コピペ用すれ2 - 1527464055 - したらば掲示板

986：10/n：2024/02/16(金) 19:08:21 ID:hZeFTbas0: 　海賊が激増し始めるまで敵対的なバトルメックすらほとんど存在しなかった辺境は、この破壊的な影響の最も生々しい実例となった。
高度技術製品の製造工場が[中心領域に]集中化されていたため、辺境の主要国家には産業に必要な能力もしくは重要なテクノロジーを
自ら構築するための知識がほとんど欠如していた。惑星外に食料や水を依存していた惑星は死に絶えた。疑わしい情報だが、靴の製造
に特化しすぎていたコムストックのような世界は貧困と無政府状態の中で崩壊した。そして、消滅した辺境世界共和国の数十の世界
（地球帝国から多数が植民していた）はテラフォーミングの失敗によって滅びた。辺境の惑星にはたった1機のバトルメックさえ降下
しなかったのに、ありえないほど膨大な数の人々が死んだのである（その後のハイテク装置を狙った海賊の襲撃が大量死を助長した）。

　中心領域では、戦争でバトルメックと共に核兵器が多用されていたため、完全に滅びた世界が少なかったとはいえ更に凄まじい被害
を被った。かつて地球帝国の領土だった世界は二つか三つ、あるいは四勢力の軍勢の間で何度も奪い合いになり、侵略のたびに状況は
悪化していった。大王家の地域首都や産業中心地は叩き潰された。縮小しつつあるカペラ大連邦国では一度も襲撃を受けていない惑星
は存在しなかったと言われているが、カペラ人に対する自由世界同盟と恒星連邦の扱いは、自由世界同盟-ライラ共和国方面の国境の
残虐性に比べればまだ穏やかなものだった。

　第三次継承権戦争では敵側の産業及び技術的資産を破壊しようとする戦略は、単純にその行為があまりにも有効であり過ぎたために
放棄された。2870年時点で、第三次継承権戦争に「勝利する」ために全員がそれらの資産を切実に必要としていた。この転換は遅きに
失した。星間連盟の先進技術は根本から絶滅しており、かつてそれらを生み出す科学知識を備えていた熟練技術者と彼らが勤める工場
は死に絶えていた。そして工場施設と大学自体が瓦礫の山になっていたのである。第三次継承権戦争終結時点で、中心領域で最も先進
的な軍隊はほとんど仕組みが理解できない宇宙船で戦いに赴き、かろうじて製造可能な戦争機械を駆って争い、22世紀か23世紀レベル
まで技術が退行した世界（かつて遠く離れた星系で作られていた重要部品がもはや存在しないため）の防衛線を構築するようになって
いた。中心領域の標準英語には、失われた星間連盟時代の技術を意味する〈ロステック〉という新しい言葉が生まれた。

　仮に第三次継承権戦争が第二次と同じ形で再開されていたとしたら、中心領域から宇宙旅行を行う能力が失われていたかもしれない
（コムスターと氏族が中心領域に関してどのような計画を持っていたかを考えると、その結果は単なる[技術]喪失に留まらず更なる悲
劇をもたらした可能性がある）。そうなる代わりに第三次継承権戦争はスローテンポで進み、中心領域は一息つく余裕を得た。3000年
代の幕が開けると、先見の明がある指導者達は回収されたファイルや書籍を元にして新たな学習センターを設立した。3025年の時点で
大王家はそれぞれが失われたテクノロジーの復興について一定の進歩を遂げていた。この重要な情勢において、失われた知識の一部が
ヘルム・メモリーコアというまとまった形で出現したのである。それはまさに飽和水溶液に落とされた種結晶だった。中心領域の全て
を揺るがす第四次継承権戦争の後、人類は破壊よりも復興に集中したのでその後の20年の大半は比較的平穏に進み、ニュースの見出し
には度々ロステック復興の文字が並ぶようになった。

　中心領域がお互いを石器時代に戻そうと爆撃し合っていた頃（辺境もそれに引きずられた）、氏族は遠く離れた場所で技術的安定性
を維持した孤立状態にあった。恐るべきエクソダス内戦の後に出現した氏族文化は、民間の人口と産業維持のために[総力戦タイプの]
戦争よりも厳しく制御された決闘を重視するようになった。氏族は人口の少なさ（最初の1世紀で1億人、氏族侵攻前後の10年間でよう
やく10億人に到達した）故に、軍事面以外の幅広い技術革新を起こせなかったが、星間連盟の産業を維持し続けることは可能だった。
実際、氏族は必要と判断した星間連盟の非軍事装備の大半をコピーしてそのまま使っており、氏族本拠地に足を踏み入れた中心領域の
訪問者はまるで星間連盟時代のホロドラマに足を踏み入れたかのような感覚を抱く。