワクしながら読めるのがすごい。
効率よく男に勝つためだけに大事な金的を狙う女の子最高!

156名無しさん:2017/11/21(火) 23:27:45 ID:.UYyDnrw0




ここは閉じた鳥籠で。朽ちて果てていることに気付かれない獄舎。
これは、獄舎が崩れ落ちる、ほんの少し前に起きた、ほんの些細な出来事の一つ。

157名無しさん:2017/11/21(火) 23:28:29 ID:.UYyDnrw0
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窓の外から、西日が差し込む。
カラスの声。夕食だろうか、漂うカレーの芳醇な香り。ロードワークをしている子達の掛け声。

対して、アタシは。
この忌まわしい場所で、全裸に吊るされた子と、一人対峙している。
沈み行く太陽によって分けられた光と影が、まるで咎人達とそれ以外の世界も分割しているようで。

日が沈み、人工的な灯で照らされた頃合で、吊るされていた男が瞼を開いた。

「こんな所で会うなんて、思ってなかったなぁ」

ここは、外でオイタをした子達の矯正施設。
アタシと彼がいるのは、その中でも曰くつきの、『特別訓練室』と呼ばれる部屋。
ここで起きたことは、全て事故として扱われるという不文律が出来たのが先か、それとも
この部屋で『作業』……私刑と変わりない……が行われるようになったのが先か。

アタシは、彼を前にして呟く。
このコ、昔から聞かん坊で、我儘ばっかり言っていたから、心配していたのだけれど。

「カズ君、アタシのこと覚えてる?中学の頃以来だから、もう忘れちゃったのかな?」

努めて優しげに、親しげに声をかける。
アタシの中では、彼は中学時代の、ちょっと粋がったオコサマのまま……あんな事件を起こしたなんて、今でも信じられはしないけれど。
それでも、事実、彼は殺人の咎で、この吹き溜まりに送り込まれてきてしまった。

あらましは単純。
帰宅途中の男女三人が、複数の若者によって襲撃された。
一人が振るった鈍器が、当たりどころ悪く、被害者の男性一人を昏睡状態にまで陥らせてしまった。そして。
一人の女性は顔に一生残る傷を負い、そして何度も犯されたことで精神に深い傷を負ってしまった。
一人の男性は、全身打撲に片腕と片足を折る程度で済んだのだけれども、それが運良くと形容されてしまうような、凄惨な事件。

被害者の証言から、昏睡した被害者と襲撃者は顔見知りのようだと判明して。
芋蔓式に、彼のいたグループが検挙され……その中でも特に悪質とされた三人が、ココで矯正される運びとなった。

経緯は、コレだけ。

彼等は、遊ぶ金が欲しかった。誰でもよかったと供述していたと聞いているけれど、そんなのは嘘っぱち。
だって、被害者は第三者でもなんでもない。このコの姉の、恋人でもあったのだから。

なんで、という感情と、やっぱり、という理性が鬩ぎあう。
このコは昔から、姉のアオイにべったり。口さがない人は、シスコンだの何だのと揶揄していたけれど。
彼の父親が夭逝し、母親とアオイとの三人家族。同じように、母子家庭だったアタシのウチとは、まるで家族のようなつきあいだった。

158名無しさん:2017/11/21(火) 23:29:04 ID:.UYyDnrw0

女4人に男1人。でも、大人の男性は一人もいない、世間一般からみると随分と歪な家庭だったのかも知れない。
所詮は、世間から爪弾きにされた弱者の寄り合い所帯に過ぎないと自嘲していたけれど。
それでも、あの頃が一番楽しかったと、戻れない今になって、やっと分かった。

アオイは、彼の全てだった。
母親は糊口を鬻ぐために家庭を顧みることも出来ず、アオイが彼の母親代わりでもあり、父親代わりでもあり、姉でもあった。
アタシだって、このコにお姉さんぶろうと頑張ってみたけれど、随分と反発されたっけ。

このコは、アタシにアオイを取られるのでは無いかと嫉妬していたんじゃないかしら。
それとも……喧嘩の度に、このコのキンタマ蹴っ飛ばしていたから嫌われてたのかな?
今にして思えば、随分非道い姉モドキだね。その度に、アタシはママと二人で、アオイとアオイのお母さんに頭を下げていたっけなぁ。
アオイも、アオイのお母さんも、笑って許してくれたけど。金的が無い女が、金的を蹴られた男の代わりに許すってのも、変な話よね。

「ほら、ユカリお姉ちゃんだよ。カズ君のタマタマ蹴り上げるたびに、『いつか殺してやる』って言ってくれていたじゃない。
 ……あの頃はゴメンね、悪気は無かったの。ウチに男の人っていなかったからさ。男の子のそれがとっても気になって。
 あの頃は思春期で、自分からおちんちん触らせてとも言い出せなくてね。喧嘩で蹴り上げるなら仕方ないかなって、なんて、言い訳にもならないね」

カズ君は、目を白黒とさせている。こんな所は、本当にあの日と変わらない。
これが夢でしかなくて、目が覚めたら中学の頃に戻れたら、どれだけ幸せなことだろうか。そうしたら、今度こそ、
彼が道を踏み外さないで済むように、何としてでも守ってあげるのに。タマを蹴飛ばす代わりに、存分に頭を撫でて甘えさせてあげるのに。

でも、そうはならなかった。アタシは家庭の都合であの町を離れ……紆余曲折あって、こんな所に。
彼だってそうだ。悪い仲間とつるんで、素行不良の限りを尽くし、最後には他人の人生を台無しにして、これから代償を支払わされようとしている。

「ユカリ……姉……?」

彼の目に、一抹の寂しさが過ぎる。でも、それも一瞬。

「覚えて無ェなぁ……とっとと、これ外せや、あぁン?!」

睨めつけ、猛り、吠える。右肩に入れた刺青をひけらかすように。
威圧しているつもりなのか、虚勢を張っているに過ぎないのか、もはや自分でも分からないのだろう。

それだけで、あのコが生きてきた世界が連想され、アタシの心に影を落とす。

彼は、両腕を天井から吊るされ、両脚は足枷により開いた状態で固定されている。
それだけで、絶体絶命の状況だということは、理解できているハズだ。賢いコだったもの。

それでも、やすやすと相手のペースには乗らない、自分の主導権だけは声高に主張する。
今回の事件で、ここに来たコ達はみんなそう。アタシはもう、世間から離れて長いけれども、今のお外はどうなっているのかしら。
自分のことを棚上げした考えが過ぎり、自己嫌悪を覚える。……自分だって、世間様に顔向けできないと分かっているのに。

159名無しさん:2017/11/21(火) 23:30:48 ID:.UYyDnrw0

「カズ君……キミも、薄々気付いていたでしょう?あの事件で、ココに来たキミのお友達が何時の間にか居なくなってること。
 次は自分の番だって、覚悟もしていたんじゃないかしら。だって、キミは昔から頭の良いコだったもの」

全身で威圧していた彼の動きが止まる。

「目には目を。アタシは、この言葉って野蛮で好きじゃないんだけれど……それでも、被害者が望むならっていうのが、ウチの方針なの。
 ココに来たキミのお友達……キミの悪いお友達には、皆、もう代償を払ってもらったわ。カズ君達の言葉でいうなら、落とし前をつけたっていうのかしら?
 ほら、被害者をバットでボコボコにして複雑骨折させた、あのキミと同じぐらいの年頃のコいたじゃない?彼は、同じように腕と足の骨を粉砕されちゃったんですって。
 コレは、アタシも男性職員と雑談中に聞いた話しで、実際見たわけじゃないけどね……聞くだけで痛そうだし、見たいとも思わないけれど」

アタシを凝視する視線を感じる。俄かには信じがたいという感情。
気持ちは分かるつもりだよ。アタシだって、この法治国家でこんなリンチが許されるなんて思ってないもの。
バレたら只じゃすまないってことぐらいは、アタシだって分かる。実際に関わってさえいなければ、鼻で笑って通り過ぎるような都市伝説。

ウチの所長は犯罪の犠牲者で。相手が少年法に守られ、手が出せなくて煮え湯を飲んで。だからこそ、犯罪者がのうのうとしているのが許せなくて。
手を下すのも、犯罪加害者である入所者を使っているのが、露見した際に累が及ぶのも同じ犯罪者だけとしているのが、僅かな良心かと噂されているけれど。
色々と理由付けに熱心だけれども、単純に、所長……あの女の頭がオカシイだけだと、アタシは思う。

だって、それが許されるなら、法律なんていらないじゃない……これも、アタシが言うには過ぎた意見なのだけれど。

「レイプしたコ……あの中学生ぐらいのコね。女の子の大切なものを奪ったあのコは、男の子の大切なものを取り上げられちゃったの。
 あ、でも安心してね。抜いちゃっただけ。仲間内では、潰しちゃえばいいって声もあったんだけれど、ね。流石にそれはやり過ぎかなって。

 信じたくないって顔してるけど、キミの想像はきっと正しいよ。ほら、コレ。男のカズ君にあって、女のアタシには無い、大切な、大切なトコロ」

彼に正対し、股間の袋を掌で包み込む。
二つの楕円状の球体の感触を感じる。男の子の脈動も。そして、幸せだった頃の記憶の残滓も。

160名無しさん:2017/11/21(火) 23:31:24 ID:.UYyDnrw0
「カズ君は、まだ両方持ってて偉いね。コレって、知れば知るほど繊細だからさ……男子って、どうやって守ってるんだろうっていつも不思議なんだ。
 もしアタシについてたら、大人になる前にケンカとかウッカリで無くしちゃいそうだし……今まで守れてきただけで、とっても立派だと思うよ。
 フフ、こうやって握るのは中学の頃以来。ゴメンね、あの頃は痛かったでしょ?アタシ、持ってないから分からなくて。逆に、キミの反応がカワイイなんて思ってた。

 あ、話が逸れちゃったね。抜かれちゃったコの顛末なら話せるよ。アタシも関わってたから。
 『抜いたり』『潰したり』する時は、男性がお手伝いを渋るからさ……特別ゲストも呼んだし、足りない女手を掻き集めて、そう、女性陣ほぼ総出だったなぁ。
 大変だったけど、男の人は抜かれるの見るだけで『縮み上がっちゃう』っていうから、『縮み上がりようが無い』アタシ達でやるしかないしね。
 アハハ、アタシ達には縮みあがる『タマもフクロも無い』から、平気なのは当然なんだけど」

名残惜しくて、ついつい話を引き伸ばしてしまう。

「特別ゲストは、乱暴された女の子。そのコに、手ずから『抜いて』もらったの。
 暴れたときのために人手は集めたけど、杞憂だったわ。あのコ、フクロからタマ取り出されただけで、女の子みたいな声をあげて悶えるしか無くなっちゃって。
 フフ、言い方はアレだけど、気が早いよって、まだ一応『男』のままだよって、ちょっと笑っちゃった。

 仲間内でさ、もう全身で『女!』ってアピールしてるようなスタイルのコなんだけど、『男がタマを抜かれる』真似が凄い上手いコが居てね。
 彼女がクネクネしつつ、『タマがー、タマがー』なんて言いながら抜かれてるコの真似するものだからさ、アハハ、とっても和やかに『彼のオトコノコは終了』したよ。
 なんで『ついてない』のにそんなに上手なの?って聞いたら、『ついてない』からギャグに出来るんですよぉって言われたんだけど、コレ、真理かもしれないね。お姉ちゃん、得心しちゃった。

 特別ゲストのコはね、淡々としてた。大抵は、『やっぱり嫌!』って土壇場でごねるか、『復讐してやる!』ってノリノリになるか何だけど。 
 一応、タマを二つとも抜いちゃった後に、コメントを求めたコもいたんだけどね。
 
 『アタシは女ですから、金玉抜かれるってのもピンと来ませんし、特に感慨はありません。コメントなら、男じゃなくなったコイツに求めて頂けますか?
  個人的には、コイツみたいな連中が減って、アタシみたいな経験をする人が減れば、それだけで満足です』
 
 とか言って、そのまま帰っちゃった。自分が立ち直るためじゃ無くて、被害者を増やさないためにやりたくも無いことやったんだなって。
 タマタマついてないのに、強いコだなって感心したよ。って、アタシ含めて、女には元々タマなんてついてないんだけど。
 取られちゃったコは、抜け殻みたいになっちゃった。同じ玉無しなのに、なんで男子ってああなっちゃうんだろうね。って、キミはまだ知らないか」

片手で彼の『彼自身』を愛撫しながら、もう片手で手枷と天井の鎖との連結部分のロックを解除する。
そのまま、一歩、二歩、三歩。距離を取り、再度、彼に向き直る。

161名無しさん:2017/11/21(火) 23:32:05 ID:.UYyDnrw0
「キミの御義兄さん、死んじゃったって。聞いているかしら」

「……気色の悪い呼び方でアイツを呼ぶなよ。アレは、無関係のオッサンだ。それ以上でも、以下でもない」

―――報われない話。あのヒトは、キミに歩み寄ろうとしていたのに。キミのお姉さんとの関係のためだけじゃない。
ただ、キミが他人とは思えなかったって。寂しがっているように見えたって。アオイはそんな相談を、何度も受けていたって。
だから、キミと同じ年頃のコ達に教えを乞いてまで、キミとの間のわだかまりを解こうとしていたのに。
結果が、コレだなんて。誰も、誰一人として報われないなんて……カズ君、キミを含めて。

「で、つまりは何だ?アンタは、オレを殺しに来たってことかい、ユカリ姉。
 ハハハ、コイツは傑作だ。やっぱ、最初から最後まで、単なる姉の紛い物だったってことだろ?
 ……あの頃、ちゃんと殺しておけば良かったぜ」

彼の言葉には、頷く他無い。あの時殺されておけば、アタシに不幸にされたヒトも居なくなって……
それに、アタシだって、こんな世界を知らずに済んだのだから。

でも、もう、こうなってしまった。引き返すことも、出来ない。

「カズ君、手枷を揺すってみなさい……さっきロックを外したから、強く揺すれば鎖も外れると思う。
 ……何で、って顔はしないんだね。意外。別に、キミを許してあげるとか、逃がしてあげようとか、そういうの期待してるなら、ガッカリするよ?」

彼はアタシの言葉に従い、地に足をつけて立ち上がる。落ち着き払った態度。
両手は手枷で、両脚は足枷で拘束されているから、状況は何も改善していないのだけれど……それでも。
まるで、アタシの次の言葉が分かっているかのように。

「ユカリ姉、この鬱陶しい足と手のヤツはどうやったら外せるんだ?……そもそも、その心算だったんだろ?
 目には目を、歯には歯を……ってか。アンタの性格からいっても、抵抗できないヤツを嬲るってことは出来ないハズだ。
 さっきの話と違って、ここにオレとアンタしか居ないのが、その証拠。正々堂々と勝負ってヤツだろ?くだらねぇ。

 ―――言っとくけど、オレ、アンタが相手でも手加減はしないぜ?ダチ共が世話になった礼も、たっぷりしないといけないしな」

やっぱり、聡いコ。もっとマシな人生だって、いくらでもあったでしょうに。
ただ、性格は買い被りすぎだよ。アタシは、そんな立派な人間じゃない。

「調子にのらないで。手枷はつけたままにしてもらうわ。
 ……足枷は、暗証番号『1,2,3,4』で開くから。ハハ、忘れちゃわないようにって、こっちは簡単な番号にしてあるの。
 手枷の番号は秘密……といっても、両手を拘束された状態だと、教えても簡単には外せないでしょうけど。
 口や足でギリギリ回せないこともないだろうから、念の為、ね。変えておいたの」

162名無しさん:2017/11/21(火) 23:32:35 ID:.UYyDnrw0
バツン、と。バネが跳ねる音と、自由になった彼の両脚。
アタシはゆらりと構えを取る。彼も、同じく。昔日の喧嘩もこんな感じだったなぁ、と場違いなノスタルジア。


「昔、カズ君と喧嘩ばっかりしてたときを思い出すね。あの頃はアタシの勝ち越しだったけど、今はどうなるんだろう。
 ゴメンね。先に謝っておくけど、今回ばかりは手加減って出来ないよ。全力で行かせて貰うから、気をつけなね。
 それが、遺族からのお願いで。アタシがココに居る以上、逆らうコトが出来ないからさ」

「……一つ、聞かせろや。あのオッサンは、身寄りが居なかったハズだが……遺族?誰だ、それ。
 クク、やっぱ、あれも嘘だったのか。全く、それでアオイ姉ちゃんに取り入ろうとか、寂しさを分かち合おうだとか、マジで屑だよなぁ。
 言っとくが、オレは何の後悔もしてねぇから。何度だって、同じことをしたさ」

互いの間合いが膨張し、収縮し。目が眩むような緊張感。
何度やっても、慣れない。ヒトによっては、このヒリつく空気が最高と言う子もいるけど……全然理解が出来ない。
こんなこと、やらない方がいいに決まってる。

「あのヒトが、天涯孤独の身の上だったというのは、本当らしいよ」

一言。一言だけ言葉を告げると、彼の間合いに入り込むように歩を進める。
肩を怒らせ、上から覆いかぶさるようにアタシに近付いてきた彼。そのの顔に、平手を見舞おうとする。
あのコはほんの少し顔をずらすと、一撃が眼球に当たるのを阻止し、ネトついた、粘着質な視線でアタシを見下ろしてきた。

彼の金的を狙おうとして、一瞬の逡巡。単発で、通る?!
いや、防がれて、無用な警戒を招くだけ―――とその隙をついて、薙ぎ払うような両の腕での一撃。
アタシは全身で彼の丸太のような腕を防ぐ―――が、防ぎきれず、不恰好な人形のように吹き飛ばされてしまう。残酷なまでの、体重差。筋力差。そして、性差。

肩から地面に叩きつけられ、圧倒的な力量差を実感する。それでも。
……大丈夫、大丈夫。まだ行ける。腕力差が何だ。実力差がなんだ。このぐらい、アタシは何度も経験してきたハズだ。

悠然と、彼はアタシの元に歩み寄る。間髪入れず、彼の股間で揺れる脆弱な部分に掬い上げるような蹴りを放つ。
普通の男子なら、両手で下のタマを守る……そこで、ガラ空きになった上のタマ……目玉に一撃をいれるための、伏線としての攻撃。
これで、アタシがぺースを取り返せると思ったのだけれど……あのコは、違った。全く動じずに、自分の膝を絞ることで致命的な牽制を防ぐ。

163名無しさん:2017/11/21(火) 23:33:07 ID:.UYyDnrw0

蹴り足は、彼の片手に掴み取られていた。
そのまま、問答無用に引き寄せられる。彼の金的を握ろうと伸ばした腕は跳ね除けられ、逆に彼の手はアタシのズボンを掴み、そのまま紙切れのように身体ごと振り回す。
ズルリとズボンから身体が引き抜かれて、アタシはまた宙を舞う。

「アンタの中のオレは、中学の頃のままか?オレなんて、簡単に捻じ伏せられるとでも思ってたかい?
 ―――舐めるのも大概にしておけよ」

彼は余裕を崩さず、アタシが立ち上がるのを待つ。
本当に、甘い子。昔の面影が、そこかしこから覗いているのが分かる。だから、だからこそ悲しい。

掴みかかる、振り払われる、投げ飛ばされる。

打ちかかる、防がれる、弾き飛ばされる。

飛び掛る、受け止められる、振り飛ばされる。

何度繰り返したか。肩で息をするアタシに対して、あのコは泰然とした様子のまま。両腕の拘束だって、つけたままだというのに。
強くなったんだね、と場違いな感慨を覚える。それなのに、それなのに、何で間違った方向に行ってしまったのだろう。

「ハァ、ハァ……息を整、えるまで待って、くれるなんて、ハァ、紳士ね」

「ユカリ姉、まだ分からねぇのか?アンタ、勝ち目なんで無いぜ。
 ほら、早く手枷の外し方を教えな。それで、アンタは見逃してやるよ……オレだって、アンタをこれ以上は甚振りたくはねぇ」

本当に、なんでその甘さを、優しさを、キミの義兄さんに、被害者の彼等彼女等に、少しでも分けてあげられなかったの。
息を整え、言葉を投げる。彼が、一番望んでいない言葉だということは、分かっているのだけれど。

それでも。彼は優しくて、アタシは残酷だ。

「言ったでしょ?それが遺族の望みなら、アタシは退けないって……そういえば、遺族って誰かって答えてなかったね。
 ―――キミはつとめて目を逸らそうとしているみたいだけど……そう。カズ君の推理はきっと正解。
 復讐を求めているのは、アオイ。キミと血の繋がった、本当の姉……アタシとは違って、ね」

一瞬。一瞬だけだけど、致命的な空白。
カズ君の動きが、完全に止まった。……ゴメンね。聞きたくなかったよね。それでも。

164名無しさん:2017/11/21(火) 23:33:42 ID:.UYyDnrw0
オトコノコなんだから、女の子の前で、無防備に大股広げるのは、お姉ちゃん感心しません。

ドスッ

心中で謝りつつも躊躇無く、アタシは彼の中心部を蹴り上げる。足の甲が、彼のタマを確実に捉え、拉げさせ、そして千切り取るかのように、上へと跳ね上げる感触。
―――これで、もう、あのコはお終い。そう実感し、胸に一抹の寂しさが去来する。

彼は一瞬、動きを静止させる。何が起きたのか、全然理解出来ないといった顔。
大丈夫、分かってるわよ。オトコノコって、みんなそう。タマタマやられちゃった直後は、まだ痛みが来ないんでしょ?
何をされたのかは直ぐに分かるよ。ほら、顔色が白くなってきた。

あ、理解しきる前に、コレはオマケ。アタシは理解出来ない女だからさ、許してね。

ドスッ

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」

あのコの喉から、絶叫が迸る。中学のころの、いつもの光景。ココでの、日常的な光景。だけれども、何度見ても、可哀想。
あんなに強かったのに。ずっと、アタシを押し込んでいたのに。たった一度、たった一度だけ、股間にぶら下がったタマを打たれただけで、勝負がついてしまう。

オトコノコは誰でも一緒。女のアタシには、最初から『無い』アタシには理解できないけれど。タマタマをやられてしまうと、もう、何も出来ない。

本当に、ゴメンなさいね。あの頃と違って、これで終わりってワケにはいかないの。
全身で『男性』を主張する彼を横目にみつつ、そっと背後に回る。あのコは、それに気付けない。

ドスン、と。彼は、右足を一歩前に出し、膝を突くことなく痛みに耐える。
呻き声は途絶えず、両脚は震えが止まらず、それでも地に伏す姿は晒さないという決意。
今は、もう、見るかげもないけれど。その姿にアタシは、彼のありし日のプライドを感じ取ってしまう。

―――血が繋がってはいないけれど、アタシだって、カズ君のことを、自慢の弟みたいに思っていたんだ。
―――だから、アンタ達姉弟は、真っ当な人生を歩んで欲しかった……アタシはこのザマだったから。

彼の足の間から、『弟』の証が見える。これが無かったら『妹』だもんね……なんて益体もない考えに苦笑。
金的に苦しむ男を前に苦笑するのも、アタシがこれからしようとしている行為も、『痛みが分かる』オトコだったら、絶対に出来ないというけれど。

アタシは、オンナだから。結局、金的がどうなろうと、他人事だからさ。だから、ココに居るんだよ、なんて。誰にとも無く言い訳を並べて。
三度目。容赦無く、自分の爪先を、ブラブラと揺れる『弟』の『弟』たる部分に捻じ込んだ。

165名無しさん:2017/11/21(火) 23:34:13 ID:.UYyDnrw0
ドスッ

「〜ッ!!〜〜〜〜〜ッッッ!!」

とうとう地に伏せる。水揚げされたお魚みたいに跳ね回って、総身で苦痛を訴える。惨めな姿。

恥ずかしがらなくてもいいよ?オトコノコは絶対に耐えられないから、仕方が無いの。
もう、プライドが云々って話じゃないんでしょ?ほら、未だオトコノコのままか、自分で確認してみなさい?
一応、まだ潰してないつもりだよ、でも……その脆いものが『ついてない』、オンナの手加減だからさ。脆さを実感した経験はあるけれど。

お尻を大きく上げて股を開き、彼は土下座をするような格好で停止する。
彼の自尊心を考えると、心が痛む。タマをやられると、オトコノコはどれだけ我慢しようとしても無駄だと知っているから。

「その苦しみ方は、中学の頃と変わらないんだね。フフッ、カワイイ。またアタシの勝ち越しでーす、何て。

 何処まで話したかしら……そうそう、アオイの依頼って言うのは本当よ。家族に手を出したキミを、もう『弟』としては見られないって。
 ……カズ君、キミもお姉ちゃん離れするべきだったんだよ。アオイには、アオイの幸せがある。それなのに―――
―――黙、れよ……変態、女……。誰があんなヤツを―――グゥッ!!」

四度目。蹴り易い位置に鎮座する、彼の金的を蹴りつける。
あのコは切なそうな顔と声を上げて、再度床を転げまわる。ええっとね、この状況じゃ、オトコノコは如何し様も無いんだよ。
だって、アタシには無い、どうしようも無い『オトコノコ』の弱点が剥きだしなんだから。押さえようとしても痛いし、隠そうとしても痛いんでしょ?
ホント、『オトコはつらいよ』ね。オンナのアタシには分からないけど。

「端的に言うわね?アオイは、キミみたいな『弟』はもう要らないって。
 やりすぎたんだ、甘えすぎたんだよ、キミは。お家のなかで暴力をふるっている内はよかったって。お金を勝手に持っていくのも、色々我慢させていたから仕方無いって。
 不完全な家族だから、だからこそ、キミには幸せになってほしかったってアオイは言ってたのに……彼女はキミを確かに愛していたのに。

 だけど、キミは。キミは、アオイを信じられなかった。だから、恋人自身ではなく、彼女が恋人を作ったこと自体が許せなかったんでしょう?」

あのコからの返答は無いけれど、それを責めるつもりは無い。彼は今、自分のタマタマのことで精一杯だって知っているもの。
同じ学校だったから、覚えているでしょ?アタシが、なんで男子からあんなに恐れられていたのか。
オトコノコの苦しみは分からないけれど、苦しむオトコノコは、キミよりもずーっと詳しいかもしれないよ?

「傷口を抉るみたいで申し訳ないけど、アタシだって、アオイを説得しようと頑張ったんだよ?
 キチンと罪を償ってもらえばいいじゃないって。たった一人の兄弟じゃないって。……状況がこんなになっちゃった今じゃ、なんの慰めにもならないけれど。

 それでも。命を奪った償いって何?って聞かれたら、アタシは何も言い返せなかった」

呻きながら、咽びながら。必死に彼は立ち上がろうとしている。内股の、ヒドイ格好。
結局立ち上がれずに、また、床に這い蹲る。それでも、彼の目は、意思を宿していて。それを見て、アタシが淡い希望を抱いたのを、誰が責められるだろうか。

166名無しさん:2017/11/21(火) 23:34:50 ID:.UYyDnrw0
「共感してあげられなくて、ゴメンね。その痛みが、きっと、キミの罪の重さ。自分がやってしまったことの重大さ、少しは分かってくれた?
 もしそうなら、お姉ちゃん(似非だけどね)としても、お仕置きした甲斐があったんだけど……
 
 だから、だからね。お願い。自分の行いを顧みて。お願いだから、取り返しのつかないことをしたって、これから心を入れ替えるって、今、ここで誓って。
 アタシは憎んでくれて構わない。でも、アオイには、彼女には、本当に、悪いことをしましたって、心の底から、本心から、謝って。
 キミは、カズ君は、絶対、自分のやったことが分からないようなコじゃないって、アタシに、もう一度信じさせて!」

「やかま、しい。言った、ろう?オレは、何の、後悔も、し、てねぇし、何度、だって、同じことをするって」

アタシの首の中心部分から、身体全体に脱力感と無力感が広がる。
崩折れそうになる膝を叱咤し、再度彼に呼びかけようとしたけれど。その時、ブザー音が部屋に鳴り響いた。


BEEEEEEP!BEEEEEEP!BEEEEEEP!BEEEEEEP!BEEEEEEP!BEEEEEEP!


―――結論が、出てしまったと言うこと。

分からずやの彼への苛立ちと、口下手な自分への苛立ち。
足元を攫う徒労感と、全身を包む寂寥感。

五度目。綯い交ぜになったアレコレ、全てを込めて。彼の金的を、再度、遠慮無しに蹴り込む。
裏側から、一撃。コレって一番痛いんですってね。

でも、安心して。色んな意味で、コレが最後だから。

う、と。彼の肺から、意味を成さない音が漏れ。あのコは、そのまま意識を失った。

167名無しさん:2017/11/21(火) 23:35:20 ID:.UYyDnrw0
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窓の外から、満天の星空。
夜の帳。潮の香りが、湿った空気が鼻腔をくすぐる。世界全てが眠りについたような静寂。

アタシと、アオイと、カズ君。
暖かい、輝かしい、そして、もう届かない、過ぎ去った時代。

アオイはアタシと同じ歳……22歳だったハズなのに、その疲れた風貌は、20台半ばを超えているかのよう。
彼女の醸し出す空気からも、この姉弟の軌跡の片鱗が漂う。―――苦労、してたんだね。

こんな形で再開するなんて思ってもみなかった。
アタシの今を、彼のお友達がどうなったかを、そして彼の今後を彼女に告げたときの視線。
理解できないという気持ちと、軽蔑とが綯い交ぜになったような視線は、未だに夢に見る。

彼は、またしても、両手両脚を拘束され、吊るされた姿。
力無く、頭を垂れている様は懺悔にも似て、アタシの心を焦がしていく。

「ユカリ、満足した?」

アオイからの問いかけに、首肯する。あぁ、なんて茶番。
このコを更生させて見せると、反省する姿を引き出してみせると、自分自身の無能を省みず、意気揚々と彼に向き合い。

得られた結果はご覧の通り。彼は決して自身を省みず、アオイに謝る事もせず……こうして無残な姿を晒している。
拳大まで腫れあがった睾丸が見るからに痛々しい。どれだけの痛みか、アタシには想像もつかないけれど。

「私、カズの身体を見るの、幼稚園の頃以来な気がするよ。結構立派なモノぶらさげてたんだね、知らなかった。
 これだけ大きければ、ユカリに苛められてたときも大変だったのかな?ね、ユカリ。コレってどれくらい痛いの?」

「女のアオイに分からないのに、同じ女のアタシが知るわけないじゃない……でも、本当に、どうしようもないほど痛いみたいだよ?
 ちょっとパチンってするだけで動けなくなっちゃうし、キーンって蹴飛ばすと、ほら、アンタも知ってるでしょ?
 中学の頃のカズ君がどうなってたか。だからさ―――

―――あっそ。それじゃ、丁度いいね」

バチリ、と鈍い音。間髪置かずに、鋭い悲鳴。
悲鳴と共に、何が起きたのかを認識する。アオイが、自分の平手を、無造作に彼の睾丸に叩きつけたのだと。


男の激痛に意識を引き戻された彼は、ひとしきり高音で嘶くと、再度ぐったりと項垂れようとしたけど、
アオイが髪を鷲掴みにして、力ずくで顔を引き上げる。

「あ、お早う、カズ。鳩が豆鉄砲くらったみたいな間抜け面してないで、シャキっとしなさい。
 別に大したことは起きてないよ。ちょっと、アンタのタマキン、これで引っ叩いただけ」

168名無しさん:2017/11/21(火) 23:35:55 ID:.UYyDnrw0

ヒラヒラと手を振る。彼女の顔には、何の感情も表れない。それだけで、コレから起きることを予見したのだろう。
カズ君の顔が青くなり、白くなり。瞳に恐怖が溢れ、哀しみが零れ、そして諦観に満たされる。それでも。

絶望が一瞬。彼の瞳に、意思の炎が灯される。最後まで、惨めな姿は見せたくないのね。
アタシ、キミのそういうところは好きだったよ。

「そういうこと、か。ユカリ姉が言ったとおり、アンタはオレよりも、あのオッサンを取ったんだな。
 いいぜ、殺せよ。それでアンタの気が済むってんならな。弟一人、縛り上げないと対面も出来ない負け犬が。

 それでもキンタマついてんのかい?ハハ、雌のアンタ等は、生まれたときから玉無しだってか」

ちょっと!自分の状況分かってるんでしょ!?何で、そんな挑発的なことを言うの!!?
横目でアオイの様子を伺うが、彼女は激情に燃え上がるでもなく、憎悪で凍えつくでもなく、温度という概念自体が無くなってしまったみたい。
その様子が、尚更アタシの恐怖を煽る。『ついてない』アタシがビビッてどうすんのよ!

それに、アタシ、『ついてなかった』ことだけは良かったって思ってるんだから。
カズ君、キミはついさっきまで『ついてる』から大変な目にあって、これから『ついてる』からこその、死ぬような目にあうんだよ?!
その時になって、『無ければ良かった』なんで後悔しても遅いんだからね!?

「カズ、言いたいことはそれで終わりかしら?アンタにしちゃ、冴えない最期ね」

「ふん、なんだ、ビビッてんのか?おいおい、勘弁してくれよ。今更、殺しにブルッてんのか?
 ……アンタだって、オレと同じ。血を分けた姉弟なんだからさ、姉ちゃぁぁぁぁぁああああああぁぁあ!!??!!」

電光石火。アオイは弾かれたように動き、彼の陰嚢を握りこむ。

「アンタに『姉ちゃん』なんて呼ばれたくない。アンタ見たいな『弟』なんて知らない。

 ……へぇ、ホントに効くんだね、コレ。ユカリに散々弄られてたときは、二人してふざけてると思ってたけど。
 もう少し早く知ってれば、アンタをキチンと躾けることもできたのかな」

ゴリゴリと音が聞こえてきそうなほど、強く。強く揉み扱かれる彼を見ていると、アタシまで辛い気持ちになってしまう。
思わず、自分に『ついてない』ことを確認。それでも、居心地の悪さは変わらない。

「アオイ、ちょっと強すぎるよ……」

「あ、ゴメン。コレ握るのって初めてだからさ、加減が分からなくて。私には元から『無い』部分だし。
 でも、不思議ね。お母さんにも、私にも、ユカリにも、ユカリのママにだってこんなモノついてないのに、アンタだけには『コレ』がある。

 あ、カズ、誤解しないで。私、別に、男がキンタマぶらさげてることに、とやかく言うつもりは無いの。
 むしろ、あのヒトみたいな男らしいヒトにはついてないと困るぐらいよ。そうじゃないと、抱かれることもできないじゃない。
 
 つまりね。私は、アンタにコレをぶらさげてる資格が無いって思ってるだけ」

169名無しさん:2017/11/21(火) 23:37:04 ID:.UYyDnrw0
口では謝りつつも、手の動きはむしろ力を増していく。
彼は、先程の強気を見る影も無い。握られるだけで、尊厳を投げ打ってしまうような場所なんて、なんで付けているんだろう。

「アンタと私は同じって言ってたけど、私はこれぐらいで情けなく喘がないよ?こんなに喘がれると、ちょっと面白いね。
 ユカリが御執心だった気持ちも、分かるかも。だからこそ、男の子のここは大切に扱わないといけないんだけれど……アンタのは別にいいわよね?男の資格なんてないんだし。そうでしょ?」

口とは裏腹に。どうでもよさそうに、彼の睾丸を解放すると、足元の鞄から巨大なペンチを取り出す。
……アタシは、せめて、彼が直ぐに気絶できるように祈る。それだけしか、出来ない。

「私としては、アンタを殺しても飽き足らない気持ちもあるんだけど……ユカリが泣いて頼むからさ。命は奪わないであげる。
 でも、私の『弟』は今日限りでやめてもらうね……勘当って意味だけじゃないよ?ほら、コレで、物理的に止めてもらうから」

もう、見ていられない。アタシは目線を床に落とす。
―――本当はね、キミが一言でも謝ってくれたら、心を入れ替えると誓ってくれたら、この身に換えてもキミを庇うつもりだったんだけど。

命を奪うことだけは勘弁してくださいって。泣き喚いて、土下座して、アオイに縋りついて。
そう、泣きついたんだ。アタシは、彼女に。このままでは、『弟』が報復されてしまうって。殺されてしまうって。被害者のアオイなら、それを覆すこともできるって。
でも、せめてもの妥協点として、キミの『男としての命』を代償にしてもらうってところまでが精一杯だった。……オトコノコにとっては、どっちが良かったんだろう?
アタシには、『無い』から、痛みも、喪失感も、実際のところ分からない。それでも、『無くても』22年間近く生きてこれたから。生きていれば、きっと、いいことだってある筈だから。

彼女は気軽な様子で『弟』の睾丸を一つ冷たい鉄の塊に挟み、そのまま押しつぶす。
プチュリと軽い破裂音。アタシにとっては聞き慣れた音、オトコノコにとっては、永遠に忘れられないだろう音。
 
甲高い叫びが、目を逸らしても鼓膜を貫く。

「結構痛いんだね、潰されるのって。私は生まれたときから男子じゃなかったから、こんなのがお仕置きになるのか半信半疑だったけど。
 ほれ、情けなく踊るのを止めて、もう一つもさっさと潰させなさい。私も、さっさとこんなコト終わりにしたいんだけど」

平坦な声。耳を塞ぎたいけれど、ここから今すぐにでも逃げ出したいけれど。
拳を握り、目を見開いて、アタシは彼に向きなおる。真一文字に結んだ口は、悲鳴や命乞いを漏らさないため。

「あれ、意外ね。先に『抜かされちゃった』娘は、アンタも囃し立てる側だって言ってたけど。
 アンタには二重の意味で『関係無い』ことなんじゃないの?なんで、そんな泣きそうな顔をしているの?」

……何を、言ってるの?『弟』と、その他の男が同列なわけないでしょ?!

「ユカリ、アンタ、自分で気付いてないの?アンタだって、カズとそう変わらないよ。アンタがそんなヤツだって、思っても見なかったけど……この瞬間までは、ね。
 身内だから、弟だからって、コイツだけ気に掛けてる。骨を砕かれたコや、タマ抜かれたコは、所詮他人だからどうでもいいってこと?
 
 私だってアイツ等を庇うつもりはないけど。身内にだけ甘い……ちょっと違うか。
 身内が傷つくことで、自分が痛みを感じるのが辛い……カズは、私があのヒトに傷つけられる前にって『独善』であんなことをしたんでしょうけど。アンタが起こした『あの事件』だって同じ
 アンタ達は、自分の痛みにだけ敏感で、自分以外に対しては本質的に無関心。……結局、カズがアンタにも似たのかもね」

コイツを押さえておいて、と短い指示。アタシは、無言で従う。
『彼とアタシが同じ』、『独善的』、『他人に無関心』という言葉だけが、脳裏でグルグル、グルグル、タンゴを踊る。

170名無しさん:2017/11/21(火) 23:38:09 ID:.UYyDnrw0
コツンと、彼女のペンチがアタシの股間に触れ、その冷たさに腰が砕けそうになる。
『潰されない』アタシでさえ、こんなにも恐ろしいのに、『弟』の恐怖を思うと心臓が止まりそうなほどに痛む。

「……コイツ、もうビビるとかビビらないとかって状態じゃないみたいよ?アンタは悲劇のヒロインぶってるけど、私と同じ、女だから結局『分からない』でしょ?
 ふぅ、もういいか。それじゃ、ね。姉ちゃんの最後の義務として、『弟』の不始末をつけさせてもらうね」

また、プチッという破裂音。あぁ、これでこのコは『弟』では無くなったのか……と思うと、落胆と喪失感が広がる。
結局、アオイはこのコを許してあげられなかった。このコも、アオイに謝ることができなかった。それだけが、とても、口惜しい。

「『償わせて』じゃ無くて、『許して』。『あのヒト』、いや、『傷つけた人たち』じゃなくて『私』に謝らせたかった。
 アンタ達、自分を中心に世界が回ってると思ってるんだね。本当に―――

続くは、アタシを糾弾する言葉、そして。
パキリ、と嫌な音。何故か、ソーセージのCMを想起させる、そして、とても不吉な未来をも告げるような、そんな音。

我に返ったアタシが見たのは。
彼女のペンチが、彼の、カズ君のペニスを毟り取っている光景だった。

―――三度目の、絶叫。

血が、流れる。アタシはまた我を失い、『弟』に飛びついて止血措置と応急措置を試みる。
アオイは彼のペニスをゴミのように投げ捨てると踵を返す。意識無く痙攣を続ける『弟』に一瞥もせずにこの場から去ろうとしているところだった。

「待って!待ってよ!このまま、お別れするつもりなの?!グスッ。せめて、せめて、最後の言葉ぐらいは、交わして、頂戴よぉ……
 こんな別れかたで、アオイは、ズズズ、これからの人生、自分の人生をどう歩いていくつもりなのよぉ……」

涙が止まらず、鼻水まで流れて、みっともない姿。
それでも、彼女にへばりつくような哀願をせずにはいられない。

だって、彼女も、今にも消えてしまいそうに見えたから。


「口を開けば、自分、自分、自分か……。私は、やっぱりアンタ達のことが理解出来ないよ。

 ……そうね。とりあえず、『抜かれちゃった』子には弟さんがいた筈だから、彼がイジメにあわないように手を尽くそうかなと思ってる。
 襲われた女の子……無理矢理アンタ達にあんなことさせられて、部屋に引きこもっちゃったからさ。彼女の話し相手もしないと、ね。
 他にも、カズたちに非道いコトされたヒトもいるし。『弟』がもういないんだから、私が代わりに償いをしないと」

―――そんな、グシュ、そんなコト聞いてないっ!!アオイの、アオイ自身の人生はどうなる、ズズズ、どうなるのか聞きたいの!
 分からない、分からないよぅ……ズズズ、アンタが一体何を考えているのか、頭の悪いアタシにはさっぱり分からないよぉ!!

アオイは振り返る。彼女の目にも涙が湛えられていて……彼女も『弟』を悼んでいると思って、アタシの涙は勢いを増した。
だけど。返されたのは、哀しみでは無く、怒りの言葉。

「私にだって、アンタ達がさっぱり分かんないよっ!!もう、私達の人生に関わってこないでっ!
 ユカリ、アンタ、自分の目の前で、ナメクジみたいに這い回ることしか出来なくなった人間を見せられたヒトの気持ちを考えたことがあるの?!
 二度と会いたくないと思ってた男の前に引き出されて、無理矢理にそいつを去勢させられたヒトの気持ち、少しでも察することは出来なかったの?!?

 同じ様な暴力を振るわせれば、それで清算は成り立つとでも思ってるの?!」

171名無しさん:2017/11/21(火) 23:38:44 ID:.UYyDnrw0
「それでも、償いはさせないと―――」

「だからっ!なんで『アンタ達』がそれを決めんのよっ!!あんな押し売りみたいな真似までしてっ!!アンタ達の『世界』に巻き込まないでよっ!
 カズの命を人質にしてっ!私がやらなかったら、我儘な復讐の名目でっ、アンタ達がコイツを殺すつもりだったんでしょっ!!

 ―――だから、アンタが泣いてくれたとき、カズを説得してくれるって言ったとき、本当に、本当に嬉しかったんだから……で、何?
 結局は暴力で押さえつけて、無理矢理謝らせようとしただけ?ヒトを馬鹿にするのもいい加減にしなさいよっ!!

 ……………………感謝は、してるよ。本当に、絶対に分かり合えない人間が、この世には居るんだって実感できたもの」

初めて見る、彼女の激昂。
震え上がる自分と同時に、普段怒らない人が怒ると怖いって本当ねと冷静な感想を零す自分。
そして、本当は殺したくなかったんだと、カズ君が愛されていたんだと確認できて、喜ぶ自分が同居していた。
怒られている自分を、自分が観客として見ているような不思議な気分。

頭部に衝撃。彼女がペンチを投げつけてきたと気付いたのと、アタシの意識が身体に戻ったのは同時。
彼女は、まるで枕元にムカデでも見つけたときのような、胸糞悪いものを見る視線をアタシに注いでいた。

「……それをカズに言うのは止めておきなさい。理解できないでしょうから、コレにはただ従いなさい。
 ユカリ。ソイツはもう『弟』でもなんでもないから……アンタ達で好きにしても、私はもう何もいう資格がない。
 それに、ソイツの気質とココの環境は結構あってるみたいだし、願わくば、ココに骨を埋めてくれるといいと思うけれど。

 それじゃ。願わくば、二度と係わり合いにならなくてすむと、お互い良いわね」
 
決別の言葉。
その言葉だけ残して、アオイは再度踵を返す。アタシが返せるのは沈黙だけ。

そのまま、アオイが去るまでの間、アタシは只管、『弟』を抱きしめて震えていた。

172名無しさん:2017/11/21(火) 23:39:23 ID:.UYyDnrw0
--------------------------------------------------------------------

「はいドーモー!僕の私の、アスカちゃんでーっすぅ!」

アニメみたいなキンキン声だって、意地悪なヒトは言うけれど。仕方ないじゃないですかぁ、地声なんですから。

ここは女子監舎の特別救護室。
勿論男子禁制ですけどぉ、『取られちゃった』系のヒトはぁ、一旦ココで預かることになってるんですぅ。
まぁ、問題無いですよねぇ、『男子』じゃないんですからぁ。勿論、『女子』でもないですけどねぇ。エヘヘ。

ベッドは三台、そのうち一つだけ使用中。あれれ?ユカリ先輩の、『弟』さんは何処かなぁ?あ、今は『妹』さんでしたっけ?

伏せているのは、『抜かれちゃった』コ一人だけ。お目当てのコは影も形も無くて、少し出鼻を挫かれた気分。

『抜かれちゃった』コは、死人みたいな無表情で虚空を見詰めている。
ま、『オトコのタマシイ』的なもの取られちゃったんですからぁ、オトコとしては死人で間違ってないんですけど。

それでも。金属バットのコは、もうマトモに歩けない片腕も動かないって状態らしいですしぃ、先輩の弟さんは『潰され』ちゃいましたしぃ、
他のコと比べると、キミは全然恵まれてるんですよぉ?要らないモノが失くなっただけなんですからぁ。
ウチには生まれたときから『ついてない』しぃ、『ついてる』から苦しんだコは知ってますけどぉ、『ついてなくて』苦労したコなんて見たことないですぅ。

「お〜い、ボクちゃん、挨拶には返事してくださいよぉ。寂しいじゃないですかぁ」

彼?は目線を動かさない。ここまで堂々と無視されると、ウチだってぇ、ちょっとイラってしちゃいます。

「あ、ウチのこと忘れちゃったんですかぁ?そんなぁ、一緒にタマタマちゃん抜かれた仲じゃないですかぁ。もう一度やってみせましょうかぁ?
 ほりゃほりゃ、『タマがー、タマがー』……なんちゃって。クネクネしながら、情けな〜い顔をするのが、ウケるコツですよぉ」

彼?が『抜かれちゃう』直前の様子を再演してあげる。
両手で股間を押さえると、必然的に両腕でおっぱいを強調する形になっちゃいますけどぉ、まぁ、眼福とでも思ってくださいねぇ。
なんて、もう『オトコノコ』じゃないから、どーでもいいんですかねぇ?

「そんな冷たい目で見なくてもいいじゃないですかぁ……タマタマついてないなりに、結構頑張ってモノマネしてるんですからぁ。
 それに、悪いことばっかじゃないでしょお?『オトコノコの痛み』を知る前に、『オトコノコの痛み』と無縁な身体になれたんですからぁ。
 ボクちゃんの先輩はぁ、『オトコノコの最大の痛み』と一緒に、オトコノコ止めさせられちゃったんですからぁ、それに比べれば大分マシですよぉ?
 
 これから、喧嘩で金的をやられちゃうことも無いんですしぃ……アタシも金的ないですけどぉ、下半身にそこまで注意しなくてもいいって結構気楽でいいですよぉ?
 もしかしたら、『ついてた』頃よりも強くなってるかも?なーんて、自分のタマタマも守れなかったコなんだから、強くなっても多寡が知れてますかねぇ?

 あ、そうそう。その先輩、どこに行っちゃったか教えてもらえません?」

173名無しさん:2017/11/21(火) 23:39:57 ID:.UYyDnrw0

彼?は此方に顔を向ける。おおっとぉ、ようやく反応してくれましたかねぇ、とぬか喜び。
ボソボソと、聞き取れないぐらいの小声で何かを呟きだしてますけどぉ、ウチのお目当てのコの行方についてじゃ無さそうですぅ。 

「も〜、元気出してくださいよぉ。ちょ〜っと、タマタマちゃん抜かれちゃっただけじゃないですかぁ。
 ほら、ボクちゃんの先輩なんて、『オトコノコ』の部分、ぜ〜んぶ取られちゃったんですよぉ。それに比べれば、全然マシでしょう?」

彼?の顔を覗き込んで、慰めの言葉を掛けてあげたんですけど、それでもショックは和らがないみたい。
うわごとのように、『キンタマ返して、返してよぉ……』って繰り返すばっかり。もう!取られちゃったものはどうしようもないでしょ!
男らしく、ちゃーんと切り替えてよ、って、もう男じゃないから仕方無いですかぁ。それにぃ。

―――目的のコがいないなら、ちょっとこのコをからかってあげようかなって気分にもなっちゃいますぅ。


男性に触られるのは恥ずかしいですけどぉ、このコは男の子じゃないし。可哀想にって表情を作って、ウチの股間を触らせてあげます。

「えへへへ、ウチには元々キンタマついてないんでぇ、返してって言われても困っちゃいますよぉ。
 ほ〜ら、ボクちゃんと同じ。タマタマちゃんがついてない股間ですよぉ。えへへ、良かったですねぇ。男の人とお話ししてるとぉ、
 よくココに視線感じるんですけどぉ、触らせてあげることなんて滅多にないんですよぉ?ボクちゃんは、もう、オトコノコじゃないから、と・く・べ・つ☆」

押し付けた手は、為されるがまま。普通のオトコノコだったらぁ、何だかんだいいながらも、ワレメちゃんを弄くってきますけどぉ、
やっぱ、もう『関係無く』なっちゃったから、興味も湧かないんでしょうかねぇ?ちっちゃいチンチンも、ちっちゃいまま。

「もうオトコノコじゃないから、オンナノコ触っても興奮できないですよねぇ。うふふ、これで、性欲に負けて悪いことしなくても良くなりましたねぇ。
 男の子がイヤらしいのは仕方無いと思いますけどぉ。でも、お外でぇ、エッチな男子がぁ、勝手にウチのおっぱいとか、お股とかイジろうとしたときは―――

片手を伸ばし、このコのオトコノコの残骸を包み込む。

「こうやってぇ、ウチもオトコノコのタマタマちゃんで遊ばせてもらうことにしてたんですよぉ。って、あれあれ〜☆たーいへん。
 ボクちゃんのフクロの中に、タマタマちゃんが入ってないぞー?アスカちゃん、大ぴーんち!ほら、ギューっとしても、全然平気だぁ!

 えへへへ、ボクちゃん、ラッキーだったね?もしキンタマついてたら、これだけで悶絶してましたよぉ?」

フニフニ。グリグリ。彼?の股間に未練がましくぶら下がっている、用無しの部分を可愛がる。
いや、ラッキーだね?っていうのは本音ですよぉ?今もタマタマちゃんついてたら、ウチ、きっと歯止め利かなくなっちゃってましたからぁ。

「ボクちゃんのオトコノコ、何処かなぁ?ここかなぁ?あれぇ、何処にもないぞぉ?何処かで無くして来ちゃったんですかぁ?
 ボクちゃんは知らなかったかもしれないですけどぉ、オトコノコはみーんな、ココに大切なものぶらさげてるんですよぉ?えへへ、オトコノコのフリ、失敗しちゃいましたねぇ。
 でもでもぉ、オンナノコの穴だって空いてないしぃ……ボクはオトコノコなのかなぁ?オンナノコなのかなぁ?ウチにコッソリ教えてくれませんかぁ?ウフフフフ。
 なーーんて♪ゴメンね、泣かないでねぇ?でも、ウチがお外で遊んでた時は、『いっそ無ければ良かった』っていう子もたくさん居たんですよぉ?

 ウチには無いですけどぉ、経験は豊富でしたからぁ……何処が痛いかとか、とっても詳しいんですぅ。ほら、ココ。オトコノコはぁ、ココのフクロのぉ
 付け根ぐらいのところにあるぅ、タマタマちゃんと身体を繋いでいる部分。キミには無いですけどぉ、本当のオトコノコだったらココをコリコリってするだけでも、
 死にそうなくらい痛いらしいですよぉ。一回遊んであげたコは、ウチがコリコリってする時の手を見ただけで、縮みあがっちゃうって言ってましたぁ。

 ボクちゃんは心配しなくてもいいんですよぉ。ホラ、縮みあがるところが無いですもんねぇ。うふふ、ウチとお揃いですねぇ」

174名無しさん:2017/11/21(火) 23:40:35 ID:.UYyDnrw0

自分の股間に彼?の手を押し付け、彼のフクロを握りながら、語りかける。
このコはハラハラと涙を流して(カワイイ!)、それでも只々、横たわったまま。

「時々ぃ、仕返ししてやるってコもいましたけどぉ、えへへ、ウチ、キン蹴りもチョー得意だったんでぇ、大体のコは股間押さえて青くなるのがオチでしたねぇ。
 オンナノコに対してタマタマの仕返しなんて出来るはずないのにぃ、何考えてたんでしょーねぇ?
 勿論、オンナノコからは、簡単にタマタマちゃんに仕返しできるんですよぉって再教育してあげてましたけどぉ、ふふ、とっても情けない顔して楽しかったですぅ」

でも、お外では流石に『ダメ』にしたことまでは無かったですけどぉ。先輩とは違って。
『ダメ』にされたらこうなっちゃうんだ、ってコトは、ココに来てから初めて知りましたぁ。きゃっ。

「ボクちゃんの先輩はぁ、もう、『男』って感じだったからぁ、今更『潰され』ちゃっても手遅れっぽいですけどぉ。アハハ、潰され損。最初から女に生まれてりゃ良かったのにぃ。
 キミはぁ、カワイイ顔してるんですからぁ、これからはオンナノコとして生きていけばいいんですよぉ。大丈夫です。
 もしお外であってたら、ウチ、絶対ボクちゃんをスカウトしてましたしぃ。上客になりそうな方々の顔だってぇ、五本の指じゃ数え切れませんよぉ」

ぺしぺし。たぷたぷ。柔らかいフクロを叩きながら、言葉を続ける。
あ、コレ、柔こくて、結構気持ちイイかもぉ……こっちでも『売れる』かもしれませんねぇ。

「それにぃ、オンナノコをオナホ代わりにしてたんですからぁ、オトコノコをバイブ代わりにされちゃうのも、因果応報ってやつじゃないですかぁ?」

―――その通りね。でもアスカ、アンタはあの稼業から足を洗ったんじゃなかったかしら?」

背後から声。この鬱陶しい響きはぁ、ユカリ先輩ですねぇ。今の今まで、ナニをしてたんですかねぇ?
それにぃ、ウチは欲しがるヒトと売りたがるヒトを取り持ってただけですぅ。アンタみたいなのと一緒にされるなんて、心外ですよぉだ。

内心を肚の底に沈め、営業に培った笑顔でアイツに向き直る。
こんな所で諍いを起こして、いいことなんて何も無い。それに、彼女がここに居て、『弟』さんが居ないってことは、つまりは出足が遅かったってコト。

「あ、先輩ぃ、お早うございまーすぅ!って、もぉ〜、冗談に決まってるじゃないですかぁ。真面目すぎぃ!
 ……そういえば、このコの先輩、コレからどうなるんですかぁ?てっきり、ココで仲良くお昼寝中だと思ってたんですけどぉ。

 潰されちゃったんですよねぇ?うわー、可哀想ですぅ。でも、見てみたかったなぁ……ウチの新ネタの参考になったかもしれないですしぃ」

鈍い破裂音。先輩が、平手で壁を叩く音。ふん、物に当たらないで欲しいなぁ、みっともない。

175名無しさん:2017/11/21(火) 23:41:05 ID:.UYyDnrw0

「あのコはもう罰を受けたわ……アスカ、アンタはちょっとはヒトの痛みに鈍すぎる」

アハハハハハハハハ。誰の受け売り?クク、どの口でいうんですかぁ、ソレ。ウチのギャグよりも、ずっとイイですねぇ。
……それに。分からないのに、分かりようがないのに、『知った風な』同情をしようとしてる、アンタの方がよっぽど鈍感ですよぉ?

「痛みっていってもぉ、潰されちゃえるのはオトコノコだけじゃないですかぁ……ウチには想像もつかないしぃ、想像する必要もないですよぉ。
 ユカリ先輩だってそうでしょぉ?あ、ボクちゃんも、もう潰されることは無いから、怖がる必要ないですからねぇ」

侮蔑の言葉は呑み込む。それで、ソイツは結局どうすることにしたんですかねぇ?ま、想像はつきますけど?

「『弟』の面倒は、アタシが見ます……いや、アタシが見なきゃいけないの。これで答えになるかしら?
 これまで、ずぅっと放っておいた罪滅ぼしとして。これまでの行き違いを、消して失くしてしまうために。本当の姉弟になるために。
 ……幸い、時間ならたっぷりあるもの。アオイは、そう思って、アタシに『弟』を託してくれたんだと思う……姉妹みたいなものだから、言葉は無くても、分かるの」

B・I・N・G・O!って、馬鹿じゃないですかぁ?馬鹿じゃないですかぁ?もう『弟』さんじゃないってことをさておいても、また、独りよがりな考えで突っ走ってるだけでしょう。
今はいいですけどぉ、これから先、中年になってもぉ、老年になってもぉ、ソイツの面倒を見て生きてくつもりですかぁ?うわーお、ゾッとしないですねぇ。
それにぃ、そのコのお姉さんもぉ、きっとそんなコト考えちゃいないですよぉ?もう、自分の人生に関わって欲しくないだけ。
勿論、先輩、アンタにもですぅ。

「話はそれだけ?なら、もう退がりなさい」

……………………。別にいいか。合法的に、このオンナの知り合いを甚振れると思ったんですけどぉ、チャンスを逃しちゃったみたいですしぃ。
アンタと違って、ウチは二十歳になる前には、こんな不毛な場所からはオサラバしたいんですよぉ。そのためだったら、イイコにだってしますしぃ、黙れといわれりゃ黙りますぅ。
別にウチの身体を差し出したって構いませーん。減るもんじゃないですしぃ。

そもそも、こんなヘンテコな場所、長持ちするワケないですしねぇ。

ま、アンタほど凄惨な事件を起こしたわけじゃないからぁ、このまま行けばきっとそうなるでしょうけどぉ。
アンタみたいに、自分が罰せられなかった代償行為に、他人を罰するような不健康な生き方だってするつもりはないですしねぇ。
自分が自分を許せないのに、何で他人が罰を与えてくれて当然って顔してるんでしょね……そんなだから、ココ最近の不穏な空気だって、アンタ、全然読めてないでしょ?


「それじゃ、先輩。ウチはそろそろ退散しますねぇ。『妹』さんに、よ・ろ・し・く☆」

背後から怒気。ふん、いい気味。
ウチだって、久しぶりに面白いことができそうだって期待を挫かれて、ちょっと不機嫌なんですからぁ。

部屋からぬけると、雨模様。
高さそのものに圧しつぶされるような曇天は、まるで、空がウチの代わりに涙しているようにも見えましたぁ……ウチってば、ポエット♪

176名無しさん:2017/11/21(火) 23:41:37 ID:.UYyDnrw0
--------------------------------------------------------------------



ここは閉じた鳥籠で。朽ちて果てていることに気付かれない獄舎。
これは、獄舎が崩れ落ちる、ほんの少し前に起きた、ほんの些細な出来事の一つ。

177名無しさん:2017/11/21(火) 23:53:06 ID:.UYyDnrw0
以上です。

とりあえず、導入を短くしてみたのですが、どうでしょうか?

>>154のリクエストに応えたかったんですけど、常識改変系になると具体的なイメージが湧きませんでした。ごめんなさい。
今回の狂言回し役が何かやらかしたっぽいのは、リクエストに応えようと考えてみたプロットの名残です。

4つ程駄文を投下して、ある程度骨子は網羅したつもりなのですが、どんな組み合わせがいいんでしょうね?

・視点
群像劇系、男性視点×2、女性視点

・動機
仕事として(+性欲/拒否感をもちつつ)、成り行きで、性的好奇心で、義務感で
=他動的、他動的、能動的、能動的

・人物数(男複数 対 女1は勝てるわけねーじゃんと思ってしまって書けなかったので……)
多人数、男1対女1、男1対女2、男1対女1(入れ替わりアリ)

・抵抗
無し、有り、申し訳程度、有り

・年齢
同年代、年上、年上(サブ)と年下(メイン)、年上

自分で書いていると、いまいちピンと来ないので。

178名無しさん:2017/11/22(水) 21:23:12 ID:h39zB/NY0
今回も素晴らしい作品だと思いました。
何度も読み直しています。
カズとユカリの戦う描写が好きで、タマの痛みについて理解はできないが、カズのタマを潰すことについては悩んでいるような感情がせめぎ合っている部分がよかったと思います。
アオイが淡々とタマや竿を潰す部分もよかったのですが個人的には身内のタマを潰すのであれば少し悩む描写も欲しかったところです。
個人的に好きな組み合わせは
女性視点
義務的に、彼氏や身内、元カレなどのタマを潰す
1対1がやはりいいかなと。
女複数対男1もありかと思います。
男複数対女1は現実離れしすぎてかなと。
抵抗はあった方が良いと思います。
普通〜激しく
年齢は同年代から年上であまりに対象が幼すぎるのはちょっとどうかなと思いまして、10代半ばから上がいいと思いました。

179名無しさん:2017/11/23(木) 02:55:08 ID:5T8fXVJU0
どうにか弟を助けたいというユカリ視点があって、
その後にアオイやアスカがそのユカリを評することで、
ユカリの異常な独善、偽善が表れてて面白かった。
獄舎が崩れ落ちる(私刑の露見?)前ってことは、
結局ユカリはカズの側にいられないんだろうな。

フェチ的な面から言うと、もう少し攻められている睾丸そのものの描写が濃い方が好み。
地の文も登場人物が担ってるから、そんなところまで細かく描写できないんだろうとは思うけど。

180名無しさん:2017/11/23(木) 19:17:29 ID:q2DCKslU0
マイナーなジャンルのssは10年後とかでも普通に読まれるので、セリフや文体はなるべくシンプルにしといた方がいいと思う。

181名無しさん:2017/11/23(木) 22:57:21 ID:Y2fQEs2c0
リクエストは出来ればでいいので好きなように書いて欲しいんだぜ
今回も最高でした

視点は神視点・男視点・女視点それぞれに強みがあるけど、個人的に同一作品内では視点は固定して欲しいかな
同じ作品内で視点が動くとちょっと状況が把握しづらいかも
その他の組み合わせに関しては色んなシチュエーションの作品が読みたいのでお任せしたい
正直地力あるからどれ書いても抜けると思うw

182名無しさん:2017/11/23(木) 23:00:17 ID:0IizhB7U0
圧倒的な体格差を玉への攻めで容易く覆せてしまう事実と、
玉責めされている男を心から哀れむ描写がとても好き。
欲を言えば179と少し被るが、玉が潰れる描写が鮮明になると嬉しいな・・・

183名無しさん:2017/11/25(土) 20:13:32 ID:gwOvVO/E0
あんまりリアルな潰し描写・グロいのは遠慮したい

やはり男女の格闘対決で、肉体的に強いはずの男が、本来弱いはずの美女に、
男だけにある致命的急所(金的)責められて悶絶するのは倒錯感があり、最高のシチュ
金的の無い女の言葉責めや優越感描写も最高

他ならぬ自分自身も、幼少時に実体験(年上女と喧嘩して金的されて悶絶KO。ニヤニヤクスクス嘲笑されて、
とんでもない屈辱感を味わう)し、
以来、女を見下すS男から、M(金的フェチ)に180度変換してしまった恐ろしい経緯がある
肉体的にも精神的にも、女→男の金的はそのぐらいの破壊力がある

「婿にいくか」シリーズの続きも激しく期待してます

184名無しさん:2017/11/25(土) 21:33:54 ID:yla.CPxE0
俺はリアルな潰し描写・グロいの大好きだからもっとやってほしい

185名無しさん:2017/11/25(土) 21:57:47 ID:TPRzMSEQ0
エクストリームって126以降更新されてますか?

186名無しさん:2017/11/26(日) 08:46:18 ID:Jxvc0Rjo0
俺はあまり潰しはリアリティに欠けるから好きじゃないかな
潰されたことに対する屈辱感みたいなものは実感がわかないし頭に入らない
玉を潰さなくても完全に気持ちを挫けさせて、男として最大限の屈辱を受ける
それで充分であるし、むしろそのほうが読んだ後味がすっきりして良い

色々言ったけど、好みの問題だからリクエストに答えなくても問題ない
作者様にお任せします

187名無しさん:2017/11/26(日) 10:20:50 ID:DwBh3yw60
海外のCBT物にありがちなハンブラーを扱った作品とか、女性2人がそれぞれの奴隷のキンタマを綱引きさせて競い合うといったシチュエーションで書こうかと思ったが全く進まない。
誰か代わりに書いてくれ…

188名無しさん:2017/11/26(日) 22:51:29 ID:ZWAb.th20
個人的にはスパリゾートの続きも気になる
あのシチュエーションすげえ好みだから是非書いて欲しい

189名無しさん:2017/11/26(日) 23:14:27 ID:sTYnr3wU0
あまり拘ると玉責め小説からリョナ小説になっちゃうからね

190名無しさん:2017/11/27(月) 00:29:34 ID:dEEcvsdE0
金蹴りフェチって物理的な性器破壊が好きというよりは精神的な倒錯の部分に興奮する人が多いからね
男にしかない急所を痛みの分からない女に蹴られる倒錯とか、大事な所を押さえて踞る情けない所を異性に見られる恥ずかしさとか
好みにもよるけどグロく残酷にすれば良いってものではないね

191名無しさん:2017/11/27(月) 20:54:10 ID:jyVQo5dc0
100の言葉で好みを語る前に1の言葉でSSを書け

192名無しさん:2017/11/28(火) 14:17:49 ID:fCxGM8z20
ここはとある実践的護身術教室
ニーソ女子「先生、こうですか?えいっ!」キ〜ン
先生男「ぐふっ………バ、バッチリ…」

1の言葉では難しいので三行にしてみたよ

193<削除>:<削除>
<削除>

194名無しさん:2017/11/29(水) 09:19:51 ID:cD1HV7j.0
すみません、議論スレに書くつもりが誤爆してしまいました。
お手数をおかけしますが削除して頂けるとありがたいです。
本当に申し訳ありません。

195名無しさん:2017/12/14(木) 20:15:43 ID:aLtzVbVs0
全く書き込みがなくなった、過疎っているね。

196名無しさん:2017/12/14(木) 22:07:11 ID:xk82w.6s0
基本淡々とSS投下して感想書く場所ですし
むしろ無駄に荒れなくて好都合

197名無しさん:2017/12/24(日) 02:20:28 ID:YhhxKp1A0
書くの遠慮するとかは全くしなくてええんやで(チラッチラッ

198名無しさん:2017/12/24(日) 11:02:18 ID:5ktNeAhI0
お前が書いてもええんやで?(チラッチラッ

199名無しさん:2017/12/24(日) 21:29:45 ID:Sb.IIOM60
が、頑張ってみます

200名無しさん:2018/01/21(日) 21:29:03 ID:SiuZmYeA0
何もしていないのに、いきなりクラスメイトの女子から思いっ切り金玉を蹴り上げられ、悶絶し、股間を押さえて蹲る男子と、
その男子の苦しむさまを見て嘲笑する蹴った女子。

「あ……ぐ……ぎぎ……」
「随分苦しそうだね〜。腰トントンしてあげよっか?w」
「うぅ……ぐ……」
「はい。トントントン」
「うあっ! あっ、あっ……」
「あ、余計金玉に響いちゃったかな?w まあちょっと狙ってやったんだけどねw」
「うぅう……」
「でも金玉蹴られたらそんなに痛いんだねー。大変だねー。蹴ったあたしが言うのもなんだけどw」
「…………(悶絶していて声が出せない)」
「じゃ、折角だからもう一回蹴ってあげるよ♪ 君もあたしに金玉蹴られて嬉しいんでしょ?」
「!?」
「ほら、早く立って! 10秒以内に立たなかったら君の金玉、今度はさっきの10倍の強さで蹴っ飛ばすからね! 
はい、いーち、にーい、さーん……」

以下、冒頭に戻る(繰り返し)。

201名無しさん:2018/01/21(日) 23:04:32 ID:kcPnQIss0
いいね
こういう小規模な作品ももっと投下されていいと思う

202名無しさん:2018/01/21(日) 23:58:04 ID:GqXqtCss0
久々の投下ありがたい。
長編もいいけど、短くて完結してるのも大事だな。
GJ!!

203名無しさん:2018/01/22(月) 19:32:24 ID:EhUuDix.0
「ねえ。キミ、キャッチャーの子だよね?」
「えっ」

唐突に声を掛けられたので振り返ると、ソフト部のユニフォームを着た女子生徒が立っていた。
確かピッチャーで、ユミとかいう名前の子だ。

「そうだけど」
「良かったー。実はさ、ちょっとお願いがあるんだけど」
「? 何?」
「あたしの球、受けてくんない? 野球部の練習始まるまでで良いから」
「えっ」
「今週末、試合だから軽く投げときたくて……駄目かな?」
「そっちのキャッチャーは?」
「生憎、今日はいつもバッテリー組んでるコがお休みなの。お願い! ほんのちょっとだけでいいから」
「うーん。じゃあ練習始まるまでなら、良いよ」
「ホント!? やった! ありがとっ!」

特に断る理由も無いし、そういう事情なら協力してあげてもいいかと思った。
どうせ一年のグラウンド整備が終わるまでは暇だしな。

「あ、どうせならさ、そっちのボールで投げさせてもらってもいい?」
「え? 硬球で?」
「うん。あたし、中学入るまではリトルに居たから、実は硬球の方が慣れてるんだよね」
「そうなんだ。なら別にいいよ」
「ありがとう」

手に持っていた硬球を軽く投げると、なるほど確かに慣れた様子でキャッチした。
女子の硬球を受けた経験は無いが、いくらなんでも男子のピッチャーより速いはずも無いし、特に問題は無いだろう。

204名無しさん:2018/01/22(月) 19:34:35 ID:EhUuDix.0
「じゃあ、行くねー」
「おう」

10メートルほど距離を取り、ユミが手を振る。
正確には知らんが、女子ソフトなら多分これくらいの距離だったはずだ。

やがてユミが大きく振りかぶる。ワインドアップだ。
てっきりアンダースローだろうと思っていたので多少面食らったが、確かにリトル出身だと言っていたな。
などと感心していると、ユミの右腕からシュッ、と球が放たれた。

「お」

そのスピードは俺の想定よりも遥かに、速――

「!」

次の瞬間、カクッ、と大きく球が落ちるのが見えた。
俺は咄嗟にグローブの位置を下げるが――

ユミの速球は、さらにその下まで落ち、



『ボグッ』



「……ッ!」

一瞬、脳天がかち割られたような衝撃。
暗転する世界。



――ユミの放ったフォークボールが自分の急所を直撃した、ということを認識するのに数秒を要した。

205名無しさん:2018/01/22(月) 19:38:04 ID:EhUuDix.0
「う……ぐ……」

全身から脂汗が滲み出てくる感覚。
息が出来ず、声が出せない。

そんな中、喜色に満ちた明るい笑い声が俺の耳に届いた。

「あははは! 今、キンタマにジャストミートしたね〜あたしのフォーク!」

ケラケラと笑う、ユミの声。
こいつ、今、何て……?

急所の痛みがあまりにも強烈過ぎて、思考がまともに働かない。
しかしユミは構わずに続ける。

「実は今ね、キミのキンタマに直撃するように狙って投げたんだよ♪ 綺麗に落ちたでしょ?」
「…………!?」

狙って……投げた?
バカな。
そんなことが……。

「あはは、めちゃくちゃ苦しそ〜。硬球だもんね、これ。痛いよね〜w あはは、超ウケる〜♪」

顔を上げることもできず、ただ両手で股間を押さえたまま地面に突っ伏す事しかできない俺とは裏腹に、ユミは心底楽しそうに笑っている。
まだ息も絶え絶えだが、俺はかろうじて声を振り絞った。

「な……なんで、こんな……」
「あー。実はあたし、リトルの頃、よくわざとフォークをキャッチャーの男の子のキンタマにぶつけて楽しんでたんだよね」
「!」
「で、さっきふと急に、そういえばあれ、もうずっとやってないなー、久しぶりにやってみたいなーって思いついて。ただ、そんだけ」
「…………」

頭がくらくらしてきたのは、多分急所の痛みの所為だけではない。

206名無しさん:2018/01/22(月) 19:42:40 ID:EhUuDix.0
「おーい、ユミー。何してんのー? もう部活始まってるよー」

遠くから、別の女子の声が聞こえた。
見ると、キャッチャーマスクを持った女子が立っていた。
その女子に向かって、ユミが大きな声で返事をする。

「ごめーん、カナー! すぐ行くねー!」
「あの子って……」
「ん? ああ。あたしとバッテリー組んでる、キャッチャーのカナだよ」
「今日は休みって、さっき……」
「ああ、あれウソ」
「…………」

悪びれもせずにそう言うと、ユミは未だ地面に蹲ったままの俺を尻目に、カナの方へと歩き出し、
一度だけ、くるりと振り返って言った。

「あ、そーだ。流石に一回ぶつけたくらいじゃ、まだつぶれてないよね? キンタマ」
「えっ」
「じゃあ、明日またキンタマにフォークぶつけてあげるよ。今度は本当につぶれちゃうかもしれないけど♪」
「…………」
「そんじゃーね。キンタマお大事に〜」

ぴらぴらと手を振りながら遠ざかっていくユミの背中を見ながら、俺は即刻、監督に外野手へのコンバートを申し出ようと心に誓った。




<了>

208名無しさん:2018/01/23(火) 21:29:17 ID:WwEJbDrQ0
>>203
丁寧で好き
玉責めパートはこれくらいの長さにした方が話はまとまるんだよねぇ
でも抜けるかどうかを重視するなら責めの描写も長く取りたいし難しい

209名無しさん:2018/01/24(水) 22:32:02 ID:krOuqCdQ0
そうは言っても量より質だと思う

210名無しさん:2018/02/11(日) 03:04:59 ID:iztSKbj.0
スパリゾートの続きが読みたい(唐突)

211名無しさん:2018/02/11(日) 12:47:57 ID:22GcWzvA0
『脅迫と賞罰』


「早く脚を開きなさいよ。あんたのキンタマ、思いっ切り蹴り上げてあげるから」
「う、うん……」

女子生徒に言われるがまま、男子生徒はおずおずと足を開いた。

「よ〜し」
「…………」

舌なめずりをする女子生徒。
緊張の面持ちを浮かべる男子生徒。

次の瞬間、

「おりゃあっ!」

ドグッ!

「ッ!?」

大きくしなった女子生徒の右脚が、男子生徒の股間に鋭くめり込んだ。
昔空手をやっていたというその女子生徒の蹴りは、脚の甲で男子生徒の二つの睾丸を的確に捉えていた。

「あ……あが……」

堪らず、男子生徒は膝をつき、地面に蹲った。
女子生徒は、そんな彼の様子を嗜虐と優越に満ちた表情で見下ろしている。

「あははっ。いたそ〜」
「……ッ……」

男子生徒は一声も発することができず、ただただ、苦痛に顔を歪めている。

「でも、これが好きなんでしょ?」
「…………」

今朝、通学途中の電車内で、男子生徒はスマホでyoutubeの動画を閲覧していた。
それ自体は普通の動画だったのだが、操作の途中で閲覧履歴をスクロールしていた際、彼が昨夜、家で観ていた大量の金蹴り動画のサムネイルが表示されていた。
不運にも、それを偶々近くに乗り合わせていた、このクラスメイトの女子生徒に覗かれてしまっていたのだ。

そして、以前空手をやっていた頃から、密かに男子の急所に興味を持っていたというこの女子生徒から、「皆に黙っていてほしければキンタマを蹴らせろ」と脅されたというわけだ。

「道場では、基本金的禁止だったから、思いっ切り蹴ったことなかったんだよね」
「…………」
「一度でいいから、思いっ切り蹴ってみたかったの。男子のキンタマ」
「…………」
「だから本当に運が良かったわ。まさかキンタマを蹴られたい男子が同じクラスに居たなんて」
「…………」
「でもこれ、脅しでもなんでもないよね。だってあんたにとってはご褒美なんだから。そうでしょ?」
「…………」

愉悦を声に含ませながら、一方的に話し続ける女子生徒とは裏腹に、男子生徒は未だ一言も発することができない苦痛の中に居た。
そもそも彼は、金蹴り動画自体は好きでよく観ていたが、自分が実際に蹴られたいという願望までは持っていなかったのだ。
そんな彼にとって、空手経験者のこの女子生徒による本気の金的蹴りは、まさに地獄の苦しみというほかないものだった。

だがそんな彼の苦しみなど露知らず、女子生徒はあっけらかんとした声で言った。

「さ、じゃあそろそろ回復したよね? もう一回蹴らせて」
「!? え……?」
「ん?」
「い、一回だけじゃ……」
「? あたし、そんなこと言った?」
「…………」

女子生徒は不思議そうに首を傾げた。
確かに「キンタマを蹴らせろ」とは言われたが、一回だけ、とは言われていなかった。

「で、でも……今言ったじゃないか。『一度でいいから、思いっ切り蹴ってみたかった』って……だから、もう……」
「ああ、うん。でも思ったよりずっと快感だったから、もっといっぱい蹴りたくなっちゃったの。別にいいでしょ? あんたにとってはご褒美なんだし」
「そ、そんな……」
「何? じゃあ皆にばらされたいの? あんたの趣味」
「! そ、それだけは……」
「じゃあ、早く立ちなさいよ。今度は、さっきよりももっと強く蹴ってあげる」
「!?」

しれっとそう言うと、女子生徒は意地悪そうな笑みを浮かべた。
『思いっ切り』と言っていたのに、どうやらまだ本気の蹴りではなかったらしい。

「早く脚を開きなさいよ。あんたのキンタマ、思いっ切り蹴り上げてあげるから」
「う、うん……」

女子生徒に言われるがまま、男子生徒はおずおずと足を開いた。





<了>

212名無しさん:2018/02/12(月) 00:39:05 ID:9p/kP0Xc0
良かった

213名無しさん:2018/02/12(月) 15:18:01 ID:oD///0360
『愉悦』①


「どうしたの? 痛いの? 苦しいの?」
「…………」

股間を手で押さえたまま、地面に四つん這いになっている男子生徒の顔を覗き込むようにしながら、女子生徒が笑顔で話しかけている。

「なんとか言いなさい……よっ!」

ドグッ!

「ぎゃっ!」

女子生徒は弾みをつけて、男子生徒の背後からその股間を蹴り上げた。
手の甲越しとはいえ、その衝撃は二つの睾丸にほぼダイレクトに伝わる。

「うあぁ……あ……」

男子生徒は股間を押さえたまま、さらに苦しそうに呻く。
女子生徒は、そんな彼の様子を嘲笑うように言う。

「あははっ。潰れちゃった?」
「うぅ……」
「流石に大丈夫よね。まだ二回しか蹴ってないもん」
「…………」

そう。ほんの一分前、男子生徒は、突然、背後からこの女子生徒によって股間を蹴り上げられたのだ。
ただ普通に体育館裏を歩いていただけの時に、だ。

こうして突然自分の急所を襲った鈍痛に対し、何が何だか分からないまま、本能的に防御体勢を取っていたのが冒頭の場面ということになる。
この女子生徒は男子生徒のクラスメイトだったが、特に親しいわけでもなく、話したこと自体ほとんどないという関係だった。

「一応言っておくけど、別にあたし、キミにうらみとかあるわけじゃないから」
「…………」
「ただ、『男子の金玉蹴りたいなー』って思ってた時に、たまたまキミが歩いてたから、蹴っただけ。そんだけだから」
「…………」

そんな意味の分からない理由で、自分はこんな理不尽な苦しみを味わわされているというのか。
男子生徒の心境は怒りを通り越してやるせなさに達していた。

「あ、『たまたま』ってなんか駄洒落みたいだね。たまたま歩いてたら、タマタマ蹴られちゃった〜って。あはは」
「…………」

全く笑えない駄洒落を言って、けらけらと笑う女子生徒。
男子生徒は、早くこの時が過ぎ去ってくれと願うばかりだったが、

「笑いなさい……よ!」

ドグッ!

「がはっ!」

先ほどと同じようなノリで、しかし確実に先ほどよりも強く、女子生徒はまたも男子生徒の股間を蹴り上げた。
もはや手の甲によるガードはほとんど意味をなしていなかった。

「ぐ……うぐ……」
「さっきからずっと、うぅーとかうぐーとか唸ってばっかりで、正直つまんないんですけどー?」

何故かご機嫌斜めになっている。
そんなこと言われても、と男子生徒は息も絶え絶えに口を動かそうとしたが、それより早く、女子生徒に足首を掴まれた。
右手で左の足首を、左手で右の足首を。

足を強引に引っ張り上げ、男子生徒を無理やり仰向けの体勢にする。
女子生徒は男子生徒を見下ろす体勢となり、意地悪そうににやりと笑うと、右脚を少し上げた。
ここまで来れば、何をされようとしているのかは馬鹿でもわかる。

思わず、男子生徒は股間を押さえる手にぎゅっと力を込めた。

「手、どけて」
「え……」
「このまましてほしい?」
「…………」

ひどく冷えた声で女子生徒は言った。
男子生徒は、観念したように股間から手を離した。
もはやこの状況では、なるべく彼女の意に沿う対応を取った方がよいと判断したのだ。

その瞬間、女子生徒は表情を緩め、

「いい子だね〜」

ズグッ

「あっ!」

右脚を男子生徒の股間に深く突き刺した。
睾丸に鈍い痛みが走る。

「ふふっ。去勢される犬や猫って、今のキミみたいな気持ちなのかな?」
「…………」

残酷な笑みを浮かべながら、女子生徒は足をぐりぐりと動かし、二つの玉を確実に踏みつけられる位置に据えた。

214名無しさん:2018/02/12(月) 15:19:57 ID:oD///0360
『愉悦』②


「じゃあ、去勢手術始めちゃうね」
「っ……」
「電気・あんま〜っ」

ドドドドドドドドドドドド

「あ、あがっ、あっ!」
「あははは! おもしろーい!」

ドドドドドドドドドドドド

「あ、あひっ、あ、あっ」
「ほーらほら。去勢だぞー。金玉潰すぞー」

ドドドドドドドドドドドド

「あ……あ……」
「もっと苦しめー。もっと呻けー」

ドドドドドドドドドドドド

「あ………」
「もっとあたしを楽しませろー。金玉潰すぞー」

ドドドドドドドドドドドド

「…………」
「ん?」

ふと女子生徒が足を止めると、男子生徒は既に白目をむき、ぐったりとしていた。
どうやら気絶してしまったらしい。

「……なんだ。つまんないの。えいっ!」

ズドッ!

「かはっ!」

女子生徒は電気あんまの体勢のまま、男子生徒の金玉を強く踏みつけた。
反射的に、男子生徒は一瞬だけ反応したが、またすぐにがくっと項垂れた。

しかし、それがまた女子生徒の嗜虐心を刺激したらしく。

「……えいっ!」

ズドッ!

「かはっ!」

再度、しかし先ほどよりも強く、男子生徒の金玉を踏みつけた。
一瞬だけ覚醒し、またすぐにぐったりする男子生徒。

「あはは! おもしろーい!」
「…………」
「おらぁ!」

ズドッ!

「かはっ!」

一瞬だけ覚醒し、またすぐにぐったりする男子生徒。

「あははは! 起きろ!」

ズドッ!

「かはっ!」

また一瞬だけ覚醒し、またすぐにぐったりする男子生徒。

「あははは! 金玉潰すぞ!」

ズドッ!

「かはっ!」
「あはははは!」

こうして女子生徒は、既に意識を失っている男子生徒の金玉を、何度も何度も、強く、かつ的確に踏みつけ続けた。
その地獄のような光景は30分以上にもわたって続いた。

そしていよいよ、金玉を何度踏みつけても男子生徒が何の反応も示さなくなると、女子生徒はようやく満足したような笑みを浮かべた。

「あー。今日はこのくらいでいいか。流石にちょっと疲れたし」

女子生徒はそう言って、掴んでいた足首をぽいっと離すと、白目を剥いたまま痙攣している男子生徒を放置して、体育館裏を後にした。




<了>

215名無しさん:2018/02/12(月) 18:59:56 ID:GiEnXDgo0
シンプルで良い
女の子が普通に『キンタマ』って言っちゃうのはかなり好み

216名無しさん:2018/02/12(月) 20:46:53 ID:Y/1rITBc0
良いんだけど長くした分ちょっと雑になってるのが気になる
全く同じ文章反復させるのは避けた方が良いと思う

217名無しさん:2018/02/12(月) 22:55:35 ID:cZIh50cY0
個人的に感じたことだけど「男子生徒」とか「女子生徒」という表現よりも
適当でいいので何か名前があったほうが固さが抜けて良いと思う

218名無しさん:2018/02/13(火) 01:18:21 ID:E9N2ifpI0
名前入れないといけないなんて文章上の規則はないから好きにすればいいと思うけどね
特に今回の作品は「女子生徒一般」が「男子生徒一般」を気まぐれで股間蹴って屈服させる所がポイントだしこれで良いと思う

219名無しさん:2018/02/20(火) 01:09:49 ID:bPsQaFiw0
>>217
むしろ性を感じさせてすごくいい

220名無しさん:2018/02/24(土) 04:15:32 ID:Txs3yP5c0
『スパイと女拷問官①』

ここはとある国の拷問部屋。

石造りの寒々しい室内には、両手両足を拘束された下着一枚の男が壁に貼り付けられている。

彼の名はリュウ。

リュウの逞しい体には痛々しくまだ新しい痣が浮かぶ。

リュウを痛めつけたのは、今まさに彼の顎を掴んだ、

「なー、さっさと吐けや、こら」

敵国の男達だった。

男はくちゃくちゃと口を動かし、リュウの顔を覗き込む。

「…………」

リュウは自国の命令を受け、敵国にスパイとして送り込まれたのだった。

しかし仲間の裏切りにより捕えられ、情報を吐き出す事を迫られている。

時には殴られ、蹴られ、食事すら満足に貰えない日々の中で、執拗に“堕ちる”事を迫られた。

それでもリュウは決して彼らに屈する事なく、地獄の責め苦を今日まで耐え続けてきた。

221名無しさん:2018/02/24(土) 04:16:33 ID:Txs3yP5c0

「おらッ!」

リュウの沈黙に腹を書いた男は、痺れを切らしてリュウの腹を強かに打ち据えた。

「く、ッ……」

リュウの眉根が苦しげに歪む。

男はそれを見て、畳み掛ける様に質問を浴びせた。

「痛いだろ?なあ、お前の名前は何だ?どこの国から来た?上の野郎は誰だ?」

連日の痛みで朦朧とする頭の中、リュウは男から顔を背けた。

「……おい、聞いてんのか!」

それが癇に障った男は逆上し、力いっぱいリュウの腹部に蹴りを入れた。

「う、ぐッ、あ、ッ……!」

噛み殺した様な悲鳴が、爪先がめり込む度に一つ、また一つと漏れる。

「おら!言え!言え!殺されてーのか、おい!」

男が狂った様にリュウを蹴り、殴打する。

222名無しさん:2018/02/24(土) 04:17:04 ID:Txs3yP5c0

しかし、リュウは男に殴られる度に祖国に対する服従心が強固になっていく。

痛みは鈍麻し、心が冷たくなっていく。

このまま、祖国の礎となれたら本望だ。

ふとそんな思いが浮かび、リュウは薄笑いを浮かべた。

男はこめかみを波打たせ、血走った目で拳を振り上げた。

「このッ……」

その時、男の肩に手が置かれた。

「やめろ、拉致があかねえ」

男達のリーダー格であろう、体格の良い男が首を振った。

「……す、すみません」

男は一歩下がり、リュウから離れる。

「情報源を枯らしてどうすんだ、もっと頭を使え」

リーダー格の男は軽く息を吐き、リュウを見据えた。

「こういうタイプはよお……そのままおっちんでもおかしくねえ」

リュウは黙って男を見つめ返す。

「……なあ?兄ちゃん」

「…………」

「はは、黙りか……このまま死ぬ気、ってのも当たらずも遠からずか」

男は一笑に付し、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「だが、死なせてやれねえ……」

男は何かの緊張を誤魔化す様に、そこで一拍置いて唾を飲み込んだ。

「……リンコ様を、呼んだからだ」

リンコ様。

その名前を漏らした瞬間、男達がどよめいた。

223名無しさん:2018/02/24(土) 04:19:38 ID:Txs3yP5c0

「り、リンコさまって、もしかして」

「ひっ、ひいい!」

にわかに怯え、慌てふためく男達をリーダー格の男が一喝する。

「うるせえぞ!静かにしろ!」

しかし、彼もまた顔には深い怯えの色が浮かんでいた。

この場でただ一人リンコ様、を知らないリュウはぼーっとその会話を聞き流していた。

「……おいお前ら、リンコ様の道具は……」

リーダー格の男が沈痛な面持ちで口を開いた時、ノックの男が響いた。

「リンコ様、だ……」

そう誰かが呟き、

「し、失礼します!」

ドアが開いた。

拷問部屋に入ってきた女は上目に男達を見、ペコリと頭を下げた。

細い体躯にどことなく自身なさげな顔つき。

「リンコ様御無沙汰しております、今回はあちらでして、事前に伝達しました通りです」

「分かりました……何か変更は?」

「ありません」

「はい、ありがとうございます。お疲れ様でした」

「……はい」

小動物を思わせる彼女。

黙々と事務的会をする姿がリュウにはどうにも癪に感じられた。

リュウが睨むと、気圧された様にびくりと肩を震わせた。

そして、困った様に微笑みを浮かべた。

「えっ、と、あの……わたしはリンコ、って言います。もしかして、もう聞いてるのかな……」

リンコは言葉を一つ一つ選ぶ様に言い、男の中の一人に目を向けた。

「あの、わたしの道具は?」

「はっ、はいいッ!いい、今取ってきますですッ!」

リュウを足蹴にした男が叫び、飛び上がって部屋を出ていく。

リュウは手持ち無沙汰にするリンコをそっと横目で窺う。

224名無しさん:2018/02/24(土) 04:20:29 ID:Txs3yP5c0

リンコは恐らく同世代の女性よりも稚い顔立ちだった。

甘い、とでも言えばいいのだろうか、庇護欲を擽る様な小狡い大きな目。

小さめながらもぷにっと主張する唇。

整った鼻筋。

リュウの目線は徐々に顔から下へと落ち、リンコの胸元の膨らみに留まる。

固めの布地がリンコの胸を押さえつけるが、それを跳ね返す様にして窮屈そうに収まっている。

当然ながら、捕えられていた間は禁欲だった。

そもそも、男達に休みなくリンチを受け続けていたリュウはそんな気に陥る事自体無かったが、久しぶりに見た女。

ほとんど無意識でリンコを視姦していると、彼女が自分を見つめた様な気がした。

リュウが自分を恥じて目を逸らそうとしたのと同時に、

「お、お持ち致しましたッ、リンコ様!」

けたたましくドアが開いた。

男が両腕で抱えた大きな箱。

リンコはそれを一瞥し、顎で床を示した。

ドスン、と音を立てて箱が置かれる。

リンコはしゃがみこみ、リュウ達に背を背けて中身の確認を始めた。

彼女の事を何も知らないリュウでさえも、部屋の中にただならぬ緊迫感が漂っているのが分かった。

「うん……ちゃんと全部ありますね」

リンコはおもむろに立ち上がり、

「それじゃ、皆さん退室して頂けますか?」

鋭い視線を男達に向けた。

「はいっ!リンコ様、失礼致しましたあ!」

「失礼致しました!」

男達は敬礼したかと思うと、我先に部屋を出ていく。

「……さて」

リンコはリュウに体を向けた。

そのまま距離を詰め、貼り付けにされたリュウを上目遣いに見上げる。

「っ……」

黒目がちな瞳がリュウを捉える。

「とっても痛そうですね……随分手酷くやられたみたいで」

リンコの柔らかい手がリュウの胸板に触れる。

「うっ、く……ッあ」

激しく痛めつけられた場所に触れられ、身を捩る。

「貴方を、人を苦しめたい訳じゃありません……いつも、わたしはとても申し訳なく思っています」

リンコはそんなリュウの様子を全く意に介さず、手を滑らかに動かす。

「う、ああ……っ」

鈍い痛みに、思わず腰を引く。

リンコはそっと手を離した。

「……ほんとに、ごめんなさい」

寂しげな表情を浮かべるリンコ。

しかし、その頬はうっすらと紅潮していた。


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