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bbspinkSM板 女の子に顔面パンチされたいスレッド 規制避難所

11 ◆Rrz6Yl.wDU:2010/06/12(土) 01:46:07 ID:3YrBLet6
とりあえず、規制で不便が生じるのを防ぐため、したらばにもスレを勃てました。

こちらは、主に私がbbspink規制で書き込めない時だけ利用する予定ですが
今まで書き込みたいのに書き込めなかった方もご利用下さい。

13181:2012/12/21(金) 23:22:46 ID:???
先ほど、いつものまとめを更新させていただきました。
http://www19.atwiki.jp/gun_men/
これ程の情報の集積は、皆さんのスレタイ的な欲望・・・ヨソでは決して言えない背徳の情熱を
包み隠さずこのスレに叩きつけて下さった尊い勇気の賜物です。
私は変態の皆さんを尊敬しています。いやマジでね(笑

もうすぐ2012年の366日も終わりですね。今年も色々な事がありましたが、変態の皆さんと過ごせて幸せな一年でした。
ありがとうございました。まあ別に年跨いでも何が変わるってー訳でもないので(毎年同じような事言ってるなあw)
皆さんはこれからもネタに妄想に雑談にマターリと、今までと何ら変わりなくこのスレをご利用下さい。
私もまあ色々と、今やってるSSも含めて、何か皆さんの心を少しでも動かせるような事をやりたいとは思っています。


それから、マヤ暦がアセンションして五次元の宇宙で地球がポールシフトするとか何とかで(超適当
とりあえず世界が終わるらしいんですけど、えーと今年の21日だか23日だかでしたかね(本当はよくわかってません
どーせならあれっすね、ほら、五次元ってことは・・・二次元+三次元=五次元(小学生並みのさんすうのうりょく

つーことでラジィたんとか綾香お嬢様とか双葉理保とかメリーたんとか
(メリークリスマスにかけてみましたギャハ←解説入りのギャグほど悲しいものってないよね)
ちはるちゃんとか絢辻さんとか初音ミクとか今までお世話になった二次元撲殺美少女の皆さんがモニタから現れたりして
じゃあ今から○○君を丸一日かけてゆったりたっぷりしっとり撲殺してあげるからちょっとチクッとするけど我慢してねー
みたいな終末なら大歓迎なんですけど(笑

13191:2012/12/21(金) 23:26:05 ID:???
>>1314
コメント見るだけであのシーンだってわかります(笑
確かに一度見たら忘れられない衝撃映像でしたねえ・・・
当時のスタドラスレでもあれは3発説と2発説がありましたがそこらへんはどーなんでしょうね。
俺はもう10発20発とおまけしてもらいたい派なんですけどねふひひ
ガラス越しのSATSUJINパンチってのもアリですかね健康的で(笑

あ〜、そろそろアセンションがフォトンベルトでロシュの限界をダークマターしたりして(また超適当
二次元と三次元が繋がったりしてカナコ頭取の待つリングに間違って送り込まれたりしないかな〜〜と(危険思想


>>1315
な、なんだってー(AA略


>>1316
防具無しであの連続グローブぱんちを受けたら、ものの数秒で血まみれにされて
マットに這わされそうで小学生相手に肉体も理性もズタズタにされちゃいそうな危うさにキュンキュン来ますよねー
ちなみにあの防具はスーパーセーフといいまして、ボクシング用品で有名なWinning社が出してるみたいです。

13201:2012/12/23(日) 21:47:58 ID:???
アセンションもサンタさんも私のところには来そうにもないので、次の記念日?の話題でも

皆さん、来る12月26日はボクシング・デイ(英:Boxing Day)らしいのですよ。
あの正方形の空間の中で殴り合うスポーツとは全く関係ありませんが(笑

まあせっかくの機会ですし、あのスポーツが好きな人はその日になったら
色々妄想してみるのもいいかもしんないですね。年に一回しかないですし。

で、妄想がこじれるとこうなるってゆー悪い例をひとつ
http://blog.hobbystock.jp/report/2009/11/tp0269.html
まあ、「ヨスガる」とゆー動詞までも生み出した、その道では有名な娘さんなのですが
ページを開いた方はちょっと下までスクロールさせてみて下さい
すると何という事でしょうかこのタオル着脱可能なんですって奥さんあらやだ!

この華奢なファイティングポーズを見て打ち込む隙が無さそうだとかカウンターを警戒して踏み込めずにいたら
細い左腕が鞭のようにしなって俺の顔面をパンパァンと翻弄しその挑発に踏み込んで結局カウンターの餌食にとか
鼻血が飛び散ってロープにリバウンドしたところにまた真っ赤な拳が迫ってAAAAHHHHHHHYYYYYYYYYとか
曲げられた右肘と白い膝も小さなお尻のバネがですね俺の顎を突き上げるアッパーカットとなってですねマットにですね
(ボクシング的には「リングに」這うって言ったほうがそれらしいですかね)這わされる屈辱にビクンビクンウッとか
真っ赤なグローブでも自作して視線をこっちに向ければ気分はまさにリングの上なんじゃないですかねーと

私みたいにこの手のおにゃのこがグーを作ってこっち見てる画像を長年見てますと
心の目でグローブが見えるようになってくることもあったりなかったりしてくるのであります。
穹たんの拳にグローブが見えて(危険度大)グローブ穹たんが脳内で動き出し(危険度超大)
動き出した穹たんの拳が痛みを齎し始めたら(危険度極弩)、最寄りの病院へ行きましょう(笑

1321名無しのサンドバッグ:2012/12/26(水) 00:55:47 ID:t8XkVB1.
ボクシングデー記念かきこ
昨日まではサンタコスのボクサー少女にボコられて
お正月は巫女さんボクサーにボコられるんですねわかります
あーおみくじで”撲殺”混じってないかなw

1322名無しのサンドバッグ:2012/12/26(水) 19:17:44 ID:ZNh5ZD8g
http://jun.2chan.net/b/res/18204942.htm
ふたばにスレが立ってますね
参加支援よろしく

1323名無しのサンドバッグ:2012/12/26(水) 19:41:16 ID:DU2dqgNE
これ出たかな?
ジャンプSQのリビドーハンタータケルという漫画でヒロインの子が容赦なく顔面をぶん殴ってます
文字通り半殺しにしてます
ただ個人的に絵は上手いと思わないので好みあるかな?俺は好きですがw

1324名無しのサンドバッグ:2012/12/26(水) 20:04:37 ID:YNcSohjI
めりーボクシングデー!
この間の南国育ちがどストライクだったので
色々と消化不良ですけど、凄まじいアナログ作業で作ったキキタン公開しときます
http://dambo.no-ip.org/uploader/file/Pp4925.wmv.html
パスはnangoku

ムービーメーカー使用なんですがこれ以上秒あたりのコマ刻めないわ
音のラインが一本しかないわでこれ以上複雑な動きは無理だわ…
AEあれば無問題なんですがオモチャで手に入れるのは辛いなあ
なんかいいフリーソフトないですかねえ
レイヤー読み込めそうなのが

1325名無しのサンドバッグ:2012/12/26(水) 21:12:50 ID:vOkXR3LE
>>1324
久々にマジモンの神様を見た気がする…
これを手作業って言うのは凄い。
うまくいくか判らんけどこれを使えばBGMとかかぶせられるかも
ttp://soundengine.jp/software/radioline/


何かの間違えでダウンさせなきゃずっと弄ばれていたんだろうかと妄想w

13261:2012/12/26(水) 23:35:41 ID:???
皆さん今年のボクシング・デーはお楽しみ頂けているでしょうか・・・


>>1321
サンタコスがサンタナコスに見えたッッ
(※JOJOの読み過ぎです。サンタナコス(パンツ一丁)じゃ地上波で放送できません

それはそうとこれからは巫女さんのターンですね。返り血で清らかなその白の装束を汚したい汚したいぞ汚したいんだッ
結構これがエキサイティングだと思うのは、あの装束の白い所、つまり腰から上に血を飛ばす必要があるって事でですね
緋袴に血が飛んでもよく見えませんから、つまりはまあ・・・その、ハードな一戦になるってー事ですようひひのひ


>>1322
やっぱりボクシングデーだけに、なんでしょーかね。
ちなみに5/19はボクシングの日で、確かこの日もスレが立ってたような・・・


>>1323
あっ、俺この人知ってますよ。いや、別に親戚とか友達ってわけじゃないですけど絵は知ってます。
ttp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=32197093
ご本人のページなので貼らせていただきました。かわいいですねえ・・・俺もメギャンされたい(笑
情報ありがとうございました。う〜む、知らなかった・・・俺漫画読んでるようで読んでないなあ。

13271:2012/12/26(水) 23:36:04 ID:???
>>1324
おお・・・またまたやって下さいましたねえ。有り難くいただきました。

限られたzozaiの中でよくもこう倒し倒されそして伝説へ(グラII)伝説から神話へ(グラIII)と
ドラマを積み上げていくその手腕に脱帽ですよいやまったく。
技術的な所は素人なのでわからんのですが、効果音など一つのパンチでも使い分けることによって
ヒット感の違い、当たったのは頬か鼻か、骨まで衝撃が達したかどうかみたいな妄想の世界に入り込めますね。

特に1325さんも仰ってますけど後半のダウンを奪われたあとのキキたんの猛攻が凄まじいですねー。
いつまでも終わらない3分間・・・美少女のパンチに踊り狂う最凶に高まった屈辱と恍惚の以下略

今日という記念すべき日を貴方のような素晴らしい職人さんと共有できて満足しています。

1328名無しのサンドバッグ:2012/12/29(土) 04:38:10 ID:rXVHlQYc
ふたばスレ落ちそう
今日起きたら
最後の支援してあげて!

1329名無しのサンドバッグ:2012/12/29(土) 06:44:15 ID:DBjXuH9I
目新しいの持ってないんだよな
今回上げたやつ6月のときとほぼ一緒という体たらく・・('A`)
情報のみだとダメらしいしけっこう歯がゆい

1330名無しのサンドバッグ:2012/12/29(土) 16:01:08 ID:seLkzrf2
情報あるなら既存の貼りながら交流ってのでもいいんじゃないとも思うけどどうなんだろうね

1331名無しのサンドバッグ:2012/12/29(土) 17:06:48 ID:UekHMoIw
>>1329
>>1330
掲示板を見ている人の中でレスを書く人というのは100人中10人を下回るらしいです
既出や未出など人によって違う概念に縛られるのは
大変くだらない事だと思うのですよ
このスレ然りふたばのスレ然り

勿論、「これは持ってるな」という感じを味わわせたくない
その思い遣りの心は大変美しいと思いますが
そんなマニアばかりが見てるとは限りません

次は何ヵ月後になるかわからないショータイム
スレのある内に支援してもらえれば皆が盛り上がるのではと思いますよ

1332名無しのサンドバッグ:2012/12/29(土) 22:27:44 ID:rDtaat5s
スレ落ちちゃいましたねー
今回は長いことお疲れ様でした。
皆さんよいお年を!来年もよろしくお願いします〜

1333名無しのサンドバッグ:2012/12/30(日) 00:17:01 ID:noXHhBEI
http://pc.gban.jp/m/?p=1159.jpg

画像加工してる間にスレ終わってしまったか〜
と言う事で供養張りw

13341:2012/12/31(月) 01:36:48 ID:???
2012年もあっと言う間でしたねー。こんな事言っちゃなんですけど、私にとっては
2012年12月31日が2013年1月1日になっても・・・まあとくにこれといって変わる事もないので
来年もこのスレへ引き続きご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

なんつってもこのスレッドは一年365日8760時間525600分(実際はメンテか何かでちょっと減るでしょうけど)
タダで書き込み放題なのでまあそりゃそうですけど(笑
皆さん変態貴族の方々にとって、書き込む程にトクをするスレにしたいと思ってますので、まあいつも通りっすねー
折角のTOSHINOSEのご挨拶がこんなgdgdで本当にすいません(笑

13351:2012/12/31(月) 01:37:37 ID:???
>>1328-1333
けっこう間が開きましたけど、そっちのスレはやっぱり盛り上がったみたいですね。
見逃したって方は
ttp://magmag.ath.cx/
こちらのサイトを使うと画像つきで後々見られます。いまの状態で半年前のスレもまだ見られますね。


>>1332
こちらこそ良いお年を〜。
来年になっても一年175200ラウンド書き込み放題ですので何でも書き込んでやって下さい(笑


>>1333
おお、わざわざここに貼ってくれてありがとうございます。
俺には黒い8オンスが分身してるように・・・ぶっぐっあひっごぉっ・・・アレ・・・なんで真上に照明が見えるんだろ・・・

13361:2012/12/31(月) 01:39:24 ID:???
あと、そのスレで詳細不明だったみたいなキャラについて(クマが出たとか外国語で言ってる子

私けっこう時代モノの漫画が好きで、確か「へうげもの」でこの人物を読んだ覚えがあるんですけども
ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%A5%E5%8A%A9

ttp://戦国武将姫muramasa.net/%CC%EF%BD%F5.html
つまり1582年にはボクシングは遥かな南国モザンビーク(当時ポルトガル領、でしたっけ?)から日本に伝来していたと
こーゆー設定はフィクションとはいえ、心躍るものがあると思いませんかねー
俺がもし織田信長だったら、こんなかーいいボクっ娘が守ってくれたらね、そりゃ幸若の一つも舞いたくなりますよ(笑

このゲームじゃ上杉謙信女性説など些末事、前田慶次も松風(馬)も天草四郎も、全員潔いばかりに美少女であります。
今も訪れる人が絶えない武将ゆかりの寺や史跡が全国にありますが・・・これ、本当に大丈夫だったんでしょうか(笑

1337名無しのサンドバッグ:2012/12/31(月) 15:38:06 ID:.UXBlUbM
今年も今日で終わりだからか、総決算をしてるどころが多いみたいで私も総決算しよういうことでご用意してみました。

1000スレ達成された時からあまり時間たってないので(それだけいい伸びですよねw)あまりないのですが・・・

斧Nに がんぱん総決算という名前で出させて頂きました。パスはこの書きのレス番です。今回はイラストだけですが、まぁ軽いお年玉ということで。

それでわ一年間お世話になりました。来年もよろしくお願いします。でわ、よいお年を。

13401337:2012/12/31(月) 15:46:15 ID:.UXBlUbM
重複すみません

>>1337
>>1338

http://www1.axfc.net/uploader/so/2737368 パスは上の方です。
管理人さん。ややこしそうですので、よければ1338と1339削除しておいてください

1341名無しのサンドバッグ:2012/12/31(月) 16:01:27 ID:agxE1jVw
ごちそうさまです

13421:2012/12/31(月) 19:13:28 ID:???
>>1337
>>1340
確かに1000スレ超えの日から、あまり時が経ってないように感じますね。
そのくらい今年は楽しい楽死いスレになっていたのだとゆー事を、今になって実感している次第であります。
そのスレがあるのも愛すべき変態の皆さんのお陰・・・大変私は嬉しく嬉死く思っております。

こんな殺伐とした放逸なスレタイなのに(笑)温かく細やかな皆さんの心遣いに
私はただただ頭が下がるばかりです。ありがとうございました。よいお年をお迎え下さい。

それと、>>1340でリクエストがありましたので、ご本人の書き込み>>1338-1339は削除しておきました。
掲示板が重くなってる時って、二重カキコになっちゃう事もありますのでね
そーゆー、自分が間違って書いたレスを消したいってのがあったら、他の皆さんも気軽に言って下さい。

13431:2012/12/31(月) 21:48:57 ID:???
あ、いっこ上ので1000スレ超えって言ってますけど
1000レスの間違いですスイマセンごめんなさい
1,000スレ=10,000,000レス行くには天文学的な年月が必要でしょうね

今年の書き納めがこんな訂正とか、私もさえないなあ(笑

1344名無しのサンドバッグ:2012/12/31(月) 23:14:03 ID:Uq8yr2dE
>>1342
意外とちょくちょく持ってないのもあったw
ありがとー

1345名無しのサンドバッグ:2012/12/31(月) 23:48:46 ID:AnlDe56o
>>1337
申し訳ないですがファイル名じゃなくて番号教えてください…

1346名無しのサンドバッグ:2013/01/01(火) 00:08:09 ID:2sErDkp2

         ハ            ヽ       、ヾイイィィ
         { ヽ          _ )     ミ: : : : : : 彡
   |\  ヽ、  ヽ、`ヽ、____ ,/ //`)   _彡〃::::::::::ソ
   ヽ ヽ、_ヽ二ニ=──'"    /丿ソィY_,/ ̄`〕 〉リリ从
    ヽ             ,>'_,, -‐'"| l {_,,ィ_/、ィl/ ヘ                
      ヽ、  ──  __,、-'" .< _, >''"      r‐'"´   .∧
      /``──'"´  /::::::::::::::::::| ))     / ___  {   ヘ    
     //  /´ ̄ ̄´ /:::::::::::、 :::: |リ'     /  / . 丿./  / 〉
      { /      ノ ̄`Y::::〉_,ノ      ,'   ,'   ,':::ゝ/: |     
      ∨      /    |/´      __ノ '´/   .::::::/{|  }
           _/:>、  l,, ィ===ァ'"´ ̄   /   /:::::/ Y |
          ヽY、/ヽ、ヽY::::::::_ノ-ゝ───'   /::/   ヘノ
           |  `ヽ、_ .ゝ-'" \ _/: :ヘ、_/ィ´
           {    〉'ヽ、   ./: : : : : : : :  ̄|
           |    /   `>´: : :ヾ: : : : : : : :/
           |   ./   ./: : : : : : ィ─ィ: :/
           |  /  ./: : : : : >'"ヘ 〈: : : :`ヽ
    _,ィ=-──‐'  / /: : : : :>'    ヽヽ: : : : ヘ
..r‐''"´__{{_____./ |: : : : /         `ヽ: : : ヘ
/ /´           }: : :.Y           ヽ: : :ヘ
{__{            /: : :./             Y: : :〉

1347名無しのサンドバッグ:2013/01/01(火) 00:16:09 ID:LLAzzNEQ
>>1340
全然、更新されてなくてこっちのレスが見れませんでした。
解決しましたんでスルーして下さい

1348名無しのサンドバッグ:2013/01/01(火) 00:53:52 ID:sEqC386I
あけましておめでとうございます!
今年もいい顔面パンチがありますように

13491:2013/01/01(火) 22:04:14 ID:???
>>ALL
2013年ですね。皆さんあけましておめでとうございます。
昨年も私は変態の皆さんに言葉に尽くせぬ程、お世話になりました。
本年もどうぞこのスレをよろしくお願いいたします。


ということで、別に新年だからってわけでもないんですが
やってるやってる言ってた例のSSを、せっかくなのでちょっとずつ貼り始めます。

話は大筋で最後まで一応できてますが、文章化が終了していない箇所が多々ありますので
この後は出来次第、不定期に投下していく予定です。
今度のやつは、一回で貼るのは「3レス」にしてますので、本文を3レス貼ったらその回は終わりです。

それから、今回は非常にニッチでマニアックで心の屈折し切った実験的シチュしか本当にありません。
過去にやろうとして「これはいくらなんでも」と思い留まった事だけ意識して集めてますので
(つっても、美少女に男がボッコボコに殴られるのは変わらんのですが)
こりゃーもうダメって思った方はタイトルでさっさとNGにして頂ければ便利かなと思います(笑

13501:2013/01/01(火) 22:05:05 ID:???
連志別川(一) 蒼い眼の少女

未だ蝦夷地の辺境には、地図に名が残らぬ地が多い。
おれは、一匹狼の冒険者・・・と言えば、多少は聞こえがマシだが
あてもなく未開の地に挑戦してみたくなる、まあ冒険狂いといった方があってる・・・そういうヤツさ。

ボロボロになった地図を広げる。親父の遺品の一つだ。掠れた汚い字と、おれが朱で書き足した字が入り交じっている。
遺品とは言っても、親父から手で渡された品ではない。去年、鹿撃ちの弾を探していたら納屋の隅から出て来たものだ。
確か、あれはちょうど十一年前だったか・・・おれが、やっと種子島の使い方に慣れてきた頃の話だ。
親父もおれと同じ、冒険者だった。今より更に謎に満ちていた蝦夷地内陸の山々を、躰ひとつで突き進んでいたのだ。
そしてある日、「北へ行く」と言い残し家を出て・・・それっきりだ。母は・・・その顔すら一度も見た事がない。
親父は、蝦夷地の更に北の最果てを目指し、冒険の中で死んだのだろう。だが「今の」おれは、親父を恨んではいない。

それからおれは今まで、この身一つで北の自然と戦ってきた。生への渇望が、そしておれを置いて消えた親父への憎悪が
親父から貰ったこの鉄の躰を、更に鋼の如く鍛え抜き技を磨いた。そして、山を駆け巡っている内に腕っ節が認められ
いつの間にか測量の任に就き、今のおれがあるって訳だ。浦賀に現れた黒い船が、既に箱館にも来た事は知っている。
江戸の都が、時代が蝦夷図に飢えているのだ。おれは武士の出でも何でもない。まさに「猫の手でも借りたい」って奴だ。

だが、おれは猫にも幕府の飼い犬にもなるつもりはない。おれの求めるものは今までと何ら変わらぬ、命を燃やす冒険だ。
実際、測量なんてのは建前・・・この松前の山を拠点に、お上のお墨付きで勝手に冒険させてもらえる、いい仕事なのさ。
藩の役人すらおれを恐れて近づかない。おれが死んでも、誰も泣いてくれる奴などいない。つくづく「いい」仕事さ・・・

さて・・・吹雪の中、誰が建てた物かは知らぬが、小屋から小屋へ地図を頼りに橇を引いて来たが、ここまでのようだ。
道が終わっている。崖と崖に挟まれ、急激な階段状の上り坂になっているのだ。少なくとも橇が通れる幅と傾斜ではない。
だが、まだ奥へ行って引き返すに充分な食糧も弾もある。鹿は天の神が人に与えていると言うが、本当にいくらでもいる。
せっかく長い冬も終わりに近づいた、羆の眠る時期を選んで来たのだから、むざむざ尻尾を巻いて帰る理由はない。
最後の小屋へ引き返し朝を待った後、おれは橇で引いていた己の荷を一気に背負うと、聳える雪山へ挑む事にした。

ふん!・・・荷を背負い直す。余りの膂力に、自分でも笑ってしまう。武器、食糧と合わせて軽く三十貫は、あるだろう。
おれの躰はでかい。しかも筋肉の塊だ。並の馬では乗り潰してしまう。松前でも、異人と間違えられた事は数知れない。
売られた喧嘩を買った事すら、ただの一度もない。人間が相手では、おれは殺さずに懲らしめる自信がなかったのだ。
街中での下らん揉め事は、大概、銅銭一文で平和的に解決出来た。指でちょいと摘んで二つ折りにしてやればよいのだ。
親父が生きていれば、恐らくおれはここまで強くはなれなかっただろう。十一年も見ておらぬから、顔も忘れたがな・・・

それに、おれはどういうわけか、寒さには滅法強かった。今も、正面から水平に叩き付ける吹雪が気持ちいいくらいだ。
おれと親父の決定的な違いは、この「冷気への耐性」だ。これは生来の能力で、日々の修練で身に付けたものではない。
親父と行った最後の鹿撃ちを思い出す。おれも親父も吐く息は白く濁っていたが、白の「濃さ」がまるで違っていた。
松前の酒場でしこたま飲んで雪に埋まったまま翌朝を迎えた時には、おれは本当に人間なのか自分でも疑ったくらいだ。

さて、親父の名が記された地図は、丁度ここらで白紙になっている。つまり親父は、この周辺で引き返したという事だ。
おれは、冒険者として親父を超えたかった。だから、ここまで来たのだ。頬を痛い程張って、気合を入れる。
狭い獣道を進む。次第に道すらも無くなり、人の分け入る事を拒むかのような朽木の網を大鉈で薙ぎ倒し踏み越える。
「引き返せ」「これ以上行けば、死ぬぞ」・・・まるで大自然の脅威が、おれにそう警告しているかのようだ。
――やはり、あいつらと親父の地図が言う通り、何もないのか・・・
松前から二十日の道のり・・・当然、帰りも同じだ。この峠を越えて何もなければ、悔しいが・・・退かざるを得ない。
山を登りきったおれの眼下に、人はまばらながらも、かなりの広さの集落が飛び込んできた。そうこなくっちゃな・・・!

13511:2013/01/01(火) 22:05:35 ID:???
連志別川(一) 蒼い眼の少女

村の人間は、大柄なおれを警戒し刃を向けた。しかし、おれもここで死ぬわけにはいかない。大鉈に手を掛けたその時
「あなた・・・だれ?・・・どこから?」
意外・・・!それは、懐かしい和人の言葉。しかも、透明感のあるその声の主は・・・年端も行かぬ、美少女だった。
入り込んだ和人の子孫であろうか、体格のいい男衆の中で、一際その幼さと小ささ、儚げな容姿が目立ったが
凛としたその美声が醸し出す緊張感が、全ての村人を一挙に凍り付かせた。死の静寂の中、その視線が村人を薙ぎ払うと
次々と彼らの刃が降りて行く。最後に氷の視線は垂直に近い角度でおれの眼球を貫き、おれも愛鉈を雪に突き刺した。

少女は精緻な蝦夷文様の装束でその身を覆い、衿に縫い合わされた厚手の頭巾は、その額と眉までをも隠していた。
おれの胸にも満たぬ、小動物を思わせるようなその体躯・・・そして生白くふっくらとした唇が、おれの目を癒し
鈴の鳴るように涼やかな声で語られる、懐かしい故郷の言葉が、おれの心を溶かしてくれた。
眩しい程の白地に濃藍が染められた装束は大人の為の物なのか、余った裾は雪面に柔らかく波打ち拡がっている。
特に、膨らんだ袖の生地が裾以上に過剰に余り、その先端が今にも地に付きそうな所が、却って愛らしさを感じさせた。
そして、雪の積もった頭巾の奥からおれを鋭角に見上げる、大粒の宝石のような蒼い眼・・・これが最も印象的だった。
――綺麗だ・・・
魂を滾らせる、静謐なる美。熱い息で視界がこれ程に曇る事など、初めてだった。・・・おい、おれは何を考えている?
やがては孤独の中で死ぬおれには、どうせどうでもよい事だ。それより、この膠着した状況を何とかせねばなるまい。

大男が、雪に片膝を突いて少女に耳打ちする。少女は男を黙殺したまま、凍て付くような視線をおれの眼球へ注ぎ続けた。
この男が村を束ねているのだろう。体格ではおれに及ばないが、なかなかいい勝負だ。おれに似た太い首と精悍な眉が
村の長としての貫禄を醸し出す。獣と格闘したのだろうか、無数に傷痕の刻まれた顔が歴戦の猛者である事を示していた。
少女は無表情でおれを見据えたまま、立木を指さした。正確には、少女の袖が示したのだ。袖の内部は、決して見えない。
袖の先には、おれの長い腕でも片抱えにやや余る程の、犬槐の枯木が聳えていた。蝦夷に挑む山男ならば、知っている。
硬く朽ちにくい木質。彼らにとっての、この樹の用途・・・それは、墓標だ。おれは、命を試されている事を直感した。
ふん、面白え・・・!愛鉈を右手に取る。常人では両手で持ち上げる事も難しいだろう、刃渡り三尺三寸の業物だ。

「ぬうう・・・ぬぅんっ!!・・・ぬおおりゃあああっ!!!」
おれは大鉈を横薙ぎに振り抜く。これ程の死力を振り絞ったのは、冬眠を逃した若い羆、穴持たずに追われた時以来だ。
犬槐はおれの胸の高さで切り株になっていた。今度は両手で上段に構えると、十貫の鉄塊を轟く大絶叫と共に振り下ろす。
「イ、イメル・・・!」
男衆から、驚愕の声が上がる。おれの膂力は犬槐を根本まで真っ二つに引き裂き、凍った大地までも叩き割っていた。
暫しの乾いた静寂の後、顎髭の大男とおれは抱擁を交わし、歓声が巻き起こった。おれは客人として認められたのだ。

食宴の後で、古い言い伝えらしき話を聞いた。村のそばを流れる川だけは、渡ってはいけないのだと。
大男の話によれば、神域であるその川を侵せばたちまち死神が現れ、魂を奪ってしまうのだという。
だからこそ、その川と険しい山に囲まれたこの村に訪れる者は、誰一人としていなかったのだと・・・
少女を介して聞いた事だが、語りながらも、決して眼を合わせようとしない大男の様子が、死神の存在を確信させた。
川の「死神」・・・おれは、羆の事だと直感した。だが、冬眠から覚めるには明らかにまだ早い筈だ。
死神とやらが獣ではないとすると・・・その川は容易く人の命を奪う程の急流と水深を持つ、恐るべき難所なのだろう。

13521:2013/01/01(火) 22:05:56 ID:???
連志別川(一) 蒼い眼の少女

あれから十日余り、他の言葉は全くわからないが、おれに「イメル」という名が与えられた事だけはわかった。
少女に聞いた事では、それは「稲妻」を意味する言葉だという。裂かれたままの犬槐の木を見て、おれは頷いた。
付き合ってみればいい奴ばかりだ。気のいい大男と村の男衆に、おれ流の喧嘩相撲の稽古を付けたり
持って来た酒と村の酒を皆で飲み比べたり、腕っ節を活かして薪運びや鹿狩り、雪除けなどの力仕事に励んだりと
村の皆とも家族同然に打ち解け、思わぬ活動拠点が出来た。おれには立派な「チセ」というらしい家も与えられた。
なぜかこの村では、人よりチセの数の方が多かったのだ。重厚な造りのチセは、新たな我が家の安らぎをおれに与えた。
そして最もおれに北の地で生きる活力を齎したのは、少女の存在だ。思えばあの子がいたお陰で、今のおれがあるのだ。

だが・・・おれがここへ来た目的はあくまでも、未開の地の探索である。他の和人の足跡を辿る物見遊山では決してない。
誰も踏み込もうとさえせぬ山や川を誰よりも早く見出し名を付け、それを後の世に残す事こそが、おれの生きがいなのだ。
おれは親父の地図を広げて薪火にかざした。やはりそうだ・・・この川の向こうからが、白紙になっている・・・!

おれは次の日、食事を済ませた後、散歩に出ると少女に偽って、その恐ろしい川とやらの様子を見てくる事にした。
馬橇どうしが余裕を持ってすれ違える広さの「緑と緑の隙間」が、村から伸びている。しかし、人の往来は皆無の為
おれの肩まで積もった雪を掻き分け、踏み固め、それを「道」にする必要があった。借りた鉄鋤で柔らかな雪を掬っては
左右に聳える蝦夷松の森へ投げ捨てる。粉雪が煙る中、目標へ近づく度に熱く滾る高揚感が、おれに疲れを忘れさせた。
どうにか川までの一本道を切り開いた頃には、夕暮れになっていた。渡れそうな所は、たったの二箇所しかなかった。
村の高台から見えるほど近くに下流の渡り口、そして村から半里に余るほど離れた場所に、上流の渡り口がある。
下流には、橋を叩き壊した跡があった。村人に見つからぬよう川に挑むには、遠い上流から入る他にないだろう。
水嵩はせいぜい太腿程度、幅は大股で三十歩といったところか。おれも一応は測量士だ。見るだけで大方はわかる。
拍子抜けする程、余りにも穏やかな川だ。これならあの子ですら、歩いて渡れるだろう・・・「死神」とは、何なんだ?

「川・・・行ったのね」
少女が、言った。その蒼の瞳は、既におれの好奇心を見透かし、試していたのだ。おれに鋤を貸したのは、少女だった。
正確には少女の視線を受けて、大男が持って来たのだ。あの少女が見せた、大男を睨み付ける氷の眼光が忘れられない。

広い村だが、最低限の除雪はされている。散策に道具は不要だった。おれは思わず、少女の前に跪いて言葉を待った。
・・・まるでこれでは、母親に叱られる子供だ・・・「母」を知らぬおれは、その緊張に不思議な安らぎを感じていた。
少女は呆れたようなため息をつき、おれを見下ろすだけで、怒らなかった。おれは饒舌になって川の様子を正直に話した。
秘境の地の美少女と、同じ言葉で、同じ秘密を共有する。それだけで、おれの心は大いに癒されたのだ。
おれは知らないが・・・恐らくおれに「家族」がいれば、こういう暖かな気持ちが心に満たされるものなのだろう。
「死ぬよ」

ふ・・・「死ぬよ」、か。おれは、少女のこういう、素っ気無いような、涼やかで簡潔明瞭な喋り方も、好きだった。
あの子も、川の死神を信じているのだろう。今日はもう、やめにしておこう・・・おれは、与えられたチセへと戻った。

次の日、降り続いた雪が止み、日が照りつけてきた。おれは少女の言葉こそ気になったが、その川に挑む事を決意した。
水深はおれの膝の皿を覆いわずかに越す程度で、流れも止まったように遅い。まさに今日が最高の好機・・・!
危険を冒すからこそ、おれは冒険者なのだ。しかし・・・おれは、震えていた。決して、寒さからではない。
それは、未踏の地を侵す快感か、未知なる邪悪への恐怖か・・・おれは武者震いをおさめるため、川に用を足した。

さて、川だ。万一にも流されて溺れる事の無いよう、装備は整えてある。仕事の後の暇潰しも兼ねて、皮を剥いだ後の
白樺から二本の杖を削り出しておいた。先が鋭い三叉になっていて、川底の砂を噛む。槍としても充分に使える代物だ。
――やはり、大した事はないな・・・
おれは「死神」の脅威など忘れ、この流れの先でおれを待ち受けているだろう、未踏の神秘へと足を進めた。
親父を超える時が、ついにやってきたのだ。

13531:2013/01/01(火) 22:10:11 ID:???
あ、毎回お決まりなんですが、今回は昔のお話だけに、なおさら書いておかないといけませんね。
「この文章はフィクションであり、実在する、或いは歴史上の人物、団体、および地名とは一切関係ありません」と。

あと、自然の中でってのが今回の肝なんでしょうが、私はモデルの地を数度取材旅行(要するに観光ですけど)
で訪れただけのにわか北国愛好家なので、そこら辺で矛盾を見つけた方、あるいは道民の方はどうかお許し下さい。

それから勝手に貼っておいて何ですが、今回ははっきり言って導入部だけです。
残虐暴力描写は、まあそりゃあ次からは・・・つーことで、まあひどいのでお察し下さい(笑
ですのでこれから読むって方は、どうぞ自己の責任でご覧下さい。
後はぱんちシーンについて、絶対に真似をしないで下さい。今回のをやると、どれも間違いなく死ねると思います(笑

最後に、今回出てくる単位について補足しときますと
一貫=3.75キログラム
一尺=30センチメートル
一寸=3センチメートル
・・・とゆー感じです。たぶんこれからもアラビア数字や外来単位の類は一切出て来ないと思いますので
そーゆー単位系については出てき次第、補足を入れていきます(あんまりないと思いますけどね


まあ、SSはスレの賑やかしに置いとくだけですので、皆さんは何事も無かったかのように
妄想でもネタでも雑談でも・・・このスレを今まで通りご利用下さい。

1354名無しのサンドバッグ:2013/01/02(水) 00:25:58 ID:AELH1jyU
>>1
あけおめ!
いきなりSSとは思いませんでしたw
設定が凝っててこの先楽しみです

1355名無しのサンドバッグ:2013/01/03(木) 00:45:15 ID:.YVRplsk
>>1
あけおめだ
お正月といえば羽根つきだろjk
ボクサー姿の少女2人に 羽の役やってっと言われてパンチで羽根つきされたい
あと正月といえばコマまわしだろjk
ボク娘に コマの役やってと言われて すーぱーすぺしゃる大回転ふっくをくらって
コマのように吹っ飛びたい
こんな初夢みたいw
それはそうとss頑張ってね 期待してるよ 今年もヨロシク

13561:2013/01/03(木) 20:56:32 ID:???
皆さんこんばんはー
とりあえずSSの続きを貼っときます。

13581:2013/01/03(木) 21:04:06 ID:???
あ、ごめんなさい
間違えて違う回(しかも未完成)を貼っちゃいました(笑
えーと、次は(二)ですよねー・・・えーどうも失礼致しました。これから貼りまーす。

13591:2013/01/03(木) 21:04:40 ID:???
連志別川(二) 未知なる邪悪

十三、十四・・・測量の癖で歩数を数えながら川の真ん中に差し掛かった時、突如として、異変がおれを襲った。
上流から猛吹雪が、一瞬の内に巻き起こったのだ。おれは反射的に背を向け、恐るべき冷気と暴風を背中でしのいだ。
体温が急激に奪われていくのが、わかる。両手の感覚が麻痺し、川底に突いていた杖が、下流に吸い込まれていく。
常人ならばこの冷温地獄に、既に心の臓を止められているだろう。生まれつき冷気に強いおれだからこそ耐え抜けたのだ。
その有様は、川というよりも・・・「滝」を水平にしたかのような、恐ろしい激流だった。冷気には何とか耐えても
流されれば、確実に・・・死ぬ!おれは、必死に両足を川底に踏ん張り、耐える他なかった。

吹雪が収まるまで、おれは、決して取り返しのつかぬ異変に気が付かなかった。足下の水が、凍り付いていた事に。
あの激流が幻であったかのように、川面は全くの水平を取り戻していた。「水面」が、「氷面」に替わった事を除けば。
もはや、左脚も右脚も、一寸も動かせない。硬い氷は両膝の関節を丸々飲み込み、おれの両脚を二本の棒と化していた。
氷面を両手で押して脚を抜こうにも、びくともしない。まるで、死神の操る地獄の亡者に魂を掴まれているかのようだ。
そして、凍った川の下流から、何者かが近づいてくる。まさか・・・羆か?おれの心までもが、凍り付いた。

おれは、その姿に魂を奪われた。それは野の獣ではなく、幼い少女だった。
未知の地で、未知の境遇で出会う、未知の少女の存在感に・・・足を凍らせながらもおれの脳は焼かれ、只々圧倒された。

驚いた事に、川も凍るこの寒さで、何も身に着けてはいない。その細い首筋も、臍も、脚も、剥き出しになっていた。
幼子だが、松前でも見た事のない、美人だ。ドキドキと不安を感じさせる程に白く、透明感のあるきめの細かい肌。
黄金色に輝く髪は濡れたような光沢を湛え、柔らかに波打ちながら肩に付くか付かないかの長さまで伸びていた。
脚は和人では考えられぬ程にすらりと伸び、その眩しい肢体の神秘は人間と言うよりも、精霊や天女の類を想起させた。
雪の彫刻の如く日の光を反射し、神々しいばかりの美を魅せつける少女の姿から、おれは一刻も目を離せなかった。

そして、氷の刃を思わせる蒼い眼とは裏腹に、その両拳のみを覆い隠す、鮮烈な真紅に煌めく色彩がおれの眼を撃った。
はち切れんばかりの内圧が、その磨き抜かれた革の表面を膨れ上がらせている。少女の細い手首に紐で厳重に固定された
「それら」は、寒手袋と言うには、余りにも肉厚すぎた。親指部分だけが独立した「それら」は少女に固く握り締められ
苦悶するかの如く皺を寄せ、二個の球に近かった。おれには禍々しく照り光るそれが、真に何なのかわからなかった。
わからないだけに、更に得体の知れぬ不安がおれの魂に突き刺さる。なぜ拳だけに・・・?何の目的で・・・?

斬り付けるような冷気の中、裸足で凍った川の真ん中を、一歩、また一歩と近づいて来る、日輪に光り輝く美少女。
脚が凍っていなくとも、おれは一人の男として、その場から少したりとも動けなかっただろう。
不思議と、吹雪を受けた背中どころか、今まさに氷に閉ざされている下肢にすら、おれは痛みを感じていなかった。
そして少女は、立ち止まった。おれの、目の前で・・・寒風に髪が艶かしく靡き、滑らかな純白の額が更に露わになる。

少女は小柄だが、氷の上に立っている。したがって結果的に、おれは僅かながら見下ろされた。
親父が消えてから、おれを見下ろす人間には一人も出会った事がない。おれの本能が、年端も行かぬ少女を恐れさせた。
――何を・・・何を、おれは、されてしまうんだ・・・?
身も凍る恐怖とは裏腹に、熱く煮え滾らんばかりの好奇心と興奮に、おれは包まれていた。

13601:2013/01/03(木) 21:05:06 ID:???
連志別川(二) 未知なる邪悪

「おしっこ、したわ」
少女は和人の言葉で、確かにそう言った。おれは、心の臓が口から飛び出そうになった。
更に、その氷の眼が、近づいてくる。後ずさる事も出来ず、仰け反ったおれは、更に鋭角に見下ろされる格好となった。
おれと少女の視線が斜めに交錯し、その直線の中点で、三度、爆発が起こった。乾いた破裂音に、おれの鼓膜が
そして魂までもが、戦慄した。張り詰めた真紅の拳は、おれの目の前でお互いを叩きのめし、淫靡に歪ませていた。
轟く破裂音とは裏腹に、柔らかそうに見えたその表面は、殆ど圧し潰れていない。脳裡に興奮が恐怖と共に増殖する。

「あなたがしてるの・・・ちゃんと見てたもの」
おれが否定の言葉を口にする暇も与えず、少女は一陣の疾風の如く飛び退き、見た事もない構えを取る。
半身から斜めに躰を傾け、赤く艶やかで禍々しい二つの拳を、顎の高さで構え、氷の上を風の如く舞い踊る。
こいつ、やる気か・・・!初めての人間相手の喧嘩が、こんな光り輝く美少女と・・・思考が、とても追い付かない。
格闘技・・・それも、一足でおれの間合いに飛び込んでその拳を叩き込んでくるだろう事は、わかる。だが・・・
それが「何なのか」が、わからない。無意識におれは両腕を広げ、己の唯一知る相撲の構えで対峙せざるを得なかった。
膝関節は完全に封印されて動かせない・・・殴りに来た腕を、取るしか、な、いっ・・・!?

「ぶうッ・・・!」
紅い小爆発と共に、鼻から勢い良く迸ったおれの鮮血が空中で凍結し、紅い水晶のようにキラキラと舞った。
疾すぎて、拳の出掛かりを眼で追う事すら出来なかった。いつの間にか、おれの視界が紅に閉ざされている。
おれは今まさに、美少女に、顔面を殴られたのだ。そして二の矢、右の拳は・・・おれの鼻先で、寸止めにされている。
強烈に降り注ぐ日輪が、その握り締められた右拳の光沢を、皺を、威容を、嫌という程におれの脳へと刻み付ける。
心の臓が、倍の激しさで暴れ狂う。おれには、その真紅の拳が視界を覆う二十拍余の間が、永久にも感じられた。

「ひゃあっ、あひっ・・・!」
潰れた鼻に押し付けられた拳。じんわりと鼻の奥に拡がる鈍痛と恐怖感に思わず、女のような悲鳴を上げてしまう。
少女が力を込めるごとに、軟骨が歪む異音と共に、弾力ある拳が自ら潰れながらおれの肉に食い込んでいくのがわかる。
溢れた涙が凍りゆく痛みと、躰を仰け反らせる燃えるような屈辱感、そして少女の美貌が、おれの脳に一挙に殺到する。
謎の吹雪、謎の凍結、謎の少女、謎の拳打、謎の激痛、謎の圧迫、謎の屈辱・・・
様々な謎の中、おれは己の骨肉を蹂躙しているこの赤く丸々とした拳当ての正体を探った。

自らの拳を痛めず人を打ちのめす為、何か詰め物をした、柔らかな革の籠手といったところか・・・
少なくとも、この弾力では「武器」とは言えまい。自らの拳を砕く躊躇を無くす為には、極めて有効なのだろうが・・・
おれは鼻を潰されながら、頚椎を軋ませつつも、必死に少女の姿を眼球筋で追った。
透明な氷の上に立つ細身の少女は、まるで空中を舞う妖精のようだった。妖精の眼は、おれを蔑み嗤っていた。
真っ赤なその拳が捻られ、鼻の軟骨をメチメチと音を立てて移動させる。鈍痛が脳を貫き、思考は恐怖に塗り潰された。

まさか、この子が・・・こんな可憐な美少女が、「死神」だとでも言うのか?
そんな、そんな筈は・・・

13611:2013/01/03(木) 21:05:28 ID:???
連志別川(二) 未知なる邪悪

少女は、突然に右拳を引き戻した。反動でおれは勢い良く前にのめり、ビチビチと飛び出した鼻血が氷面に
真っ赤な池を造り、瞬く間にそれは凍り付いた。少女は、真っ白な息を吐き苦しみに喘ぐおれの顎に左の兇器を当てがい
持ち上げると、おれですら痛みを感じる程に冷たく「透明な」吐息を鼻腔に吹き掛けながら、死神の笑みを笑った。
それは、稚児が虫けらをいたぶり苛め殺す時に見せる、人間的な良心の呵責の一切入らぬ、純粋な好奇心の笑み。
凍り付いた。顎を伝い氷柱と化すおれの鼻血だけではなく、おれの心までもが。
おれは顔を殴られる痛みと恐ろしさを、全く知らなかった。おれに殴り返されれば死ぬ事を、誰もが判っていたからだ。
間違いない。この少女は、これからおれの顔面を打ち据え、息の根が止まるまで殴る気だ。おれは・・・殺される!

おれの中で、自制し続けていた「何か」が弾けた。握り拳を作り、恐怖の絶叫と共に少女の整った顔めがけ突き出す。
少女の姿が瞬く間に遠くなり、急激に踏み込む勢いを利した左が迫り、おれの視界を赤に閉ざし日輪を見上げさせる。
その、鮮やかな打撃の後の先に見とれる暇もなく、左右の連打がおれの顔面を何度も芯から捉え縦横無尽に弾き飛ばす。
牛の革か・・・光を浴びてテラテラと艶めく拳、それが発する独特の香気に、おれはむせ返るようだった。
そして、その匂いにおれの鮮血の臭いが交じり合い、おぞましい破裂音と鈍痛と共に、次々に鼻腔に叩き込まれて行く。

屈辱に右腕を突き出せば、左の拳で叩き逸らされ、細い腰の捻りと後ろ足の蹴りを活かした右の真っ直ぐな拳が
がら空きの顔面に正面から激突し、鼻の骨と背骨が激しく軋み海老反りに噴き出した鮮血が寒空に弧を描き水晶と舞う。
今の返し撃ちは・・・効いた。そして・・・美しくすらあった。点々と返り血を浴びた美少女の像が二体に分裂する。
眼を擦ると、腕に付いた血糊に悲鳴を上げてしまう。少女の腕力は、その儚くも美しい容貌に見合ったか弱さしかない。
しかし、未知の技巧の鋭さと、一切躊躇いの無い幼さ故の残虐性が、おれを確実に死の淵へと追い詰めて行く。
これはもはや「喧嘩」ではない・・・言葉で表すとしたら・・・「処刑」、或いは「惨殺」・・・!

鼻の奥につぅんと拡がり脳を犯す激痛。おれは溢れ出す涙を隠すように蹲り、そして、見てしまった。
そうか、足、足の指だ・・・。こいつは、氷を足の指で「噛んで」やがる!
その伸びやかな後足で氷面を削り取る程に激しく蹴り、その爆裂の勢いを前足で急激に「噛み止める」事で
全身の速力に変換し、足腰の捻りと共に、その脅威をおれの顔面目掛けて叩き込んで来るのだ・・・!
間合いを開け、拳を垂れ下げ、薄ら笑みのまま垂直に跳ねる少女。ふさふさと揺れる髪からは清冽な香りが漂い
吐気を催す血潮の臭いと混じり合い、紅く膨らんだ両拳からはおれの鮮血が滴り真下の氷面を朱に染めていく。
少女の拳闘技は、拳のみの業ではない・・・真に恐るべきは、そのしなやかに伸びた「脚」なのだ・・・!

トン、トン・・・トン、トン・・・
華麗に空中を舞う少女の拳が、持ち上がった。その時を待つ。少女は着地と同時に、氷を蹴り踏み込んで来る筈だ。
今度はおれの鉄拳で、後の先を取ってやるのだ。一撃だ。おれの金剛力で一撃さえ入れられれば、それで、終わりだ。
そして少女の姿は、おれの視界から消え失せた。立ち竦み怯えるおれの顎が「真下」から勢い良く押し潰された。
左の、掬い撃ち・・・少女の技巧に魅了される暇も無く、右の拳が視界の下半分を一瞬に覆い、激痛が追ってくる。
鼻が正面から、またも殴り潰された。無防備の顔面への一撃に、おれは引き付けを起こし、自らの鼻血を吸い、溺れた。
むせ返り、鼻と口からボタボタと溢れ垂れる鮮血を震える両手で受け止めると、たちまちおれの手の中で凍っていく。
それは、おれの魂が美少女の拳の舞いの前に、凍て付いて行く有様を表しているかのようだった。
こいつには・・・「死神」という言葉すら、生ぬるい・・・!もっと・・・もっと、邪悪な「何か」だ・・・!

13621:2013/01/03(木) 21:06:52 ID:???
>>1354
あけおめのことよろですー。今年はたぶん、私は12月31日の23時59分ぐらいまでは変態続けてると思いますんで
まあ適当に、気が向いたらこのスレに遊びに来てやって下さい。
SSについては・・・今回はこんな好き勝手やって本当にすいません(笑


>>1355
あけましておめっとさんでーす。今年も夜露死苦(昭和
早速、新春の風流を感じさせる遊びで来ましたねー。

そーだなあ・・・あれっすね、お正月の定番で「福笑い」とかどうっすかね。俺が福笑い役で。
女の子Aが俺を元の顔が判らなくなるまで殴って、女の子Bがそれを殴って何とか戻そうとするけどもう手遅れとか
あとは・・・「いろはかるた」もありますね。俺が読み手で。
余りの滑舌の悪さを治そうと、女の子Aと女の子Bが俺の顎の骨格を真心込めた拳で修正(意味深)してくれるとか
「すごろく」もいいかなあ。ほら、昔「志村けんのバカ殿様」でやってた仕掛けマス入りみたいなやつで
女の子A,Bの眼光に負けて、好きなだけ書いてもいいよだけど「撲殺」は一つだからねと念を押したら
[ふりだし]→[二つすすむ]→[ふりだしに戻る]→[一つ進む]→[撲殺]→[一つ戻る]→[五つ戻る]→[上がり]
みたいなー

そーいや初夢はまだ見てないっすね。いい夢見れるといいなあ。
SSは、まあ・・・ご期待に添えるよう何とか(笑

1363名無しのサンドバッグ:2013/01/04(金) 01:57:19 ID:ash/gq0.
>>1
いいねえ
ボクシングがなかった時代なんだな
死神ちゃんのモデルが大体想像出来たw

13641:2013/01/05(土) 16:25:46 ID:???
連志別川(三) 加速する弾丸

未知の技巧は、熾烈な攻撃だけではなかった。少女は常に、おれの顔面を、その真紅の兇器の射程圏内に収めている。
逃げられない。おれは恐怖に駆られて、丸太のような腕を振り回す。だが、更なる挑発が、おれの魂を熱く弄んだ。
先刻から少女の足はその場より一歩たりとも、動いていないのだ。その上躰捌きの流麗さのみで、おれの努力を嘲笑い
無にする。いや、「無」ではない。紅い閃光が、六度瞬いた。左右左右左右の連打だ。ギラギラと輝く革の感触が
おれに眼球が弾け飛ぶ程の苦痛と混乱と屈辱と、名状しがたい渦巻く感情を、血の破裂音と共に爆裂させていく。

おれは空間を六度打ち、少女はおれを六度打った・・・おれは、狂乱の雄叫びと共に拳を少女の顔目掛けて突き出した。
その数、実に十二。十二発の紅い弾丸がおれの顔面を「滅多打ち」にした。だが今度の返し打ちは、今までとは違った。
おれの拳を「躱しながら」、少女の拳がおれの骨肉へと同時に叩き込まれて行く。まるで、おれ自身の金剛力がそのまま
少女の拳に乗り移り、おれの顔面へ叩き返されるかのようだ。流麗な動きの中であっても、全ての打撃は力強い脚捌きを
伴っておれの顔面を正確に捉え、確実に脳へ衝撃を蓄積させて行く。おれは打たれながらも、その格闘の芸術に酔った。
十三発目の、右の正面打ちが放心したおれを現世の地獄へ叩き戻すと、おれは両腕で顔面を守らざるを得なくなった。

少女は、くすくすと心底楽しそうに笑って再び距離を取る。その無邪気な様子は川に遊ぶ年頃の稚児、そのものだ。
おれの返り血を吸った波打つ金髪、広い額が日光を乱反射し、何とも形容し難い凄絶なる人外境の美を眼に焼き付ける。
艶かしく唇を歪め、右の拳を鞭のように振るうと、人を斬った刀の如く、川面に鮮やかな真紅の氷線が引かれる。
何という・・・何という、邪悪な笑顔なのか・・・!美しさが針を振り切り醜悪とさえ言える狂気の暴虐美がそこにはあった。
引き締まった臍、しなやかに伸びた脚・・・少女はおれの血を全身で吸い上げ、血化粧により更に美しさを増して行く。

己の鍛え抜かれた腕の中で、おれは顔を隠しながら、怯え切って泣いていた。こんな・・・年端も行かぬ・・・稚児に!
目が霞み、腕の僅かな隙間から覗く少女が、三人に分身している。まずい、さっきの返し打ちが「効いて」いる・・・!
医の心得もあるおれは、戦慄した。今度は眼ではない・・・おれの「脳」がいま、少女の拳撃により、犯されつつあるのだ。
だが、人間の脳がどの程度の打撃に耐えられるか、それを、おれは知らなかった。不安と恐怖が、絶望を呼び起こす。
一糸纏わぬ美少女による拳打ちは、再開されていた。まるで巨大なる血の雹が、無数に降り注ぐかのようだ。
おれの腕が、十貫の大鉈を片手で振り回す豪腕が腫れ上がり、無数に弾ける拳に骨が軋んでいく。

反撃を試みれば、その威力が正確に脳へと跳ね返される。脊髄を引き抜かれんばかりの恐怖が、涙すら凍り付かせた。
助けを呼ぼうにも、半里離れた村におれの悲鳴は届かず、村の人間ならこの川を恐れて近づかないに決まっている。
吐く息も凍る冷気の中、少女の凍て付く拳の雹にさらされ発熱したおれの上半身からは湯気が立ち上り始め
流麗な金髪を靡かせながら拳を叩き付ける少女は、薄赤い氷の絨毯の上で異国の舞いを踊っているようにさえ見えた。
狂気の少女は氷上で苦もなく宙を舞う。虚空に浮かぶような全身の躍動は、さながら神の輪舞だ。美しい・・・

おれの視界に、一気に血の赤が拡がった。しなやかな少女の格闘美がおれの脳を焼き、精神の緊張を一刹那だけ弛緩させ
鍛えられた腕と腕の間に発生した僅かな間隙に、少女のしなやかで細い腕、そして右の拳を割って入らせたのだ。
まるで、おれ自身が少女の拳を迎え入れているかの如きその無様さ、滑稽さは、幼く残酷な少女を大いに楽しませた。
メチメチと、おれは自らの鼻の軟骨を、玩ばれるに任せざるを得なかった。少女がその右拳を躰ごと捻り
抉り込むたび、激痛に両腕の機能が失われ、丸晒しになったおれの涙と絶望の表情が少女の嗜虐心に更に油を注ぐ。

圧迫の地獄から開放されたおれは、うなだれながらも、少女の、おれを再び見下ろすその好奇心に満ちた蒼い眼から
己の眼を逸らせずにいた。視線の中点で、またも三度の爆発が起こった。破裂音は、おれの命を吸い、湿っていた。

13651:2013/01/05(土) 16:26:11 ID:???
連志別川(三) 加速する弾丸

少女の艶やかな舞踏に、ついにおれは巻き込まれてしまった。誰にも止める事は出来ぬ、それは死出の舞踏だ。
一刹那のうちに、川の両岸、雲一つない青空、凍った川面、全ての元凶の少女が視界を上下左右に駆け巡る。
そして、溜めを作った右拳が微塵の良心の呵責も無くおれの眼球を抉り潰し、またも視界が縦横無尽に弾け飛び始める。
瞼も、頬も、顎も、鼻も・・・何発、どこを、打たれたのかさえも、わかりはしない。おれは少女の為の巻藁だった。
少女の責めはあらゆる角度から、あらゆる回転をもっておれの頭蓋と、歴戦の冒険者としての自尊心を吹き飛ばした。
脚捌きのたびに黄金の髪が波打ち、血塗れの額が見え隠れし、氷を蹴る音も異国の舞踏曲のようにおれの心を高鳴らせ
そしてその拳は容赦無くおれの顔面を抉り砕き、冷たく苛烈な現実世界へとおれの精神を引き戻した。

絶望に打ちひしがれれば、川面が朱に染まった鏡となり、おれの無様に蹂躙され尽くした顔を映し出す。
何という、何という醜さなのだ・・・!鼻は拉げ、両の瞼は腫れ上がり、唇は引き裂かれ、顎は歪み頬は・・・
突然に、美少女の紅い顔がおれの視界に現れた。おれは混乱した。少女に変身してしまったというのか?
いや、違う・・・!あの美少女が、何という事か・・・おれの顔を「真下」から覗いているのだ!
氷に背中で寝そべったまま、鮮血の滝をその整った顔で受けながら、少女は、逆さまに笑った。掌を振りながら・・・
間違いない・・・間違い、ないぞ・・・!こいつは・・・おれで、「遊んで」いるのだ・・・!!

おれは迸った殺意に最後の筋力を暴発させ、生き鹿の肉を削ぐ握力を誇る両手を、眼前の美少女の細い首へと伸ばした。
真下から「逆さまに」迫る拳が、見開いた眼球を軽快に弾いた。おれは天を仰ぎながらも、その挑発に更に狂気を滾らせ
全膂力で反動を付けた鋼の指先を振りかぶった。美少女が既に眼下に居らぬ事に気が付いた時には、もはや、遅かった。
膝関節の烈しい反発を活かした右の掬い撃ちがおれの顎を狂おしく跳ね返し、反動で戻るおれの「顎先」を、捻りを加え
更なる狂威と美しさを得た左が、僅かに、しかし正確に、掠めた。日輪を浴び、拳を掲げ飛翔する美少女を見上げながら
おれは、おれの躰がおれ自身の脳の支配を離れ、完全なる少女の所有物、即ち「玩具」へと堕ちた瞬間を、感じていた。

ふわりと舞い降りた少女は、軽く左拳を突き、おれを直立させる。そして構えに戻ると右拳を舐め、氷の笑みを笑った。
身動き一つ出来ず玩具にされる未知の恐怖に、おれは喘いだ。何の前触れも無く、閃光の如く撃ち出された少女の左が
おれの鼻骨に幾十度と破裂し続ける。おれは、自らの頑強さを呪わざるを得なかった。鍛え抜かれた筋肉はおれの顔面を
再び少女の前へと投げ出し、更なる鋭さをもって弾き飛ばす遊戯を少女に見出させるに充分だった。遊戯は、加速した。

血の遊戯を更なる高みへ導いたのは、少女得意の、右の正面突きだった。それは、最高の速力でおれの鼻骨に炸裂した。
背後のまだ辛うじて透明さを保っている氷に映し出された、おれのあられもない絶望の表情が急速に近づき、そして
ついには、激突した。新たな冷たい激痛がおれの顔面を襲う。同時に、邪悪に満ちた純粋な好奇心が、少女に芽生えた。

もはや、後は同じ事の繰り返しだった。
一度反動が付けば、もう、止まりはしない。おれは、最期の賭けに無様にも敗れ去った事を、理解せざるを得なかった。
おれの背筋と腹筋と頭蓋と脳と命は、全て少女の所有物、玩具として、その硬い右の拳と、背後の硬く凍った川面の間を
往復していた。この期に及んでも少女の拳打は、その流麗にして堅固なる脚捌きを忘れてはいない。
打撃の破裂音と氷への激突音がおれの魂に直接交互に響き、しかも、その間隔が徐々に、しかし確実に狭まっていく。
朱に染まる太刀の如く空間を斬り裂き噴霧された鮮血が空中で凍て付き、ハラハラと雪の如く舞い、川面に降り注いだ。
おれは川面に顔面から激突し意識を失っては跳ね返り、鼻梁に容赦無く右拳を撃ち込まれては意識を取り戻させられた。
確実に狭まる正気と狂気の狭間で、少女の右拳の軌道が徐々に変わりゆく事に気づく。
爆発的な後脚の蹴りと共に、肩と肘を捻り入れる少女。真紅の拳が破壊の螺旋と化し、美しくも激しくおれの魂を砕く。
洗練されゆく少女の拳打に興奮するかのように、凍った川面はおれを更に激しく撃ち返し、少女の拳が顔面へ炸裂する。
それはおおよそ人間の所業とは思えぬ、閻魔ですら正視出来ぬ程の、阿鼻叫喚を極める光景だった。

13661:2013/01/05(土) 16:26:33 ID:???
連志別川(三) 加速する弾丸

徐々に眼界が暗くなり、血の味と匂いが消え、耳鳴りが止み、意識が戻りにくくなっていくのが、わかる。
人間、死ぬときというのは、こういう気分がするものなのだろうか。無論、悔しかった。身震いする程の、屈辱だった。
だが何故か、そんなに悪い気は、しなかった。おれはいつか、冒険の中で、孤独に死ぬ定めにあったのだろう。
その日が、偶然、今日だった・・・ただ、それだけだ。羆に食われるくらいならば、いっそこの美少女の拳で・・・

少女の顔が、すぐ間近にある。冷たく透明な吐息が潰れた鼻に当たるのが、心地良い。
おれの腫れ上がった両頬に、ふっくらとしたあの真紅の拳が、あてがわれている。皮膚の感覚が、薄く戻ってくる。
そして少女の顔が近づき、鼻に、ふっと稲妻が走った。少女の桃色の唇は、おれの鼻血でどす黒く染まっていた。
その瞬間、全身からあらゆる熱が奪われ、心音が、そして「時」が、止まった。背を向け、下流へと歩き始める少女。
凍て付く桃色の雷撃は全身を駆け巡り、止まった時と鼓動が倍の激しさで動き出す。おれは硬直したまま立ち尽くした。

おれは、許されたのだ。小さくなってゆく少女は、まるで寒空へ消えて行く悪戯な冬の精霊のようだった。
しかし、おれは・・・もう、わからなくなっていた。少女が振り返ってくれる事を、今となっては心のどこかで
期待していたのかもしれなかった。もはや限界をとうに超えていたおれは、意識を閉じ、旅立とうとした。

それは、許されなかった。見えなくなった少女が、近づいて来る。それも、人間の限界を超えた異常な速度で。
何という事か・・・少女は氷の上を裸足で滑走しているのだ。まさに今、少女は一弾の弾丸だった。
おれは今、射殺される重罪人と何ら変わらなかった。いや、それよりも、現実は冷酷で非情だった。

その弾丸は、「意志」を持って、「加速」していたのだ。
少女が散々おれに魅せつけた、右脚の爆発的な蹴りが幾十重にも重ねられ、少女は光を纏った流星だった。
おれは、深く深く、後悔した。一瞬でも少女に「許された」と思ってしまった事を。
そして、倒錯と狂気に溢れた「期待」を抱いてしまった事にも。何故・・・何故だ・・・?

少女はおれの魂の歪みから生じた、激痛と屈辱と興奮に満ちた「期待」に、最高にして最期の破壊をもって応えた。
銃弾の如き速度で迫り来る少女、そして、目の前に紅い氷霧が立ち上る。踏み込んだ少女の左足がその速力を
一瞬にして噛み止め、足下の血氷が削り取られ舞い上がったのだ。その速力は、微塵の損失も無く右の兇器へと伝わる。
狂烈なる加速に銃弾の捻りを加えた艶めく右拳がおれの頭蓋に真正面からめり込み、全ての骨肉を圧し潰し砕き尽くす。
それは、決して人間へ、生きとし生ける全てのものへ向けてはならぬ、禁断の一撃だった。

幾十度も蹂躙され続けた川面の氷は、ついに開放された少女の狂気に耐え切れなかった。
川面は大亀裂と共におれの顔面を杭の如くめり込ませ、凍て付いた川に、おれの肉体による橋が「水平に」渡された。
そして・・・そして、おれは・・・なにも、わからなくなった。

13671:2013/01/05(土) 17:05:10 ID:???
今回はまあ、わりと痛いシーンもありますので、そーゆーのニガテって方は気を付けて下さい(貼る前に書けよw
見ての通り今作はまあこんな調子ですので、この先はもっと酷い(色んな意味で)ので引き返すなら今のうちです(笑

あと、新しく出てきた単位とか、読みにくい漢字について補足しときます。

一里=3.9キロメートル
一刻=2時間(「一刻の猶予もない」みたいな使い方だと「とても短い時間」の意になります)

橇:そり:雪の上で滑って遊んだり物を運んだりする木の板。
羆:ひぐま:猛獣。日本ではエゾヒグマが北海道のみに生息する(wikipedia丸写し
鉈:なた:包丁のでかい奴みたいな。相撲の技にも鉈ってのがありますね。立ってやるギロチンチョークみたいな形。
犬槐:いぬえんじゅ:木材。北海道では鉄道の枕木に使われたぐらい腐りにくい材質・・・とどっかのHPに書いてあった(笑
鋤:すき:スコップのイメージ。何か昔やってたお正月ゴルフ番組の「英語禁止ホール」みたいな感じになってきたなあ(笑
白樺:しらかば:皮は燃えやすいので松明なんかに使えます。私、北海道みやげで確か柳月の「三方六」ってゆーね
バウムクーヘンにチョコを掛けて表面を白樺の木のよーにデコレーションしたお菓子を貰ったことがあるんですけど
まあなんつーかそれが綺麗なもんでねー味もお茶うけに最適でこれをね以下話が長いので省略

13681:2013/01/05(土) 17:10:38 ID:???
>>1363
前回から登場の「川の少女」、チャームポイントはとにかくおでこですね。
思わずprprしたくなるおで娘ちゃんをご想像頂ければなーと(笑

モデルですか?・・・えーと、その件につきまして今の所は、あ〜、う〜、もうちょっとだけ待って下さい(笑
あと、ボクシングなんてお話の中では一言も書いた覚えがないのですけど、どうかなさいましたかねー

1369名無しのサンドバッグ:2013/01/06(日) 12:00:53 ID:d1wuZpCI
どうみてもボクシングです本当にありがとうございました
新年からガチで狂気ワールド全開な1さんが素敵

1370名無しのサンドバッグ:2013/01/07(月) 01:59:23 ID:hIzZG4sw
一挙放送記念
変態さんなら一択だね(ニッコリ)
ttp://viploda.net/src/viploda.net_2361.jpg

13711:2013/01/07(月) 21:14:44 ID:???
SSの続きを貼りまーす。今回はキツイ描写はほとんどありません。
初代AC版テトリスで例えるならレベル10ですね。落下速度がレベル9で一つのピークを迎えた後
レベル10でガクッと遅くなってプレイヤーを安心させる・・・そんな感じです(わかりにくい
逆にそーゆーシーンだけがお目当ての方は、飛ばしちゃっても大丈夫です。ようはつなぎ回なんで(笑

例によって難読語や種々の解説をやっときます。

鹿:しか:ジビエの中でも鹿は癖がなくて最高だと思いますね個人的に。でも生食はやめといたほうが無難です。
茅萱:ちがや:岐阜県白川郷などの合掌造りで有名な屋根材。
七竈:ななかまど:最上級品質の備長炭の原料になる、硬くて燃えにくい木材。
 七回かまどに入れても焼け残る程燃えにくいと言いますが、実際は七回も使わない内に炭になっちゃうらしいです(笑
 実にはソルビン酸という防腐剤が含まれているので(安ワインとかちくわのパッケージに書いてある食品添加物ね)
 秋の初めに付いた実が冬の終わりまで残り続けます。だいたい、最後は鳥に食べられてしまいます。

13721:2013/01/07(月) 21:15:27 ID:???
連志別川(四) 生と死の輪舞

「・・・イメル・・・イメル!」
懐かしい顔と声が、目の前にあった。大男が、村人が、一斉におれの名を叫んでいる。あの頭巾の美少女の姿は、ない。
躰じゅう、特に顔が熔ける程に熱く、息が苦しい・・・どうやらおれは、まだ生きているようだ。
暦のないこの村では、どれほどの時を要したのかはわからない。が、皆の様子を見るに・・・一日、二日では、ないようだ。
もしもの時の為にと、荷に入れておいた松前の薬や包帯と医学書が、役に立った。そして・・・
おれは村の皆に心から、感謝した。おれが記憶を取り戻すまでその医術を施してくれたのは、村の「誰か」なのだ。
顔を覆う包帯から漂う、清冽な薬草の芳香・・・おれでさえ知らない香りだが、不思議と、心が安らいだ。この薬草を
摘んできてくれたのも、村の人間なのだろう。おれは、北国の文化と人間をどこか侮っていた己を、心から恥じた。

包帯が取れた日の晩、おれは村の長を務めるあの大男に跪いて頭を下げ、心からの感謝の印として、村へ松前の酒十貫と
更に十貫の愛鉈を贈った。こいつはおれと長年連れ添った、言わば恋女房のようなものだ。ふん・・・女房か。
皮肉なものだ。十一年前、北へと消えた親父。極寒の大自然に身一つで放り出されたおれは、生きる為に強さを求めた。
そして、松前一の山男と呼ばれた親父すらも凌駕する、人間の枠を超えた躰と技を得た時・・・
おれは世間の誰からも恐れ厭われている事に気づき、山へ身を隠した。家族の温もりや色恋とは、無縁の人生だった。

大男は涙を流しておれの名を叫び、大鉈を両腕で掲げた。そして、慌ただしく宴の用意を始めさせた。
手伝おうとすると、大男が小さな椅子を持って来た。これに座って待てという事か。おれは素直に厚意を受け取った。
――これで、帰りの荷は三分の一ちょいになっちまう事になる。だが、命が助かった事がなによりだ。それに・・・

月明かりと薪火に煌めく美少女の舞いが、おれの思考に割り込んでくる。おれは、余った袖の意味を、いま理解した。
これは本来、祭礼用の装束だったのだろう。新雪を思わせる静謐な白に輝く生地・・・その衿、裾、そして袖口から
涼やかな藍染の色彩が複雑に枝分れして伸びている。おれは直感した・・・この形は、「火」だ。少女は氷の焔を纏っていた。

全ての村人が、村を束ねているあの大男ですらも、雪に埋まるように跪いて少女を見上げている。
恐らく、少女はこの村で大男すら凌ぐ存在感を持つ、霊的な支柱・・・おれ達の言葉で言う「巫女」に近い存在なのだろう。
ならば、かつて川への道を切り開くべく鋤を借りた時の、少女が大男を睨み付けた恐ろしく冷酷な眼差しにも納得が行く。
空中に無数の凍った火炎の輪を描く滑らかな両袖の残像は、地上に降りた炎神の輪舞を想起させた。
ついに、少女の魂が神の域へと突入したのだろうか・・・極寒の中、全く少女からは白い息が吐き出されていない。

打楽器の音も村人の歌声も、消えていく。研ぎ澄まされた視覚だけが、異郷の舞踏装束とそれを纏う少女の躍動美に
吸い込まれていく。爆裂する脚捌きでおれに肉薄する少女。降りしきる雪を身に纏い、その輪舞は激しさを増した。
袖が風を切る音だけが、聴覚に蘇り鼓膜を叩く。間違いない。それは、おれだけに捧げる祝福の、命と焔の舞なのだ。
やがて少女の腕の振りは視認さえも出来なくなり、暴風に地の雪すらも舞い上げられ、少女を中心に迸り吹き荒れた。
いつしかおれは跪き、その雄大で峻厳なる迫力に凍えたまま、猛烈に顔面を叩き付ける雪の心地良い冷たさに、陶酔した。
それでも荒ぶる螺旋の中心、少女の蒼い眼から撃ち降ろされる視線は、常におれを真っ直ぐに捉えて離さない。
そして、その眼が閉じられ、覆い被さるように、少女の顔が、桃色の唇が・・・近づいて来る。お・・・おい!

少女は、おれの肩の上に倒れ、気を失っていた。おれは暴れる鼓動を諌め、その柔らかい背中を、そっと抱き締めた。

13731:2013/01/07(月) 21:16:08 ID:???
連志別川(四) 生と死の輪舞

宴は中止され、少女はチセの中へ横たえられた。髭の大男がおれの荷を担いで来て降ろすと、おれに跪いて頭を下げた。
おれは分厚い医学書をめくり、荷から解熱薬を探すと、慎重に調合した。その鬼気迫る表情を、村の全員が固唾を飲んで
見守った。大自然で生き抜く為には、医にも精通していなければならないのだ。おれは少女を少しでも楽にしてやろうと
白い額を目深に覆う、火の文様渦巻く頭巾に、手を伸ばした。大男がおれの左手首を掴み、首をゆっくりと横に振った。
この装束にはおれの知らぬ、特別な霊力や神性の類が宿っているのだろう。おれは大男に頷き返し、左腕を鉢に戻した。
少女の僅かな剥き出しの肌、生白い首筋と喘ぐ唇に、眼力を集中する。すぐ治る熱の病だ。そして、その原因も判った。

――あの輪舞による、一時の激しい運動は引鉄に過ぎない・・・恐らくこれは何らかの、長く続いた過労が原因・・・!
医学書をめくる手が、止まった。くそっ、何故に気が付かなかった・・・!考えてもみれば、この松前の医学書を・・・
和人が書いた文字を読めるのは、村でこの子しかいない筈・・・!おれを毎日介抱してくれたのは・・・この少女なのだ!
摺り鉢の中の薬に、おれの熱い涙が混ざった。そして心に決めた。今度は、おれの命でこの子を守ってやろうと・・・!

その晩、ただの思いつきは、確かな希望へと変わった。松前に持ち帰る筈だった荷と地図を、ここに置いていく・・・
つまり、この村で「イメル」として村の皆、そして・・・あの少女と暮らす。そういう人生もあるのではないかと。
おれは天涯孤独の身。どこで消えようが、誰も探しには来まい。藩もおれを山で死んだ事にして、それで終わりだろう。
しかし、その「希望」を鋼の「決意」とさせなかった唯一の障害は・・・あの、謎めく川の美少女への、恐怖だった。
痺れるような、未知の衝撃だった。激痛だった。屈辱だった。そして、忌まわしい程に・・・眩しい経験だった。

今となっては、断片の連続としてしか覚えてはいないし、その記憶を脳裡に蘇らせる事すら、おぞましかったが・・・
おれは、あの美少女の姿をした死神・・・いや、死神よりも恐ろしい、まさに凍り付くような邪悪の化身に
その真っ赤な拳で・・・もて遊ばれた。あの子が、おれを殺そうと思えば、いつ殴り殺せてもおかしくなかった筈だ。
おれは、殺さない闘いは決してしない。ガキの頃から親父に厳しく叩き込まれた、それが山に挑む男の掟だ。
残さず食って血肉にするのが、おれにとって殺した獲物への礼儀であり、最大の供養だった。ふん、「闘い」か・・・

幕府の造った泰平の世の中で、人は闘いを忘れていった。だが、おれ達は未だ自然と闘いながら、自然に生かされている。
近い内に、箱館の港が世界に開かれる。松前にも諸国の文明が齎されるだろう。恐らく、おれが死んだずっと後の世・・・
人は、更なる「力」を手にするだろう。自然を侮り造り替える事に喜びを覚えた人間の辿る道は、力による自滅だけだ。

川の少女の力は、人為的と言うよりはむしろ自然の脅威に近かった。おれは少女という「自然」の化身に、敗れたのだ。
山の男にとって、自然への敗北は、即ち死を意味する。だからおれは、ただ一度の敗北さえも、知らなかった。
しかし・・・あの川の少女の目的は、おれを「殺す」事ではなかった。血の泡を吹き、激痛にビクンビクンと痙攣し
迫り来る真っ赤な拳の恐怖に涙を流して命乞いするおれの返り血にまみれ、あの美少女は無邪気にも「遊んで」いた・・・
おれは「敗者」であり、いま屈辱の生を「生きている」。その矛盾が、常におれの心の臓を、締め付けて離さなかった。

おれは半死半生で下流の渡り口、橋の残骸に偶然引っ掛かっていたらしいが・・・包帯が取れ、歩けるようになった日の昼
頭巾の少女を連れて村人に聞き回ったところで、その時の有様は、誰一人として教えてはくれなかった。
ただ、彼らの表情から・・・聞かない方がおれの為だという事だけは、よくわかった。

だが村の人間ならば、あの川には決して近づかない筈だ。いったい「誰が」おれを川から引き上げたのだろう・・・
様々な疑問と、目頭に浮かぶ真っ赤な拳の幻影を打ち消すかのように、おれは寝酒をあおって一日を終わらせた。

13741:2013/01/07(月) 21:16:30 ID:???
連志別川(四) 生と死の輪舞

以前の「イメル」の力ではないが、並の男衆が二人がかりでする仕事ぐらいは、難なくこなせるようになった。
粥とて貴重な穀物なのだろうが、やはり山男の食は肉が最高だ。おれは合掌してから、自ら仕留めた鹿の肉に貪り付いた。
何という旨さだろう・・・!食った瞬間から、おれの筋肉に変わっていくかのようだ。おれは大自然の恵みに感謝した。
炙り焼き、鹿汁は勿論、何と言っても鹿は刺身で食ってこそ最も旨さがわかる。これは捕らえた日だけのご馳走であり
酒の友にも最高だ。村の酒の中でもおれは、この七竈の実を漬けた薄紅い酒が気に入っていた。上品な香りもそうだが
少女によれば、七竈は魔を祓う樹なのだという。呑む度に清冽なほろ苦さが、あの迫る拳の恐怖を忘れさせてくれるのだ。

だがこの後、食をも超える無上の楽しみが、おれを待っている。それは少女のチセでの、ひとときの語らいだ。
この村では、男と女は分かれて食事をする事になっているらしい。そういう掟なのだと、かつて少女から聞いた。
そういえば少女はいつも同じ装束だ。あのぶらぶらと余った袖で、一体どうやって食事をするのだろうか・・・

「あなたを襲ったのは・・・カムイね」
「カミ?・・・女の神なのか?」
「ちがう。カムイ。恐ろしい・・・悪いカムイよ」
蒼い目の少女が言う。薪火の明かりで煌々と照らされる、金色の睫毛と蒼い瞳、新雪のように真っ白な頬が愛らしい。
少女は、やはり過労が祟っていたのだろう。おれの薬が効いてくれたのか、もう既に以前の様子を取り戻している。
少女だけが、おれを「イメル」ではなく「あなた」と呼んでくれる。それが、どこか恥ずかしくも・・・嬉しかった。

土と茅萱と雪に保温され、寒さに強いおれにはやや暑い程の室内でも、腰掛ける少女は厚手の頭巾を目深に被っている。
おれは、その脚から腰にかけての、丸やかな曲線に心を奪われた。装束の中が透けて見えるような錯覚さえ、感じた。
そして、その、胸に・・・雪の大平原に、神秘の起伏が生じる角度を探す。ここか?いや、もっと下、奥か・・・!?
「・・・ねえ・・・どこを、見てるの?」
はっ・・・!おれは、その撃ち下ろされる視線の冷たさに、己が冒険の過熱を恥じた。だが、すぐにその緊張は溶けた。
おれは腕を組み、左足と右足、そして脳天で躰を支える、言わば三つ足の構えで、少女の神秘の魅力に挑んでいたのだ。
ふたりは必死に堪えていたが、ついに、暖かい爆笑が同時に巻き起こった。
涙を拭う程に笑う少女もまた、美しかった。雪のように白い額、そして咲き誇る福寿草の花のように鮮やかな睫毛・・・
こんなにも儚く美しい少女が、おれを毎日介抱してくれた。そして極寒に耐え、おれの為に舞ってくれたのだ・・・!

カムイは赤い手をした女の姿で下流から現れる・・・川を汚す者を氷に閉じ込め、怒り狂ってその手で殺してしまう。
だからこの村では、あんなにも近くにある豊かな川の恵みを活かせなくなり、他の村との交流も途絶えたのだという。
少女はそれきり語らなかった。話しながら恐怖を思い出したのだろう。柔らかそうな白い頬が、俯いたまま震えている。
恐らく、この子もおれの惨たらしく潰されたその顔を見ている・・・カムイの残忍さを知っている。この子は、強い子だ。
もう何も語らずともいい、ただ、同じ空気を吸っては吐き、交換している・・・それだけで、おれは心が安らぐのだ。
おれは「死んでもいい」・・・そう思った。今まで誰にも抱いた事のない、熱く確かな感情がおれの胸に芽生えていた。

――間違いない。そいつだ・・・あの悪魔は、カムイというのか・・・!
今夜まさにおれは、ついに邪悪の正体を掴んだ。少女と別れ自らの床についても、その興奮は少しも収まらなかった。
「う、う、うっ・・・ぐわあっがっ・・・!」
鼻が、疼いた。おれの鼻の骨は、所々で折れていた。へし折られていたのだ。「カムイ」の拳に、叩きのめされて・・・
触っても痛みが無い程度に修復されてはいたが、整っていた鼻梁の線はへし曲がったまま、固まっていた。

満月の晩、おれはチセの外へ飛び出すと、凍った水瓶に映った醜いおれ自身を、声無き雄叫びと共に頭で叩き割った。
あの川の少女への復讐は、おれ自身の人間としての、男としての矜持に関わるだけの問題ではなくなっていた。
おれは、やっと見つけた自らの居場所と、あの少女との未来を守る為にも・・・「カムイ」、貴様を・・・殺す!

13751:2013/01/07(月) 21:17:58 ID:???
>>1369
実はこれ、去年の年明けからボチボチやり始めて、冬が終わっちゃったのでそのまま寝かせといたやつなのです。
季節モノってまだやってなかったんで、「冬」で何か出来ないかと・・・まあそーゆー安直な考えで(笑


>>1370
左上は倍率高そう(笑)なので私は右上で・・・
肉食獣には獲物を捕らえる本能があるので、逃げるとかえってそれを刺激してしまうらしいのですよ。

1376名無しのサンドバッグ:2013/01/08(火) 20:05:55 ID:MGnRIqQ.
洋楽のPVでボクシングのシーンがあったのでご報告を。
ttp://www.youtube.com/watch?v=gYdlqjiQPAc

詳細は知りませんが、Crackerというバンドのlowという曲だそうです。
該当シーンは2:17あたりから。

13771:2013/01/09(水) 00:35:30 ID:???
>>1376
情報ありがとうございまーす。リング上での攻防はもちろん
ガウン姿でグローブを持って来て、それから装着するってプロセスが見えるのがCOOLですね。

映像はカット割りで巧く見せている所もあれば、例えば3:00ごろの一発みたいに体を張ってるのもあったりして
尺も長いし、いやー、これ観ごたえありますねえ・・・にーちゃんの最後の表情もどこかやり切った感がある(笑

13781:2013/01/09(水) 01:06:51 ID:???
そーいえば、こっからはただの戯言なんですけども・・・>>1376さんの動画
ねーちゃんのグローブはREYES(レイジェス社)ですね、これがまあ〜〜硬いんですよ。ナックルが薄いの。
凄く大雑把に言っちゃうと、ウィニング社が「防具」ならレイジェス社は「武器」って感じ。
まあどっちも殴られれば痛いんですが(笑

このスレに書き込む程の猛者ならば、妄想用にグローブを一丁用意してみよーと思う方もいるんでしょうけど
そん時はどーゆーシチュが己にとってマキシマムなのか、って所に主眼を置いてモノを選ぶといいかもしらんですね。
迫る硬いナックルに捉えられて数発で骨を砕かれて痙攣しながら10カウントを聞きたい気分ならレイジェスの8ozとか
アウトボクシングで数十発ヒットされ続けて倒れるに倒れられない屈辱がお好みならウィニングの16ozとか
両社ともに共通する欠点は、お値段が高い事ですね。2万円前後は用意しないといけません(基本的にでかい程高い

ちなみに去年バンコクに行った時、街のジムで見たグローブが、デパートで298バーツ(約860円)から売ってましたね。
セントラルワールド(2010年の反政府デモで放火されたビルです。同じ建物に伊勢丹も入ってます)の
相変わらず売り場面積に比べて無駄に多くてヒマそ〜にしている店員さんが
俺がグローブを見てると「ムエタイ?フィットネス?ファイティング?」とかニッコニコしながら聞いてくるもんですから
買い物必携アイテムの指差しタイ語本を使って「私はヘンタイです(タイ語で)」って言うわけにも行かなくて
結局店員さん軍団とタイ語の本で談笑しながらいつの間にか一組買わされてきちゃいました。

FBTってゆー総合スポーツメーカーのやつで、860円にしちゃー見た目悪くないです。
中の縫製がいい加減なので、迂闊に素手を突っ込むと爪の皮がムケて痛いですが観賞用(笑)には十分かと
バンコクに行く予定のある方はついでにホイホイ買ってきちゃうのもいいかもですね。

13791:2013/01/09(水) 02:10:56 ID:???
あ、そうだ。これなんか今思い出したもので、結構お気に入りなんですがどうでしょうか(戦闘は8分頃から

http://www.nicovideo.jp/watch/sm3770402
「ペルソナ2 罪」リサ・シルバーマン通称ギンコは
見ての通り金髪碧眼カワイイ拳で闘うおんなのこなのですが
この動画ではダークサイドのギンコにひったすら魅了され続けるギンコ(ややこし)が見どころかなと。

このゲームに限らず、私がこーゆーRPGの数少ない徒手空拳美少女キャラに出会ったら
必ずやると言っても過言ではない妄想があるんですけども(すいませんこっから話が長いです
美少女の強烈な拳の威力とか踏み込みのスピードってものをね、ほら、長い旅の中で知ってるわけじゃないですか。
エネミー達の顔面を形が変わるまで叩きのめし、まあそりゃゲームですからね、倒した敵は点滅して消えるだけみたいに
その暴力にオブラートが掛けられてますけど、実際は「死ぬまで」殴ってるわけですよ。経験値入ってるんですから。
そりゃ「戦闘不能」なんて曖昧な言葉じゃーない、「しに」になるまで殴り続けてるわけです。
そういう事にしなくても、戦闘が不能になるって事はまあ10数えて起き上がれない程の脳へのダメージが有るわけです。

そんな血に塗れた拳の美少女が影と言えども敵になって立ちはだかるってだけでももうそりゃー勃起しまくりなんですが
しかも、今までその「実際」を散々見てきた仲間であるはずのギンコその本人までもが魅了されて左下に(メタ発言)
突っ込んでパンチを叩きこんでくる(9:25とか、つーかこの戦闘は以降ずーーっとギンコ魅惑状態ですねw)
どうでしょうかドキドキしてきましたでしょうか俺はもうビンビンになってまいりましたふひふふひふふ

NESiCAで出たP4Uも初期は悪くない稼働状況だっただけに、今度はペルソナオールスターで格ゲー出して欲しいですね。
もうギンコとうららさんどっちかだけでも出演してくれたらネシカ台ごと買います(嘘

1380名無しのサンドバッグ:2013/01/09(水) 07:59:36 ID:Vu7pE7Ts
最近ウイニングから18オンス出てるの知った
16オンスは昔からあるけど18オンスとかどれだけ大ぶりなグローブなんだろう

13811:2013/01/09(水) 21:20:51 ID:???
SSを貼ります。水は貴重な資源です。皆さんも水は大切にしましょう(笑

例によって、いちいちググりながら読むのも大変でしょうから解説を入れておきます。

春楡:はるにれ:英語でいうとエルム。樹高30mに達するものもある落葉樹。
 この〜木なんの木気になる木〜♪・・・って感じのイメージ(○立の木は違う木ですけどw
飯綱:いいずな:身軽なイタチの仲間。漫画やゲームに出てくる飯綱落としって技の方が有名じゃないですかね。
 テンとイタチとオコジョとイイズナの違いは、トドとアシカとセイウチとアザラシの違いと同じ位説明に困りますね(笑

13821:2013/01/09(水) 21:21:36 ID:???
連志別川(五) カムイの幻影

おれは村で快復を待った。昔から殺しても死なぬと藩の役人に皮肉ばかり言われてきたが、実にその通りだと思った。
快復を更に早めたのは、少女の言う宿敵「カムイ」への、憎悪と復讐心だ。おれは、神や仏の類には関心が無かったが
床に就くたびに、必死に祈った。あの少女に求めていたのだ。あいつを殺すに足る肉体の再生と、恐怖に折れぬ勇気を。
あれから毎日、美少女は一日も欠かさずにおれの夢枕に舞い降りては、考え得るあらゆる方法でおれを撲殺し続けた。
あの真っ赤な拳は、おれの脳を確かに変質させていた。それも、凡そ全ての人間が体験し得ぬ、未知の暴力によって。
そして悪夢から醒めるたび、あいつと決着を付けねばならぬこの世界が夢ではない事に、おれはなぜか安堵していた。

村の外れ、男衆が春楡の大木を囲んで叩いている。おれが教えた相撲の修行法だ。ぱらぱらと舞い落ちる樹氷が美しい。
大男は辺りが曇る程に白い息をつくと、男達を太い腕で制し、道を開けさせた。緊張が張り詰める。恐らく、おれの形相は
餓えた羆の如く見えているのだろう。そうだ。おれは今日、超越者に挑む覚悟・・・言わば、狂気を試しに来たのだ。
「ぬうううふうううおおおお・・・ぬうりゃあああああっ!!!」
野の獣そのものの唸り声と共に、おれの両腕で二抱えもありそうな春楡を目掛け突進し、鼻面から激突する。
衝撃に大樹が激しく震え、樹氷が氷の雨となり降り注いだ。鮮血と氷にまみれたおれを心配して、村人が集まってくる。
――痛え・・・!
だが、あの少女の拳が齎した激痛には遠く及ばない。それが何なのかはわからないが、確実に「何か」が、足りなかった。

鼻をさすり砕かれた躰の全快を実感したおれは、機が熟すのを待ち、十年来の愛銃の種子島を手に、村の出口へ赴いた。
もはや、未開地探索の事など、既にどうでもよくなっていた。男として、あんな幼い、柔らかそうな小娘ごときに・・・
あんな、光り輝く、伸びやかな肢体の・・・脚と拳による、華麗なる未知の拳闘技で、おれを魅了した氷結の妖精・・・
そんな美少女に躰一つのみで肉を、骨を、命を、魂を弄ばれた事が・・・一人の男として、許せなかったのだ。
しかし、最も許せなかったのは、美少女との苛烈な思い出にひとときでも酔ってしまった・・・己の心に巣食う闇だ。

冬から春へと移ろい始めた蝦夷地の山は、気まぐれだ。昨日は猛吹雪だったが、今日は雪に反射する日差しが眩しい。
上流の渡り口へ向かう。一旦種子島を背に戻し、鋤に持ち替える。怒りに任せ、背丈ほどもある雪壁に鋤を突き入れると
白い壁は奥へと「倒れ」、全く起伏のない「道」が現れた。まるで、おれをその魔性で招き入れるかのように。
――「誰か」が、川の向こうからやって来たとでも言うのか・・・?そうだとすれば、そいつは・・・!
おれはついに、挑発されている事に気が付いた。咆哮と共に怒号の切先を叩き付ける。蝦夷松は一撃で切り株と化した。

おれの視覚は鷹並みだ。遠目にもわかる。川の流れはあの屈辱の日に増して穏やかで、水深も向こう脛程度に浅かった。
それは偶然ではない。おれは何日も前から悪夢に耐えながら、この時を・・・カムイを殺す好機を待っていたのだ。
あの恐ろしい、脚の自由を奪う猛吹雪。あれがもしもカムイとやらの霊力のなせる業であって
もし万が一また氷漬けにされたとしても、これだけ水が浅ければ、筋力で足が抜けるに違いない・・・!
昔からおれは大自然の脅威と闘ってきた。狩人は、用心深くなければ生き残れないのだ。

川辺まで来た。狂気が今にも絶叫として暴発しそうになるのを堪え、銃身と火薬、そして弾を素手で念入りに点検する。
狙撃手としての冷徹な殺意が戻ってくる。使うのは、この特殊弾一発だ。通常の鉛弾とは違い、中に水銀が仕込んである。
獲物の体内で無数の鉛の破片と水銀の猛毒が破裂する、狩人の中でも忌み嫌われる・・・最も残忍卑劣な弾丸だ。
あの少女の、抱き締めたら折れてしまいそうな、儚い躰・・・。撃てば間違いなく、当たった先が、千切れ飛ぶ・・・
こんな、大自然への冒涜そのものの弾は、大羆にすら使うつもりはなかった。こいつで脚を撃って、動けなくした後
最高の屈辱と痛みを舐めさせ、心までも引き裂いてやる・・・かつて、あの「カムイ」が、おれにそうしたように。

13831:2013/01/09(水) 21:22:05 ID:???
連志別川(五) カムイの幻影

おれは道端に除けられた雪を背中にかぶると、種子島を構えつつ、飯綱の如く雪中に隠れながら川面の様子を窺った。
そのまま四半刻ほども待っただろうか。カムイの姿は、下流にも上流にも見えない。

――カムイは赤い手をした女の姿で下流から現れ、「川を汚す者」を殺してしまう・・・
おれはふと、村の少女の言葉を思い出した。成る程、そういう事か・・・ならば、貴様の望み通り汚してやろう・・・!
小便の為に褌を脱ぎ捨てた時、おれは異変に気付いた。おれ自身が・・・臍に食い込む程に反り返っている。
おれの腕力でも水平にさえ出来ないどころか、少しでも川へ向ければ、折れてしまいそうだ。なぜ・・・何故だ!?
間違いない。おれは「何か」に、興奮している・・・!「何か」が、おれ自身を鋼と化しているのだ・・・!

困惑するおれの脳裡に川の少女の悪戯な笑顔が蘇り・・・そして、あの紅く艶かしい拳が、幻影となって迫ってくる。
おれは渾身の膂力をもって、おれ自身の心の闇と闘った。閃光の如く軽快に顔面に弾ける左が、何度も視界に拡がった。
溢れ出す恐怖に思わず顔を覆えば怒張したおれ自身が臍を衝き、また手を戻せば、今度は顎を垂直に掬い上げられる。
おれはもはや、両手をおれ自身から離せなくなっていた。少女の、鋭い右の正面打ちが、鮮やかにおれの鼻を叩き潰す。
――痛えッ・・・!!
少女の幻影は、ついにおれに「痛み」すら齎し始めた。鼻の奥につぅんと拡がるその余韻に、おれは・・・魅了されていた。

少女は唇を歪めると、三体に分身した。華麗な脚捌きで空中を滑るように舞い、おれの顔面をその六つの兇器で弄ぶ。
左右の重ね打ちで仰け反ったかと思えば右の巻き打ちが頬をしたたかに叩き首を戻す暇も無く左拳がこめかみを叩き付け
鋭い左の連打で溢れた鼻血に口で呼吸を求めれば渾身の右の掬い打ちが顎を強制的に噛み合わせ歯の付け根に鈍痛が走る。
まるで拳大の血の雹が、無数に降り注ぐかのようだ。ギラギラと張り詰め皺を寄せた、真っ赤な弾力ある屈辱の弾丸が
おれの顔面の皮膚を小気味良く叩き、脳へ直接血と革の匂いを注ぎ込む。竜巻の如く渦巻く拳風がおれの理性を巻き込み
鼻は拉げ、両の瞼は破れ、唇は引き裂かれ、爆裂する破壊音がおれの自尊心を焼く。そして、妖精は輪舞を踊り始める。

拳が風を切る音が、聴覚に蘇り鼓膜を叩く。それは、おれだけに捧げる呪詛の、死と氷の舞なのだ。
やがて妖精の肢体の躍動は視認さえも出来なくなり、おれは猛烈に顔面を叩き付ける拳の心地良い激痛に、陶酔した。
それでも荒ぶる螺旋の中心、少女の蒼い眼から撃ち降ろされる視線は、常におれを真っ直ぐに捉えて離さない。
右の拳が鼻だけに集中し始める。鼻が打たれ、鼻が潰され、鼻が折られ、折れた鼻を弄ばれ撃ちのめされ擦り潰される。
止めは、銃弾らしく捻りを加えた艶めく右拳がおれの顔面に真正面からめり込み、全てを圧し潰し、砕き尽くした。
・・・ついにおれ自身から迸り出た熱い液体は、垂直に近い放物線を描いて、澄み切った川面へと吸い込まれていった。

たった今、おれは川を・・・汚した。まもなく下流から、「カムイ」が来る筈だ。急いで、脱いだものを履き直す。
おれは、おれ自身の狂態に深く、心から恥じ入った。しかし、その行為が、おれの脳に一時の冷静さを取り戻させた。

――死ぬよ。
静寂の中、少女の言葉を、思い出す。恐らく今日これから、どちらかが死ぬのだろう・・・それは、決しておれではない。

13841:2013/01/09(水) 21:22:33 ID:???
連志別川(五) カムイの幻影

――来た・・・!!!
下流から水面を沈まず歩いてくる影。一糸纏わぬ姿、太陽を浴びて銀白に輝く肌・・・間違いない。「カムイ」だ。
おれは雪に隠れながらその瞬間を待った。誤射は、ただ一度も許されない。おれは愛銃の精度を知り尽くしている。
銃身を固定し、少女の行く先、太腿の高さに「射線」を作る。死の直線に少女が足を踏み入れるその瞬間、引鉄を引く。

あの少女・・・いや、「カムイ」を、射殺する。「射殺」という言葉に、おれの鼻骨が、またも疼いた。
走馬灯のように、かつての「カムイ」との悪夢の思い出が、あの美しく血に濡れそぼった金髪が、無邪気で冷酷な笑顔が
そして、何度も何度もおれの顔面を打ち据える真っ赤な弾丸の齎す激痛がおれの鼻を抜けて脳を痺れさせ魂を焼いた。
くそったれが・・・!何故「おれに」走馬灯が見えているのだ・・・!今度はおれが貴様を撃ち砕いてやるというのに・・・!

おれはもう既に、おれ自身が再び熱を持ち始めている事に気付いていた。死を孕んだ激情に、銃身を支える手が震える。
負ける訳には、断じていかぬのだ・・・!死の恐怖に冷静さを保てない、それを認識するだけの冷静さは、まだ残っていた。
射線を僅かに上流側に引き付ける。次の弾は、込められない。撃てばあいつが死ぬ。外せばおれが死ぬ・・・それだけだ。
さあ、来るのだ「カムイ」・・・もっとだ、そう、あと七歩、あと五歩だけ、近くへ・・・

その刹那、全視界は暗黒に包まれ、天が泣き叫ぶような雷鳴と共に雹が混じった猛吹雪が「道側から」おれを襲った。
おれは雪ごと川に転げ出され、溺れた。銃を探す余裕もなかった。吹雪が、今度は向こう岸側から川面を叩いている。
いや、違う!これは・・・「垂直」だ!吹雪の圧力は「真上」から、おれを川に沈めようとしているのだ・・・!
水深は浅くとも、凍った川に沈められればたちまち死んでしまう。おれは瞬く間に川底へ顔面から埋め込まれた。
全身の関節を捻り、額で、腰で、爪先で泥を蹴り、おれは必死に仰向けになる。今度は後頭部が川底に激突する。
呼吸だけは奪われまいと、泥にめり込む足腰を支点として腹筋を鋼の如く怒張させ、喉を裂ける程に仰け反らせると
鼻と口だけは辛うじて水面から出す事が出来たが、容赦無く吹雪が顔面に積もっていく。

――た、助けてくれえっ・・・!死にたくないっ・・・!
おれは心から願った。消えた親父にでも、顔すら知らぬ母にでも、神仏にでも、村人にでもない。
それはもっとおれの魂の奥底に深く、柔らかく、そしてしっとりと冷たく入り込んでいる、「誰か」・・・
川の水に奪われゆく意識の中、おれは「誰か」へ祈り続けた。祈りと共に、歪んだ鼻が、焼ける程熱く疼いた。

気が付くと、仰向けで川に浮いていた。
正確には、「浮いていた」のではないのだが。
おれは、助かった。
本当は、「助かった」わけではないのだが・・・

誰か、おれを遥かな高みから見下ろす人物が、いる。逆光が眩しく、その細身の影が誰なのかは、わからない。
そして、その銀白に輝く影に名を聞こうとしたまさにその瞬間・・・
その正体を認め、おれは凍り付いた。いや、「凍り付いていた」事に、ついに気が付いたのだ。

13851:2013/01/09(水) 21:30:31 ID:???
>>1380
6オンスのグローブをした上から12オンスのグローブをするみたいな感じでしょうか(小学生並みの計算力
そーいえば、以前情報があった「電波の城」って漫画には
女の子達が20オンスのグローブを・・・って説明があります(単行本9巻)
案外ファンタジーでもないのかも知らんですね。

1386名無しのサンドバッグ:2013/01/11(金) 01:25:17 ID:RUhi6pAc
2Pカラーがたしか金髪だった記憶が…
しかしもうPS再生環境が無いわソフトが無いわでもうわかんないお…
http://viploda.net/src/viploda.net_2428.jpg

13871:2013/01/11(金) 03:01:13 ID:???
>>1386
おお、これは何というか・・・いやー、ありがとうございます。
それから明けましておめでとうございます(笑)。思いもかけない、身に余るお年玉です。

文章は今やってるやつの二の三、それから五の二から
キャラは過去スレで手袋キャラとして人気だった、ライトニングレジェンドの銀雪ちゃんですね。
それにしても本当に恐ろしく仕事が早いですねえ。(五)を貼ってから28時間ちょいですよ。
紅い拳に付着した返り血、そして吹雪の描写まで入れてあるのが本当に申し訳ないくらいの美を感じさせます。

我ながら拙く読みにくく脂っこい文章でしかも途中ですが
皆さんの中にそれぞれの「川の少女」のイメージを少しでも構築させる事が出来たのならば、作者冥利に尽きます。

実は、もう具体的な文章の書き貯めが徐々に尽きてきていますので(誰が何をするかは、おしまいまで全部出来てます
今もまさにキーボードの前で悶絶しながら考えているところでして、こういう一枚は本当に私の力になります。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

本当に今夜予定の(六)から・・・貼るのが実に申し訳なく、心苦しくてなりません

1388名無しのサンドバッグ:2013/01/11(金) 17:46:25 ID:0H6aY/7k
>>1
期待してるから最後まで気合いれて頑張って!!

13891:2013/01/11(金) 22:18:48 ID:???
最初に貼ってから10日ほど経過しましたので
今貼らせて頂いておりますSSについて、繰り返しご案内をさせて頂きます。

まず、この文章はフィクションであり、実在する、或いは歴史上の人物、団体、および地名とは一切関係ありません。

そして、内容についてですが・・・まとも(?)な殴り合いを期待していた方、本当にすいません。
読む事で肉体的精神的なダメージを受ける可能性もありますので、「自己の責任」において読まれる方はお読み下さい。

特に今回から、坂を転がり落ちるようにそういうひどいシチュばかりになっていく予定ですので
「もうダメだ」と思った方は、専ブラでタイトルをNGに入れるなり
視界から消すなりの対策を講じて頂けると精神衛生上宜しいかと思われます(笑

13901:2013/01/11(金) 22:19:52 ID:???
連志別川(六) 神秘の暴虐美

おれは、確かに川に浮いていた。浮いてはいたのだが・・・両腕を含めた全身は、身動きが取れぬまま厚い氷中に没し
顔面だけが、川面から水平に剥き出しとなっていた。つまり首から下の部分は、完全に氷面下に閉じ込められていたのだ。
悪意を、感じた。それは、おれが先刻までこの少女に向けていた、小賢しき人間ごときの殺意などとは比べ物にもならぬ
人智を超えた計算に基づいた、神なる邪悪だ。恐らくおれの計画も、躰の力の程度も、必死に呼吸を求める醜い足掻きも
全てが、少女の掌の内だったのだろう。陽光が残酷な程に眩しい。おれは封印された己の躰を、茫然と見下ろしていた。

・・・ぼふ、ぼふん、ぼふんっ・・・ばんっ、ばぐんっ・・・
どこか緊張感の欠落した、しかし確かに鼓膜を震わせる衝撃音。おれは、弾かれるように視線を真っ直ぐへと戻した。
拍手の破裂が止むと同時に、二人の視線が氷面と垂直に交錯する。少女はその掌を、見せ付けるように拳へと変えた。
・・・ぎゅうぅ・・・ぎ、ぎ、ぎ・・・ぐ、ぐぎゅうぅ・・・
その真っ赤に張り詰めた、「未知の物体」が少女の両膝の上で握り締められ、悶え苦しむかのような唸り声を上げている。

――全ての人間は、真なる恐怖を知らぬまま死んでいく。なぜなら、未だ知らぬ事こそが、恐怖の正体だからだ。
若い頃から西洋かぶれだった親父は、大坂商人の船が松前へ来る度、毛皮を売った銭で洋学書を買い集めていたらしい。
親父の書棚から出て来たある思想書の一節が、今になって脳裡に蘇る。恐怖の正体は、逆光を浴びて紅々と輝いていた。

「ぜんぶ、見てたわ・・・・・・ふふっ・・・すごいのね」
少女の冷たく上気した笑顔が、真上から覆いかぶさってくる。その蒼く、狂気に爛々と血走った瞳が、近づいてくる。

――「すごい」だと・・・?まさか・・・まさか、「あれ」も、見られていた・・・!?
おれは恐怖と羞恥に、思わず涙を溢れさせた。堪らず、眼の筋肉だけで視線を逸らす。だが、少女はそれすら許さない。
眼球を左に逃せば氷に寝そべり、右に切り返せば跨いで飛び越し、無邪気な蒼い宝玉がおれの視覚と魂を残酷に陵辱する。
伝承とは違い、その眼に「怒り」の色は感じられない。だが、その好奇心に満ちた悪戯さが、おれの精神を更に狂わせた。
「ひ」
おれは、逃げ「ようとした」。這いずり回って。だが、氷に閉ざされたおれの肉体が、言う事を聞く筈もなかった。
照りつける強烈な日射しが少女の肢体を透かし、華奢で繊細な均整美を、一刹那の暇も無くおれの脳へ叩き込み続ける。
おれの眼球筋と少女の躍動との攻防は、再開された。但し、今度は逃げる者と追う者との立場が、逆になっていた。

この期に及んで、おれは改めて下から見上げる少女の、日輪を浴び光り輝く肉体の瑞々しい躍動に、夢中になっていた。
無邪気な稚児そのものの笑い声と共に、金色の髪を波打たせながら舞い踊る少女。いかなる肉質も、隠そうとすらしない。
しかしその清冽なる美は、常に凛とした品性を保っている。少女は恐らく、人間よりも自然に近い存在なのだろう。
そしておれはついに、何故か懐かしい、角度によってわずかに浮かんでは消える繊細な起伏を少女の胸に見出した。
神秘の曲線が、再び涙に滲み歪んで行く。おれの命は、恐らく、もう終わろうとしている。何の身寄りもないおれだが
美少女との別れだけが、無性に、悲しかった。おれの人生に、これ程の「悲しみ」という感情は、あっただろうか・・・?

「あなたは、泣き虫さんなのね・・・でも、だいじょうぶ」
なにが大丈夫なのか、全くおれにはわからない。だが、おれは少女の慈愛に満ちた頬笑みと、その拳の生ぬるい感触に
倒錯した安らぎすら感じていた。そして膝立ちからやや前傾し、おれの頬を真上からその右拳で撫でる少女に、訊いた。

「えっ・・・・・・なっ、なっ・・・・・・殴らない・・・、のか・・・?」
「ううん」
少女の波打つ金髪が、「横に」柔らかく戦ぐ。それから何の前触れもなく、少女の左拳がおれの眼界一杯を犯し尽くした。
おれの顔面に真上から降り注ぐものは、毎晩心を引き裂かれてきたどの悪夢よりも冷酷で残忍無情な、「現実」だった。

13911:2013/01/11(金) 22:20:36 ID:???
連志別川(六) 神秘の暴虐美

――生まれたままの姿の美少女に、凍らされ、硬く厚い氷板の上で、縫い付けられるように・・・
少女の冷たい拳の下で、おれは自らの人間としての生涯が、既に閉じてしまったという事実を、悟らざるを得なかった。
だが、それは死の到来ではない。現に、おれの鼓動は異常な程に高鳴っている。終焉は今、始まったに過ぎないのだ。
少女は、おれが少女を撃とうとしていた事も、恐らく知っている。殺さなければやがては殺される。それが戦闘の掟だ。
もしおれが少女なら復讐を恐れ、おれを今すぐ殺すだろう。しかし、少女の拳は、あの弾力ある真紅で覆われたままだ。
おれは、真に戦慄した。この川は「戦場」でも「狩場」でもなく、少女だけが知る禁断の「遊び場」だったのだ・・・!

――鼻に左、鼻に右、鼻に左左右、鼻に左右、鼻に左右、鼻に、左、左、左左右、左右・・・
もはや顔面以外に、殴る所など、ひとつもなかった。狂気に満ちた少女の視線と拳は、おれの顔面を決して外す事はない。
おれは、もうおかしくなっているのだろうか、その拳の人智を超えた正確さに、一種の絶大なる信頼感とでも言うような
そんな感情さえも、抱くようになってしまっていた。糸引く鮮血が、少女の両拳を更なる淫靡な真紅へと磨き上げる。
勢い良く溢れ出す鼻血が喉に逆流し、おれは溺れた。更に左右左左の連続打ち、一拍おいて痛烈な右が鼻を殴り潰す。
むせ返り爆裂したおれの血が少女の上半身に飛沫き、その神秘の曲線を艶かしく彩った。そして、遊戯は再開される。

――赤い、おれの鼻血にまみれた、弾力のある、革の、赤い、おれの、血を、吸った、赤い、血を、赤い、血の・・・
矢継ぎ早におれを苛む魔の双拳。脳を犯す破裂音と紅い閃光の点滅は、おれの魂を再び紅の狂空間に誘うに充分だった。
全身が凍っている痛みなど忘れさせる程に、おれの顔面に弾ける少女の拳の連打は疾く鋭く、そして正確で綺麗だった。
しかし、絶え間ない苦痛をおれの顔面に真正面から与え続ける少女は、そんな思考の暇すらおれに与えない事を
むしろ楽しんでいるかのようだった。憧憬、畏怖、恍惚・・・おれの脳裡にどす黒い劣情が浮かんでは真紅の兇弾に
激痛として上塗りされる。絶望に身をよじろうにも、それすらも許されない。それが、真なる絶望の正体だった。

――痛え・・・!痛えっ・・・!!い、痛ええッ・・・!!!いッ、いッ・・・痛え痛えッ痛ええよおぉッッ・・・!!!!
川面に「立つ」少女の拳は、痛かった。未知の脚捌きによる加速と急停止が、その破壊力を芸術にまで高めたのだ。
しかし、川面に「寝た」おれに降り注ぐ拳もまた、異質の痛みがあった。嗤う少女の歯にまで、おれの血が飛んでいる。
おれの頭蓋は、真上から降り注ぐ少女の拳と硬い氷板との間で垂直に圧縮され続け、その威力は決して後方へ逃げない。
人体の中でも、脳は豆腐のように脆く、唯一鍛錬する事が出来ぬ部位だ。おれは脳を直接叩き潰される恐怖に喘いだ。
実際、おれは「効いて」いた。もはや氷の呪縛が無くとも、おれは百まで数える内に、上体を起こす事も敵わないだろう。
これは、人間を「殺す」為の体勢だ・・・!しかし、少女の弾力ある双拳は、おれに決して「死」を与えようとはしない。
人界の理の外、「未知」の世界へ、少女の狂気はおれを誘って行く。そう、「生」でも「死」でもない、どこかへ・・・

――あっ、あっ・・・!
異変が、始まった。それは、頭蓋の内にだけ静かに深く響いた、異音。骨に、おれの鼻梁の骨に、亀裂が走る音だった。
おれは今、少女だけの玩具として「壊される」恐怖に、打ち震えた。そして・・・目の前の「少女へ」願った。
どうか少女がおれの異変に気づき、その拳を・・・、その、真っ赤な拳を・・・、止め・・・、と・・・め・・・?

突然に、少女は立ち上がった。首を跨ぐ両の脚、しなやかな二の腕、腰から胸へと続く魅惑の流線美、広く白い額までも
破裂したおれの返り血で斑な水玉模様に染められ、太陽を浴び透き通るようなその威容は、精緻な硝子細工を思わせた。
静寂が、訪れた。突き刺さる少女の悪戯な視線が、おれの鼓動を滾らせ、おれの鼓動が、おれの魂に語りかけた。

13921:2013/01/11(金) 22:21:31 ID:???
連志別川(六) 神秘の暴虐美

――まだ・・・まだだ・・・!まだ、何も、終わってはいない・・・!
金の睫毛を閉じ、おれの血に塗れた右拳を、高々と掲げる少女。そして、再びその眼を見開き、氷の「射線」を作る。
標的は、おれの頭蓋の中心、鼻の骨だ。少女は、片目を瞑ると、迷い無く、その真紅の兇器の引鉄を引いた。
おれは、恐るべき捻りと共に射線上を加速し視界を犯し尽くす破砕の兇弾を、決意に歯を食い縛りながら、迎えた。
砕けた。その音で、わかった。革がおれの皮膚を撃つ破裂音とは違う、革の内部の拳までも命へ直接食い込む一撃だ。
そしておれは、勢い良く水溜りを踏んだかの如く爆裂四散し赤色の硝子粒の如く氷結し舞い落ちる鮮血の粉雪の中で
自らの魂が、未だに少女の世界の入り口にしか到達していない、その冷厳なる事実を思い知らされる事になった。

――・・・!!!
肉体がひとつの限界を迎え、少女が立ち上がった瞬間、おれの心を冷たく吹き抜けた・・・何とも言えぬ、寂寥感。
何故だろう、鼻の骨をへし折られる寸前、おれは確かにその真っ赤な拳を・・・止めて「貰えない」事を、願っていた。
だがまさに今、加速する激痛が魂に追い付いたその時、眠っていた生存本能が覚醒し、おれの肉体と醜く抗い始めた。

――・・・・・・・・・!!!!!!!!!
おれの躰は全力で転げ回れも、鼻を押さえてのたうち回れもしなかった。魔氷の呪縛が、それを決して許さない。
全身の筋肉が痙攣し、厚い氷の下で虚しく藻掻き足掻く。肉体と神経の乖離に、満たされぬ本能は苛立ち、暴走した。
人の限界を超えた狂騒に皮膚は破れ、関節は砕け、排泄物は瞬く間に氷結し、少女の狂気はおれの本能すらも嘲笑った。
生の醜さを堪能したのか、再び少女の顔が、近づいて来る。まず哄笑が降り注ぎ、血塗られた拳が、後を追って来た。
微塵の情け容赦もない、殺す拳だった。その衝撃に、砕けた鼻骨の刃が肉を滅茶苦茶に引き裂き、視界が七色に明滅した。

――んぶっ、ぐゥゥッ・・・!!
少女は右拳に全体重を掛け、おれの折れた鼻ごと魂を潰しにかかっていた。全身の血流が頭に集まってくるのがわかる。
肺臓一杯に鮮血混じりの空気を吸い込み、血にまみれ破れた唇を固く閉じ、涙を流しながら必死に息を殺して、耐えた。
一旦この口が開き、叫びが漏れ出したら、もう決して「戻って来れない」事は、判っていたから。
少女の目は、好奇心に爛々と輝いていた。鼻腔と張り詰めた拳の間から、圧縮された血の矢が、徐々に漏れ出し始めた。

――軽い・・・!なんと、余りに、軽く・・・儚いのだろう・・・!
紅く爆裂する激痛と窒息と圧迫の地獄の中、おれは少女の躰の軽さ、細さ、そして弱さを、想った。
少女はただ真っ直ぐに、視線を突き刺してくる。少女とおれの狂気と正気が、一刹那の暇もなく激突し続けている。
おれは決壊寸前だった。少女は更に右腕に左拳を添えて、血の螺旋を描き始める。その爪先が氷を蹴る度、真紅の右拳へ
おぞましき渦模様が刻み込まれ、骨と肉が摺り潰れ神経が引き千切れる破滅音が脳へ直接響き渡る。頭上の少女が廻り
やがて逆さまになる。悪戯な視線はそれでも常におれを犯し続けている。そして、ふたりの顔が再び正対した時・・・

「くおっ・・・!あっああっ・・・!・・・・・・おうおおぉおぁああぁああぁああぁああーーーッ!!!!!!」
その瞬間は訪れた。少女が拳を開放し立ち上がる寸前、垣間見せた狂喜の瞳は、おれの正気を氷の焔で焼き尽くした。
今までずっと垂直に、おれの顔面にのみ注がれていた少女の視線が浮き上がり、おれの眼先と同一点上で、交差した。

「うぎゃああおおおああああああぁああぁーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!!!!!」
それは、まるで血の間欠泉だった。完全に骨が砕け異形と化したおれの鼻腔から螺旋を描き垂直に迸った真っ赤な鮮血が
新たに噴き上げられた鮮血と空中で闘い、烈しく飛沫を散らし激突点から真紅の氷霧と化してあらゆる方位に舞い散る。
その酸鼻たる地獄の有様は、おれと少女を現世の呪縛から開放し、新たな宇宙へと誘って行くかのようであった。
その血塗られた好奇心の極め逝く先、それは、おれも少女も・・・未だ、知らなかった。

13931:2013/01/11(金) 22:23:04 ID:???
>>1388
こんな屈折したSSですが、読んで下さってどうもありがとうございます。
まあ、はっきりいって私、今回も楽しく狂いながら書いておりますので「頑張る」って程の苦行ではありません。
ただ、あーでもないこーでもないと妄想しながら書いてると、それこそ一日中勃起が止まらなくなっちゃって困るのと
(これが、毎度毎度出来上がったものを後で読み返すと全然勃たないのです)
深夜に妄想してると寝るタイミングを逸してしまうので、やってる期間は慢性的な睡眠不足に陥るのがネックですね(笑

13941:2013/01/13(日) 00:57:28 ID:???
やァァみィィをォォ あっざっむいてッ
せっつっなっをっ かっわしってエエ

とゆーことで(どーゆーことかね)ハッピーうれピーよろピくねーってかんじの気分で(死語)
JOJOの第14話をまた見てたんですが

また(前回は>>1309ね)ジョセフが女の子に殴られるシーンがあったので取り急ぎひとつ
今度は「バギャス」とゆー堂々たる書き文字(笑)と共に一人称視点的なアングルから右のパンチが決まっております
それにしても195cmのジョセフの顔面を捉えるとは、波紋の力アリとは言え恐ろしいシニョリーナよ(笑

いやーこの先が楽しみだなあ。ワムウ大好きなんですよねー
昔、「闘技! 神 砂 嵐」ってマネして右肘をゴキッとやっちゃった苦い思い出が蘇るなあ(笑

13951:2013/01/13(日) 19:15:29 ID:???
連志別川(七) 紅の更紗眼鏡

「ーーーーーーーーッ!!おっブッ!ブッ!ひっおぶぐッ!!ブッ!ぶふッ!ああおおッぎゃあぶッ・・・!」
その一部始終を見届ける事も無く、少女はおれに飛び掛かった。狂気の少女は二体の魔獣を従えているに等しかった。
耳を劈く破裂音と共に、魔獣達はおれの血を、命を、魂を喰らい尽くし、無邪気な残虐性と化して少女へ捧ぐのだ。
真紅の拳が迸る血潮を体内に押し戻し、おれは倍の勢いで噴き返す。そして、更に血を吸って狂気を増したその拳が
おれの躰と心を粉微塵にすり潰す。まるで、おれの正気と少女の狂気が、紅い火花を散らしているかのようだった。
少女の左拳が口を塞いだ。そして、鮮血滴る右拳を掲げたまま・・・左拳を鼻へとずらし、おれの言葉を待った。

「ひっ・・・あっあっあ・・・!殺さ・・・ひぃっ・・・!ふゥッッ!!許っ・・・ひぶッ!あひッわあああ!!!」
第一の願いは、叶えられた。おれは、美少女の玩具だったからだ。玩ばれる道具として、おれは愛され続けた。
少女の右拳が太陽に掲げられ、咆哮と共におれの顔面の中心目掛けて墜落する。紅の弾丸は垂直に迸るおれの鮮血を
その表面で吸い尽くすと、鼻先で止まった。拳から染み出す少女の残虐性を、おれは血の雨としてただただ浴び続けた。
第二の願いは、叶えられなかった。氷は、溶けない。しかし、今おれの魂を弄ぶ煩悶の正体は、凍傷ではなかった。
肘の回転のみによって繰り出された少女の左拳が、おれの潰れ切った、鮮血に濡れそぼった鼻を、軽快に弾き続ける。
脚捌きのない、そっと触れるだけのような、儚く弾ける妖精の拳。しかし、その「弱さ」こそが、真なる恐怖だった。
おれは少女の打楽器だった。皮膚の破裂音だけではない。折れた鼻を打たれれば苦痛が稲妻と化して脳を貫き、その度に
喉からは魂の絶叫が、鼻からは真紅の鮮血が、眼からは七色に眩く激情が迸り、少女をいつまでも楽しませ続けるのだ。
ここは、逃れ得ぬ無間地獄の底だった。魔性の少女の終わらぬ「遊戯」が、おれの正気を、ついに、焼き滅ぼした。

――ああ、ひんやりして・・・いい、気持ち、だ・・・
鼻に感じる心地良い冷たさは、少女の吐息だった。血に染まった美少女は悪戯に、そして「逆さまに」笑っていた。
少女は腕を組み、左足と右足、そして脳天で躰を支えている。
なぜ・・・なぜだろう・・・おれは、必死になって笑いを堪えていた。そして、暖かい爆笑が同時に巻き起こった。
両の目蓋から熱い涙が溢れ出し、頬に凍て付いた自らの鮮血を溶かしていく。少女は両脚を揃えて川面を蹴ると
滑らかな額を支点に、日輪を浴びて倒立した。美少女の顔が、紅い唇が、急接近し・・・おれの鼻先で、止まった。
少女は、おれを見下ろしている。おれはこれから、また、殴られるのだろう。だが、不思議と、心は安らいでいた。
その腋に隠されていた煌めく兇器が、神秘の光と共に現れる。

少女は抉り込んだ右拳を支点に、おれの顔面の周囲の氷を膝で旋回し始めると、左右の拳を交互に目蓋へと降り注いだ。
全ての拳が、おれの顔面へまさに捻り込まれて行く。正面から、逆手で、或いは傾き、絶望の紅に閃く激痛が瞼に弾ける。
鮮血の結晶を纏い眩しい日輪を背に旋回する金髪の少女は、おれの脳裡に、親父の洋学書で見た異国の玩具を蘇らせた。
それは更紗巻きの筒眼鏡で、覗いて廻せば転がる内部の色粒が光に煌めき、眼界一杯に回転美の世界を織り成すという。
様々な紅があった。噴き上がった鮮血、返り血に塗れた少女、そして螺旋を描きおれの視界を犯す二つの拳・・・

「くふっ・・・くふふっ・・・!・・・あはははははははッ!!・・・あーーーっはははははははッッッ!!!!」
おれの上で、美少女が、血と命にまみれ、無邪気に遊んでいる。撃ち下ろす拳それ自体にも強烈な捻りを加える事により
反動で躰の旋回が加速する事に、少女は気が付いたらしい。ますますおれの顔面は烈しく摺り潰され、あらゆる傷口から
鮮血が止めどなく垂直に迸り、激痛に弄び尽くされたおれの脳は、少女とその拳を、三つにも六つにも分身させた。
躰の旋回と拳の捻り、二重の螺旋が、おれの生命を根源からもて遊ぶ。おれは、血に明滅する美しき錯乱を、楽しんだ。
更に竜巻の如く狂威を増す美少女の円舞に、波打つ髪が水平に浮き上がる。三人の少女は六人へ、六の拳は十二の拳へ
十二の拳はおれの眼、顎、鼻あらゆる肉を無慈悲に抉り抜き骨を砕き潰し、紅の更紗眼鏡は更に絢爛なる精緻を極めた。
全ての色彩が強烈な陽光を浴び、輝いていた。魂爆ぜる激痛は、その美が生命の煌きである事の証左に他ならなかった。
おれと少女、顔面と拳、そして魂と魂が垂直軸上に並び、血の螺旋に遊ぶ。まさに今おれ達は、一対の更紗眼鏡だった。

13961:2013/01/13(日) 19:16:05 ID:???
連志別川(七) 紅の更紗眼鏡

ついにおれは、完全なる茜色の硝子細工、生命美の完成を見た。もはや、その波打つ髪、綺麗に並んだ歯、きめ細かい頬
細い首筋、神なる起伏を秘めた胸、柔らかな丸みの腰、そして何度も氷を蹴りおれを苦しめたそのしなやかな脚までもが
一片の白も残さず、おれの鮮血、おれの魂、おれの迸る命により、朱に染め上げられている。

少女は眼を閉じると、脚を前後に開き・・・伸ばした両腕を水平からやや高く掲げ、胸を反らせて雲一つない天を仰いだ。
感動があった。迸ったおれの血が日輪を照り返し、少女は柔らかく清冽な狂気に満ちた、命に溢れる生きた芸術だった。
「未だ知らぬ事」・・・残り少ないおれの人生は、それを求める為だけに費やされてきた。「恐怖」こそが、おれの求める
究極だったのかも知れなかった。もう何も思い残す事は、ない筈だった。だが、少女の躰は、再び涙の奥に霞んだ。
少女は、おれの顔面へ視線を戻すと、一歩、二歩と後ずさり・・・止まった。その金色の眉尻が上がり、緊張が走る。
おれは、途切れかけていた意識の糸を必死に繋ぎ、腫れた瞼へ残る全ての命を注ぎ込み見開くと、その瞬間を、待った。

助走から川面を蹴り、太陽へと飛び立つ少女。爪先で削り取られた氷の破片が、その回転の凄まじさを物語った。
遠心力で振り飛ばされた鮮血が、紅の粉雪と散る。その有様は、数十年に一度の日食を思わせる程に、神秘的だった。
更に急激な捻りを加え、その躍動美の全てを魅せつける。切り取られた全ての輝く瞬間が、おれの脳裡に深く刻まれた。
そして、最期に刻まれたものは、猛り狂う紅い雷の如き右拳が、おれの鼻梁に垂直に抉り込まれる、その瞬間だった。
迸った鮮血は、大輪の氷の牡丹と化して咲き乱れた。その爆裂する激痛に、おれは意識を失う事すら許されなかった。
少女は右拳だけでおれの鼻を摺り潰したまま、なおも熾烈なる摩滅を齎し続け・・・そして倒立したまま、静止した。
ふたりの視線は、再び垂直に交錯した。少女の蒼い瞳が震え、凍て付く涙が、おれの見開かれた眼球を叩いた。
おれは、強い人間だった。しかし、人間という生命存在の極限・・・避けられぬ「終わり」を、おれ達は共感していた。

背を向けて歩き出す少女。おれは、意識と無の狭間で、藻掻いていた。迸り凍る鮮血が、目も耳も鼻も口も塞いだ。
鮮血の色が、血潮の音が、鼻血の臭いが、血液の味が、血氷の冷たさが・・・五感が、命の熱が、緩慢に失われて行く。
とうとう少女は、晩冬の寒空へと消えていった。爆裂していた己の鼓動が、脳へ、響きにくくなっていくのが、わかる。
心臓が、命が・・・止まる。闇がおれの全てを包もうとしたその時・・・おれの中で、決定的な「何か」が、爆発した。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!」
魂そのものを絞り出す大絶叫が、蝦夷の山々に木霊した。己でも何を叫んだのかさえ、判らない。
だがおれは、確かに「少女に」叫んだのだ。おれの、少女への、灼熱に燃え盛る想いを。

爆熱した「何か」はおれの中の新たな鮮血を滾らせ、顔面に開いたあらゆる傷口から噴出し氷を融かし尽くした。
失われていた五感が、極限の高揚感と共に蘇ってくる。そして、見えなくなった少女が、戻って来るのがわかる・・・!
氷を蹴るその脚の爆震が、幾十重にも重ねられたその波紋が氷を伝わり、熱く蘇った聴覚を、心地良く犯したのだ。
少女は再び「意志」を持った「弾丸」だった。しかし、その「意志」は更に強く、更に疾く少女を「加速」させた。
そして、ついにおれの視覚が少女の姿を捉えたその次の刹那、名状出来ぬ激情に満ちた破壊が、おれを迎えた。

最期の一撃はおれの鼻を「水平に」爆撃した。掬い打ちの要領で逆手に固く握り締められた右の艶めく魔性の拳は
おれの鼻梁を、少女を探す視線の先から正確に捉えた。全身を一弾と化して起爆した少女の激情はおれの激情と共鳴し
無限無量に爆裂する狂気が鼻を起点としておれの全身を駆け巡り、その反動は一条の稲妻と化して少女の全身を貫いた。
溶岩の如く噴出した灼熱の鮮血が血の雨となっておれの瞼へ降り注ぎ、視界と意識を懐かしき茜色へと閉ざしていく。
そして・・・またしても、おれは・・・なにも、わからなくなった。

13971:2013/01/13(日) 19:16:32 ID:???
連志別川(七) 紅の更紗眼鏡

――ここは・・・三途の川、か・・・
背が、冷たい・・・おれは、またしても「生きている」ようだった。だが、おれが美少女との苛烈なる遊びを通じて
人間として失ったものは、余りにも、大きかった。「死ねなかった」と言ったほうが、正しかったのかもしれない。

中洲に乗り上げ、おれは息を吹き返したようだった。川の両岸は、切り立った崖となって月光を照り返している。
おれは、泣いた。眩む意識の中で涙に溺れながらも、少女の躰を、悪戯な笑顔を、そして甘苦い拳の味を、思い出す。
そして少女との間に「血」による奇妙な繋がりを得た事に、戸惑いながらもどこか満たされている己を、感じていた。
懐中の、二重の鞘で封印された刃へ、手を伸ばそうとした。山鳥兜の汁を幾十層にも染ませた、この小指程の黒い毒針は
狩りの道具ではない。冒険者として、誇りある死を選ぶ・・・その時が来たら使えと、十一年前に親父から渡された物だ。

腕が、指一本すら、動かない。その代わりに、躰のある一部分が痛い程に疼き、熱を帯び脈動している事に気が付いた。
おれは力なく嗤い、そして、また泣いた。慟哭に咽びながらも、両手も両足も動かせず、鼻は呼吸器としての役を成さず
そして、少女との想い出が熱く蘇った。少女の華麗な拳闘美を、しなやかな手脚を、美しく儚い重さを、顔面で想った。

背に、摩擦を感じる。水嵩が増して来たのだ。これから恐らく、おれは再び、流されるのだろう。
再び薄れゆく意識の中、何故だろうか・・・おれは、見も知らぬ筈の母の面影を、腫れた瞼の中へ想い浮かべていた。
その涼やかで優しい眼差しは、何故か「逆さまに」おれを慈しみ、そして、廻りながら、遠くなって・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

懐かしいチセの中で、おれは目を覚ましていた。恐らく、また、あの少女と村人達が介抱してくれたのだろう。
村人と話す時はいつも、あの少女が一緒だった。短い語ならば、おれは自然と彼らの言葉が判るようになっていた。
おれは礼を言い、村の言葉で「あの子は」と訊いた。髭の大男の表情が、複雑に曇る。「昨日から」だけは、聞き取れた。
そして村人の沈痛な表情が、何よりもおれの心に訴えかけていた。・・・「次こそは死ぬ事になる」「命を惜しめ」と。

随分長く眠っていたらしい。躰が快復しても、魂が目覚めを拒んだのだろう。包帯が取れるまでは二日と掛からなかった。
一人一人、村人の手を取り、礼を言って別れる。全ての村人が、おれが見えなくなるまで、手を振って見送ってくれた。
いつまでも響く惜別の声は、わずか十貫にも満たぬだろう帰りの荷を、その目方以上に、重く感じさせた。

右方向へ柔らかな曲線を描き続ける、浅い雪道をざくざくと歩く。この蝦夷地にも、雪解けの季節が、近づいていた。
道の端々から残雪を割って福寿草が蕾を出し、愛らしい花を咲かせ始めている。日輪を浴びて眩しく煌めく雪の銀白
そして、霜の露に濡れた黄金の花・・・その色彩に、おれは言い知れぬ不足を感じながら、分かれ道へと差し掛かった。
左は遠い松前へと続く、おれがかつて切り開いた山への登り口。右へは、あの川へと伸びる起伏のない道が続いている。

おれは、左へと進んだ。そして、全ての帰りの荷を蝦夷松の森へ投げ捨てると、山とは逆の方向へ、足早に歩き出した。
いつしか、おれは雪道を駆け出していた。今や異形と化した鼻腔を打つ春風の香りが、却って心地良かった。
これからおれは、少女の拳によって解き放たれた自内の「何か」と命を賭けて対峙し、そして、決着を付ける・・・!
畏怖、憤怒、混乱、憎悪、緊張、興奮、焦燥、怒張、絶望、希望、熱狂、狂乱、狂喜、狂騒、共鳴、陶酔、そして・・・
全てが綯い交ぜになった凍て付く熱風が、おれの全身全霊を柔らかに激しく包み込み、「あの川」へと疾走させていた。

13981:2013/01/13(日) 19:19:41 ID:???
SSについての色々なお知らせ事は、前回で書いた通りですのでそれをご参照下さい。
例によって今回のSSに出てきた風物の注釈を書いておきます。

山鳥兜:やまとりかぶと:猛毒草。特に毒の強い根一本で五十人の人間の致死量があると言われています。
福寿草:ふくじゅそう:雪に映える可憐な花で有名。

1399名無しのサンドバッグ:2013/01/14(月) 00:29:21 ID:c6Wfxm7A
>>1395
ウインタースポーツ要素を絡めてくるとは思わなかったw
冬季限定だけのことはあるね

14001:2013/01/15(火) 21:49:08 ID:???
連志別川(八) 二人の冒険者

未だ根雪の残る蝦夷地の春では、「暑い」と言っても過言ではない程、その日は皮膚が灼け付くような陽射しだった。
おれはあの川へと辿り着いていた。馬の如く息が乱れ汗が滴っている。休み無く半里を駆け抜けたから、だけではない。
鼓動は益々高鳴り続ける。躰と魂の内奥から燃え盛る業火に堪え切れず、おれは野の獣の雄叫びと共に諸肌を脱いだ。

叩き付けた装束から鳥兜の針を取り出し、端座する。そして二重の鞘を投げ捨てると、黒い刃を胸板へと突き付けた。
おれには一度「引き返す」機会があった。二人の少女との、狂乱と安らぎに満ちた想い出を、おれは捨てられなかった。
おれは雪に両手を突き、崩れ落ちていた。猛毒の刃が、あの川へと消えて行く。最期の幕引きの手段は、いま失われた。
熱い涙が固い根雪を融かし、孔を穿つ。それは、己の魂に巣食う「何か」と訣別出来なかった後悔か、それとも・・・

間も無くして、漆黒の影がおれの眼界を覆った。背筋が、凍り付く。咄嗟に足跡を探すが、左にも右にも見当たらない。
その人物は「川から」現れたのだ。後光を受けおれを見下ろす輪郭の主は、あの火の装束を纏った「村の少女」だった。
一条の光の通過も許さぬ厚い装束と頭巾が、少女の表情を暗幕の内に閉ざしていた。おれ達は、全ての言葉を失った。
少女の頬を止め処なく伝い零れ落ちる涙が白銀に煌めく雫となり、根雪の上で氷結しては鍾乳石のように聳えて行く。

半歩間合いを詰める少女。視線が、垂直に近い角度で交錯する。そして、膨らんだ「左袖」が、少女自身の帯を、指した。
震える指先を、藍に染められた帯へと伸ばす。生地に触れたその瞬間、爪に火花が走り、背後から竜巻がおれを襲った。
大地が砕け、氷の刃が巻き上がる。おれは左腕で顔を守り、必死に少女の装束に掴まり、吹き飛ばされまいと耐えた。

咄嗟におれは、右手で少女の左裾に縋っていた。旋風は装束の右半分と頭巾を吹き飛ばし、その神秘を剥き出しにした。
右半身には真紅の拳のみを、左半身には、精緻な火の装束を纏う少女。突き付けられた、美しくも苛烈な「現実」・・・
衣擦れの音に、おれは息を飲んだ。やがて、袖の重みから左拳も自ずと露わになり、心優しく涼やかな「村の少女」は
氷の目と濡れたような金髪を備え、装束の代わりに凍て付く程の残虐美を纏う「川の少女」へと変貌を遂げた。
「透き通るような」という比喩ではない。少女の肢体は生命に煌めく白銀の結晶だった。その美に太陽すらも狂熱し
暴力的なまでの日輪が、少女の躰を透過して七色の波動に輝く。おれの意識の最奥部へ、それは柔らかに注がれ続けた。
虹の波動を切り裂いて、色彩のみで痛みを感じる程に禍々しい紅の反射光が、左右からおれの眼球を激しく打ちのめす。

「・・・ごめんね・・・」
虹色に煌めく極光の幕の奥から、少女は、泣きながら笑っていた。いや、笑いながら泣いていたのかも知れない。
おれと少女の今までには、本当も・・・嘘もあっただろう。その全ての積み重ねが、おれ達をここに再び巡り逢わせたのだ。
「・・・いいんだ・・・おれは今日、全てを『覚悟』の上で・・・きみに、会いに来た・・・」
七色の波動が少女の複雑に絡み合う想いを魂に伝え、真紅の閃光がおれの「自ら望んだ」ただ一つの運命を示していた。

少女の「左拳」が、脱ぎ去られた装束を指す。見た事もない道具が入っている。平らな土台の付いた硝子の瓢箪か・・・?
いや、上下とも同じ円錐で、片方に紅く光る砂が入っている。逆さにすると、円錐の継ぎ目から砂が徐々に落ちて行く。
恐らく、おれと少女との間でこれから行われる「遊び」に、必要なものなのだろう。少女は、左拳で胸にそれを抱いた。

そして、少女の「右拳」が指した先・・・そこは、おれの最初にして最期の目的地だった。再び視線が交錯する。
おれ達は、二人の冒険者だった。冒険者は、冒険の中で最期を迎えてこそ、誇りある冒険者たり得るのだ。

14011:2013/01/15(火) 21:49:51 ID:???
連志別川(八) 二人の冒険者

「・・・いいの?」
渦巻き錯綜する感情を押し殺すように絞り出された、少女のその一言は、冒険者としての迷い無き覚悟を問うと同時に
その拳撃がおれに後戻りの出来ぬ破滅・・・即ち人間としての生の終焉を齎さざるを得ないであろう事を示唆していた。
「もう一度だけ、あなたに訊くわ・・・本当に・・・・・・本当に、それでいいの?」
潤む少女の眼差しからは、今までおれを氷結地獄の底に叩き落とし責め苛んできた、残酷な好奇心は感じられなかった。
心の覚悟は、出来ていた。しかし生ある人間として、躰が震えた。これ程までに命を燃やす冒険は、最初で最後だろう。

「あっ・・・」
おれは震える左手を伸ばし、少女の右拳、その手首をとった。そして右手を添え、その固く握り締められた拳を慈しむ。
柔らかい・・・!まるで、少女の躰の一部を揉みしだいているような、官能すら感じさせる弾力がおれの触覚へ伝わる。
おれは幾度となく肉を叩き潰し血を吸い尽くし魂を撃ち砕いたその拳を・・・愛おしむように、己の鼻梁へと押し当てた。
「ぐっ・・・」
凄惨なまでに変形していた鼻に痛覚が蘇り、脳に稲妻が走った。おぞましくも、懐かしい、革と血の混じった香り・・・
少女の口許が真一文字に結ばれる。弾力ある拳が自ら潰れながら骨にめり込む激痛が、おれの最後の迷いを断ち切った。
「行こう・・・」
「うん・・・時間がないわ・・・わたし達には」
おれと少女の最後の冒険が、いま始まった。それは、おれが初めて挑戦する、「誰かの為に」命を賭ける冒険だった。

先を進む少女。歩みのたびに踵が一瞬沈むが、浮き上がる。おれは今、なぜ少女が川面を歩けるのか、わかる気がした。
二度にわたっておれの侵入を拒み、躰と魂を犯し尽くした、魔性の川・・・魔性の少女・・・そして、魔性の双拳・・・
波打つ金髪を見上げる。甘く苦く紅い想い出が涼やかに脳内で弾ける。気が付くと、おれ達は向こう岸に着いていた。

「・・・抱いても・・・いいよ」
未知の体験が待つ、未踏の地。燃える高揚感が、おれを大胆にした。震える腕が、繊細で精緻なその躰を、抱き上げた。
触れた瞬間、両腕を刺す痛みに声を上げてしまいそうになる。おれが自ら少女の躰に触れたのは、これが初めてだった。
「・・・冷たい?ふふ・・・わたし、ニンゲンじゃないよね・・・わたしって・・・何なのかな・・・?」
長い脚を宙に遊ばせ、視線を彷徨わせながら、少女は自嘲的に笑った。こんな憂いを帯びた表情は、見た事がなかった。
激情が、燃え上がった。確かに少女の肌は痛みを感じる程に冷たい。しかし、それは生を失った冷たさとは、全く違う。
方向性は真逆だが、躰には「生ある凍気」が充満している。凍て付くような、息づく命の確かさがあるのだ。

川を境に、道は様相を変えつつ左へ滑らかに切り返していた。蝦夷松に代わり、立ち並ぶ七竈の枝に残雪が積もっている。
晩秋の紅葉が美しい樹だ。鶫や椋鳥に食われたのだろう、赤い実は一つも残っていない。七竈酒の清冽な苦味を思い出す。
かつて、少女に聞いた事がある。七竈は魔を祓うと・・・あの時のおれは、少女の邪悪から逃れる為に樹の霊力へ縋った。
そして今のおれは、この樹に導かれ少女という未知へ挑むのだ。澄み切った大自然の中、躰と魂の熱が交換されていく。

腕から奪われゆく熱が、沸々と胸の奥から沸き出し続けるのがわかる。「愛おしい」とは、こういう気持ちなのだろう。
投げ捨てた荷より更に軽く儚い、柔らかな少女の重みが、腕に心地良い。顔面と拳、血と血、命と命で通じ合った二人。
吹雪すら涼しく感じるおれ以外に、この少女を抱ける者はいないだろう。確信した。おれと少女は「対」の存在なのだ。
「熱っ・・・痛い・・・!」
「痛いかい・・・おれもだ・・・!この痛みこそが、生の証し・・・!きみの拳が、おれに教えてくれた命の尊さだ・・・!」

少女の華奢な背を、柔らかな太腿を、更に強く抱き締める。少女にあの悪戯な、残酷な程に歪んだ笑顔が戻ってくる。
「ふ・・・くふふっ・・・!変なの・・・!あははは・・・!」
これからおれ達は、生命で・・・「痛み」で、遊ぶのだ。誇りある存在として、命を融かし尽くす最期の遊びを・・・!

14021:2013/01/15(火) 21:50:21 ID:???
連志別川(八) 二人の冒険者

おれ達の躰と魂の熱が平衡状態に達した時、右手方向に崖が聳え、左手からあの川が迫って来ている事に気が付いた。
雪道は細くなり、ついには行き止まりに達した。川の左岸も、高い岩崖になっている。あの川の源流に辿り着いたのだ。
少女はおれの腕を足場に跳躍すると捻りを加え、舞うように川面へ着地を決めた。痺れるような余韻が腕に残っている。

「こっちよ・・・ついて来て」
少女は、川に消えた。大股で五歩余りの幅の水源・・・いや、おれが水源だと思ったその横穴には、まだ奥があった。
水面の下だ。おれは息を止め、扁平な水路を遡り泳いだ。真っ暗な水中を、少女の残す凍気だけを頼りに進んで行く。
清らかな気持ちだ。この地に来てから、人と自然全てが、この少女のもとへとおれを導いたような気がしてならない。
いや、運命はそれ以前から定められていたのかも知れない。未知なる目的地へ続く暗黒の水中洞窟は、延々と続いた。
息が苦しくなってきた頃、ふっと冷たさが和らいだ。目を瞑ったまま我武者羅に水を掻くと、硬い何かに額をぶつけた。

おれは立ち上がった。空気がある。地響きのような轟音が耳を劈き、立ち上る水煙にむせ返る。ここは、滝壺・・・!
遥か真上の水源から、夥しい量の水が白い柱と化し、目の前に放物線を描き注いでいる。おれは、少女の姿を探した。
左にも右にも、居ない。おれは、全てを悟った。そして「自ら望んだ」運命の引鉄を引くべく、滝の向こうへと叫んだ。
「いつでもいい・・・!さあ、やってくれ・・・!!」

直後、瞼の肉すら軽く貫く銀の閃光と共に、真正面から氷の嵐が巻き起こり、おれは水平に吹き飛ばされ岩壁へ激突した。
斬り付けるような窒息感と、背後と頭上を襲う清冽な痛みはすぐに麻痺し、滝の轟音が消えた事に気が付いた。
恐る恐る、瞼を開く。五歩四方の正方形の空間は、吹き抜けになっていた。濛々と立ち上る水飛沫を受けていた壁面は
磨き抜かれた大理石の如く滑らかな氷壁と化していた。乱反射し極限に増幅した日光が、少女の姿を瑞々しく照らし出す。
荘厳なる静寂の中、自らの終の舞台に立ち尽くし、おれは思った・・・「おれは冒険者になってよかった」と。

脚は滝壺に膝上まで浸かって凍り付き、後頭部と岩盤の間は厚い氷壁に埋められ、両腕は指一本動かぬよう封印され
頭頂には堅牢な氷の兜が完成していた。烈風に歪んだ滝が壁伝いにおれを叩き付け、そのまま氷に閉ざしたのだ。
おれは、第一の逢瀬・・・氷を蹴り加速する華麗な足捌きと急減速を活かした少女の拳の齎す激痛に、想いを馳せた。
そして、第二の逢瀬・・・身動き一つ取れず衝撃の逃げ場のない状況で受ける少女の拳の齎す恐怖に、想いを馳せた。
少女は、完全なる平面と化した氷面に立ち、おれを僅かに見下ろした。死を孕んだ静寂に、己の心音のみが響き渡る。

氷上に置かれた紅の砂細工が、光を反射しておれの眼を撃った。上の皿から完全に砂が落ち、上下が返されたその直後
全く視認出来ぬ足捌きで、少女の顔が肉薄した。少女の脳とおれの脳が、互いの額の皮膚と頭蓋を通して接触している。
「暫く、眼を閉じて・・・これが、わたしの技・・・・・・・・・痛さは、ふふ・・・お楽しみよ・・・」
未知の拳闘技が、瞼の裏に生々しくも流麗な映像を伴って、次々と清冽な凍結感と共に脳へ刻み込まれて行く。
額が離されると、両の拳を激しく叩き合わせる音が、均等な間隔で響き始めた。砂は、丁度三分の一程度、残っている。

「百八十・・・わたしの全てを、その命で知ってもらうわ。あなたを・・・『お兄ちゃん』に、してあげる・・・!」
全身の血流が加速する。混乱の中、空間に反響する爆裂音を数えつつ、おれは少女の言葉の意味を、必死に追い続けた。
砂が尽きる六十弾目の代わりに、「右の正面撃ち」がおれの鼻に迫り、寸前で止まった。仰け反る事すらも、許されない。
次にあの砂の瓶が返れば、もう二度と「戻れない」破滅が待っているのだろう。心拍で四百、いや、五百余りか・・・?
半身から斜めに躰を傾け、柔らかに髪を揺らしながら真っ赤な二つの拳を構え、美少女はおれの決断を待っている。
これが己の意志を言葉で伝える、最期の機会になるだろう。おれは、少女の匂いを胸一杯に吸い込み、魂を絞り出した。

「きみを、愛している・・・!おれの命で、きみを知りたい!・・・さあ、来い!おれを・・・砕き尽くしてくれ!!」
時と命を刻む硝子細工は、返された。流れ落ちた真紅の砂は、決して戻る事はない。

14031:2013/01/15(火) 21:53:16 ID:???
えーどうも皆さんこんばんは。SSを貼りました。見りゃわかりますね(貼る前に言っとけよ

今度のは、全十回でまとまったらいいなーと思いながら、今(九)をやっております。ほとんどできてませんけど(笑
今回は掛け算的な・・・ 1×3=3 1×3=3 1×3×3=
まあそんな感じのノリでいってみようかなーと。


>>1399
せっかく「冬」をテーマにしたのだから、冬にしか、氷上でしか出来ない事をやってみようと思いまして・・・
文章は大変暑っっ苦しくて申し訳ありませんが(笑

14041:2013/01/18(金) 01:34:37 ID:???
えーどうも皆さんこんばんは。
今日はSSの第九回を貼・・・ろうと思ったんですが
待ってくれている皆さんがいるとしたら本当にすいません。残念ながらまだ出来ておりません(´・ω・`)
推敲した回数に比例して面白くなるって訳でもないのがツライところですが
只今鋭意製作中ですので待ってる方はもうしばらくお待ち下さい。


ご報告だけじゃ申し訳ありませんので、マウントポジション大好きな方に
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16024975

餓狼MARK OF THE WOLVESってゲームをやった事がある人が10000人いるとしたら
10000人のうち5000人ぐらいがこの技の名前を知っていて
5000人のうち1000人ぐらいがCPUほたるにこの技をかけられると何だかわからないけど興奮してしまった事があり
1000人のうち50人ぐらいが何でマウントポジションを取ったのにパンチしないのかと不思議に思った事があり
50人のうち5人ぐらいがマウントポジションからKOされるまで殴られる妄想をしてしまった事があり
5人の内1人ぐらいがマウントパンチの追加コマンドを本気で探してしまったであろうそーゆー技です。

1405名無しのサンドバッグ:2013/01/19(土) 16:04:12 ID:gwHWmfCY
ボクシングプレイが可能な風俗店に行ったことがある方
いらっしゃいませんか?

1406名無しのサンドバッグ:2013/01/19(土) 18:10:48 ID:POO8uvUk
>>1405
ttp://pele.bbspink.com/test/read.cgi/sm/1263907172/
風俗店関係ならこのスレで聞いたほうがいいと思う

14071:2013/01/19(土) 20:36:27 ID:???
えーどうも皆さんお待たせしました。SSの続きが何とかできましたので貼っておきます。
今回は全十回の中の、第九回です。
最初からの流れの中で、今までやってない事をやろうと色々試してきましたが
結局は筆力及ばず、いつも通りになっちゃった感じです。大変読むのが疲れる文章でごめんなさい(笑

顔面へ拳撃ちを迎えるというのは言うまでもなく危険な行為であり
美少女相手に「危険を冒す」からこそ昂奮がある・・・そういう血生臭い魅力の片鱗もあるのだと思います。
その意味では、今回は全十回の中で最も冒険性の高い回です。一気読みは目と脳に毒ですのでお気を付け下さい(笑

14081:2013/01/19(土) 20:37:10 ID:???
連志別川(九) 魂を導く閃光

かつておれは、あの村で少女と過ごす安らぎの中で、この子の為ならば「死んでもいい」・・・そう、心から思っていた。
「死」は今、おれの眼前に「右正面撃ち」という実体を得て迫っていた。少女は氷上を激しく舞う脚捌きの魔性により
全身に秘められた狂威を拳に集約し、おれは背後に聳える硬い氷壁によりその拳圧を逃す事すら許されない。
二度の経験が否応なく恐怖を累乗させ、非情な計算結果がおれの宇宙を赤黒い「死」の血文字で瞬時に埋め尽くす。

死を忌避する獣の本能がおれの眼球筋をかつて無い程に怒張させ、人間の成せる極限を超えて刹那の視覚を研ぎ澄ました。
右脚の爆発的な踏み込みが、左脚による急停止が、四肢関節の捻りが、一撃を織り成す少女の百の躍動が、初めて見えた。
神経と筋肉が奇跡的な連動を発揮し、おれの腕に最速で司令を下し顔面を庇おうとする。だが、しかし、動かない・・・!
迫り来る死の拳。戦慄の足掻きに腕の血管と理性が千切れていく。「見える」事が齎したものは、更なる絶望だけだった。

右正面撃ちの直撃を受けた鼻の骨は無惨にへし折られ、死を覚悟した本能が子孫を残すべく袴の中で精を搾り散らせる。
のたうち回る事も泣き喚く事も許されず、美少女の軽やかな「左弾き撃ち」が鼻を挫き視界を一瞬の内に朱に染め上げる。
正確に急所を捉える左弾き撃ちは、背後のある右正面撃ちと同等の威力でおれの鼻梁を異音と共に弄び苦悶に喘がせた。
無限に弾ける激痛と恐怖が、打撃を数える暇すら与えない。

迸る血潮が霧と舞い、喉に絡み付き呼吸を阻む。溢れ返る己の鮮血に噎せ返ると、砕けた前歯が勢い良く飛び出してくる。
舞台のみでなく少女の拳質そのものが、今まで二度の逢瀬とは全く違った。殺す者としての「覚悟」が、拳に漲っていた。
可憐で華奢な、年端も行かぬ美少女の流麗な拳闘技が、確実におれの命を殴り潰し死の淵へと追い詰めて行く。

おれは「殺されたくない」と願った。いつまでも、少女と遊んでいたかった。この甘い苦しみに、悶え狂い抜きたかった。
倒れる事も降参する事も逃げ出す事も出来ず、後ろに仰け反る事すら敵わない。
限りなく狂気に近い正気と狂気の狭間で、脳へ直接響き輻輳する左拳の破裂音と己の心音の嵐に漂いつつ、おれは想った。
眼前の少女は・・・持てる技巧の全てを以って、おれの肉体と精神を、少しも容赦せず「殺し」に来てくれている・・・!
かつてない興奮に体液が沸騰する。そうだ。これこそ究極の「勝負」だ・・・!勝負があるからこそ、遊びは面白い・・・!
脳が融ける程に狂熱している。迸る鮮血の鞭が少女の顔を朱に舐め上げる。その舌が艶かしくうねり、血潮を舐め取った。

一陣の雪風の如く舞い、距離を取る少女。休み無く交錯していた視線が、一刹那だけ逸らされ、再び互いを見つめ直した。
真紅の砂は、まだ八割以上残っている。戻された視界に紅い閃光が瞬く。右の兇器が異形の顔面に、痛烈に正面衝突する。
骨の砕片が内部組織をずたずたに斬り裂き、雄叫びと共に滾る鮮血が全方位に飛沫と化して撒き散り空間を狂気に閉ざす。
一切手心を加えぬ少女が、心底恐ろしく、そして愛おしかった。勝負は、賭けるからこそ面白いのだ。
そして最も魂の震える賭け物は、己の「命」・・・!これこそが、おれが求めていた「冒険」なのだ・・・!

左弾き撃ちの狙撃点へ、一瞬の隙も無く正確に右正面撃ちを抉り込む・・・真紅の二連弾「重ね撃ち」の連打が始まった。
拳の点滅の狭間に垣間見える、血煙に舞う少女。その表情に変化が生じ始めた。おれの顔から、もはや表情は読み取れまい。
その肢体が躍る度、肉を潰し骨を砕く手応えと共に生命の狂奔が伝わり、狂気の微笑を呼んだのだ。
人間を壁に追い詰め、鮮血に舞い踊り砕けた顔面を殴り続ける。それは誰もが吐き気を催し眼を背ける殺戮、残虐行為・・・
しかし、おれ達を結ぶ信頼の視線は一刹那たりとも交錯する事をやめない。奈落の責め苦に血の泡を吐き、嗚咽と絶叫を
迸らせる度に魂が熱く滾り、人生最高最期の絶頂の連続に熱狂し、熱狂に加速する少女の拳がおれを更なる奈落へと誘う。
それは「覚悟」した者同士だけが成せる、地上で最も満たされた暴力の連鎖・・・顔面と拳による、魂と魂の会話だった。

湿りきった破裂音の中、意識と無意識、生と死が交じり合い、過去と現在すら融け合い始めた。
人は道半ばでその生涯を閉じる時、最も愛した人の面影を心に描きながら旅立って行くのだという。
命の火消えるその瞬間まで、最愛の少女は、「愛死合う」このおれを見つめていてくれる・・・
腫れた瞼の奥から止め処なく血の涙が溢れ、少女の振るう真紅の双拳が熱い液体をおれの体内へと撃ち戻し続けた。

14091:2013/01/19(土) 20:37:39 ID:???
連志別川(九) 魂を導く閃光

――・・・おれの声が、聞こえるか・・・!?大丈夫か・・・!?もう熱は、ないのか・・・!?
――ふふ・・・だいじょうぶよ・・・わたしに「熱」なんて、ないから・・・
――よかった・・・きみにもしもの事があったら・・・おれは・・・!

滲む少女の姿が、眼界から消えた。その直後、爆発音が足下から轟き、氷を伝わった爆滅の波紋が滾る涙を凍て付かせた。
鋭い脚蹴りと膝関節の反発により二重の狂威を纏った真紅の右拳・・・「掬い撃ち」が、垂直におれの顎へと迫り来る。
おれは半死半生の躰に残された最期の力を振り絞り、仰け反った。後頭部が氷板に擦れ、狂騒に皮膚は破れ関節は砕けた。
艶やかに張り詰めた右拳が顎を正確に捉え、骨と肉を押し潰し奥歯を強烈に噛み合わせる。ここまでは川面と同じだった。
破壊は、終わらない。頭頂の氷冠はこの刹那、処刑具と化した。氷と拳が形作る顎は、おれの頭蓋を限界を超えて噛み潰し
鼓膜ではなく脳へ直接、骨が砕け命が軋む響きを感じさせた。少女は拉げた下顎へ拳を埋めたまま、あらゆる傷口から
噴出する高圧の鮮血が、その伸びやかな脚を、引き締まった臍を、端正な顔を穿ち付ける刺戟を楽しんでいるようだった。
少女を外れ頭頂の氷に吹き付けた鮮血は瞬く間に凍り付き、紅く輝く無数の氷柱となっておれの眼前に垂れ下がった。

――あの恐ろしい悪魔が棲む川は・・・何と言う名前なんだ?
――・・・名はないわ。みんな、「ペツ」・・・ただの「川」と呼んでる・・・
――そうか・・・あの川に、名はまだないのか・・・

おれの鮮血を吸い成長して行く氷柱の奥で、朱を頭から被ったように濡れた少女の金髪からも、氷柱が垂れ下がっている。
おれ達はお互いの有様を見て、吹き出し合った。噎せ返る拍子に、砕けた奥歯の破片が鮮血に混じって転がり出してくる。
再び、同時に眼を逸らすおれと少女。時を刻む硝子、滴り落ちた血のように紅い砂は、間もなく半分に迫ろうとしていた。

僅か数拍の空白の時間でさえ、おれの意識を永遠の無へ引きずり込もうとする。血の結晶を振り飛ばし少女が肉薄する。
横薙ぎの旋風が、硝子板を割るように悲痛な激突音を響き渡らせた。氷柱を斬り落としたのは、左の「巻き撃ち」だ。
返す右巻き撃ちの連打がおれの顎骨、瞼を射ち砕き、左頬を撃ち抜いたまま横面を氷板へ縫い付けた。眼球筋がブチブチと
切れる異音を聞きながらも、左眼で必死に少女の姿を追うと、左右の兇弾がおれの左眼へ、左頬へ、命へ一挙に殺到する。
おれの全ての「血」を搾り出さんばかりの容赦無き破滅の乱舞に、魂が震える。一拍おいて、今度は鼻面に左拳が炸裂し
首が正面を向く。逆に踏み出した右脚を軸に腰を斬るように捻り、遠心力を骨まで砕く破滅の力と化し左拳へ乗せてくる。
左の巻き撃ちがおれの逆頬を氷壁に激突させ、開放された少女の狂気がおれの右の眼窩と頬骨と魂を滅多打ちに撃ち砕く。

――これだけは教えて欲しいんだ・・・きみの事を・・・なんと呼んだらいい?
――あなたは名前を付けるのが好きなのね・・・わたしに、名はないわ・・・いままでのように、「きみ」と呼んで・・・
――きみ・・・か。きみと一緒にいるだけで、おれは心が安らぐ・・・きみと暮らしていたい。いつまでも・・・

太陽はますます狂気を増し、この正方形の異空間を焼き付けている。滑らかな氷壁は、おれの正面のみではなく左右すら
完膚無きまでに血で塗り潰されていた。射し込む日輪が紅の光線に乱反射し、艶かしく幻想的に少女の肢体を照らし出す。
下顎を叩き潰す右巻き撃ちが、幻想から現実へ、死から生へとおれを叩き戻す。鼻への重ね撃ち十連が、命の鼓動を刻む。
もはや、顔を庇おうとする腕の反射すら、起こらない。おれは少女の拳打が齎す信頼ある苦痛に、魂すらも委ねていた。
おれの躰は、既に死んでいた。顔面を少女の拳が抉る度、真紅の稲妻がおれの脳へ轟き、止まった鮮血を狂奔させるのだ。

左弾き撃ち右正面撃ち左弾き撃ち左弾き撃ち右掬い撃ち左弾き撃ち左弾き撃ち左弾き撃ち右正面撃ち右正面撃ち・・・
屈辱が、煩悶が、爆裂する血の激憤がおれの生命を熱く滾らせ、新たな狂気を振り絞らせ更に少女の拳を冷徹に洗練する。
重ね撃ちの紅い閃光がおれの視界に拡がる。鼻血を掻い潜り肉薄した少女の左掬い撃ちが頭蓋を異形へと圧し潰す。
軽やかに氷面を舞う妖精の脚捌きに見とれる暇も無く、鋭い右正面撃ちが顎を撃滅し鼻を貫く左弾き撃ちに息を吹き返す。
左弾き撃ち左弾き撃ち左巻き撃ち右巻き撃ち左巻き撃ち右掬い撃ち左弾き撃ち右正面撃ち右踏み込み正面撃ち・・・
刻一刻と「その」瞬間が近づくごとに、躰の狂騒が、魂の昂奮が、そして少女の拳が更なる未知の領域へと加速し続けた。

14101:2013/01/19(土) 20:38:13 ID:???
連志別川(九) 魂を導く閃光

――きみの家族に挨拶がしたい・・・お父さんとお母さんは、どこにいるんだ?
――・・・・・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・・・・・・
――・・・・・・すまん・・・悪かった・・・・・・おれには、親父もおふくろも、いないんだ・・・

もはや、眼球を動かす活力を振り絞るだけで、恐るべき努力を必要とした。生命を映す紅い砂は、幾ばくも残っていない。
異変が、起こった。口で息を吸う事も、鼻で息を吸う事も出来ない。溢れ出す鮮血が呼吸を阻害するだけでは、なかった。
それは生ある人間として逃れ得ぬ宿命・・・その時の到来を示していた。最期の言葉を絞り出す事すらも、許されない。
全身を狂奔し鼻腔を逆流した鮮血と肉片と砕けた歯に混じった激情の泡が、半開きの口から力なく漏れるばかりだった。

少女の拳が二度打ち鳴らされ、おれの声なき断末魔は破裂音に閉ざされる。直後、衝撃波が激痛と共に顔面で爆裂した。
鼻が打たれ、頬が拉げ、顎が潰れ、瞼が弾け飛ぶ程連打され鼻が砕かれた。拳はおろか、肘から先を視認する事すら許さぬ
まさに神速の連撃・・・人間の視覚の限界すら超え、少女は加速し続ける。左か右かも、何発撃たれたかも、判らない。
おれはこの期に及んで、少女の未知なる拳を感じる昂奮に打ち震えた。極限に爆裂する心拍と心拍の間に二度顔面が弾け
激痛を追い抜いて新たな拳が顔面を捉える。次に気を失う、その瞬間が・・・おれにとって少女との永別の時だろう。

鼓動が急激に遅くなる。ついに、終わるのか・・・重ね撃ちの十八連打から巻き撃ち気味の右正面撃ちの七連弾を鼻に浴び
飛び散るや否や無数の氷晶に煌めく鮮血に包まれながら、おれは違和感を覚え始めていた。何故、迫る拳が見えている?
躍動する少女の肢体が神秘の白銀に輝く。極低温の波動が脳を凍て付かせ、残された生の時が無限に引き伸ばされて行く。
右の掬い撃ちが残った奥歯を砕く。鋭い正面撃ち気味の左弾き撃ちの直撃に、砕けた歯と鼻の軟骨が混じった鮮血が
噴出した直後水平に凍り付き、渾身の右正面撃ちが血と骨の氷条を破砕しつつ顔面へ炸裂し左巻き撃ちが眼窩を撃ち砕く。
失神する一瞬の隙さえ与えぬ、未知へ加速する拳。止まり行く時の中、おれは最期まで生を燃やし尽くせる喜びに震えた。
魂の叫びは、伝わった。そしてその想いが、無上の拳で返される。おれは本当に、この子に出会えて、よかった。

――この間は、ごめんなさい・・・・・・あなたも、ひとりだったのね・・・
――おれこそ、すまなかった・・・・・・ああ、ひとりぼっちだったさ・・・
――・・・いたわ。お母さんが、遠い北に・・・お父さんの顔は・・・・・・・・・知らない・・・・・・

砂が、空中を泳いでいる。一粒一粒の回転すら、見える。
今はただ存在する事だけが、少女の愛におれが応え得る、唯一にして最大の表現だった。

少女が踏み込んでくる。爆裂する右の蹴りは厚い氷に亀裂を入れる程に激しく、弾丸の如く地を這う姿から見上げる表情は
無邪気におれを弄んだ拳魔「川の少女」そのものだった。新鮮な懐かしささえ覚える恐怖に、更に時が凍り付いて行く。
左足が氷を噛み止める。靡く髪一本一本の躍動すら、見える。直後に右足が再び氷を蹴り、二段構えの爆発的加速を以って
鋭角に撃ち出された右の拳が、張り詰めた革肌を自らの拳圧に歪めつつ、煌めき漂う紅の結晶を斬り裂き迫り来る。
最後の一粒の砂が、落ち始めた。

――あなたを・・・「お兄ちゃん」に、してあげる・・・!

少女とおれの、温かで冷たく、そして柔らかで激しい愛情が融け合った切ない一撃が、おれの魂の最奥へ融け込んで行く。
既に原形を留めぬおれの鼻梁を右の拳が押し上げ、最高最期の激痛が全身の神経を稲妻の如く駆け巡り焼き滅ぼす。
確実なる死をその肉質に秘めた右拳は、逃げ場の無い狂圧に自ら限界を超えて潰れながらもおれの顔面を斜めに貫き砕く。
そしてあらゆる肉と骨、組織を巻き込み粉々にすり潰すと、聴覚を滅ぼす猛爆音と共に溢れる激情を脳へ向け開放した。
後ろにも上にも開放されぬ致命の衝撃が、顔面から全身へと駆け巡り、おれの魂を純化させて行く。
全身の血液が、人間としての最期の生命の火が頭蓋へ集中し、極限に圧縮され右拳と顔面の僅かな隙間から紅の刃と迸る。
鮮血は瞬く間に凍り付き、静止しつつある廃空間に無数の紅い氷華が彼岸花の如く咲いては散った。

そして・・・時は、止まった。
落ちた最後の砂粒も、空中に散った血の華も、おれに駆け寄る少女すら、全ての映像が静寂の時空の中で凍結していた。
柔らかな白銀の光が、止まった世界に満ちてゆく。おれはその閃光に導かれるままに、魂を委ねていった。

1411名無しのサンドバッグ:2013/01/19(土) 21:17:13 ID:gwHWmfCY
>>1406ここのスレ最近まったく伸びてないしなぜかコメントを
打つのも規制されてるからここに聞いたんですけどね・・・

聞きたかったのはこういう風俗店に通う方はどういう年齢層の人が
多いのかってことですね。

俺まだ未成年(19)だけど風俗店に行ってちゃんと遠慮せずにプレイ
してもらえるのか疑問だし、恥ずかしいことかなとも思うし・・・

14121:2013/01/19(土) 23:55:22 ID:???
今、まとめページの更新をさせて頂きました。
私の執拗なスレ汚しにもめげず(笑)皆さんいつもありがとうございます。
これからも、既出や未出って事にとらわれず色々語り合って頂ければなーと思ってます。


>>1411
苦しんでおられるようなので、横レス失礼します
どのスレでもそうですが、なぜかコメントを打つのも規制されるのは、2chとbbspinkの都合なので仕方ないのです。
そういう時は、PCと携帯とか、違う端末で試すとうまくいくこともありますよ。
例えばPCは規制されてるけど携帯はされてないとか。両方規制されてたらしばらく待つしかありませんけどね。

ここから下は、リアルプレイに関する事につき、1411さんの心身の安全のために妥協なく書きますので
多少シビアに見えるかも知れません。お気を悪くされたら本当に申し訳ありません。

私個人としては全年齢向け掲示板(たま〜に下品な広告が出てくるのは何とかして欲しいですが)の
管理者として、そういうお店の話をする事はないのですが(知らんですし)
妄想ではなく実際の暴力というのは、少なくとも見ず知らずの赤の他人と気安く交わせる行為ではないと考えます。
「プレイ」だから「暴力」ではないとする考えは、通用しません。お互いがルールを熟知していても
その段になれば、人間の本当の部分が出てくる事が考えられます。それは双方に言える事です。

あらゆる考え得るアクシデントを想定し、それに対する「責任」が取れなければ、暴力は不幸しか呼びません。
それは相手にも同様に重い「責任」を負わせる覚悟があるかという事にも繋がります。
そういう意味で最良の行為は「妄想」です。誰も悲しませません。巡り巡ってそういう考えに私は行き着きました。
引退を余儀無くされた人間が言うと、少しは説得力があると思いませんか(笑

1413名無しのサンドバッグ:2013/01/20(日) 00:37:24 ID:wTUkGJL.
>>1412でもやっぱり1さんが羨ましくて仕方ないんですよ!そういう彼女
さんがいらっしゃるわけだし。俺も今まで殴られる妄想とかたくさん
やってきたんですがさすがに限界なんです・・・1度はそういう体験を
してみたいんですもう子供ではないんで。ハァ(ーー;)

14141:2013/01/20(日) 01:09:11 ID:???
あ、そうだ
いちおー、いまやってるSSを保管庫に追加しときましたので、一気読みしたいって方はどうぞ
http://d.hatena.ne.jp/gun_men/

>>1413
うーむ、わからんでもない・・・彼女がいなければ、私もこのスレを立てる事はなかったでしょうし。

しかし、何でもそうですが、出来ない事を望んでも仕方がありません。現に私も今は「出来ない」ですし。
妄想が楽しめるのならそれでいいじゃないかと、私はそう思うのです。
妄想する事すら知らないスレ外の人より、1413さんはこのスレ的に数百倍人生を楽しんでいると思いますよ。
まあ、スレ外の人の大多数にとって、我々の妄想や妄想のネタは全くの無価値なんでしょうけど(笑

あ、1413さんは判って書いているとは思いますけど、他の方向けにあらぬ誤解を与えないように書いておきます。
「彼女」ってのは単なる三人称代名詞、私と「彼女」の関係は>>1011であり、妻や恋人や姉や妹とかではありません。
って、皆さんもこんだけしつこく7年近く繰り返されるとさすがに覚えますよね(笑

1415名無しのサンドバッグ:2013/01/20(日) 03:46:02 ID:ihPkPSII
>1414
今度はオリジナル5万4000字か!
1の妄想力には本当に恐れ入る
気合いを入れて読める書き手がいるのは幸せだな

1のSSのヒロインでバトルする最強決定戦があったら
今度の少女は、水のある場所なら最強とみたね

14161:2013/01/21(月) 21:36:04 ID:???
SSの続きを貼ります。今回が全十回の第十回ですので、最終回という事になります。
今回だけは3レスに収まりそうもなかったので、4レスぶんの量になっております。

1日から始まって長期に亘る長文駄文スレ汚し、大変お見苦しく失礼しました。
もう最後の方は睡眠不足の異常なテンションで書いていたので、特に最後の方は意味が判然としない箇所が
散見されるかと思いますが、これが>>1の筆力の限界です。残念ですが、あきらめて下さい(笑

ということで、以降何事も無かったかの如くスレ進行の程、よろしくお願い申し上げます(笑
つーか、やっと終わってくれたので今日はもうさっさと寝ます(笑)。おやすみなさいー

14171:2013/01/21(月) 21:36:45 ID:???
連志別川(十) 極北へ続く道

最期の一瞬までおれは、愛する少女に看取られ生涯を閉じる安らぎと、少女との永別が訪れる悲しみの狭間で揺れていた。
少女の顔が、おれの為に涙を零すまいと唇を噛み締め、精一杯に作った悲しき笑顔が、静止したまま光の幕に融けて行く。

「この声が聞こえますか・・・冒険者よ・・・」
凍結した白銀の静寂に割り込んで、魂へ直接、女の声が響いてくる。誰かは分からないが、鈴の鳴るように涼やかな声だ。
「選びなさい・・・最期まで人間として生を全うするか・・・死よりも苛酷な『血の運命』を生きるか・・・」

喉を、次々と液体が通過して行く。それは氷よりも遥かに冷たく、未知の濃厚な生命に満ちていた。触れた唇と唇を通じて
慈愛が躰と魂へ沁み渡る。再び動き出す鼓動に血潮が激しく「逆流」し、「生ある凍気」が四肢へ満ちていくのがわかる。
五感が戻っても、おれは少女を「冷たい」とは感じなくなっていた。子が母の乳を求めるかの如く柔らかな唇を吸い返すと
それを待っていたかのように、少女は風に舞い距離を取る。唾液の糸が水平に引かれ、空中に水晶の粒と化して散った。

燃える夕焼けが血氷の壁に乱反射し更なる深紅に煌めき、少女の顔を、涙に濡れそぼった唇を、紅く熱く染め上げている。
「さあ、次の『冒険』の始まりよ・・・『お兄ちゃん』を、わたしの拳でめちゃくちゃにしてあげるんだから・・・!」
氷壁に激突した硝子細工から紅の砂が零れ出す。その衝撃音こそ、二度と後戻り出来ぬ運命の幕開けを告げる合図だった。

少女は正方形の端へ飛び退くと、俯いたまま儚い肩を細かく震わせた。隠された表情が、ひび割れた氷面に映っていた。
一瞬の間に、少女の姿が接近し遠ざかりまた肉薄する。鼓膜を震わせる響きが音の刃と化し、両耳の肉を斬り裂いて行く。
少女は再び、意志を持った弾丸だった。あの川で魅せた氷を穿ち疾駆する足業に加え、氷壁をその弾力ある右拳で撃ち
更に自らの背後の氷を蹴る反射を繰り返す躰捌きの神技により、まさに少女は未知へ挑む白銀の跳弾と化していた。

耳から頬へ、そして鼻へ、狂怖の切先は新たなる「生」の中枢へ徐々に迫り来る。猛爆は、それを視認する前に齎された。
痛みの、桁が違った。おれは美少女の鋭い右正面撃ちにより鼻を折られる激痛に痙攣する暇も無く、次の右正面撃ちが
鼻骨を挫く激痛に悶え抜き、無数に迸る右の正面撃ちが整った鼻梁を際限無く砕き潰す熾烈なる激痛に踊り喘ぎ狂い続けた。
それを見た「人間」は悉く失明し気を違わせるであろう、人倫を超越した殴滅の奈落、無限の生地獄がそこにあった。
おれは少女と魂を通わせ、人間としての死を克服した。そして、その代償として「死よりも苛酷な運命」を背負ったのだ。

「・・・どう?わたしの拳の味は・・・ねえったら、『お兄ちゃん』・・・!?」
おれは自ら選んだ血の運命に、負けたくはなかった。それこそが、誓った愛を真に受け容れ少女を守るという事だからだ。
幾十もの致死の右拳・・・その折り重なった狂滅の波紋が氷に亀裂を入れたのか、紅く轟く激痛の雷撃に悶えのたうち回る
肉体の狂騒がついに右手の先の氷を貫き破った。おれは全身に漲る愛を振り絞り、掌を向けた指先を揃え、曲げて見せた。

「・・・くっくっ、うふふっあははははっ!・・・どうして、かな・・・いっけないんだぁ・・・『お兄ちゃん』・・・!!」
本当だ。どうして、おれ達はこうなのだろうか・・・少女の、不安の檻から解き放たれた宝石の涙に咲き誇る満開の笑顔を
見ている内に、そんな事はもはや、どうでもよくなってしまった。おれは、この子の「お兄ちゃん」・・・それで、充分だ。

真なる愛は、重く鋭く、痺れる程に痛かった。恐らくかつて時を歪めていた凍気は、痛覚すら麻痺させていたのだろう。
厚い氷を蹴破らんばかりの脚の爆震から、一撃必滅の掬い撃ちが放たれる。狙いは過たず右拳がおれの「鼻」を潰す。
更に左拳が、右拳が、瞬時に再生した鼻骨を垂直にへし折り潰し続け、剥き出しの痛覚が魂を狂気の渦へと巻き込んで行く。
細い腰を捩じ切れる程に捻り、逆転の弾みをその脚で噛み止めた凄絶なる右巻き撃ち。やはり標的はおれの「鼻」だった。
全力で振り抜く度に更に反動が逆拳に上乗せされ、一度しか味わえぬ鼻骨粉砕の破滅的恐怖を無限に齎してくれる。

かつて不死人が永劫に受ける苦しみを描いた物語を読んだ事がある。おれは今、少女の為だけに造られた生ける巻藁として
人の道を外れてしまった罰を受けているのかも知れない。だが、後悔は無かった。この子の為ならば、いつ如何なる時でも
命を投げ出す覚悟があったからだ。この子を守り抜くと、生と死の狭間で固く誓ったからだ。おれは、運命に勝ったのだ。


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