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bbspinkSM板 女の子に顔面パンチされたいスレッド 規制避難所

13901:2013/01/11(金) 22:19:52 ID:???
連志別川(六) 神秘の暴虐美

おれは、確かに川に浮いていた。浮いてはいたのだが・・・両腕を含めた全身は、身動きが取れぬまま厚い氷中に没し
顔面だけが、川面から水平に剥き出しとなっていた。つまり首から下の部分は、完全に氷面下に閉じ込められていたのだ。
悪意を、感じた。それは、おれが先刻までこの少女に向けていた、小賢しき人間ごときの殺意などとは比べ物にもならぬ
人智を超えた計算に基づいた、神なる邪悪だ。恐らくおれの計画も、躰の力の程度も、必死に呼吸を求める醜い足掻きも
全てが、少女の掌の内だったのだろう。陽光が残酷な程に眩しい。おれは封印された己の躰を、茫然と見下ろしていた。

・・・ぼふ、ぼふん、ぼふんっ・・・ばんっ、ばぐんっ・・・
どこか緊張感の欠落した、しかし確かに鼓膜を震わせる衝撃音。おれは、弾かれるように視線を真っ直ぐへと戻した。
拍手の破裂が止むと同時に、二人の視線が氷面と垂直に交錯する。少女はその掌を、見せ付けるように拳へと変えた。
・・・ぎゅうぅ・・・ぎ、ぎ、ぎ・・・ぐ、ぐぎゅうぅ・・・
その真っ赤に張り詰めた、「未知の物体」が少女の両膝の上で握り締められ、悶え苦しむかのような唸り声を上げている。

――全ての人間は、真なる恐怖を知らぬまま死んでいく。なぜなら、未だ知らぬ事こそが、恐怖の正体だからだ。
若い頃から西洋かぶれだった親父は、大坂商人の船が松前へ来る度、毛皮を売った銭で洋学書を買い集めていたらしい。
親父の書棚から出て来たある思想書の一節が、今になって脳裡に蘇る。恐怖の正体は、逆光を浴びて紅々と輝いていた。

「ぜんぶ、見てたわ・・・・・・ふふっ・・・すごいのね」
少女の冷たく上気した笑顔が、真上から覆いかぶさってくる。その蒼く、狂気に爛々と血走った瞳が、近づいてくる。

――「すごい」だと・・・?まさか・・・まさか、「あれ」も、見られていた・・・!?
おれは恐怖と羞恥に、思わず涙を溢れさせた。堪らず、眼の筋肉だけで視線を逸らす。だが、少女はそれすら許さない。
眼球を左に逃せば氷に寝そべり、右に切り返せば跨いで飛び越し、無邪気な蒼い宝玉がおれの視覚と魂を残酷に陵辱する。
伝承とは違い、その眼に「怒り」の色は感じられない。だが、その好奇心に満ちた悪戯さが、おれの精神を更に狂わせた。
「ひ」
おれは、逃げ「ようとした」。這いずり回って。だが、氷に閉ざされたおれの肉体が、言う事を聞く筈もなかった。
照りつける強烈な日射しが少女の肢体を透かし、華奢で繊細な均整美を、一刹那の暇も無くおれの脳へ叩き込み続ける。
おれの眼球筋と少女の躍動との攻防は、再開された。但し、今度は逃げる者と追う者との立場が、逆になっていた。

この期に及んで、おれは改めて下から見上げる少女の、日輪を浴び光り輝く肉体の瑞々しい躍動に、夢中になっていた。
無邪気な稚児そのものの笑い声と共に、金色の髪を波打たせながら舞い踊る少女。いかなる肉質も、隠そうとすらしない。
しかしその清冽なる美は、常に凛とした品性を保っている。少女は恐らく、人間よりも自然に近い存在なのだろう。
そしておれはついに、何故か懐かしい、角度によってわずかに浮かんでは消える繊細な起伏を少女の胸に見出した。
神秘の曲線が、再び涙に滲み歪んで行く。おれの命は、恐らく、もう終わろうとしている。何の身寄りもないおれだが
美少女との別れだけが、無性に、悲しかった。おれの人生に、これ程の「悲しみ」という感情は、あっただろうか・・・?

「あなたは、泣き虫さんなのね・・・でも、だいじょうぶ」
なにが大丈夫なのか、全くおれにはわからない。だが、おれは少女の慈愛に満ちた頬笑みと、その拳の生ぬるい感触に
倒錯した安らぎすら感じていた。そして膝立ちからやや前傾し、おれの頬を真上からその右拳で撫でる少女に、訊いた。

「えっ・・・・・・なっ、なっ・・・・・・殴らない・・・、のか・・・?」
「ううん」
少女の波打つ金髪が、「横に」柔らかく戦ぐ。それから何の前触れもなく、少女の左拳がおれの眼界一杯を犯し尽くした。
おれの顔面に真上から降り注ぐものは、毎晩心を引き裂かれてきたどの悪夢よりも冷酷で残忍無情な、「現実」だった。


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