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从 ゚∀从回る世界とハインのようです
1
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 19:58:17 ID:KlMOR.SA0
「おまじないをしよう」
「どんな?」
「私たちがきっと、次の世界でも会えるように」
2
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 19:58:52 ID:KlMOR.SA0
从 ゚∀从回る世界とハインのようです
甲の回、「羽の世界」
3
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:00:03 ID:KlMOR.SA0
从+∀从「あぐっ」
シータならふわりふわりと空から落ちてきたであろうシーンで、ハインは重力に逆らわずまっすぐに落ち、したたかに背中を打ちつけた。
運悪くもそこは草原の真ん中で、クッションとなってくれるものは何もない。
一瞬止まった呼吸を立て直すべく肩で息をするものの、痛みは背から体全体へと伝わって自由を奪う。
どうにか状況を捉えようと眼を動かすが、かすんで景色はよく見えない。
遠くに太陽だけが眩しい。
从+∀从(ついてない……)
立ち上がることすらままならなく、体は仰向けに投げ出されている。
ぼんやりと見えていた太陽の光を黒いものが遮った。
4
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:02:14 ID:kMRtf.FsO
期待
5
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:03:52 ID:KlMOR.SA0
( )「……かお?」
何事か声をかけられるものの上手く返答できずに、ぱちぱちと数回目をしばたかせる。
言葉を話すということは大よそ人間と考えていいだろう。
人間はなおも何か続けながらハインを起こそうと、抱き合うような形で上半身を持ち上げた。
一方のハインはされるがままで身を任せる。
「……?」よく聞き取れない質問とともにそのまま背負われて、ハインの足が宙へと浮く。
小さい呻き声だけがその場に響いたが、動けないんだから仕方がない。
6
:
>>4 ありがとう!頑張る
:2011/03/21(月) 20:05:42 ID:KlMOR.SA0
ざりざりと足音が響く。
おぶさった背中から体温が伝わる。
ずいぶんと骨ばった、ごつごつした背中だな、とハインは思う。
時折、落ちてきたハインを持ち上げ直すためによいしょ、と声が聞こえた。
背負われているうちにだんだんと意識がはっきりしてきたため、
ハインは重い腕を持ち上げて指先までじっくりと眺めていた。
それに気付いたのか、背負っている人間がハインの方へ首をやり、横顔で笑顔を見せる。
( ^ω)+ キラリン
从 ゚∀从
从 ゚∀从(予想以上にキモイ。まさかだぜおい)
从 ゚∀从(そしてまさかこれは……)
从 ゚д从(少女誘拐?!)
7
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:07:04 ID:KlMOR.SA0
ハインは自分の美貌を呪いつつも、このような男に背負われたことを後悔した。
男は言葉を発することなく先へと進んでいく。
時折風が吹くと足元の草原がなびいて、きらきらと光が反射した。
ハインは逃亡を決意して辺りを確認した。
从 ゚∀从(せーのっ)
勢いをつけて後ろに倒れる。
男は驚いたのかハインの足から手を離した。
そのままハインは地に手をつけると、くるりと後ろへ一回転。男との距離を取る。
しかし、その場でふらりと体勢を崩してしまった。
8
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:08:29 ID:KlMOR.SA0
从 ゚∀从(なんだ?体が重い)
それを見て慌てて男が肩を貸そうとするも、ハインは警戒態勢を崩さない。
( ^ω^)「まだ無理しない方がいいお。空から落ちてきたんだから」
从 ゚∀从「……見てたのかこの変態!」
( ^ω^)「おー?恥ずかしがることないお。飛ぶ練習してたんだお?」
从 ゚∀从「え?」
从 ゚∀从(飛ぶ練習?)
ハインは違和感を感じて自分の背後へと目をやる。
肩の後ろから伸びた翼が、重力に負けてだらりと垂れていた。
9
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:10:04 ID:.oZr6T/oO
廻る廻る
10
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:10:04 ID:KlMOR.SA0
自分の体から生えたそれをしばらくまじまじと見つめる。
しかし目の前の男に警戒を解くべきでないと判断し、再度彼を睨みつける。
( ^ω^)「最近生えたんだお?」
「今は生え方が遅い人もいるから」とのんきな調子で男は続けた。
それからかろうじて地面が見えるけもの道の先を指さし、
「家があるんだお。少し休んでくといいお」と言った。
こんなものを背負って自由に動けるはずがないため、どうすべきか思考をめぐらす。
一方の男は値踏みするような目線を感じたのか、慌てて顔を左右に振り、告げる。
(;^ω^)「別にやましいことをしたりはしないお!ただ少し休んだ方が」
从 ゚д从 ハッ
从 ゚∀从(いかん、惑わされるなハイン)
从 ゚∀从(男はオオカミなのよ……!)
11
:
>>9 廻るの方がかっこよかったなぁ
:2011/03/21(月) 20:13:47 ID:KlMOR.SA0
目の前の豚のような男にも、何処かにきっと隠した牙があるはず。
彼女の眼の色がとろりと弾かれて飴色に光ると、
頭に薄い空色をした王冠が現れる。
王冠は彼女の頭に被さることなく、頭から少し上でゆらゆら揺れたまま。
男はその光景に目を疑ったのか、困惑した表情を見せる。
(;^ω^)「ど、どうしたお?!ていうかなんだおそれ!」
从 ∀从「すべての変態を過去にする……!」
(;^ω^)「ご、誤解だおー!!」
大股を開いて何とか立ち上がっていたハインではあったが、
打ちどころが悪かったのか身体の節々が相当に痛む。
慌てる男の顔がぐにゃぐにゃに見えなくなる。
ハインの肩がぐらぐらと揺れて、その場に崩れ落ちた。
12
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:15:15 ID:KlMOR.SA0
大きなソファーの上でハインは眼を覚ました。
室内では甘いにおいが立ち込めており、やかんの音が鳴っていた。
( ^ω^)「起きたのかお?」
マグカップを二つ手にした男が向かいに座る。
テーブルへカップを置くと、一つをハインへと差し出した。
ハインは必死に自分の体をまさぐっている。
(;^ω^)「な、何もしていないおー!!」
从 ゚∀从「嘘つけ!童貞顔のくせに、この超絶美少女のハイン様を見て欲情しないもんか!」
( ^ω^)(少女…………?)
从 ゚∀从 プンプン
なおもハインは何もされていないか確認し、それから少しだけ泣いた。
从 ;∀从 グスン
13
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:16:19 ID:4FuRVgUc0
ブーンのAAおかしくなってるぞ
とりあえず置いてくわざとだったらごめん
( ^ω^)
14
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:17:04 ID:KlMOR.SA0
(;^ω^)「どっ、どうしたお……?」
从 ;∀从「ハインちゃんを見て何もしないなんて」
( ^ω^)「僕貧乳は好みじゃないお」
从 ゚д从 ハイーン?
それから男は短く自己紹介をかわし、
ハインが落ちてくるのが見えたために心配で助けに行った事を説明する。
そののんびりした調子やお人好しそうな言動から、ハインは頭を掻いて非礼を詫びた。
見慣れればなかなか愛嬌のある顔だ。
σ从 ゚∀从ポリポリ「いや、ごめん。寝込みを襲ってくるもんだからてっきり」
( ^ω^)「そんな夜這いみたいな言い方やめてくれお」
从 ゚∀从「私はハインだ。とりあえずはありがとう、ブーン」
( ^ω^)「元気になってよかったおー」
あいも変わらずにこやかにブーンは返答する。
15
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:18:42 ID:JXwaxnwM0
ハインちゃんにイジワルな事言って辱しめたいよね
16
:
>>13 うわぁごめんなさい、ありがとう
:2011/03/21(月) 20:22:08 ID:KlMOR.SA0
ところで、と彼は一口茶を啜って話を切り出した。
( ^ω^)「ハインがさっき……」
どう言えば良いのかわからず、ブーンは言葉を濁す。
ハインもその様子を察してか言葉を返す。
从 ゚∀从「ああ、王冠の事?」
( ^ω^)「そう。なんだか気になって」
从 ゚∀从「うーん、なんて言えばいいのかな」
適当に痛めつけてやろうと安易に人に見せたことを悔やむ。
ブーンはいやいやと首を振った。
(;^ω^)「あ!別に答えたくなかったらいいんだお」
ブーンは慌てた調子で話題を変える。
17
:
>>15 完全同意すぎて言葉も出ない
:2011/03/21(月) 20:25:00 ID:KlMOR.SA0
( ^ω^)「そうだ、ハインはいつごろから翼が?」
从 ゚∀从「んあー……今日かな」
( ^ω^)「き、今日?!よくそれで飛ぼうと思ったおねww」
从 ゚∀从”
ハインの視線に気付いたのか、ブーンが弁明する。
( ^ω^)「お。僕には羽がないんだお。……珍しいかお?」
从 ゚∀从「いや、別に」
実際のところ、翼の生える人間というものの方がハインには物珍しく思える。
こんがらがりそうな記憶をたどってみても、
地に足をつけている人間としか交流を持ったことはない。
だからどうにも翼のないことを気にしているようなブーンには、
「フツーだろ、フツー」と言ってやった。
ブーンははにかんだ様子で「フツーかお」と続けた。
18
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:27:22 ID:KlMOR.SA0
間が空いたためハインは指先で翼をいじる。
どういう風に動かせばいいのだろうか。
ブーンがもうひと口お茶を飲む。
( ^ω^)「慣れれば自由に動けるお」
从 ゚∀从「うーん……すぐ飛べるもん?」
( ^ω^)「……。子供なんかは一日で飛べるようになるって聞いたお」
从 ゚∀从「ふぅん」
_,
从 ゚盆从 ググッ
( ^ω^)(すげぇカオ)
从 ゚∀从「動かない」
( ^ω^)「おっおっ、まあハインは若くないってwwwこwwwww「なにぃ?」
19
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:28:54 ID:KlMOR.SA0
ハインは皆まで言うなと反論し、再び翼を動かすことを試みる。
翼の先がぴくりと持ち上がる。
ニヤリと笑ってそのまま翼を動かすと、びりっとした痛みが体に走る。
从;+∀从「いててて」
( ^ω^)「wwwwwwwwwwwww」
从#゚∀从「わーらーうーなー!」
( ^ω^)「ごめんおwwwwww無理すんなおwwwww美少女wwwwww」
从#゚∀从 キエエエエエエ
从σ゚∀从σ グググッ
グギッ> Σ从 ゚∀从
鈍い痛みが響いてハインの眼からぽろぽろ涙がこぼれた。
ついでに口からは痛みを耐える彼女の「ホロロロロ」という声が響いた。
20
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:29:54 ID:KlMOR.SA0
ブーンは笑いながら席を立ち、戸棚まで移動すると薬箱を取り出す。
( ^ω^)「湿布貼ってあげるお」
从 ;∀从「やだー、湿布なんてババ臭ーい」
やだやだと首を振って彼女はだだをこねる。
聞き分けのないハインの翼を掴むと、ブーンは2、3度羽ばたかせるように動かした。
Σ从 ;∀从 キャウンッ
びくりと体が揺れて縮こまる。
それから翼から手を離せと背へ向けて腕を伸ばす。
まるで仔犬のようにわたわたともがくハインの翼を離さない。
( ^ω^)「ほーら、湿布貼るかおー」
从 ;∀从「えー……そのうち治」
なおも反論するハインの翼を動かしたため、ハインの言葉は途中で止まって「ヒウッ」と小さく悲鳴が漏れた。
( ^ω^)(……なんか、変な方向に目覚めそう)
21
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:34:15 ID:KlMOR.SA0
観念したハインはしぶしぶに服から右肩をさらけ出す。
顔を赤くしてブーンが目をそらしたが、ハインはお構いなしに「どしたの」と尋ねた。
すーすーとした特有の匂いがする布を肩に貼られると、ひやりとした感触が伝わる。
どうやら少し擦りむいてもいたようで、肩から翼の付け根にかけて包帯を巻きつけてくれた。
ブーンは薬箱をしまう後ろでハインは服を着直す。
从,゚∀从 クスン
( ^ω^)「ハインはこれから……」
途中まで喋ったところで、乱雑にドアが開かれた。
('A`)「おい、ブーン遊びに来t……って、なんでお前女連れ込んでやがんだよ?!」
( ^ω^)「おっ、おおっ?」
細身に翼をしょった男が一人室内に飛び込み、ブーンへと掴みかかる。
おいおいとえげつない嗚咽をこぼして聞くに堪えない罵詈雑言。
そして最後に、
('A`)「一緒に童貞卒業しようねって言ったのに!」
もはやコメントするまいと、ブーンが申し訳なさそうな表情でハインに目をやる。
22
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:35:28 ID:KlMOR.SA0
从////从
( ^ω^)「なんでこいつ顔赤らめてんだお」
(;A;)「ブーンちゃんひどい!」
( ^ω^)「……ドクオ、落ち着いてほしいお」
「この通りだお」( ^ω^)三つ#)A;)そ ヘヴァッ
从 ゚∀从(うわぁ)
( ^ω^)「カクシカカクシカ」
(#)A`)「つまり……降り注いだ超絶美少女()ってこと?」
从 ゚∀从「舐めてんのかこの」
ジー( 'A`) 从゚∀ 从
23
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:36:54 ID:KlMOR.SA0
('A`)「オレなら拾わない!」
从 ゚д从
('A`)「女性だと思って多めに見たけど……よく見たらタイプじゃない!」
从゚д从 ハイン?
同志よ、と手を組みあう二人を前に、本日二回目の衝撃であった。
崩れ落ちるハインの気持ちを知ることもなく、二人はおっぱいトークに花を咲かす。
彼らの意見がE最強という結論に至ると、ドクオが時計を確認する。
('A`)「もうこんな時間か。オレは暗くなる前に街に戻ろうかな」
( ^ω^)「そうかお?来てくれてありがとうだおー」
('A`)「そうだ。あんたこれからどうすんの。街に行くなら連れてくけど」
( ^ω^)「お、僕も聞きたかったんだお。ハイン、これからどうするお?」
从 ゚∀从「あー……人を探したいんだ。だから街に行くか、できれば王に会いたい」
24
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:38:40 ID:KlMOR.SA0
王、という言葉に反応してドクオが声を荒げた。
(#'A`)「あんな暴君に……!」
( ^ω^)「ドクオ、やめるお」
ブーンがその言葉を制する。
ドクオは歯がみして押し黙り、遠くに目をやる。
('A`)「俺が街まで案内してやるよ。ブーンもそれでいいだろ」
ブーンは返事することなくハインを見る。
案内してもらえるのならと、彼女はドクオの言葉を了承する。
湿布の礼と恨み言を一つ言ってブーンの家を後にした。
25
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:39:39 ID:KlMOR.SA0
ドクオは翼を動かしていたものの、ハインが飛べないということを思い出して隣を歩く。
('A`)「空から行ったらすぐなんだがなぁ」
从 ゚∀从「しのびねえな」
('A`)「構わんよ」
もと来た道を反対方向に歩いて行く。
どうやらブーンの家は街と正反対の方向にあるようだ。
('A`)「なぁ、本当はあんたどこから来たんだよ」
从 ゚∀从「どうして?」
('A`)「いや、王なんて言葉、街の人間からは出ないから」
从 ゚∀从「そっかー、それは失敗だったなぁ」
σ从 ゚∀从ポリポリ「実は、他の世界から来ました」
(#'A`)「まじめに答えろよ」
从 ゚∀从(まじめなんだけど……)
('A`)「正直、オレはあんたのこと信用できない」
从 ゚∀从「見たいか?」
('A`)「は?」
26
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:41:41 ID:KlMOR.SA0
突如ハインがドクオの胸ぐらをつかみ、自分の方へと引き寄せた。
お互いの吐息がかかるほど顔が近付く。
「後悔するなよ」という声が遠くに聞こえる。
(キスでもされるのか?!)というドクオの淡い期待を裏切るように、
ハインが左目にかかっていた髪の毛をぐいとどけると―――
目があるべき場所に、ただ、空洞だけが広がっていた。
声にならない悲鳴をあげるが、ドクオは無理やりその中を覗きこまされる。
そして中を見た瞬間、ものすごい力でハインを押し退けて彼女から離れた。
( ;゚A゚)「おま、そ、なんだよ、それ……」
尻もちをつくドクオを横目に、ハインは左目に髪の毛を掛け直す。
从 ゚∀从「うまく見えたか?」
(;゚A゚)「ああ、まあ……」
ハインは笑って手を差し伸べる。
何かつぶやいてドクオはハインの手を取り起き上った。
(;'A`)「……、信用できないなんて言って悪かった」
「構わないよ、慣れているし」とハインは笑う。
ドクオはのろのろと街へ向けて歩き出す。
遠くに見える空が紅く染まってきた頃、ようやく二人は街へ着いた。
27
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:43:37 ID:KlMOR.SA0
辺りの燭台に火が灯されている。いよいよもって暗くなってきた。
飛んでいた人々が次々と地に降り立ち、それぞれの帰り路につく。
中には数名翼を持たず、地を歩いている者も見える。
「人の多く集まるところに」というハインの要望を受け、
入ってすぐの住宅街を通り過ぎ、店の立ち並ぶ商店街へとドクオが導く。
静かだった住宅街とは打って変わり、立ち並ぶ店からは喧噪が響く。
煙の出る葉巻を売る怪しげな出店を通り過ぎ、街で一番大きな酒場の前で足を止める。
从 ゚∀从「おー着いた着いた。ありがとな」
('A`)「暮れてきたけど、あんた夜はどうするんだ?」
从 ゚∀从「適当な宿に泊まる」
('A`)「おい、金はあるのか?」
从 ゚∀从「適当な男ひっかけるから大丈夫だよ」
从 >∀从-☆キャピー
('A`)ゾクッ
28
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:45:08 ID:KlMOR.SA0
(;'A`)「おいおいおい、ひっかけるって何する気だよ」
σ从 ゚∀从?「ナニする気だけど」
けたけた笑う彼女に、ドクオはいけないものを見たような微妙な表情を返す。
それから財布を確認してハインに告げる。
(;'A`)「あー、もう!今日はオレが面倒みるから!!」
从 ゚∀从「きへー、かっこいい!」
「でもドクちゃんに売るなんて嫌よ」と断ると、
「オレだってあんたに童貞捧げるのは嫌だ!」と切り返された。
守るものでもなかろうに。
ドクオの心境も知らず、ハインは嬉しそうに酒場の戸を潜り抜ける。
男たちがやいのやいのと酒を酌み交わしている。
それをかき分けて奥まで進むと、カウンター席に座る。
29
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:47:56 ID:KlMOR.SA0
从 ゚∀从「おっさん!酒!」
('、`*川 「やぁね、おっさんじゃなくてお姉さん。殺すわよ」
包丁を持ったデンジャラスなママが迎え入れてくれる。
「適当なものでいいわね」とすぐに水割りを作って出された。
('A`)「置いて行くなよ……。あ、オレにもなんか適当に」
从*゚∀从プヘー
('A`)「おい、もう飲んだのかよ」
从*゚∀从「お酒なんて久しぶりで」
('、`*川「いい飲みっぷりねぇ」
('A`)「奢りなんだからちょっとは遠慮しろよ……」
从*゚∀从ペロペロピチャピチャ ←遠慮
('A`)「ごめん、普通に飲んで」
('、`*川「食べ物は?」
('A`)「あ、簡単にできるもので」
从*゚∀从「んー、しあわせ」
30
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:50:04 ID:KlMOR.SA0
ドクオは、本当に幸せそうな顔をして酒を飲むハインを眺める。
先程の光景は彼の目に焼き付いて離れない。
辺りの喧騒は店内にいると一層騒がしく、笑い声が絶えまなく飛びかい、
店員たちは皆せわしなく走り回っている。
ドクオはひとしきり周囲を見回すと酒に口をつけた。
('、`*川「はーい、卵焼き」
(;'A`)「どうも。……おい、あんたただ酒飲みに来ただけじゃないだろうな」
从*゚∀从「ねえねえ、翼ない人ってあんまり珍しくないんだね」
('、`*川「そうねぇ、大体は25歳までに生えきるんだけど」
('A`)ヒョイパク「ちょっとは話聞けよ……」
(*'∀`)(卵焼きうめぇ)
('、`;川(笑い顔きめぇ)
从*゚∀从「なーんだ、ブーンも気にすることないのにな」
31
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:51:31 ID:KlMOR.SA0
ママの表情が少しだけ硬くなり、ドクオは酒をこぼした。
たらたらとカウンターから酒がこぼれおちて芳香を放つ。
ドクオは「ごめん」、と言うと差し出されたタオルで酒のあとを拭く。
当のハインはきょとんとした顔つきで、相変わらず頬を赤らめながら酒を舐める。
店奥から響いた声で「ちょっとごめんね」と言ってママが引っ込んでいった。
(;'A`)「おい」
从*゚∀从「んうー?」
('A`)「あんまりブーンの話はするな」
从*゚∀从「どして?」
ママが戻ってきたのを確認して、ドクオはハインに「あとで教える」と耳打ちする。
礼を言ってタオルを返す。
32
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:52:45 ID:KlMOR.SA0
从*゚∀从「あ、そういえばちょっと聞きたいことがあったんだけど」
('、`*川「え?あ……なぁに?」
从*゚∀从「変わった声の、無表情な女の子知らない?」
('、`*川「女の子?」
从*゚∀从コクコク
('、`*川「それだけじゃよくわからないな。名前とかは?」
从 ゚∀从「なまえ……」
从 ゚∀从キョトン
从*゚∀从「あれー、忘れちゃったー」
('、`*川「うーん、私じゃ力になれないかも。ごめんね」
从*゚∀从「んーん、ありがとう」
ハインは一気にグラスの残りを飲みほして立ち上がる。
「ごちそうさま」と出口へ向かっていくが足取りがいやにふらふらしている。
33
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:53:25 ID:KlMOR.SA0
('A`)「お、おい!オレまだ食ってる途中……」
慌ててカウンターに金を置いて追いかけると、ハインがその場にコテンと倒れた。
('A`)「えっ?ど、どうしたんだよ!」
从//∀从「ほろー」
顔が真っ赤に染まって、目は焦点が定まらない。
えへえへと奇妙な笑い声。
('、`;川「あら…弱かったのね」
この酔っぱらいめとドクオはつぶやいて、ずるずると自宅まで引きずっていく。
34
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:55:01 ID:KlMOR.SA0
ようこそ弱者の国!
弱い奴は弾き飛ばせ!
休み時間、がやがやとうるさい教室の中で、今日もハインは痛みに耐えていた。
赤髪だから気持ちが悪い。
目付きが悪い。
いつもへらへら笑っている。
人と違う理由は何でもいいのだ。
この教室ではハインが悪で、ハインが痛みに耐えてさえいれば他の者は痛まない。
合理的に仕組まれた世界は彼女を一つずつ蝕んでいく。
「もういやだ」
屋上のフェンスを越えて、地面を見つめる。
靴を脱いだ足はコンクリートの硬さを伝える。
目をかたく閉じて世界に呪詛の言葉を吐くと、
ハインの体は空中に浮いて、どこかで小さく歌が聞こえる。
ああ、彼女の名前はなんだったっけ?
35
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:56:33 ID:KlMOR.SA0
从;゚∀从ガバッ
('A`)「お、起きた」
ハインが目を覚ますと、ドクオは食パンをかじっている最中だった。
どうやら倒れた後自宅で休ませてくれたらしい。
('A`)「あんた酒弱いなら先に言っとけよ」
从 ゚∀从「……ああ、ごめんごめん」
从 ゚д从 !!
('A`)「どした?」
从 ;∀从「ドクオまで私に手をつけないなんて……」
('A`)「黙れよ貧乳」
巨乳派のドクオを恨めしく思いながら、ハインは布団を這い出る。
36
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:57:34 ID:KlMOR.SA0
用意された朝食の前に進むが、ハインはためらう様にそれを見ている。
('A`)「どうした?オレの飯は食べたくないってか」
从 ゚∀从「まぁ……色々入ってそうだし」
('A`)「」
从 ゚∀从「冗談だよ」
从゚∀ 从キョロ
('A`)「どした?」
从 ゚∀从「酒ある?」
(;'A`)「朝から飲ますか!」
ハインはパンを一口齧る。
綺麗な焼き色をつけたそれを咀嚼して事務的に飲み下す。
物を口に入れたくなかったが、貪欲な体は栄養を要求する。
文句を言っていられるはずもなく、ドクオの好意を素直に受ける。
37
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 20:59:45 ID:KlMOR.SA0
('A`)「探してる人ってどういう関係なんだ?」
从 -∀从「ああ、……仲良くしてたんだよ。前の世界で」
前の世界で、という言葉にドクオがぴくりと反応する。
('A`)「これからどうする?」
从 ゚∀从「王に会う」
顔や背恰好は覚えているが、どうしても名前だけ思い出せない。
そもそもここに辿り着いているかもわからないために、
王の協力がないことには進展しないだろうことを告げる。
ドクオはあからさまに嫌そうな顔を見せたが、食い下がるハインに重い口を開く。
('A`)「……あまり気乗りしないな。ツンに会うのは」
ツンというのがこの世界を治めている王らしい。
38
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 21:01:29 ID:KlMOR.SA0
翼を持たないため、同じく翼のないブーンが世話役を勤めている。
ハインは「ブーンが?」と尋ねる。
('A`)「そうだ。あいつの家のさらに奥に森が見えただろ。
ツンはあそこにいる」
从 ゚∀从「ふぅん、じゃあサクッと行ってサクッと聞きたい」
案内してくれと言わんばかりのハインに対して、ドクオは冷静に言葉を返した。
('A`)「オレは案内はできない」
「まあ、ブーンの家まで行きながら話そう」と暗い表情を見せ、
二人は家を後にした。
昨日来た道を足音を立てて辿る。
空は澄んだ青空が広がっており、一面に広がる草原は遠くで溶け合う。
時折風が吹いてハインの髪を揺らした。
ドクオが口を開く。
39
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以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 21:02:56 ID:KlMOR.SA0
('A`)「ブーンになぜ翼がないか、話してなかったな」
从 ゚∀从「いや。だってブーンは翼が生えないんだtt「違う!」
言い辛そうにドクオは口ごもる。
もごもごと口元が動いて、ようやく言葉を発した。
('A`)「ツンが……ツンデレが、ブーンの翼を切り落としたんだ」
从 ゚∀从「え?」
ブーンに背負われていたときに感じたごつごつした感触。
まさかあれは、翼の名残だったのか。
40
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 21:04:08 ID:KlMOR.SA0
('A`)
そもそもブーンとツンデレとオレは仲のいい三人組だった。
何をするにも三人一緒。どこへ行くにも三人一緒。まぁガキだったしな。
男女の区別なんてなかったよ。
⊂二二( ^ω^)二⊃ ブーン
<ちょっとー!待ってよブーン!
( ^ω^)「早くしないと置いてっちゃうおーwww」
(;'A`)「お前本当足速いなー」
( ^ω^)「ブーンは空を飛ぶのが夢なんだお!
だからもっと速くなりたいおー!!」
41
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 21:05:03 ID:KlMOR.SA0
いつからかわからないけど、ツンデレはブーンの事を好きになっていたのだろう。
それはオレの眼にもわかるようになっていた。
しかし、ブーンは気付かずにいつも先へ先へと走っていく。
淋しげなツンデレを慰めようとしたが、プライドの高い彼女は嫌がるに違いない。
オレはただ黙って二人を見てるだけだった。
そしたらある日、ツンデレの側から相談を持ちかけてきたんだ。
ξ゚⊿゚)ξ「どうしたらブーンに振り向いてもらえると思う?」
オレだってそんなのわかんないから、
ブーンが欲しがるものをあげたらどうかって言ったんだ。
そしたら次の日から…………
42
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 21:06:48 ID:KlMOR.SA0
从 ゚∀从「翼が生えた?」
(-A-)「そう。最初はブーンと二人で喜んだよ。子供心に空を飛べるなんて憧れだろ?」
('A`)「だからツンデレにも生えてるもんだと思って会いに行った」
从 -∀从(…………)
('A`)「良かったのは最初だけだ。すっかりツンデレは変わった」
心なしかドクオの顎ががたがたと震えている。
視線も泳いでハインの顔をはっきりと捉えようとはしない。
('A`)「あっ、あいつは、見せしめに街の中、皆の前で、
……オレの眼の前で、ブーンの翼を……」
('A`)「あいつは異常だよ。なのにオレは黙って、
あんなやつが作り上げた世界に住んでる」
唇を噛みしめてうつむきがちに「それがとても辛い」とドクオはこぼし、
震えるような声で言葉を発する。
('A`)「オレはツンデレが怖い。あいつのブーンへの執着は異常だ。
もうあいつは昔のあいつじゃないんだ。
3人で仲が良かった頃なんて絶対に戻れない。
できればでいい。オレを、この世界から連れ出して欲しい」
すがるような目だった。
ハインはただただその頼みを聞いているしかなかった。
43
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 21:08:27 ID:KlMOR.SA0
('A`)「いや、オレじゃなくていい。オレはあとからブーンを追う方法を考えるから、
ブーンだけでも、こんな世界から、あいつをツンデレから引き離しt」
その瞬間だった。
ハインは何が起こったのか分からず目を一度瞑り、
もう一度開いたところでブーンの小屋に向かって全力で走りだした。
一本の大きな柱が地面から突き出していた。
いや、柱ではない、太い一本の木の根。
それがドクオの真下から突き出して彼の体を貫いた。
「逃げろ」とドクオの弱弱しい声を背に受ける。
転がるように草原を突っ切る。
時折ハインの足元から音を立てて根が貫く。
从 ゚∀从「ドクオ……」
ぎり、と歯を食いしばる。彼を助けるのは得策でない。
優先すべきは自分の身と判断する。
息を切らしてブーンの小屋へと飛び込んだ。
44
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以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 21:09:49 ID:KlMOR.SA0
( ^ω^)「どっ、どうしたんだお?!」
从 ゚∀从「ツンデレの元へ案内しろ」
( ^ω^)「お、それは……」
从#゚∀从「ドクオが死んでもいいのか!早くしろ!!」
物凄い剣幕でハインが詰め寄り、ドクオの名前が出たために
ブーンも何かを察してハインを案内する。
木々に隠された道を縫ってブーンは先へ先へと進んでいく。
ハインはその後ろ姿を追う。
ブーンと一緒にいるためかツンデレからの攻撃は止んでいる。
森は進むほどに深く続いている。
太陽は上っているはずだが、葉が大地を覆い隠して冷たい空気が流れていた。
( ^ω^)「ハイン、……ドクオは」
「…………」
ハインは彼の言葉を聞いて、何も答えることはなかった。
ただ彼女の中でツンデレに対しどのようにすべきか、ただくるくると考えを回すだけで、言葉を発しようとしなかった。
45
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以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 21:11:18 ID:KlMOR.SA0
細い道をかき分けて、奥に光を見つける。
光の元まで進むと、森の中に開けた空間が待っていた。
中には少女が一人。
大きな椅子に足を組んで爪をガリガリと噛み、不機嫌そうに座っていた。
頭の上には、小さな王冠。
木々がまるで何かを避けるように丸く、その少女のいる空間を囲い、
彼女の金髪がキラキラと光を跳ね返してしている。
( ^ω^)「ツン」
ブーンが声を掛ける。どうやらあの少女がツンと呼ばれる、
この世界の主のようだ。
二人は王座に座る少女へと近づく。不機嫌な顔がハインを射抜いた。
46
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以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/03/21(月) 21:12:51 ID:KlMOR.SA0
ξ#゚⊿゚)ξ「その女は一体何?」
( ^ω^)「ツン、ドクオに何を」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンには関係ないから」
一見優しげに態度が変わる。
ξ゚⊿゚)ξ「私はそっちの女に用があるの。
だからブーン、お願い下がっててくれない?」
( ^ω^)「……できないお。ドクオの命に関わることだって聞いてるんだお」
ツンデレの顔がぴくぴくと動き、攻撃的な視線に変わった。
ハインは臆することなくその目を見つめ返す。
( ^ω^)「ツン、なにを」
ξ#゚⊿゚)ξ「余計なことを言いやがってえええェぇェエエえエエ!!」
ツンデレが右腕を前に突き出すと、
それに呼応するように樹の蔦がブーンを打った。
弾き飛ばされたブーンは樹の幹に打ちつけられてうめき声を出す。
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