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おもらし千夜一夜4

1名無しさんのおもらし:2014/03/10(月) 00:57:23
前スレ
おもらし千夜一夜3
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/sports/2469/1297693920/

493名無しさんのおもらし:2017/07/24(月) 09:13:18
「え…嘘……。出られない」
少女は乱暴にドアノブを動かす。しかし、ガチャガチャと上下するだけだ。開かない。閉ざした鍵が壊れたのだ。そう、自室に閉じ込められたのだ。両親は法事で外出中。夜まで戻らない。家には少女のみだ。誰かに開けてもらうことは不可能だ。

「んんっ…うっ…」
恥ずかしい生理的欲求が、存在を主張する。これが、少女が部屋を出ようとした理由だ。もう一度ドアノブに手をかける。もちろん、開くわけがない。限界まで溜めてしまう怠慢な性格を恨む。

494名無しさんのおもらし:2017/07/24(月) 09:18:04
「あっ…く…」
思わず、大事なところを押さえる。はしたないところは承知だ。しかし、背に腹は変えられない。
「んっ…んっ…」
わずかな余裕がうまれた。しかし、容量が減ったわけでない。こんな行為が許されるのは、誰も見ていない特権だ。不幸中の幸いだろう。

495名無しさんのおもらし:2017/07/24(月) 09:18:22
「ん…やっぱり…だめ…」
恥ずかしい。前を押さえるなんて、許されない。そっと、手を離す。
「きゃっ…!あぁっっ!!」
出た。手を離したせいだ。
「ふ…んんっ…。ふ……」
慌てて疲弊した括約筋に力をこめる。
「…濡れて…な…い…?あ…」
どうやら、錯覚だったようだ。不本意ながら、いかに手を離すことが、危険であるかを学習する。両親に助けてもらうまでの我慢と言い聞かせ、自分を納得させる。押さえつける。躊躇いながらも、手を股間に移動させる。独特の感触。

496名無しさんのおもらし:2017/07/24(月) 09:18:57

あれから2時間が経過した。股間を押さえ、体を揺すり、恨めしそうに壁掛け時計を睨むことだけで、2時間が過ぎたのだ。時折、迫る波をやり過ごし、放出の錯覚を味わう。もう、膀胱を取ってしまいたい。あそこからおしっこが出るのではなくて、バケツのように膀胱を逆さまにして──。

「んっ!ん…出ちゃ…う。やだ…したいよ……。ああっ…あ…あ…ん…!」
時間の経過により、吐息混じりの喘ぎは、叫びの喘ぎに進化する。押さえている手の力を、さらに強める。痛い。力を込めすぎて、ジンジンと痛むのだ。

497名無しさんのおもらし:2017/07/24(月) 09:19:39
おもらし。服が濡れ、脚をつたい、床に溢れる。温かい液体は、やがて温度を変えて、冷たくなる。汚い水分を含んだ衣服は、肌に貼り付く。そんなのは、嫌だ。でも、出したい。出る。漏れる。ここは2階。ベランダはない。思考が、いかに我慢するかかから、いかに出すかにシフトしていた。

「おし…っこ…!おしっこ!はぁ…っっ…した…い。無理…無理…」
おしっこがしたい。出せるなら、どこでもいい。何もいらない。お股から、恥ずかしいあそこから、液体を放出したい。ムズムズから解放されたい。膀胱の中の水分を、1滴残らずなくしたい。おしっこなんて、いらない。
「んん!ああああああああ!おしっこ!おしっこ!!出ちゃぁぁうぅぅぅ!」
激しく地団駄を踏む。しかし、それで物事は解決しない。それどころか、時間が経過するごとに、おしっこは増えていくのだ。

499名無しさんのおもらし:2017/07/24(月) 09:21:03
「あっあっあっ…!ああ……!」
言葉にならない。それほどに切羽詰まっているのだ。これさえあれば、この苦痛から開放される。おしっこが出せる。膀胱をカラにできる。あとは、開封して、当てがうだけだ。前押さえしていた手を、携帯トイレに移す。音を立てて、袋が開く。

そのときだった。
「ん!?ぅ…あ……はっ…」
下着が湿る。今まで1滴たりとも濡れることを許さなかった下着が、おしっこを吸ってしまったのだ。
手を戻し、股間と手に力を込める。止まる。
「はぁ…はぁ…。止まっ…よかった…」
一度溢れたことにより、それが呼び水となってしまったのだ。おまけに、膀胱は限界まで伸び切り、括約筋は疲弊して使い物にはならない。彼女の持ち合わせたものの中で唯一、使いものになるのは、精神力だけだった。
「んんんん!ん…っ!くっ!やだ…ダメ……」
諦めてしまいそうになる。目の前の携帯トイレ。あれに、出す。出さなくてはいけない。おしっこが、止まった。

500名無しさんのおもらし:2017/07/24(月) 09:22:06
「はぁ…はぁ…ん…はぁ…はぁ…」
許されるのは一瞬だけ。考えなくてもわかる。ならば、その間にやり遂げる。再び、携帯トイレに手を伸ばす。その瞬間に、股間が両手の援軍を欲求する。甘い誘惑を堪え、ついに袋から出す。これだけの単純作業に、汗を垂らし、小刻みに震えながらでなければできない自分が情けない。

秒速でスカートをまくり、溢れた限界で濡れたパンツを下ろす。あとは、携帯トイレを当てがうだけだ。
「待って、ダメぇ!」
大きな波が少女を襲う。またまた手を股間に。これで、何度目だろうか。しかし、素手で直接触ったのは、これが初めてだ。自分を慰めるときでさえ、パンツというフィルターが存在するというのに。

501名無しさんのおもらし:2017/07/24(月) 09:22:39
「…やだ」
股間が濡れる。手も濡れる。受け止めてくれる布は、下ろしてしまった。
「んんんんんん!」
最後の力を振り絞る。
「くっ…くっ…ん!」
なんとか止まってくれた。
「はぁ…はぁ…」
恐る恐る手を離す。手が汚れたが、汚いと考える余裕はない。
「んっ…」
股間に携帯トイレが触れる。声が漏れる。トイレットペーパーでも、パンツでもない、慣れない独特の感触。

502名無しさんのおもらし:2017/07/24(月) 09:23:44
「ぁぁあ……」
ポタリ、ポタリと股間からおしっこが溢れる。まるで、未開の土地で、周囲を警戒するかのように。待ち望んでいた解放。出すことが許されたと確信した瞬間、おしっこは勢いを増し、激しくなる。
「はぁぁぁぁ……」
長時間の我慢が、快楽に生まれ変わる。
「気持ちいい…おしっこ……。ぁぁぁ…」
陶酔状態ゆえだろうか、無意識下で声になる。もう、枷はない。自由だ。おしっこをすることが許されるのだ。
「んんっ…!」
快楽を貪るかのように、力を込め、おしっこは勢いを増す。

503名無しさんのおもらし:2017/07/24(月) 09:24:13
少女はおしっこの音に違和感を感じた。携帯トイレの独特のくぐもった音ではない。パタパタと跳ねるような音がしたのだ。
「ああっ!」
数年前の携帯トイレ。劣化しないわけがない。どうせ使わないだろうと、安物を選択したことが、仇となったのだ。穴から溢れた液体が手を汚す。思わず、携帯トイレを離す。

「やだ…止まって。止まってよ……」
力を入れるが、おしっこは止まらない。それどころか、勢いが増す。一度快楽を覚えたら、やめることは難しい。出てしまったおしっこを止めることの難易度は、彼女がよく知っている。快楽が不安に、そして絶望へと変わる。熱水を止めるには、括約筋を酷使し過ぎたのだ。

少女に出来るは、排出の快楽に身を委ね、これらの出来事、そして、床の水たまりいかに無にできるかだけだった。

504名無しさんのおもらし:2017/07/24(月) 09:26:45
初投稿。
そして、連投失礼。
こういうの、今まで一度も書いたことなかったから、支離滅裂で読みづらいかも。
おもらしはしているけれど、限界放尿もがあるからスレチだったらごめん。

505名無しさんのおもらし:2017/07/24(月) 09:35:52
GJ

506名無しさんのおもらし:2017/07/24(月) 10:00:39
>>505
こういうのは、これが最初で最後だから、はじめて感想がもらえてすごく嬉しい。本当に読んでくれてありがとう。

507名無しさんのおもらし:2017/07/24(月) 10:10:07
ごめん、『床の水たまりをいかに無にできるかだけだった』が『床の水たまりいかに無にできるかだけだった』になってた。携帯トイレを開封した描写も2回ある。あとで直そうとしたのに、忘れて投稿してたよ。本当にごめん。

508名無しさんのおもらし:2017/07/24(月) 10:19:39
>>507
お詫びに、裏設定を言っておくよ。蛇足かもしれないから、苦手ならスルーしてね。
主人公のお母さんも、法事中におしっこを我慢していて、何回も何回もピュピュッとおチビリしている。主人公はギュウギュウしたけれど、一度も前は押さえてないよ。お母さんだもん。そのかわり、おチビリの量はmlにすると、お母さんの方が多いよ。お母さんだもん。衣服に染みたけれど、服の色でバレてない。括約筋も主人公よりも強い。お母さんだもん。でも、膀胱の許容量は、主人公の方が大きいから、出した量は主人公の方が多い。お母さんがおもらしちゃったかは、想像に任せるよ。

509名無しさんのおもらし:2017/07/24(月) 10:38:27
>>508
また誤字ってる。じゃあ、もう一つ裏設定。部屋にゴミ箱がなかった理由を話すね。主人公は、少し怠惰な面があって、家にいるとおしっこを限界まで我慢する癖がある。ある日、ジュースをがぶ飲みしてゲームに熱中しすぎたせいで、トイレまで歩けなくなってゴミ箱でパンツのまましちゃったことがある。ちなみに、ほぼおもらしだけど、限界放尿と言い張っている。こんなことがあったから、流石にこれはマズいと思って、ゴミ箱を置くのはやめた。我慢癖は前よりはよくなったけれど、やっぱり、面倒だったり、手が離せないと限界まで我慢しちゃう。もう本当に我慢できない。あと少しで漏れちゃうってくらいの限界で出すと、少し気持ちがいいからね。

510名無しさんのおもらし:2017/08/08(火) 01:35:27
「んあぁ…っ」
とある街の中、思わず誰もが振り返るような美少女が人知れず悩ましげな声を上げていた。
彼女の名前はエマ。今年で16歳になるアメリカ人の女の子だ。
色素の薄い茶色のサラサラヘアーとグレーの瞳が彼女のチャームポイントでもある。
母方の祖母が日本人ということもあって元々日本の文化に興味を持っていた彼女は
この夏休みを利用して日本に遊びに来たのだ。
…が。彼女の顔は、引きつっていて、悩ましげな表情をしていた。
そう、エマはおしっこがしたくてたまらないのだ。
祖母が急な用事で外出してしまい、1人家に残されたエマは家の近所だから大丈夫だろうと思って1人で外出したものの、案の定迷子になってしまっていた。
蒸し暑い日本の夏に耐えきれず、自動販売機で玉露のお茶を買ったのだが、それが想像以上に美味しくたくさん飲んでしまったのだ。
元々水と違ってカフェインが豊富に含まれるお茶は水よりも断然利尿作用が強い。
また、なんとなく外出したため朝一番のおしっこをまだ済ませていなかったこと、慣れない日本の地で迷子になって精神的に不安定になっていることも尿意を強く感じる原因の一つになっていた。
エマはTシャツにショートパンツというカジュアルな格好をしていたが、今やそのショートパンツがおしっこで膨らんだお腹に食い込んで痛いくらいだ。
まさか「トイレどこですか」とこの年になって聞くわけにもいかず、エマはお尻をくねらせておしっこを我慢しているのだった。

511名無しさんのおもらし:2017/08/08(火) 01:36:13

(絶対おかしいよぉ…っ、こんなにおしっこしたくなるなんて、今までこんなことなかったのに…っ)
もじもじ、もじもじ。
ぱっと見では分からないが、エマのことをじっくり観察している人がいれば、エマがおしっこを我慢していることはすぐに分かってしまうだろう。
さりげなく股間に手を添えてショートパンツに包まれたお尻を揺らす仕草は、エマの清楚で品のあるフランス人形のような顔立ちと全く異なる妖艶さがあった。
が、遠目では決してわからないが、実は何度もオチビリも繰り返している。
少し歩くたびにしょわあっ、という音がエマの股間からしてしまい、エマはその度に快感に腰を震わせそうになってしまう。
日本の蒸し暑い気候もあり、なんだか股間からおしっこのツンとする匂いが立ち込めているような気がしてしまう。
(こ、こんなの汗だもんっ、おしっこじゃないんだからっ)
エマはそう自分に言い聞かせているが、クロッチの部分はとっくにびしょ濡れ、ショートパンツの裏地にシミができてしまっている。
お尻までジワジワと侵食するおしっこの感触に、エマはまたさらに尿道を緩めてしまうのであった。

512名無しさんのおもらし:2017/08/08(火) 01:36:40
先程から視界に入る薄暗い公衆便所。
エマはもうさっきから何度も同じ場所をうろうろしていた。
理由は、そのトイレがそこにあるからだ。
最初はもっと綺麗でみんなが使ってるようなトイレを探していたのだが、だんだんそうも言ってられなくなっている。
(ダメ、16にもなってこんなところ入るのダサいよぉっ、だけど…っ)
もう限界、と叫んでいるのははち切れそうなお腹だけではない。これまで何度もオチビリに耐えてきたパンティすらこれ以上エマのおしっこを吸ってくれるかどうかわからないのだ。
16歳と言えば人目を気にするお年頃。こんな汚いトイレに入るなんてよっぽどおしっこ我慢できないのね、と周りに思われるのは、エマにとって屈辱以外の何物でもなかった。
でももうどこにトイレがあるのかわからない。おしっこ我慢できない。もうこれ以上ウロウロしてたら、ショートパンツにまで染みてきちゃうかも…
もうお漏らしするよりまし!とばかりに、エマは人通りがないことを確認してその公衆便所へと飛び込んだ。

513名無しさんのおもらし:2017/08/08(火) 01:37:09

「な、な、なにこれえっ」
エマは個室で絶叫していた。
和式トイレ。存在としては知っているが、デパートのトイレなどに「和式だけ」という場面はほとんど存在しなかったため、一生縁がないものと思っていた。
ところが駅や街の公衆便所などでは未だに和式だけ、というところが普通にある。
エマの待ちに待ったトイレだったが、使い方を知らなかったのだ。
とりあえず便器を跨いだものの、ショートパンツに手をかけたままエマの思考は停止してしまった。
普段ならすぐ脱いで「立ちション」をしただろうが、切羽詰まって思考回路の停止したエマはその状態で止まってしまったのだ。
(ど、どうやっておしっこしたらいいの?どっちが前なの?ま、まさか床に座るのかな…?てゆーかほんとにトイレなの?)
顔を真っ赤にして股間を鷲掴みにし、お尻をこれでもかと言うほど揺らすアメリカ人美少女。
その足取りはおぼつかず、その場を見れる人がいるとしたら、エマがおしっこしたいというのは自明の理であろう。
突如、おしっこの出口に走る鈍い痛み。
便器をまたぎ、おしっこの準備が整った状態でおしっこをするなという方がおかしいのだ。
…まだショートパンツを履いていることを除けば。

514名無しさんのおもらし:2017/08/08(火) 01:37:34
しゅわああああっという音とともに、エマの股間を暖かいおしっこが包んでゆく。
「あ、だ、だめっ、まだでちゃ、だめ、だめなのっ」
手が汚れるのも憚らず股間を鷲掴みにしたままそう叫ぶもむなしく、エマのショートパンツと真っ白なパンティを黄色いおしっこがどんどん染め上げて行く。
エマが困惑している間に体はおしっこの準備を始めてしまったのだ。
和式トイレにジョボジョボという下品な音を立て、脚にいくつもの水流を作りながら、床にまでおしっこは飛び散ってしまう。
エマの脚が長いせいでおしっこが出るところが平均的な日本人のそれよりも遥かに高い位置にあることと、パンティを履いているせいで股間の布地を伝ってお尻の方までおしっこが来てしまうことで、床にまでおしっこを撒き散らす大惨事になってしまっているのだ。
「も、なんで、おしっこ入んないのよぉっ」
ガニ股になって股間を突き出すような格好をして少しでもおしっこの出るところと便器を近づけようとするが、余計床をひどく汚す結果となってしまった。
母国語で悔しさをにじませる言葉を連発するエマであったが、口ではそんなことをいいながらも顔は蕩け、頭は全く別のことを考えていた。
(あぁん、も、おしっこ、気持ちいいよぉ…っ)
がに股になって黄色いおしっこでデニムのショートパンツと真っ白なパンティをおしっこの出るところに張り付かせ、女の子の大事なところの形をうっすらと透けさせながらエマはそう感じていた。
おしっこ我慢するのにお尻の筋肉も相当使っていたのであろう、緊張から解放されたためか不規則にお尻の筋肉がピクピクと痙攣している。
その度に薄いデニム生地に包まれたエマの小ぶりなお尻がぷるんぷるんと揺れている。
めくれ上がったデニム生地から見え隠れする、1日中おしっこを我慢し続けた股間とお尻は心なしか少し赤くなってしまっていた。
最初はしょろしょろと漏れ出るような勢いだったのが、だんだんと野太い水流に変わって行っている。
エマはショートパンツやパンティを脱ぐことを放棄して、おしっこしたいという欲求に身を任せてしまっていた。

515名無しさんのおもらし:2017/08/08(火) 01:38:09

「はぁああ…っ」
フランス人形顔負けの美少女の唇から漏れる甘い吐息。がに股になって股間を突き出し、お漏らしパンティを股間に張り付かせるというあられもない格好でエマはしばらく放心状態だった。
アメリカではこんなにおしっこを我慢したことはなかった。限界まで我慢したおしっこを排泄する気持ち良さを、エマは知らなかったのだ。
おしっこの大部分を出し終わってからも、緩みきった穴ではうまく排泄できないのか、何度も細い水流が足を伝ってしまう。
それでもエマはショートパンツを降ろすことをしなかった。
気持ちよかった。
ただその感情が頭を支配していたのだ。

516名無しさんのおもらし:2017/08/08(火) 01:38:40
おしっこで黄色く濡れたショートパンツとパンティを履いたままで余韻に浸っていたエマだったが、温かい液体で濡れていた股間がだんだん冷えてくるにつれ、頭も冷静さを取り戻して来た。
「う、どうしよ、これ…」
ショートパンツを脱いでパンティも確認したところ、真っ白だったはずのそれは完全におしっこで黄色く汚れてしまった。
しかもお尻の方までびしょ濡れで、股間に張り付いていてかなり気持ち悪い。
白い生地ゆえに女の子の部分の形までしっかりと浮かび上がらせている濡れたパンティ。
パンティを履いたまま乾いた部分を前に引っ張って外の空気に股間を直接当てると、なんとも言えないひんやりした気持ち良さがあった。
横から見たらエマのあそこは丸見えだろう。
毛の生えていないツルツルのあそこは、少し赤くなっているものの、まだ誰にも見せたことがない。なんだかイケナイ遊びをしているようで、その背徳感から、エマは誰もいない観客席に自分のあそこを見せつけるようにより深く腰を落とし、足を開き、パンティを思いっきりお尻に食い込ませるようにより前に引っ張った。
しばらくその感覚を楽しんでいると、股間がさらに冷えたからか、生理的な震えがエマの体を直撃する。
「あ、だ、だめぇっ」
じゅぶぶぶぶぶっ
エマはパンティを履いたまま、2回目のお漏らしを始めてしまったのだ。
「だめ、止まって、止まってよおっ」
エマは涙を浮かべながら手が汚れるのも構わずに股間を抑えたが、疲れ切ったあそこはもうおしっこを止める役目はできず、ただただ垂れ流すだけだった。
じゅぶぶ…というくぐもった水音を響かせながら、少し乾きかけてきたお漏らしパンティをエマはまた濡らしてしまっていた。
パンティがおしっこで濡れたせいで、我慢を続けた真っ赤なお尻を透けさせてしまっている。
お漏らしパンティを履いたまま2回目のお漏らし。しかも、2回目は自分がエッチな遊びをしていたせいでのお漏らしだ。
16歳にもなって2度も失敗してしまい、おしっこの音が鳴り止む頃には、エマのしゃくりあげる声が聞こえてきていた。

517510:2017/08/08(火) 01:39:56
いきなりごめんなさい!!

全然違うスレで、外人の女の子が和式のトイレが使えなくて変なおしっこの仕方をしてたのを偶然見てしまったという書き込みを見て、変態のぼくはインスパイアされて書いてしまいました…

スレ汚し失礼いたしました。

518名無しさんのおもらし:2017/08/08(火) 23:42:26
gj

519名無しさんのおもらし:2017/08/09(水) 23:35:14
また来てください

520名無しさんのおもらし:2017/08/25(金) 10:04:24
事例さん元気にしてるかな。
そろそろ続きが読みたくなって来た。

521事例の人:2017/09/03(日) 20:51:51
割と元気です、まだ忘れられてないことに感謝です。
というわけで事例12です。別の話挟んだとは言え11から1年以上経ってる……

522事例12「根元 瑞希」と雨の日。1:2017/09/03(日) 20:53:45
体育祭が終わった翌日の放課後。

「綾菜さん! どうして後期もクラス委員長にっ!」

目の前には皐先輩がいて、怒っているような焦っているような落胆しているような……そんな顔で私に詰め寄る。
私は軽く嘆息してから答える。

「……そんなこと言われても……風邪だったし仕方ないかと」

「抗議! 抗議しましょうよ! なんで休みの日に決められたことを簡単に了承してしまったんですか!」

「……そこまでして生徒会に興味がなかったし」

「そ、そんな悲しいこと真顔で言わないでください!」

「……そもそも、委員の了承印…って言うんですか? あれ、生徒会で押してるんじゃ……」

「押してますよ! 確認は他の役員に任せて私は印だけですけど!」

なるほど、知ってるはずだと思っていたが、そういうことらしい。
生徒会役員は会長の皐先輩、副会長の椛さん以外に、書記、会計、庶務が各一名ずつで三人いる。
生徒会内部の事情には詳しくないが、全ての役員に、私と朝見さんを誘っていることを伝えているとは限らない。
椛さんなら事情を知っているため皐先輩へ確認時に伝えたかもしれないが、他の生徒会役員が確認していた場合はわからない。

「はぁ……なんとか代わりのクラス委員長を探さないといけないですね……」

他の学年に出張してまで私を生徒会に迎えたい理由がわからない。

「誰か変わってくれそうな方、心当たりないはですか?」

「……皆やりたくないと思いますよ?」

私の言葉に皐先輩は肩を落として嘆息する。
その後は作戦を考えるとかなんとか言って生徒会室の方へ重い足取りで歩いて行った。

「話、終わりました?」

その声に振り向くとまゆと弥生ちゃんがいた。

「生徒会ねぇ……」

まゆは怪訝な顔でもう見えなくなった皐先輩の方へ視線を向ける。
……それが少し引っかかる。
確かに今までも興味があるのかないのかわからない反応をしていたが、こういう露骨な態度を見るのは初めてで。
それが生徒会勧誘に関しての事なのか、皐先輩へ向けたものなのかはわからない。

523事例12「根元 瑞希」と雨の日。2:2017/09/03(日) 20:54:57
――……そういえば、前生徒会長って……。

確か苗字がまゆと同じ黒蜜。生徒からとても慕われていた行動力が異常に高い人だと噂で聞いたことがある。
黒蜜って言う苗字は珍しく、まゆ以外で聞いたことがないので恐らく姉なのだろうけど
そういう話をまゆからして来ないということは、余り触れるべき話題ではない……そういうことだと思う。
まゆが生徒会、もしくは皐先輩に対して何か思うところがあるとすれば、そのあたりが関係しているのかもしれない。

「そんじゃ、帰ろっか?」

まゆがそう口にして、昇降口へ歩みを進める。
私と弥生ちゃんはそれに続いた。

昇降口に着き下駄箱から靴を出す。
外に出るといつもより暗く感じる。

「んー? 妙な空だねー」

まゆがそう口にして空を見上げ、私も同じように見る。

「……ほんと…降ってきそう……」

朝確認した天気予報には雨が降るとは出ていなかったが、どうにも怪しい雲行き。
ことわざでも使われているように秋の空というのは変わりやすい代名詞的なもので……仕方がない。

「あやりん、合羽持ってきた?」

まゆが私に雨具を持ってきたかどうかを確認する。

「……持ってきてない、二人は?」

まゆと弥生ちゃんはカバンから折り畳み傘を出す。――……間抜けなのは私だけか。
私は小さく嘆息する。
コンビニで傘を買うこともできるが、傘差し運転は校則違反で見つかると面倒。
レインコートは割と高いので出来るなら買いたくないのが本音。

「あやりん、急いで帰りなよ」

「そ、そうですよ、今なら降ってませんし多分大丈夫です」

二人の言ったことは最善で……私は仕方がなく頷く。
そして私は「ごめん」と謝って手を振って別れを済ませると、駐輪場へ急いで向かう。

――あぁ、もう……着替えや下着の予備なんてものは持ってきているのに……。

肝心なものを用意出来てないことに情けなくなる。
私は自転車の鍵を開けて自転車に跨り、ペダルに体重を乗せた。

524事例12「根元 瑞希」と雨の日。3:2017/09/03(日) 20:55:51
――
 ――

――わ、ちょ、降ってきたよ……。

細かい雨が顔に触れ、不快感を与える。
そしてそれは直ぐに大きな音を上げ、地面に当たる飛沫で視界を悪くするほどの大雨に変わり、私は一時避難の選択を余儀なくされる。

――っ……公園っ、あそこのベンチには屋根があったはず……。

もうすぐ見えてくる公園が一番近い避難場所。
避難先が近くにあることに安心して、また濡れてしまったためか軽い尿意が湧きあがる。
思い返せばお昼に済ませたのが最後であり、3時間くらいは済ませていない計算。
昼食時の取った水分が形を変えて下腹部に溜まって来ている。
とはいえ、この程度の尿意ならまだまだ余裕ではある。
それよりも残念なのは、雨に遭わなかったら駅付近で誰かの『声』に出会えていたかもしれないということ……勿体ない。
こんな雨の中じゃ誰も――

――……ん、あ、うちの生徒?

自転車でないが同じ高校の生徒が目の前の公園へ慌てて入っていくのが見える。
相席……ではないか。ベンチは二つありその両方が屋根の下にあったはず。

私は自転車ごと公園に入りベンチがある屋根まで進みペダルから足を下ろした。
さっきの人はベンチで腰かけてこちらを―― 

「……っ」

私は慌てて視線を逸らす。
ベンチに座る彼女はクラスメイトの根元 瑞希(ねもと みずき)だった。

「あ、えっと……奇遇だね、綾……」

「……うん…まぁ……」

声を掛けられ改めて彼女の方へ視線を向けるが、目は合わせられない。
根元さん……瑞希は同じ中学出身で、一時期は仲が良かった人。今は……。

「凄い雨だね、結構濡れちゃったわー」

……。
気を使わせてる……何か返さないと。

「……あ、ぇっと……」

だけど、口を開けたが何を言えばいいのかわからず直ぐに口を閉じてしまう。
そんな情けない私に瑞希は曖昧な表情で微笑む。
それを見て私はまた視線を逸らしベンチに座る。

525事例12「根元 瑞希」と雨の日。4:2017/09/03(日) 20:56:41
「……なんか…ごめん」

「いいよ……でも、何だかんだで2年以上まともに話してなかった気がするー」

私は無表情の裏で顔を引きつらせる――……相変わらず遠慮のない言葉。
だけど彼女の言うそれは事実であり、私の都合に巻き込ませた為で……今更ながらものすごく申し訳なくて。

「でも、よかった……話せて……」

私はその意外で柔らかい言葉に視線を彼女に向けると目が合った。
彼女はさっきよりも嬉しそうに微笑んでいた。

「友達出来てよかったね」

「……人をぼっちみたいに……事実だけど……」

……二人で冗談っぽく言ってみる……だけど――

……。

なぜか沈黙。

――あれ、やっぱり気まずい……?

『あー、やっぱ気まずいなぁ……』

思っていることは同じらしい。

『それに……んっ…濡れて冷えてきたから……』

それも……一緒。
ただし、感じている尿意は私より瑞希のほうがずっと大きい。つまりは尿意がそれなりに辛いわけなのだが
私はと言えば『声』が聞けて嬉しく仕方がないわけで……。

『……この雨の中、トイレまで行ったら更に濡れるし、止むまで我慢できないとか思われるのは…やだなぁ
そういや学校出るときいつも済ませてるけど、雨降ってきそうで急いで出たし……』

――なるほど……ん、あれ?

ふと気が付く。
瑞希は電車通学のはず。私は引っ越してきたから自転車で通学できる場所に住んでいるのであって……。
私たちが通っていたのは公立の中学。あそこの出身の生徒は私のような例外を除けば、ほぼ電車通学となる。

「……瑞希って確か電車通学だよね?」

少し気になったので、気まずい雰囲気を脱する事も踏まえ尋ねてみた。

「え、あぁ、今日はちょっと花屋にね。配達もあるみたいだけど遠すぎて高くなるみたいだから」

花屋に用事……理由は聞くと変な地雷踏みそうだしやめておいた方が良いかもしれない。
……。

――……花屋って……。

「……フラワーショップ日比野?」

「そうそう、たしかそんな名前の花屋」

それは、鈴葉さんの家族が営んでいる花屋。
大きい店ではないが駅近くの花屋という観点では利用しやすい店と言える。

526事例12「根元 瑞希」と雨の日。5:2017/09/03(日) 20:58:25
――……鈴葉さんか……そういえば、あの子と名前似てるんだよね……。

それは中学時代の友達だった人。
いつもなら鈴葉さんから彼女を連想することはなかったが、瑞希と話をしていると、どうしても彼女の姿が浮かぶ。
私にとって中学時代と言えば彼女がまず出てくるのだから。

『あー結構したい……花屋ってトイレ借りれるのかな? やー…でも借りたくないし雨止んだら此処のトイレ使った方が良いかな?』

私は小さく深呼吸した。――……切り替えないと、こんなに良い『声』を聞かせてくれているのだから。

私の知る瑞希は確かトイレが近い子だった。正直よく『声』を聞いて楽しませてもらっていた。
今でもそれなりに近くはあるようだけど、それを自覚し、何かしらの対策をしているためか『声』を聞く機会は少なく
ギリギリまで切羽詰まった『声』に関してはここ最近では聞いたことがなかった。

視線を瑞希に向けると少し落ち着きがなく、踵を上げてつま先だけを地面つけたり……――可愛い。
今日は期待してもいいのかもしれない。

『あぁ、もう……傘、財布にもうちょっと余裕があればコンビニで買えたのに……』

次第に『声』が大きくなってくる。
雨で濡れた服が身体を冷やして尿意を加速させている。
屋根の外は依然として激しい雨が地面を打ち付けている。

『だめ、トイレ意識しすぎてるから余計にしたくなっちゃうんだから……うーん、よしっ』

何かの決断をする『声』。流れから察するに尿意を意識しない作戦と言ったところだろうか。
上手く行けば我慢に慣れていない人は特に有効な方法だと思う。

「あ、あのさ!」

突然瑞希は声を上げ、私はそれに驚く。
どうやら私と会話をすることで尿意から意識を逸らすらしい。

「えっと……綾が変わっちゃったのって……あれが原因だよね?」

……。
私は視線を逸らす。尿意を意識しないためとはいえ……随分攻めた内容。
“あれ”というだけで、それが何を指しているのかがわかるくらいの事件というかなんというか。

「……あ、あれだけじゃない、けど……まぁ、切っ掛けの一つではあるけど……」

私は雨の音でかき消されていてもおかしくないほどの声量で言葉を紡ぐ。
だけど、続きの言葉を続けようと思って……でも開いた口から声は出てこなかった。
急なことでどう説明するべきか、どこまで話すべきかが定まっていないし、言うべきことなのかもわからない。
もともと、今まで話そうとして来なかったのだから今更というのもある。

「そう? でもさ、ちゃんと謝ってくれても良かったと思うわー」

……。

「……違うよ、紗(すず)は悪くない……」

私は視線を雨の中に向けて、静かに、でも少し語勢を強めて返した。

瑞希は私の言葉にどう返すべきか迷ったのか、言葉に詰まり、そのまま沈黙を作る。
完全に瑞希の自業自得とは言え、空気が悪くなったことに少し罪悪感を感じる。

――……だけど…本当のことだし……勘違いしてほしくない。

紗に謝って貰う必要なんてない。悪かったのは私で、失敗したのも私。助けてくれたのが紗だった。
勇気が出せなかった私が迷惑を掛けた。だから普通にするのが後ろめたくて、辛くて、痛くて――

『あー、もう話途切れちゃった……緊張して更にしたくなった気がするし、なんか余計言い出し難くしちゃったし』

……。

感傷に浸る間もなく可愛い『声』が聞こえる。
真面目な話のほうが尿意を忘れられるとでも思っていたのだろうけど、緊張までしてしまっては逆効果。

527事例12「根元 瑞希」と雨の日。6:2017/09/03(日) 20:59:37
『うぅ……やばいなぁ、本当にしたい……それになんか早い? 学校出る時からちょっとしたかったけど……』

水分の摂取量なんかは知らないけど、彼女の尿意の上がる要素はいくつかある。
雨で濡れたため、私といて若干緊張しているため、ここに来るまでに歩くことで新陳代謝を上げていたため。

「……雨、まだ止みそうにないね」

私は瑞希にまだトイレに行けないことを遠回しに伝える。
彼女にとって屋根の外に落ちる雨の軌跡は、さながら牢屋の鉄格子……とまではいかないとは思うけど。

『あぁ〜、やばいかな……でも、絶対やだ、雨が止むまでは……我慢、我慢しなくちゃ……』

瑞希は少し視線を落として手はベンチの縁を掴む。足はつま先を絡ませたり揺らしたり……――大変可愛い。
『声』もそれなりに切羽詰まってきている。大きさから考えるに8割か9割と言ったところ。

――……でも、止むまで“絶対やだ”とまで言うのか……。

我慢していることを知られること。
それは何食わぬ顔でトイレに行くことよりも、恥ずかしいこと。
私もそうだし、多分多くの人がそうなのだろうと思う。

だけど、我慢を続けた先にあるものはもっと恥ずかしいことのはずで“絶対やだ”には普通ならない気がする。
意気込みとしての絶対なのか、本当にそう思っているのか。

『っ……はぁ、まずい……本格的に……雨音も……んっ――』

『声』が一段と大きくなる。
尿意の波に曝され、ベンチから降ろされた足がベンチの下の方へ引き寄せられる。
小さく震える足が、必死に力を籠めているのがわかる。
横から見える表情は口を確りと閉めて難しい顔……。

『――ふぅ…はぁ……っ 今の……もしかして危なかった? ……嘘…だよ、ほんとにこんなに、したくなるだなんて……』

波を乗り越え、少し安堵の表情になったが、すぐに不安げな表情になる。
私は視線を外して無表情で気が付かない振りをして……でも、胸の内は興奮してて、雨の音に負けないくらい鼓動が大きく聞こえる。

――……もう、結構やばいよね? 本当にトイレ行かない? ……溢れちゃうかも…なのに?

気が付いてあげれば観念してトイレに向かうとは思うけど……。
このまま気が付かない振りを続けるとどう行動する?

本当のギリギリまで我慢したあと、我慢できない尿意を私に伝え、慌てて公園のトイレへ向かう……想像できる展開。
ならば、気が付かない振りを続けても瑞希はトイレには間に合う……?

――……違う、これって都合よく考えてるよね…私。

尿意の我慢において、本当のギリギリを正確にわかる人は少ない。
私が『聞く』限り、今行かないと失敗の可能性も十分にあると思う。それくらい『声』が明瞭で且つ大きい。
外は雨でトイレに行くためには濡れながら向かうことになり、また、雨に濡れるのを最小限に抑えるなら走る必要もある。
そして、公園のトイレは今いるベンチのちょうど反対側で、決断してすぐに駆け込める距離ではない。

先の“絶対やだ”という言葉も本当に言葉通りなら限界を超えて我慢する可能性だってある。

528事例12「根元 瑞希」と雨の日。7:2017/09/03(日) 21:00:46
「ね、ねぇ綾!」

急に声を掛けられて私は驚く。
目を瑞希の方へ向けると、焦った顔でこちらを見ていて、やっぱりトイレへ行くことを伝えるのだと、私は少し残念に思いながらも安堵――

「綾って、んっ…生徒会に入ろうとか…考えてる?」『だめ、我慢、我慢……したくない、したくない、したくないのっ!』

――……え、あれ?

想像していた言葉でないことに面を食らう。
目の前の瑞希は前こそ押さえていないが、身体に力を籠めているのが隠せていなくて、声も荒い息を抑えるように絞り出されていて。

――……そんなに言うのが……我慢の限界を伝えるのが恥ずかしいの? ……いいよ、だったら――

「……生徒会へ誘われてるけど、クラス委員長はなれないし、そこまで興味もないけど……それでも、迷ってはいるのかな」

私は正直に瑞希の質問に答える。
気を紛らわしたいならそれに付き合ってあげよう。
だけど、視線は外してあげないし、気が付いてもあげない。

「へ、へーそう…っなんだ……」『んっ……やだ、治まんないっ……トイレ、おしっこ……くぅ……』

――……へーそーなんだ…って話途切れそうじゃない……。そっちから話してきたんでしょって……。

「……えっと、それで? 生徒会に入るとか入らないとか、聞いてなにかあるの?」

私は話を続ける手助けのため質問を返したけど……なんか態度悪く返しちゃった気がしないでもない。
瑞希は、尿意が強くなり、話をはじめても尿意が落ち着かず、話す余裕もなくなって来てるのはよくわかってる。

――……それなのに…なんか今日の私、意地悪だな……。

旧友だからなのか、地雷を踏みに来たからなのか、紗を悪く言われたからなのか。
ただ瑞希が可愛いからなのか、瑞希の我慢を久しぶりに見たいからなのか、瑞希が尿意を隠していたい気持ちを汲みたいのか……。
理由の候補は沢山あって、多分そのすべてが少しずつ私の選択を、結果的に意地悪な方へ向けている。

――……あぁ、後で罪悪感とか感じないかな……。

そんな事を感じ始めてはいるが、目の前で身体をもじつかせながら、足を小刻みに震わせ必死に我慢してる仕草を見ると――……もう、本当可愛い。

「あ、えっとさ……っ…待っ――っや、えっと…なんでもっ……」『な、波っ――ぅ、言葉が…トイレ、あぁ……でちゃぁ…おしっこ……やだ、やぁぁ……』

もう明らかに取り繕えていなくて、もしかしたら少し失敗を始めていてもおかしくない声と『声』。
それでも指摘してあげない――……瑞希から言わなきゃ気付いてあげないから。

「はぁ……っ、――っと、わ、私が言いたいのはっ、委員長……を、っ……あぁ、……綾が生徒会に……んっ!」『駄目、落ち着いて…これ以上、溢れたら……』

俯きベンチにお尻押し付けるようにして尿意を抑え込み、何とか言葉を絞り出そうとしてはいるが、正直よくわからない。
それと、『声』から察するにおちびりを始めているのだと思う。

「ふっ……んぅ…んっ――」『だめ、だめだめ……でも、もう、我慢…がまんできないっ……トイレ…おしっこ……やぁ、また、きちゃっ……』

身体を震わし全身が緊張しているのがわかる。
津波のような尿意に抗うため、全神経を集中させて……もう会話も続かない。

529事例12「根元 瑞希」と雨の日。8:2017/09/03(日) 21:02:04
「あぁ……っ」『またでちゃ……っでも、これなら……バレてない? 雨だし、地面も濡れてるし、音も雨音で……?』

『声』でバレているのを除いても、その仕草と艶っぽい声じゃ誰にでもわかりそうなものだけど……。
そして、我慢できなくなって溢れても、このまま知らない振りで通せると考えているらしい。
今の自身の状態を確り把握できてない、それくらい冷静に考えることが出来てない段階まで追い詰められてる。

『そ、それでも……できるとこまで……でも、あぁ……漏れちゃう、溢れちゃう……うぅ……』

瑞希は喋ることも忘れて熱くて荒くて深い息遣いだけが雨の音を縫って聞こえてくる。
ここまで必死になり、隠せなくなっているのに尿意を告白しないのは意味がない気もする。
彼女の中では隠し通せているつもりなのだろうけど……。

――……このまま、おもらしを見守るのも悪くないけど……もっと…もっと近くで、溢れさせたとき誤魔化せないくらいの位置だったら……。

声も『声』も音も、仕草も表情も目の動きさえも……捉えられる。
隠しておきたいはずの尿意、それなのに何一つ隠せない位置で観察――……いけない事……でも、そんなになるまで、我慢してる瑞希が悪い……よね?

自分でも良からぬ事を考えている自覚はある。瑞希よりもずっと私が悪いのだってわかってる。
だけど、どうしようもなくそうしたいって思ってしまって……。

『でちゃう、でちゃう……せめてゆっくり…少しずつだったら……』

……。

私は雨音の中、気が付かれないようにゆっくり立ち上がる。
瑞希は俯いていて、仕草や『声』にも変化がない……気が付かれていない。
私は瑞希の座るベンチ前まで歩みを進める。

「え?」

流石に我慢に夢中の瑞希も気が付き顔を上げる。
同時に私は瑞希の両肩に両手を乗せてしゃがみ込む。

「……瑞希、息が荒いけど大丈夫?」

しゃがみ込んだ私は瑞希を見上げるような姿勢で声を掛ける。
これで、俯くことで表情を隠せない。勢いよく溢れだしてしまえば、くぐもった音さえ聞き取ることが出来るくらい近くに私がいる。
溢れ出た雫が落ちてしまえばこの距離ならば視認できる。言い逃れなんて絶対に出来ない。

――……さ、最低だ私っ!

今更ここまでする必要あったのかと言われればなかった。せめて立ったまま声を掛けてあげるべきだった。
それなのに――……あぁ、もの凄く計算高く、且つ本能の赴くままに行動しちゃってる……。
でもまぁ……仕方がない。見たいんだから、聞きたいんだから、好きなんだから。

530事例12「根元 瑞希」と雨の日。9:2017/09/03(日) 21:02:43
「ちょ……えっ…」『んっ、だめ、近いっ! ――っ、やだ、こんな時、また……うそ…や、きちゃうっ――!』

瑞希は私から距離を取るためか身体をベンチの背もたれに向けて体重を掛ける。
浅くベンチに座っている彼女がそんなことしたら、身体を反らしてしまい下腹部に負担がかかるのに、そうしてでも私から距離が取りたいらしい。
だけど、私は今彼女の肩に手を乗せているわけで……後ろに向かう体重を私が支えることで距離を取らせない。
引きつった焦りの表情が見え、それを隠そうと限界まで俯く。きつく目を閉じた瞼から涙が見える……表情なんて隠せない。

「やだ、やだ……」『だめ、無理……なの、トイレ! おしっこ……っ、まに、あわないっ、のにっ……あぁ!!』

瑞希の両手がスカートの上から前を押さえる。
そう、もう我慢するしかない。この距離じゃゆっくり漏らすことも出来ない。

「あ、あぁ……やぁぁ――」『だ、だめぇぇ――っ』

歯を強く食いしばり、全身全霊を注いで我慢してるのがわかる。
だけど――

<じゅうぅ…じゅぅぅ>

断続的に私の目の前から小さな音が聞こえてくる。
手で抑え込まれた奥。

「あっ、あぁっ!! ……綾! あのねっ! 私ト、トイレっ……に……あぁっやぁ……」<じゅ、じゅうぅ――>

途方もない衝動をこれ以上ないくらい必死に抑え込んでいるのに溢れてさせて……。
そのどうしようもない感覚に顔を上げて、今更過ぎる尿意の告白を始める。
だけど、言葉は続かずまた顔を下げていく。雨で少し濡れていたスカートがより濃く染まり初め、さらにベンチの隙間や足に、雨とは違う暖かい熱水が流れ始める。

【挿絵:http://motenai.orz.hm/up/orz69622.jpg

「やぁ…ち、ちがうの! 雨、雨なの! あぁ、ダメ……もう、やだ、やだよ」『止まんない、止められない……なんで……止まってよっ……』

目を見開いて大粒の涙を零しながら必死になって言い訳をして、でもすぐにそれも諦めて……。
私はしゃがんだ姿勢から微妙な中腰になり、そんな瑞希の頭を私は強く抱きしめてあげた。

「あぁ、うぅ……ひっぐ……」

嗚咽を漏らし始めた彼女の頭を抱きながら撫でる中、やっぱりやり過ぎたと少し後悔した。

531事例12「根元 瑞希」と雨の日。10:2017/09/03(日) 21:04:28
――
 ――

「漏らしてない、雨だし……」

「……じゃ、触って匂いでも確かめてみよ――」
「わぁーやめてやめて! ごめんなさい!」

「……はぁ、なんでこうなる前に言わないかなー?」

「うぅ……綾が近づいてこなかったらバレなかったもん……」

「……そんな問題じゃないし……それに言っとくけど、結構前から我慢してたのバレバレだったんだけどねぇ」

「!!?」

「……むしろバレない要素がなかったけど?」

「だったら……い、言ってよ! ――っていうかなんで近づいてきたのよ! わざとなの!?」

「……あー、ごめん、面白そうだったし、わざとなの」

「ううああぁぁ、面白がんないでぇー」

本当は面白そうではなく、物凄く可愛くて愛おしくて自分が抑えられなくなったんだけど……流石に言えない。
沸騰しそうな頭を抱えて悶え苦しんでいる瑞希に私は声を掛ける。

「……さて、雨止んだけど、そんなんじゃ風邪ひくから、うちでシャワーとか着替えとか用意してあげる」

瑞希はもともと身体が強いほうではないし、流石に放っておけない。

「うぅ……お願いします……」

正直、思ったより後味よく終わって安堵してる。
それに、普通に話せるようになってる気がする……。

「ねぇ、綾……」

「……なに?」

前で自転車を押す私に瑞希が声を掛けてくる。
私は振り向かずに返した。

「やっぱ、綾は綾なんだね……」

「……意味わかんない」

「その、なんていうの? 頼れる存在っ! って感じだよ」

――……それは、買い被り……瑞希のおもらし見てドキドキしてる変態なだけだし……。

「あ、もし、本当に生徒会に入る気があるなら……私、クラス委員長、引き受けてもいいよ……綾が生徒会とかなんか私も誇らしいし」

――……なるほど、我慢中のあれはこれが言いたかったのかな?

「……ありがと、だけどまだ保留だし皐先輩には話さないでほしいかな」

……。
結局朝見さんは生徒会に入るのだろうか。
もし入るのなら――……私も入りたい? ……わからない。

だけど……もし生徒会に入ることになれば、確実にまゆや弥生ちゃんとの時間は減ることになる。
二人と居る時間は減らしたくない……。

――……あ、トイレ……。

ふと忘れかけていた尿意を思い出す。
仕返しが怖いので、瑞希がうちでシャワーを浴び始めるまで我慢。
私は瑞希に聞こえないように小さく嘆息して少し歩幅を広げた。

おわり

532「根元 瑞希」:2017/09/03(日) 21:07:45
★根元 瑞希(ねもと みずき)
綾菜と同じB組。
真面目で明るくも暗くもない性格で若干病弱。

トイレは割と近いが水分摂取には気を付けているので我慢することも失敗することも稀。
学校では尿意を感じたら済ますことと、尿意がなくても2時限目の後、昼食後、帰宅前に済ませることにしている。
尿意を我慢しているのを悟られるのを非常に嫌うが、トイレに行くのを見られること自体にあまり抵抗はない。

成績は上の中ほどでそれなりに優秀、運動は苦手。
真面目だが勉強一筋というわけでなく、友達もそれなりにはいる一般的な学生。
病弱なことが理由で余り付き合いは良くないが、彼女の周囲には理解者も多い。
多少天然な部分もあり、理解し辛い感性を持っていたりもするほか、配慮のないことを言ったりすることもある。
勉強時だけは眼鏡をかけている。

中学時代綾菜とは仲が良い時期があり友達同士だった。
ある事件をきっかけに次第に疎遠になり、今に至る。
ある事件のことも、今の綾菜の性格についても気に掛け続けていた。

綾菜の評価では、真面目で普通な人。病弱なのが心配。仲が良かった友達。
仲を戻せればとはどこかで思っていたが、見て見ぬふりをし続けてきた相手。
『声』に関してはあまり聞くことのできない人で残念。

533名無しさんのおもらし:2017/09/03(日) 23:10:48
久しぶりの事例さんの作品がキター!
待ちに待ってたよ

534名無しさんのおもらし:2017/09/03(日) 23:38:36
なんか久しぶりにテレパシーが仕事してる気がする。

535名無しさんのおもらし:2017/09/05(火) 02:32:00
2日ほど見ない間に新作が…。待ってました。
事例2で休んでたのは病弱設定だった分けか。
事例11の星野さん?の『声』は近々聞けそうですか?

536名無しさんのおもらし:2017/09/05(火) 07:43:21
久しぶりの事例。相変わらずの良作だった。

537名無しさんのおもらし:2017/09/05(火) 23:52:05
更新ありがとうございます。お元気でなによりです。

まゆ姉前会長とか、過去の事件の話とか、物語が進んでいく感じがして良いですね。
そして、新キャラかと思った根元さんは、事例2で休んでたもう一人の日直さんだったんですね。

538名無しさんのおもらし:2017/09/06(水) 02:21:44
事例の人の書く文章は本当素晴らしい。
投下遅くてもいつまでも待ってられるわ、ありがとうございます

539名無しさんのおもらし:2017/09/06(水) 12:19:42
俺も今書いてる途中なんだが、このスレって1レス当たりの字数制限とか行数制限とかってどのくらいなんだろうか。
機種によって違うのかな。
一応docomoのガラホ(OSはAndroid)なんだけど…

540名無しさんのおもらし:2017/09/06(水) 16:43:16
文字数は4096文字、行数は無制限かな?
但し、変な人が増えると変わるかも。

541名無しさんのおもらし:2017/09/06(水) 20:01:40
>>540
ありがとう。結構書けるんだな…
予想以上だ。

542名無しさんのおもらし:2017/09/16(土) 00:45:50
練功穴というのを御存知だろうか?
少林寺拳法において毎日の稽古をしている所の石畳が、稽古の踏み込みによって沈み込んでいるものである。
毎日の稽古が積み重なり石畳さえも凹ませるまでになっているのだ。
それと似たような話をある学校で聞いたことがあるので紹介しようと思う。

その学校の寮のトイレの便器には不自然な窪みがあったのだ。
比較的新しい便器だけに中央部にある削られたような窪みにはいっそうの違和感を感じたのだ。
では何故このようなものが出来ているのであろうか。
実はこの学校の生徒は登校中にトイレに行くことを禁じられ、一日中おしっこの我慢を余儀なくされた少女達が己の欲求を開放できる唯一の場所がここなのである。
女子生徒たちの我慢に我慢を重ねたおしっこは相当な量になり、放課後このトイレでは生徒達の一日の欲求を解放する音が響く。
まだ小さな膀胱に無理矢理詰め込まれた大量のおしっこは、開放と共に激しい迸りとなって陶器の便器を叩く。
その毎日の積み重ねが、陶器の便器を少しずつ削り長い月日をかけて便器の形を変えているのである。
長い月日をかけているとはいえ、陶器製の便器が削れるなどという信じがたいことを目の当たりにする事で、彼女達の我慢限界のおしっこの勢いがいかに激しいかをお分かりいただけるだろう。
そしてそれは、彼女達の我慢が如何に過酷であるかも物語っている。
陶器を穿つほどの勢いで噴き出すおしっこを我慢する事はどれほど辛いかは我々には想像もできない。
おしっこがそれほどの勢いで噴き出すという事は同時に、その勢いで外に出ようとしていたおしっこを放尿時までずっと堰き止めていたという事でもある。
勢いよく尿道に押し寄せるおしっこを堰き止める事はどんなに困難だろうか。
そしてそれほどの勢いのおしっこを堰き止めてしまえば、行き場を失った圧力は膀胱内にとどまり、膀胱は大きく大きく膨らまされてゆく、それはおしっこが無事出口から出るまで決して治まる事はない。
それほどのおしっこを彼女達は一日中貯え、その尿意の我慢の中で日々の学園生活を送っている。
そして全ての授業を受け寮に帰るまでは、どんなにおしっこがしたくなっても我慢するしかないのだ。

543名無しさんのおもらし:2017/09/16(土) 00:47:28
彼女たちがおしっこを無事に外に出せる機会は怖ろしいほどに限られている。
登校中は完全にトイレを禁止され、我慢に我慢を重ねた末にたどり着く場所、それが寮にあるここの5つのトイレなのである。
全校生徒に対してたった5つ、このあまりに少ない数はようやくトイレを許された彼女たちをさらに追い詰める、トイレの順番待ちである。
トイレに行く事は許可されても入れるトイレが無ければ結局おしっこはできない。
それでも生徒達はいつか回ってくる順番を信じトイレに並ぶのである、その行列はトイレの中に収まりきるはずもなく、行列の最後尾は廊下を曲がり渡り廊下にまで長く長く伸びる、トイレに入れないどころかトイレの入り口すら見ることができない状態で彼女たちは今か今かと順番を待つのである。
最後尾は実に2時間待ち、おしっこ我慢限界で駆け込むトイレに待ち時間があると言うだけでもつらそうだが、その待ち時間もまた常識外れである。
これを読んでいる方の中にはトイレの近い人もいるだろう、トイレの近い人にとって2時間という時間はトイレに行ったばかりからでも我慢が必要になりかねない時間である。
その様な長い時間を、この学校の生徒達はもう今すぐにでもトイレに行きたい状態から耐えなければならないのだ。

544名無しさんのおもらし:2017/09/16(土) 00:48:14
彼女達は学園内での放尿は堅く禁じられ、唯一放尿が許されるのは寮のトイレだけなのだが。
その寮のトイレの使用でさえ、使用に厳しい制限がかかっていると聞く。
基本的に夕方と朝しか使用できず、夜間は閉鎖されてしまうため、寮にいる間でさえいつでも自由にというわけにはいかない。
さらにテストの成績や課題の出来により、その夕方や朝の使用でさえも制限されるとの話だ。
教科ごとにより曜日や日付が決められていて、例えば国語は月曜の夕方、数学は火曜の夕方のように曜日は夕方、体育は5の付く日の朝といったように決められた日付は朝、と決められていていて
該当の教科の成績の悪かった生徒はその曜日や日付や朝夕のトイレの使用が禁止されてしまう。
前の例で言うと体育の成績の悪い生徒は、5の付く日は朝一番のおしっこすら許されず登校しなければならないそうだ。
もちろん登校してしまえばトイレには行けず、その日の夕方まで一日中の我慢を強いられる。
朝一番のおしっこを夕方まで出すことができない、夜間もトイレが使用できないのだから、朝のトイレ使用を禁じられてしまえば、夕方の休憩時間だけが彼女の一日で唯一のトイレタイムになり、丸一日のおしっこ我慢をしなければならない
しかも、お気付きいただけたであろうか? 曜日と日付と2つ設定されているという事は2つが被る可能性があるのだ。
国語の月曜日、体育の5の付く日の両方を落としてしまった時、もしも5日が月曜日になってしまった時どうなるのか?
重なった場合、当然のようにペナルティは重ねて適応される。それは一日にたった2度しかないトイレ休憩両方の没収であり、つまりその日は丸一日トイレに入ることは許されない。
つまりその日は一度もおしっこをする事が許されないのである、昨日の夕方から我慢しているおしっこを明日の朝までする事ができない、実に36時間以上もおしっこが禁止されてしまうのである。
もし自分がそのような我慢をしなければならない状況におかれた事を考えると、考えただけで背筋が凍るが、この話にはまだ続きがある。
日付による禁止は奇数日のみに適応され、翌日の朝という事は無いが。前日の夕方の教科を落とすという事があるのだ。
賢明なる読者の方々なら薄々は感づいていることと思う。もしや、いや、まさか、、、 いいえ、そのまさかなのである。
前日の状況により特別に使用が許されるなどといった事は一切無く、あろう事か3回連続でトイレ休憩を取り上げられるのである。
つまり、昨日の朝から我慢しているおしっこをする事ができないまま登校しなければならず、そして学校から帰ったとしてもその日はトイレには行く事はできない、もうはちきれんばかりにパンパンになっているであろう膀胱を抱えたまま眠りにつくのだ。
おしっこを許されるのは翌日の朝。最後のトイレ休憩より実に約48時間後のことである。

545名無しさんのおもらし:2017/09/16(土) 00:49:02
このようにこの学校では、にわかに信じ難いおしっこ我慢が続けられているのだが。
しかし、それらの話は逆にこの削られた便器の話に信憑性を与えている。
彼女達は理不尽で長く苦しいおしっこの我慢に冷汗を流し涙を滲ませて耐えているのだろうか?
だとするならば、この削られた便器はこの学校の女子生徒達の汗と涙ならぬ、おしっこと冷汗と涙の結晶なのだ。
取材の帰り、寮から出た所でちょうど下校時刻なのであろう女子生徒の一団とすれ違った。
彼女達は私に笑顔を見せると大きな声で爽やかに挨拶すると寮の方へと帰っていった。
驚く事にその様子はとてもおしっこを限界まで我慢しているとは思えなかった。
周りの下校中の生徒達を見回しても特に変わった様子はない、ごく普通の学校のありふれた下校風景である。
だが彼女達は皆朝から、生徒によっては昨日の今頃や、もしかしたら一昨日の朝からトイレの使用を禁じられ、今は耐え難いほどにおしっこしたい状態であるはずなのだ。
しかし、そんな様子は誰一人として微塵も見せず明るく楽しそうに学園生活を送っている。
彼女達はどんなにおしっこがしたくても常に平常心を保ち常に笑顔を振りまいている、寮のトイレの個室に入るまで己の欲求を表に出すことは決してない。
学園の寮の窪みのある便器、あの便器だけが彼女達の笑顔の下に隠されたおしっこ我慢の筆舌に尽くしがたい辛さと苦しさを知っているのだ。

546名無しさんのおもらし:2017/09/16(土) 10:58:50
ノーション的な・・・淡々としたノリがかえってイイですね

547名無しさんのおもらし:2017/09/19(火) 13:14:06
もう混雑解消用に小便器の導入と立ちション訓練の実施でもすればいいんじゃないかな(ただの趣味)

548名無しさんのおもらし:2017/10/01(日) 03:07:13
突然だが、これを読んでいる貴方は『PRPG』をご存知だろうか。
ジャンルの名称、ではない。知る人ぞ知る、ひとつのゲームの名前だ。
今月は、これをご紹介させていただこうと思う。



『PRPG』は、水の神が宿る聖なる剣に選ばれた勇者が主人公の、一見王道なファンタジーRPGである。
勇者が女の子である点は少し珍しいかもしれないが、それは他に例がないわけではない。
勇者は冒険で経験を積み、仲間を増やし、徐々に物語は進んでいく。


このゲームが変わり種と呼ばれる理由は、ここからだ。

炎を司る魔王に対抗すべく、勇者パーティーの仲間は皆、なんらかの形で水属性をその身に宿す。
勇者は水の神の剣で。僧侶は聖水を口にして。魔法使いは水の精をその身に降ろして。

そこで重要になるのが、「水聖力」と呼ばれるパラメーター。
これが高いほど水属性は高まり、攻撃力をはじめとするステータスは上昇する。逆に、下がりすぎれば戦闘において使い物にならないほどステータスは減少する。
「水聖力」はHPやMPと違って宿屋では回復できないのもポイントだ。むしろ、後述する理由によって、宿屋など一部の施設では「水聖力」は下がってしまう。


勇者たちが「水聖力」を維持するためには、「回復の泉」をはじめとするスポットに立ち寄らなければならない。
「回復の泉」で勇者たちは湧き出てくる特殊な水を口にして、魔物と戦うための水の力を再び得るのだ。


彼女らのステータス・バーは合計三本。
グリーンのHPバー、ブルーのMPバー、そして、一番下のイエローが「水聖力」を表している。
塩梅の難しい話になるのだが、実を言うと、「水聖力」が高すぎても彼女らは戦えなくなってしまう。

ここではゲームの世界ではなく、現実を想定して考えていただきたい。

生身の人間が水分を摂れば、それは最終的にはどうなるか?

答えはひとつだ。
そう、「水聖力」は、「尿意」のパラメーターと紙一重なのである。
高すぎれば集中力を欠き、彼女らはそわそわと落ち着きなく体を動かすようになるだろう。

聖なる力は、水によって蓄えられる。けれど、人間の体が蓄えておける水分には、限りがある。
なんとももどかしい話だが、そこがこのゲームの奥深いところ。
彼女らの我慢がきくギリギリのラインを見極めながらダンジョンを進み、経験値を稼いでいく。そのスリルはきっと、他のゲームでは味わえないものだ。


そして、彼女らは我慢を重ねることで成長していく。
大量の水分を蓄えることを繰り返すと、彼女らの「水聖力」ゲージの上限は段々と増える。つまり、蓄えられる量が増える。
限界ギリギリまで我慢をさせればさせるほど、それは彼女らの経験となり、彼女らの膀胱は強くなるのだ。

549名無しさんのおもらし:2017/10/01(日) 03:07:24

魔物が棲み着く森の中で、不安定なステップを踏みながら探索をしたり。
トイレが見つからない町の中で、張り詰めた膀胱を抱えて歩いたり。
雪に閉ざされた山の中で、寒さに苦しめられながらも水聖力のために聖水を口にしたり。


こんな風に、彼女らが強くなるための道は、生理現状と密接な関係にある。
つまり、失禁を恐れて何度もトイレに寄ったりすれば、膀胱の容量はだんだんと小さくなっていき、水の力も弱まっていく。
町の中など、いつでもトイレに行ける環境はある種、相性が悪いとも言えるだろう。

キャラクターに搭載されたAIがあまりにもトイレを気にしすぎると、戦闘が疎かになることもあるので、ときには心を鬼にすることも必要だ。
そういうときは、「コマンド」の中から「きょかせいにする」を選べばいい。
すると彼女らは町の中でも勝手にトイレに行かなくなり、勇者のもとに許可を得に来るだろう。
自己申告の恥ずかしさ故、先伸ばしにして我慢タイムが伸びることもメリットだ。
許可制にすると、他の子の手前、勇者もトイレに行きにくくなるので、パーティを育てるにはもってこいだろう。

もっとも、別行動していたキャラクターが勇者を探したものの見つけられず、ついに失禁に至る……なんて事態も起こりうるのだが。



彼女らだって、ただの町娘ではない。
水聖力が強さに直結していることを知っているので、出来る限りの我慢をしようとするだろう。
しかし、パラメーターには限界が存在するわけで。
勇者パーティの一員としての義務感と、失敗できない女の子としてのプライド、それから羞恥心がせめぎあう様は、なんとも趣深いものがある。



彼女らが限界を告白して用を足したり、限界を迎えて失態を犯したり、あるいは宿屋に泊まってトイレを済ませてしまった後。

勇者のパーティが冒険に出るためには、やはり水聖力を宿してからでなくてはならない。
水の力がなければ、勇者たち人間は魔物に立ち向かうことすらできないのだから。
せっかくすっきりした彼女らは、複雑な表情を浮かべながら聖水を口にすることだろう。


そして全員が尿意を覚える頃、勇者のパーティはどこか落ち着かない足取りで冒険へと再出発するのである。



(月間P-lovers 10月号より)

550名無しさんのおもらし:2017/10/01(日) 03:12:08
コマンド
「きょかせいにする」
パーティメンバーがトイレに行くときは、勇者の許可を得なければならない。もちろん、勇者は許可を出さなくてもよい。

「がんがんいこうぜ」
とにかく水分をとり、水聖力を上げる作戦。
短期決戦をしたいときに有効だが、おもらしと隣り合わせの諸刃の剣。

「なるべくがまん」
追加で水分をとるわけではないが、用を足すのはできるだけ後回しにする。モンスターが出るフィールドなどで使う。

551名無しさんのおもらし:2017/10/01(日) 12:24:37
そのゲームください

552名無しさんのおもらし:2017/10/03(火) 12:02:01
なんていいゲームなんだ

553名無しさんのおもらし:2017/10/11(水) 00:54:18

PRPG マップ14-5『氷雪の森』


 ひゅうひゅうと絶え間なく吹く冷たい風。時に舞い上がりながらもしんしん降り続く雪。
 勇者たち一行は次の町を目指すべく、『氷雪の森』を訪れていた。

「うう、さむ………」
 視界の悪い森の中、四人パーティーの一番後ろにいた戦士が呟く。彼女の身を包む赤い鎧は防御力こそ高いものの、防寒性には乏しい。雪に温度を奪われた体を少しでも暖めようと、盾を持たない手で腕をさすっていた。
「が、頑張りましょう。この森を抜ければ、すぐに町があるはずですから」
 そう応じるのは、戦士のすぐ前を歩いていた僧侶。戦士よりはいくらか厚い法衣を纏ってはいるものの、こちらも寒そうに身を縮めていた。

「って言ってもさ、さっきから全然景色が変わらないんだけど……ほんとに合ってんの?」
 ぼやくように言う戦士に、今度は魔法使いが答えた。
「サーチ魔法によれば、方角はこっちで合ってるはずよ。たぶん、そろそろ森も半分くらいじゃないかしら」
 音楽の指揮でもするように、魔法使いは指先を動かす。そこに灯る淡い青色を帯びた光は、水の精霊とリンクして辺りを探っている証だ。
「えー、まだ半分なのかよ……?」
 さくさくと雪を踏んでいくブーツの爪先を、戦士は少しだけ不規則に動かした。不満を訴えた口許は、何かに耐えるように下唇を噛む。
「その、さ、………アタシ、催してきちゃったんだけど………ダメ?」
 へへ、と戦士は茶化すように笑う。誤魔化しきれない照れが、なめらかな頬を染めた。
「だっ、ダメに決まってるじゃない! ここは魔物も出るし、それに、お外で、なんて……」
 戦士の羞恥混じりの訴えに、返す魔法使いの口調は鋭い。
 理屈だけで言えば、魔法使いの台詞は至極真っ当なものだ。


 魔物と戦うには水聖力と呼ばれる力が必要。
 水聖力を体に溜めるには、水そのものを溜めておく必要がある。
 魔物の出没する森で『それ』を解放するなんて、自殺行為とほとんど同義。

 でも。


「っ、でも、………アタシ、そろそろ、やばいんだよっ」
 切なげに眉を寄せ、自らのーーおんなのことしての危機を告げる戦士。
 そわそわと腰を揺すり、落ち着かない『欲求』を散らす。
 その姿に誘惑されたように、僧侶も口を開いた。
「ご、ごめんなさい、実は、私もです……」
 白木の杖を持つ僧侶の手に、きゅっと力が籠る。瞼を伏せた彼女の頬もまた、寒さとは違う理由で赤く染まっていた。
「そんなこと言われても……」
 二人の仲間から、控えめながらもストレートに『欲求』を告げられた魔法使いが、困ったように勇者の方を見る。彼女とて、下腹部に燻る欲求を抱えているのに。
「勇者さん、どうしましょう。……その、お二人は結構限界みたいよ?」
 何が、とは、魔法使いも言わなかった。
 水聖力を溜めることで同時に引き起こされる現象、つまりは、尿意。
 パーティ結成以来、何度も何度も彼女たちを苦しめてきたものだ。
「うーん、つらいのは分かるけど、もうちょっと我慢して? ここ、結構魔物が強いしさ……」
 申し訳なさそうに、それでも有無を言わさずに勇者は答える。
 パーティのリーダーたる彼女だけに見える、仲間の状態を表す窓。それを開いて、仲間たちの状態を確認した。戦士、魔法使い、僧侶の枠は、揃って黄色く染まっている。
 緑と青の下にある黄色い横棒には、まだ少しだけ余裕があった。
「勇者の鬼ぃ……」
 戦士が、形の良いふとももを擦り合わせながら恨み言をいう。そのトーンが本気でないのは、彼女とてここで解放するわけにはいかないと分かっているからだろう。
「なるべく、急ぎましょう…?」
 僧侶が、切実な色を滲ませた声音で乞う。
「早く、着けると良いわね……」
 魔法使いは、そっと靴の先を地面に擦り付けた。

554名無しさんのおもらし:2017/10/11(水) 00:57:35

「っ、あ、あれっ………?」
 魔法使いが、戸惑った声を上げる。
 パーティは、彼女の使役する水の精霊のナビゲーションに従って進んできたはずだった。なのに、目の前に広がるのは森の出口ではなく切り立った崖。
 覗き込んだ下は、うっかり落ちれば怪我では済まないほどの谷になっていた。
「出口はどうしたんだ?」
「ま、まさか、間違えたんですか?」
 戦士と僧侶が、魔法使いに問う。その二人は、随分と切羽詰まった様子を見せ始めていた。
「っ、ごめん………精霊さんの指示を、私が聞き間違えたみたい………。ほんとの道は、逆だって」
「「ええっ!」」
 うう、と申し訳なさそうに身を縮める魔法使い。水の精霊との交信の副作用で体に湧き起こる衝動が、一層強まる。
「わ、私だっておトイレ行きたいのよ! 精霊さんとお話してると、どんどんつらくなるし……集中できなくって、そのっ」
 ついに、魔法使いの手がローブの前に差し込まれた。ぎゅううっと押さえ込んで、腰が引けて、不格好な前屈みになる。
 それは、戦士と僧侶が現在進行形で耐えている『欲求』を呼び起こすには十分すぎる目の毒で。
「っ、あ、アタシだって、っふぅ…ッぁ!」
「やだ、わたし、っ、くうっ………ひっ、」
 戦士は盾を放り出して、僧侶は杖を落として、慌てて魔法使いと似たり寄ったりの姿勢をとる。

「ね、ねえっ、頼むから、いいでしょっ、アタシ、もう限界ッ!」
「おトイレっ、……勇者さま、お願いです! していいって、許可を……っう」
「やだ、出ちゃうッ、もう、無理なの……!………あっ、ぁ、や、精霊さん、今は、やめてっ!」

 戦士、僧侶、魔法使い。
 三者三様に、勇者に向けて『許可』を乞う。

 仲間たちから必死なお願いをぶつけられた勇者は、仕方ないなあとでも言いそうな調子で言った。
「……それじゃあ、全員一気にしちゃうと困るから、ひとりずつね? その間に魔物が来ないとも限らないし、バラバラにならず、警戒も怠らないこと」

 勇者の言葉に、三人は一瞬顔を見合わせる。そこからは、早かった。

「っ、ごめん!!」
「あっ、待ちなさいよ!」
「抜け駆けはずるいですっ!」
 戦士が、前を押さえたまま近くの茂みに駆け込んだ。後を追って、魔法使い、僧侶と続く。
 彼女らが通った白い雪の上に、黄色い丸がいくつも落ちる。

「アタシ、もう限界なのっ! お願い、終わったらすぐ聖水飲むから、先にさせて!」
 戦士の鎧の下で、とどめ切れなかった水分が少し溢れた。
「っ、ここまで案内したのは私の力なんだから、私が最初よっ」
 魔法使いの白いローブの中心に、薄黄色の染みが広がる。
「わたし、わたしだってつらいですっ!! っああっ、出ちゃう、ぅっ!」
 僧侶の法衣の裾から、水の流れが伝い落ちる。


 悲鳴のような声をあげたのは、誰か、それとも全員か。


 しゅわあああ、と静かな水音が三つぶん、森に響いた。
 ぺたんと座り込んだ三人のお尻の下から、黄色い水流が白い雪の上に広がり、雪を溶かしていく。
 鎧を。法衣を。ローブを。我慢しきれなかったおしっこが濡らす。
 我慢に我慢を重ねた三人ぶんのおしっこは、それはそれは大きな水溜まりを作り上げたのだった。

555名無しさんのおもらし:2017/10/11(水) 01:01:46

 戦士、僧侶、魔法使いの三人の黄色いゲージがみるみる減っていく。
 勇者の目には気持ち良さそうな彼女らの放尿が、耳には勢いのいい水音が飛び込んでくる。
 その一方で、勇者自身の水聖力を示す横棒はいっぱいいっぱい。ゲージの左端に書かれた数字は分母より分子の方が大きくなっていて、それを勇者は意思の力だけで支えていた。

(っ、あ、私だって、おしっこしたいのに………!)

 数値にして、先程までの三人の平均の、一.五倍。それだけの量が、勇者のお腹にはたっぷりと溜め込まれていた。


 勇者には、仲間たちをつらい旅に付き合わせているという思いがある。
 だからこそ、自分にできることは自分が一番頑張ろうと。
 欲求が限界を超えても涼しい顔を保ち、数字で突きつけられても己を騙して我慢を続ける。
 それはある種、勇者を勇者たらしめている意思の力に通じるのかもしれなかった。

(っふ、………あ、やばっ………。だめ、我慢我慢……)

 長い長い我慢からの解放に、仲間たちは気持ち良さそうに浸っている。
 彼女らが後始末を終え、聖水を口にし、水聖力を再び宿すまで、少なく見積もっても一時間。
 それまでの間、勇者は限界を超えたおなかを宥めながら、水の力を一時的に失った彼女らを守って戦わなければならない。
 甘く、擽ったく疼く下腹部を抱えた勇者はそっと三人に背を向けて、密かに、一瞬だけ足のつけ根にてのひらを強く押し当てた。

556名無しさんのおもらし:2017/10/16(月) 23:23:07
gj 勇者がいいね!
他の子たちが勇者に絶対の信頼を持ってるからこそ勇者も弱音を吐けないみたいな
勇者以外もステが確認できたならまた違ったのだろうけど

557名無しさんのおもらし:2017/10/17(火) 19:41:51
勇者ちゃんにはもっと我慢してほしいね

558事例の人:2017/11/02(木) 01:15:04
>>464
鞠亜はまだまだ謎多き人物ですね、キャラ紹介まだですし……しないかもだけど。
>>534
テレパシー今回は仕事しません……
>>535
星野さんは来年中には。

根元さん覚えてる人いて驚いた。
感想とかありがとうございます。

今回変化球です、おもらし推理小説みたいな新ジャンル
ちょっとどころではなくおもらし小説としてはどうなの? って感じです。
推理小説としてもどうなの? です。矛盾あったらごめんなさい。
追憶としてこの話に出てくる事件は書くこともあるかもです。

559事例13「容疑者の一人」と安楽椅子探偵。1:2017/11/02(木) 01:16:48
「……えっと…もう一度言ってくれる?」

私は自分の耳を疑いまゆに聞き返す。

「だから、中学一年の時に起きた怪事件、『犯人の居ないおもらし事件』だよ」

……。
何度聞いても耳を疑いたくなるその謎の怪事件。
隣で少し顔を赤くして真顔で瞬きだけをする弥生ちゃんが――可愛い。

「……えっと犯人って言うのは……えっと、失敗――した子ってこと?」

昼休みと言う時間の中、まゆの言うおもらしという言葉を使いたくないのもあるが
昼休みじゃなくとも普通に濁したくなるのは至極当然な事。

「そういうことだねー」

「……それで、なんでそんな話になるの? ただ、上手く隠し通したって話でしょ?」

私は内心では興味津々だが、気怠そうに振舞う。

「簡単に言えばそうなんだけど、容疑者を絞って話を聞く限りじゃ、犯人が見つからなかったんだよ」

「……ちょっとまって……なに? 犯人捜ししたの?」

おもらしした犯人を見つけるなんてちょっと悪趣味なんじゃ……と思いつつやはり興味はある。
私の言葉にまゆが少し困った顔で話す。

「いや、一部の人だけが探偵気取りで始めたんだよ、まぁ2日目でもう飽きて殆ど話題にもならなかったけどね」

そういって更にまゆは続ける。

「おもらしの水たまりは教室に放置されてたし、クラスが迷惑したのは事実だったわけで
中学という時期を考えればこの程度、普通なんじゃないかな?」

わからなくもない。
他人事でそんな非日常が起きればお祭り騒ぎになる人は当然いるだろう。

……。

「……それで、どんな事件だったの?」

「お、興味出てきた?」

私はまゆの言葉に目を細めて返す。

「……そりゃそんな中途半端な感じに話されたら気になるでしょ」

まゆはしてやったりという顔で私を見る……なんか腹立たしい。
もともと興味があったのは間違いないが、誘導されたみたいで……。
隣の弥生ちゃんも顔は赤いがまゆの方を向いて、事件の内容が気になっているようだった。

「よし、とりあえず事件のあらましを説明するよ、詳しくは質問とか貰ってから答えるね」

そういってまゆが説明をする。

560事例13「容疑者の一人」と安楽椅子探偵。2:2017/11/02(木) 01:18:04
前置きとか背景――――重要な事と言えば女子中学だという点……女子確定だね!――――とかどうでもいい話が多かったが
まゆの話を要約するとこうだ。

まず事件が発覚したのは体育館で行われていた体育が終わって教室に戻ってきたとき。
教室の後ろの方に水たまりを見つけ、その独特の匂いからそれがおしっこによるものだと断定された。
教室へ戻ってきた生徒は複数人でそれを見つけていて、体育の授業が終わってから作られたものではなく
それ以前に作られたものだと思われた。
そして容疑者は4人居てその人に順番に事情聴取を行なったとか。

「えっと、まずなんで、容疑者が4人…なんですか?」

弥生ちゃんがおずおずとした感じで尋ねる。
当然ながら私もそれは気になる。

「実はその前日から教室近くのトイレの故障が多くてね、個室が一つしか使えなくて混んでたんだ」

「? ……理由になってなくない?」

「うん、これは間接的な理由、それが原因で先生が言った言葉が“我慢できなければ2階の2年生のトイレを使いなさい”
さて問題でーす。私たちは行列のできたトイレを使わず、どこのトイレへ向かったでしょうか?」

私はなるほどと納得した。
だけど、弥生ちゃんはその問題にストレートに答えた。

「2階のトイレ……じゃないんですか?」

「残念だけど不正解、弥生ちゃんなら2階のトイレを迷いなく使う?」

「う……状況によりますけど、高学年がいるところ……ましてや昼休みでもない短い休憩時間には混んでそうで行きたくないです……」

「その通り」

まゆが得意げな顔をしているので私は答えを言うことにした。

「……更衣室近く、もしくは体育館のトイレね」

「流石だね、そういうこと。正確にはうちの中学では更衣室近くにトイレはないから、多くの人は着替えてから体育館のトイレを利用しようってなったわけ」

そこまで説明されれば言いたいことは分かった。

「……つまりは容疑者は多くの人が利用した体育館のトイレに行かなかった人ってこと?」

「うん、その通り、皆――というかグループの内一人でもいいんだけどね」

更衣室へ向かった人は多くて、その一人一人が証人であると同時に容疑者とはなりえない。

561事例13「容疑者の一人」と安楽椅子探偵。3:2017/11/02(木) 01:19:28
「どうして、容疑者の4人は皆と同じように体育館のトイレを利用しなかったんですか?」

「そうだね、ここからが本題となるわけだね」

まゆはノートを取り出しでA子、B子、C子、D子と書く。

「この子たちが容疑者だね。そして、理由はそれぞれなの
まずA子。彼女は日直だった、黒板を消す仕事があったわけ。
だから体育の前の授業が終わったとき一目散に教室を飛び出して教室近くのトイレを利用した。
次にB子。この子は少し変わった子で、普通に2階のトイレへ行ったらしい。
それからC子。彼女は始め教室のトイレに並んだんだけど、列が長くて諦めて別のトイレへ行ったみたい。
そしてD子。彼女は教室近くのトイレに並び続けたけど、時間的な理由で諦めたの」

まゆは日直などの簡単な情報を各仮名の下に書き込む。
……。

「……C子とD子が情報不足ね、まずC子はどこのトイレへ向かったの?」

「C子は理科室や視聴覚室とかある教室棟でない利用者の少ないトイレへ向かったわ」

「それじゃ、D子さんは?」

「彼女は文字通り諦めた、我慢したまま体育へ向かった」

「……そうなるとD子は体育が終わるまで我慢したってこと?」

まゆは首を振った。

「D子は体育の終わり掛けにトイレへ抜けたよ(……授業開始からそわそわしてたからずっと我慢してたんじゃないかな?)」

なぜか後半は小声で言った。
でも、これがすべて真実だとするとだれも失敗していない。
A子は教室近くのトイレで真っ先に済ませている。
B子は2階のトイレで済ませている。
C子は別棟のトイレで済ませている。
D子は体育の時間我慢している素振りを見せ、途中トイレに抜け出している。
まゆが言うように『犯人の居ないおもらし事件』となる。

だけど、誰しもが嘘を付ける。
皆自分を弁護しているだけで容疑が晴れるわけじゃない。

「……事情聴取したのよね? さっきの内容がすべて?」

「いや、まだいくつか話してないこともあるよ」

……。

――中学生の事情聴取か、……その内容をまゆも知ってるってことは――。

つまりそういうことなのだろう。
私は嘆息してから尋ねた。

562事例13「容疑者の一人」と安楽椅子探偵。4:2017/11/02(木) 01:21:46
「……それじゃ事情聴取をした順番通りに内容を聞かせて」

「おっけー、まずは日直であるA子、実は彼女が一番疑われてたの、だから真っ先に話を聞いたわけだね。
まずA子は日直の仕事を済ませる前に教室のトイレへ走った、結構我慢してたのもそうだけど
日直の仕事の後でトイレに行くにはトイレが混んで時間がないと思ったらしいの。
用を済ませ、黒板を消すため教室へ戻ると、殆どの生徒がいなくなったところだったと言ってたかな?
だけどそこには容疑者が一人いた……それはB子だった」

「え? B子さんは2階のトイレへ向かったんじゃないんですか?」

「そうだよ。だけど、体操着を持って行かなかったB子はそれを取りに一度戻ってきてたの、それを見かけたみたい。
話を戻そうか、A子は黒板を消していたんだけど、黒板の上の方を消すのに苦労してB子が居なくなった後もしばらく時間がかかったそうだよ。
そして教室に誰もいないのを見てから教室の後ろの戸を閉めて、前の戸も閉めた。あ、閉めたって言うけど鍵をかけたわけじゃないよ
うちの学校は戸締りとかはしなかったから。そうそう、その時に水たまりはなかったと思うって言ってたかな?
そしてそのあと更衣室へ向かって、そこにはもう誰もいなくて一人で着替えることになったんだけど、服を入れるロッカーの空を探すのに苦労したってさ」

……。
他の聴取を聞いていないが、おかしな点は今のところはないかな?
疑問があるとすれば――

「……どうしてA子が一番疑われてたの?」

「あー、それはね、彼女が一番体育館に付くのが遅かったうえ、授業に少し遅れて来たからだよ」

だから教室を出たのが最後であり、水たまりを残せる可能性がある……そういうわけか。真っ先に疑われて当然。
だけど、A子が嘘を言っていなければ先に済ませていたことになりおもらしとはならない……。

「さて、次は今の流れからB子の聴取になったんだけど、さっき言った通り2階で済ませて体操着を取りに戻ってきたの。
ちなみに2階は殆ど混んでなくてすぐに済ませられたと言ってたね。
教室に戻ってすぐA子も教室に入ってきて黒板を消しはじめたって。B子が教室を出るときはA子以外いなくて
そのA子は背伸びしたりジャンプしたりして必死に消してた場面だったみたい。
そのあとすぐA子に確認を取ると確かにジャンプしたりしてて、踏み台を使えばもっと早く消せたと言ってたね。
更衣室へ行くともうみんな着替え終わっていたらしくて誰もいなかったそうよ」

つまり、皆が着替え終わった後にB子が着替えて、B子が着替え終わった後にA子が着替えた。
接触していないのだからこの辺りは嘘を言っていたとしても違和感なく通るけど……。

563事例13「容疑者の一人」と安楽椅子探偵。5:2017/11/02(木) 01:22:25
「そしてC子。彼女はさっきの二人とはほぼ接点がなくてねぇ。教室近くのトイレに並んだんだけど……あ、すぐ前はD子だったみたい。
それなりに切羽詰まっていた彼女は列をすぐに抜けて教室へ戻った、これは数名の生徒が確認済みだったし私も見たよ。
そして体操着を持って別棟の利用者の少ないトイレへ向かった。
そこのトイレは誰もいなくて普通に間に合って、そこで体操着に着替えて直接体育館へ向かったんだって。
その子の言った通り、確かに制服を持ったまま体育館へ来てたね」

「えっと、更衣室へ制服を置きにいかなかった理由はあるんですか?」

「単純に面倒だったからだって。教室から体育館の間に更衣室はあるけど、彼女の向かったトイレから真っすぐ体育館へ向かうとなると
ほんの数十歩だけど無駄にあるかなきゃダメで、それがなんだか面倒に感じたんだって」

……。
確かにこれじゃ接点がない。
彼女の行動の真偽は彼女の言葉だけで完結していて制服を体育館へ持ち込んだという結果しかわからない。

「質問なさそうだね、最後はD子だね。彼女もC子と同じで教室近くのトイレに並んだ
もう少し早く進むと思っていたけど、思うように列は進まず途中で諦めて教室へ戻ったそうだよ」

「……まって、その戻った時ってタイミング的にはどのタイミングなの?」

わざわざ行列に並んだのだから、D子は時間ギリギリまで行列で粘ったと考えるのが普通。
さっきまでの話を聞く限りじゃ、最後まで教室で黒板を消していたA子が見ていないのはおかしい。

「D子が言うにはA子が黒板の上の方をジャンプで消していた時で、自分以外の生徒はいなかったってさ」

「おかしいです! A子さんが最後に見たのはB子さんのはずです!」

「その通りだね、だけど厭くまで“A子が見た”のがB子であってそれが真実という保証はないからね。
というのも、D子の席は一番後ろ、トイレの方から戻ってくると後ろの戸から入ることになる
戸の目の前が彼女の席、机の横に掛けられた体操着セットを取るだけだから教室に入った時間は数秒程度でそのまま後ろの戸から出たらしい。
この短時間では黒板を消しているA子が気が付かないのも無理はないというわけ。
そして、D子は急げば体育館のトイレを使えると思っていたらしいけど、体育館についたのはチャイムが鳴っている途中、ギリギリだったわけね」

……。

「なるほどです……」

弥生ちゃんは納得する。
私はまゆがノートに書き続けているメモも眺める。

……。

「……体育が終わった後、更衣室で着替えなかった人はいる?」

「いないね、C子を含む全員が更衣室に入って着替えたよ」

……おかしい。違和感を感じる。

564事例13「容疑者の一人」と安楽椅子探偵。6:2017/11/02(木) 01:23:16
「わかりました! 犯人はA子さんですね!」

「へー、理由は?」

「教室を出たのが最後だという確証はないですけど、B子さんとD子さん、それに自身の証言から最後である可能性が極めて高いうえに
体育の授業を遅刻するほど遅れてきている彼女が一番遅かったのは揺るぎない事実です!
この事実がある以上は他の容疑者が教室でお――ごほんっ! ……えっと、失敗をすることが出来ませんし
教室まで行ってすること自体が不自然です!」

私も同じ結論ではある。
だけど……。

「……まゆ、この話って本当に未解決だったの?」

私の言葉に弥生ちゃんはきょとんとして、まゆは表情を変えず、そのあと嘆息した。

「敵わないなぁ、あやりんには……。そう、この事件は弥生ちゃんの推理通りにその日のうちに解決済みだよ」

出された結論はこうだ。
A子は授業が終わると同時に教室近くのトイレへ向かった。
かなり切羽詰まっていて、日直の仕事がある以上、体育館のトイレを使用するのはクラスメイトの順番待ちで厳しいと思った。
だけど、急いで向かった教室近くのトイレは既に並んでいて、これを並んでから黒板を消していては授業に遅れてしまう。
A子は並ぶのを諦めて黒板消しをして、教室のトイレの行列が解消されることを祈った。
教室に誰もいなくなり我慢も限界に差し迫ったころ、教室の後ろの戸からトイレを見ると行列はまだ残っていて……。
この後彼女が取った行動が、教室後ろでの放尿なのかおもらしなのかはわからないが、かくして、教室に水たまりが作られる結果となった。
もし下着や制服が汚れていたならば、先に保健室で替えの着衣を用意すれば問題ない。授業は既に始まっていて、見つかる心配はない。

「だけど、私、そのA子に昨日会ったんだよ」

まゆが真面目な顔で続けた。

「なんか流れで話題がこの話になると彼女は迷惑そうな顔で言ったんだ……『私じゃなかったのに』ってね。
あれから約3年、そしてA子を見てると嘘を言ってるようにも、現実を受け止めていないようにも見えなかった
これは私が感じたただの感想であってA子の疑いを晴らすようなことじゃない……だけど……やっぱり気になった」

「……弥生ちゃんやクラスで出された推理は間違っていて、他に真犯人がいるってこと?」

「わかんないけど……多分ね」

「そんな…ありえません……」

A子が犯人でない。これはまゆの想像であって犯人ではない。
……。

565事例13「容疑者の一人」と安楽椅子探偵。7:2017/11/02(木) 01:24:10
「……たしかに、まだ考える余地はありそうだね……そもそもA子が犯人だと違和感がないわけじゃないし……」

「どういうことですか?」

二人が私の顔を覗き込む。

「……実際見ていないからわからないけど……限界まで我慢してるA子が黒板を消すために背筋を伸ばしたりジャンプするとは私は思えない」

二人は目を丸くして驚いた。

「……だから私はまゆの意見――A子は犯人ではないに賛成したいんだけど……肝心の真犯人が……」

私は考える。
誰もが嘘を付くチャンスがあった。
だけど、嘘を付ける範囲は限られていて、体育館に来た順番は容疑の掛かっていないすべての人が見ている。
更衣室はC子を除くすべての人が利用していて、授業前、最後に使用した人物はA子で、これも恐らく間違いない。
それなのに、A子が教室を出たときに水たまりが存在していない……。

――……A子が気が付かなかっただけ? もしくは、犯人ではないが嘘を付いてる?

後者には少し無理がある。
A子は「私じゃなかったのに」と言って不本意な形で事件が収束していったのを不満に思ってる。
犯人にされてもなお、嘘を付く必要があったとは思えない。あったならばA子は後悔をしていない可能性が高く
まゆに対して不満を漏らすとは考えにくい。

「……まゆ、水たまりの位置は教室の後ろって言ってたけど、A子が教室の戸を閉める際に気が付かないくらいの位置だった?」

「いや、水たまりは教室に入ってすぐで、戸を閉めに行けば普通に踏んでしまうくらいの位置だから気が付かないはずはないよ」

――だめか……。

水たまりが出来た時間が変われば、色々と変わるかと思ったがこれもA子が教室を出た後で確定。

「えっと、本末転倒ではあるんですけど、容疑者の中に犯人がいなくて、他のクラスの生徒という可能性はないんですか?」

「……他のクラスの人が誰もいなくなった教室に入る行為、廊下にはトイレに並ぶ人もいたんだからリスクは高いとは思う……けど――」

それでも、正直否定はできない可能性。
本当にA子が犯人ではないのなら、他に可能性がない以上、この答えが真実となる。

「それはないよ」

まゆが口を開いた。

「A子には手紙が届いたらしいの、筆跡から読み取られないように印刷した文字だったらしいんだけど
貴方に罪を押し付けた形になってごめんなさいって内容のね……この事件はクラス外に漏らさなかったし
手紙自体も事件後の次の日だったからクラス内の誰かなのはほぼ間違いないはずだよ」

……。
そうなると八方塞がり……確かに怪事件。

566事例13「容疑者の一人」と安楽椅子探偵。8:2017/11/02(木) 01:25:01
「ねぇ」

私は考え込んでいた顔を上げる。
目の前には弥生ちゃんとまゆも顔を上げていて……。

「もうすこし見方を変えてみたらどう?」

そう口にしたのは……朝見さんだった。

「A子さんは更衣室で空いたロッカーを探すのに手間取ったと言っていたはずよ。
つまり教室を出てから体育館に着くまでの時間はそれなりに長かったと言えるはず」

なぜかよくわからないが話に参戦したきた朝見さん……。
だけど、指摘したことは確かにその通り。
A子が教室を出てから体育館へ到着するまでに水たまりを残して、A子より先に体育館へ行くことが出来れば別の人でも犯行は可能。
でも――

「だ、だとしても体育後の更衣室ではみんなが着替えているので全ての人が着替えを更衣室に置いてあったか
もしくは持ち込んだりしなければ、この犯行はやっぱり不可能です」

――……っ! そっか、見方を変えるって……。

「……ちがう、不可能じゃない……一人だけ可能な人がいる」

567事例13「容疑者の一人」と安楽椅子探偵。9:2017/11/02(木) 01:25:45
皆が私の顔を見る。
小さく咳払いをして数秒、私の推理が勘違いでないかを整理……それから口を開く。

「……結論から言って恐らく真犯人はD子」

「ちょ、ちょっとまって! D子じゃないって、体育の授業中……えっと、我慢してたっぽいしトイレにも…いったし」

まゆは自分の目で見てたからなのか、少し慌てて私の考えを否定する。
だけど、まゆが言ったことこそが、この事件を解くカギ。

「……体育の授業中そわそわしてたのは演技……ではないけど理由が違う。恐らく下着をつけていなかったからだと思うの
そして、トイレと言ったのは嘘。本当は保健室と更衣室へ行っていたと私は考える」

「保健室と更衣室?」

まゆは不思議そうな顔で何度か瞬きをする。

「……まず事の発端から、D子は体育前の授業中、我慢していたのでしょうね。
そして何らかの理由……詳しくはわからないけど、授業後トイレに立つのが少し遅れて教室近くのトイレは順番待ち
だけど、D子はそこに並び続けた……ここの理由も実は曖昧だけど、2階のトイレは行きにくいし階段もある
他のトイレも遠いと考えれば、限界まで我慢していたのなら、歩き回るより最悪10分その場で我慢すれば済ませられると思って並び続けた可能性は十分にある。
だけど、ここに誤算があった……多分間に合わなくなっちゃたんじゃないかな?
焦る中、自分のクラスの戸が閉まる音でも聞いたのか、視線は自分のクラスへ、教室から出ていく日直のA子を見て教室に誰もいないのを確信した。
人の視線から逃げるように教室に飛び込んだ瞬間、限界が訪れた。制服はわからないけど下着への被害を残して、教室の後ろで失敗を犯した。
彼女は慌てた、失敗を処理していては授業に遅れる、事情も何も話していないからもしかしたら探しに来るかもしれない。
バレたくないという思いから彼女は水たまりをそのままにして、体育館へ向かう決断をする。
だけど、最後に教室を出たはずのA子より遅くなってしまえば犯人は自分になってしまう……そう考えたD子は教室で下着を脱ぎ、体操着に着替えた。
更衣室には寄らずに、一目散に体育館へ急ぎ、日直より早く体育館へ到着できたというわけだね
そして、まゆが言ったそわそわしてた理由はさっきも言った通り下着を付けていなかったから
トイレへ抜けたのは保健室に下着を調達に行くためと、更衣室へ制服を置くためだったというわけ
更衣室へ置いた制服はどこか近くに隠してあった自分のだったのか、保健室で調達したものだったかは謎だけどね」

「待って下さい、D子さんは教室でA子さんがジャンプしたりして黒板を消していたと言ってます
A子さんが言うように踏み台を使う可能性があるなら、そんな具体的な表現は危険です!」

「……具体的な表現だからこそ信憑性が増す、それに……まゆ、貴方は探偵側の生徒ではなかったんでしょ?」

「え? あ、うん」

「……にも関わらず、まゆが聴取内容を知ってるのは、クラスの皆がいる場で事情聴取が行われたという事
本来一人ずつ個別でしなきゃいけないはずの事情聴取を皆がいる場でしたことで、後の人は話を合わせるということが可能だったという事」

弥生ちゃんは目をぱちぱちさせて驚ていて、まゆは神妙な顔でなぜか黙っていた。
朝見さんは後ろを向いていてよくわからないが、もしかしたら真相に気が付いてヒントを言ってくれたのかもしれない。

「……多分、D子はただ自分の失敗を隠すためにしたんだろうけど……結果としてA子に罪を擦り付けるみたいになったんだろうね……
不本意な形でA子を貶めてしまったD子は手紙を出さずにはいられなかった……犯人と名乗り出るのは流石に勇気がいるからね」

「これで事件は解決ね……」

後ろを向いていた朝見さんは自分の席に戻る。
時計を見ると昼休みはあと僅か。

「あっ! 私お手洗いに行ってきます」

弥生ちゃんは昼休みが残り少ないことに気が付いて慌てて教室を出て行った。

「あやりん、ありがとね」

まゆの感謝の言葉。

「……どういたしまして」

私も短く返した。

568事例13「容疑者の一人」と安楽椅子探偵。-EX-:2017/11/02(木) 01:27:20
**********

「ごめん、今日は先に帰って、私ちょっと用事があるからさ」

私はあやりんと弥生ちゃんにそう声を掛ける。

「……ん、わかった」「それじゃ、また明日」

あやりんと弥生ちゃんが教室を出て、他の生徒も教室から出ていく。
そして、教室には私ともう一人が残る。
私が用事と言ったとききっと彼女もそれを察したのだろう。

「どうして協力してくれたの……呉葉ちゃん」

自分の机に頬杖を付いていた彼女がそれをやめて、机に視線を向けながら答える。

「白鞘さんにはずっと悪いと思ってたから……」

白鞘とはA子――白鞘英子(しらさやえいこ)のこと。

「私もごめん……まさか呉葉ちゃんが犯人とは思ってなくて……」

なんだか私、いつも呉葉ちゃんにとって余計な事をしでかしてる気がする……。
今にして思えば、別の場所や学校外でそういう話をすべきだった。

「気にしないで……謝らなければいけないのは、私が英子に対して…だと思うから……」

……。
英子ちゃんの話を聞いて、私は少し自己嫌悪していた。
当時の私は、何度も釈明する彼女の事を全く信じていなかった。
周りは優しくしてくれてはいたが、何度釈明しても優しく諭される……その遣る瀬無い気持ちと言ったら計り知れない。
だから私は、罪悪感から早く解決したいって気持ちばかりが先走りD子が――呉葉ちゃんが真犯人だという可能性を見落としていた。

「雛倉さんの推理……、大体合ってた。強いて言うなら、トイレの場所を変えなかった理由くらい」

――理由……なんだろ?

疑問に思うが呉葉ちゃんはそれ以上続ける気がないみたいだった。

私から声を掛けるべきか迷っていると小さくため息が聞こえてきた。

「……別に罪を擦りつけたいとか思ってなかった……。
だけど、結果的には最低な事してて……その晩気持ち悪くて一睡もできなかったわ」

何を言っていいかわからず私は口を閉ざす。
呉葉ちゃんは真面目で正義感が強い子だった。
だけど気が弱くて、行動力がなくて、人見知りで。

英子ちゃんにしたことは結果的に正義とはかけ離れた行動。
もし呉葉ちゃんに勇気があれば、彼女の正義感から間違いなく犯人は私だと名乗り出ていたはず。
それが出来ない自分を責め続けて……、彼女が出来る精一杯があの手紙で。

「ねぇ、黒蜜さん」

「……なに?」

「白鞘さんの連絡先……教えて、くれない?」

少し自信なさげに、でもハッキリと聞こえる声で言った。
私は小さく笑いながら言った。

「うん、いいよ……」

大丈夫……。
英子ちゃんのあの様子だと、今はそれほど気にしてない。

「許してくれるよ、きっと――」

おわり

569名無しさんのおもらし:2017/11/02(木) 22:38:48
この事件が追憶で書かれたら語られなかった謎もあきらかになるのかな

570名無しさんのおもらし:2017/11/03(金) 13:26:35
更新ありがとうございます。毎回楽しみにしてます。

D子の説明でまゆが声を潜めてたのはそういうことだったんですね。
でも、彼女が列に残ったのは何でだったんだろう?
性格的にも状況的にも利用者が少ない方に行きそうなのに。
B子やC子も実はキーパーソンなのかな。

571名無しさんのおもらし:2017/11/04(土) 00:32:01
いやぁ読ませる文章は書くわ
可愛い絵は描くわで最高だよあんた
今回みたいな推理ものでありながらもちゃんとおもらしを軸にしてるのはすげぇなとしか言えねぇ
これからも自分のペースで作品あげてください

572名無しさんのおもらし:2018/01/26(金) 23:49:03
新作希望

573事例の人:2018/03/18(日) 23:51:12
もう3月だった・・・
事例13の続き(追憶)になります
次回は事例14ではなく諸事情で飛ばして15の予定ですが更新は結構先になると思います

574追憶5「朝見 呉葉」と事件の真相。1:2018/03/18(日) 23:53:35
  「えっと、もしもし?」

見知らぬ番号からの連絡に疑問符を付けた白鞘さんの応答。
私はそれに気まずく、用意していた言葉を返す。

「えっと……中学同じだった朝見呉葉……だけど……」

  「え? ――あー、1年の時、確か同じクラスだったよね?」

クラスが同じだったのは1年の時だけ。
私を覚えていたのはきっとあの事件で同じ容疑者だったからだろう。
そんな私がなぜ連絡先を知っているのか疑問に思うのは容易に想像が付くので、先回りして連絡先を得た方法を答える。

「そ、そう。…その、黒蜜さんから連絡先……教えて貰って」

  「そうなんだ、それで――あ、もしかして例の事件の真犯人だったのを隠しててごめん――っ的な話?」

「っ! そ、その通りなんだけど……どうして?」

どう切り出そうか色々考えていたのだけど、あちらからとは想定外。
そして、なぜか彼女は私が真犯人だと知っている口振り……。

  「いやー、タイミング的に真弓ちゃんが解いちゃったのかなって思って……その、ごめんね?」

昨日の今日であの事件の関係者――というか、容疑者からの連絡。
そこから察したという事……だけど、それよりも――

「なんで……謝るのは私だと…思うのだけど」

そう、謝るのは私。
まだ謝れていない……それなのに、どうして彼女が謝る必要がある。

  「んーえっとさ、私、真弓ちゃんにちょっとあの事を愚痴ったみたいになっちゃったから……
  今更、犯人捜しみたいなことになってたなら嫌な思いさせちゃったかなーって思って」

――自分が犯人にされたというのに……この人は……。

私は彼女の優しさに感謝しながらも少し呆れた。
悪いのは元を辿れば私のはずなのに……――謝らないと……。

「いや、ですから……その、あの時ちゃんと私が名乗り出なかったからで、だから――ごめん…な、さい」

もっと丁寧に謝りたかったはずなのに、少し流れに任せてしまった。
それでも、ちゃんと…言えた。

575追憶5「朝見 呉葉」と事件の真相。2:2018/03/18(日) 23:54:08
  「うん、わざわざありがと。もう気にしてないし大丈夫。そりゃ前に犯人が朝見さんかもって聞いたときは驚いたけど……」

――……え? 前に犯人が私かも…って?

今までの話の流れから黒蜜さんが既に伝えていた可能性はまずない。
それに“朝見さんかも”という言葉から“前”と称されたその時点では私だという確証は得られていなかったと考えられる。

……。

「……前に聞いたって誰かから聞いたんですか?」

結局、考えても結論が出そうになく、かと言ってそのまま聞き流すことも出来ず単刀直入に聞くことにした。

  「え? あ、うん。香澄ちゃんに聞いたけど、朝見さんが犯人の場合アリバイ工作――っていうのかな?
  そこまではわからなくて、私としては全然信じてなかったんだけどね」

香澄と呼ばれた人物に初めはピンと来なかったが
黒蜜さんの言うところのC子に当たる人物、確か彼女の名前が香澄――紺谷 香澄(こんたに かすみ)だった。

「……えっと、アリバイ工作なんてものじゃ――いや、結果的にはそうなんだけど……。
でも、どうして犯人が私なのかもって…紺谷さんはわかったんですか?」

  「え? あはは、気を悪くしないでね。わかったっていうよりも、私じゃないなら朝見さんかもしれないねって程度の話で
  香澄ちゃんは朝見さんの様子的に体育後半まで持つようには思えなかったってさ」

――様子的にって……っ! お、お手洗いに並んでる時!?

仕草は極力出さないようにしてはいたが、限界だったし、後ろの紺谷さんにはやっぱり切羽詰まってると思われていた……。
私は右手を額に当てながら力なく口を開く。

「そ、そう……」

  「それで、真相はどうだったの?」

……。

「……余り言いたくないんだけど……」

  「うーん、じゃあ、許す条件が話す事って事でどうかな?」

――じゃあって何よっ!

まさか急にこんなことを言い出すとは……。
だけど、それを言われると言わないわけにはいかない。
嘆息しそうになって私は静かに鼻から空気を出す。

「どこから――」
  「我慢する経緯からでお願いしまーす!」

……。

変な事言わずにさっさとアリバイ工作の話から始めればよかった。
私は今度は明らかに聞こえるように嘆息してから、顔が熱くなるのを感じながら渋々話を始めた。

576追憶5「朝見 呉葉」と事件の真相。3:2018/03/18(日) 23:54:45
――
 ――
  ――

トースト、ハムエッグ、コーンスープ、牛乳。
今日の朝食は珍しく洋食。

「ごめんね、お味噌切らしちゃって」

母は私に謝る。
この謝罪の意味は、ただ、いつもと同じものを用意できなかった事に対するもの。
私は別に洋食が嫌いなわけではないのだから。

「ふう……」

コーンスープを飲み込み一息……ゆっくり食事をする。
和食の時と違って時間の進み方がなんだか遅く感じ……――あれ?

時計を見ると秒針が40秒のところを上ったり下ったり……。

「ねぇ、今何時?」

「え? 時計を見れば――あら、電池切れ?」

母はそう言うとテレビの電源を入れた。
左上に見えた時刻に私は慌てて立ち上がり、残っていた牛乳を飲み干して慌てて準備を始める。

「い、いってきます!」

私は家を出て自転車に乗って学校へ向かう。
赤のリボンだけは髪に結んできたが、その髪もいつもと比べれば少し跳ねてる気がする。
それに、お手洗いも済ませられなかった……。

いつも家で済ませて、学校で1回か2回、利用者の少ないお手洗いを利用する。
今日は2回は確実、もしかしたら3回……。
利用者の少ないお手洗いと言っても全く利用者がいないわけじゃない。
居たら何食わぬ顔で、廊下の掲示物をみたりしてやり過ごす必要があるわけで……。

大きくため息を吐きたいけど、自転車を急がせる私は既に息が上がっていて……、心の中でため息を吐いた。

577追憶5「朝見 呉葉」と事件の真相。4:2018/03/18(日) 23:55:19
――
 ――

1時限目の授業が終わる。
朝、遅刻は免れたが、時間的に利用者の少ないお手洗いへ行くことは出来なかった。
そして家で解消されなかった仄かな尿意は今ははっきりと感じられる。

――昇降口近くのお手洗いなら大丈夫?

あと候補としては視聴覚室近くのお手洗いもあるが、あそこは近くに掲示物がなく、他に人がいるとやり過ごすには通り過ぎるしかない。

私は机の物を片付けて廊下へ出る。
友達の居ない私がどこへ向かうのか……自意識過剰かもしれないが、気になる人もいるかもしれない。
昼休みならだれも気にも留めないだろうけど……それまで我慢するのは流石に厳しいと思う。

廊下に出ると教室棟のお手洗いには短いが行列が出来ていた。
朝のホームルームで先生が言っていた事を思い出す。
ここのお手洗いは故障で、今、個室が一つしか使えないらしい。
しばらく前から四つある個室の内一つが故障していたが、どうも配管関連の故障があったらしく昨日同時に二つ使えなくなったとのこと。
修理は週末に行うらしくしばらくはこのままで、我慢できない場合は2階のお手洗いを使うようにと言っていた。

――そもそも、私には関係のない話なんだけど。

普段からここのお手洗いを使うことはないし、2階の上級生のお手洗いを使うなんて出来っこない。
私は行列の出来たお手洗いを通り過ぎて昇降口の方へ向かった。

誰もいないことを期待して辿り着いた昇降口。
だけど残念ながら先客が入っていく姿を目にする。
私はお手洗いへの歩みを止めて、昇降口の掲示物の方へ身体を向ける。
気が付かれないよう視線だけをお手洗いの方へ。

――さっき入っていった人が出ていけば、入れるかな?

それまでは掲示物を本当に見て時間でも潰せば良い。
部活の勧誘、何を伝えたいのかわからないポスター。

「それでさー――」「へーそうなの?」

後ろを通り過ぎる生徒。
私は気が付かれないようにその人たちを視線で追う。

――ってお手洗い入っちゃった……次は私なのに……。

次と言っても、こんなところで掲示物を眺める私に順番なんてものはない。
それにしても、ここのお手洗いを利用する人が3人もいるなんて珍しい。

最初の人が出てくる。
あと二人出てきたら、今度こそ私の番。

済ませた人が私の後ろを通り過ぎる。
同時に反対側からまた一人生徒が通り過ぎていく。

578追憶5「朝見 呉葉」と事件の真相。5:2018/03/18(日) 23:55:48
――あ、あれ? あの生徒もお手洗いに?

また一人私の順番を飛ばしてお手洗いへ……。

どうしてこんなにここのお手洗いを使用する生徒が多いのか。
いつもならこんなことないはず……。

考えているとまた一人後ろを通る生徒。
皆私と同じ1年……――あっ……そっか…あっちが混んでるから……。

私は考える。
こっちに来たのは失敗だったかもしれない。一部の生徒が教室棟のお手洗いを並ばず、こっちに流れ込んできている。
それなら、今からこの棟の2階にある視聴覚室近くのお手洗いへ行く?

また一人生徒が後ろを通り過ぎるのを見て私は掲示物から離れ2階へ向かう。
階段を登り終えるとお手洗いが見える。近くには誰もいない。
私はお手洗いへ歩みを――

――っ! 出てきたっ!

お手洗いから人が出てきて私は咄嗟に歩みを前に――廊下へ向ける。
そして、出てきた人も私と同じ方へ進路を向ける。

――あぁ、お手洗いから離れちゃう……。

休み時間も残り少なくなってきた。
このままこっち側の階段を下りて教室へ戻るほかない。
我慢はまだできる――次の休み時間はまずこっちへ来て必ず済ませないと。

結局何もせず、教室の自分の席に腰を下ろす私……何してるんだろ。
昇降口の掲示板を見て、しばらくして2階へ移動そのまま廊下を進み反対側の階段を下りて教室へ戻る。
もし私の行動を観察していた人がいるなら不審者以外の何物でもない、意味の分からない行動だっただろう。

下腹部から主張してくる存在感。次の休み時間はちゃんと済ませないと……。
私は視線を自身のお腹へ向けて、ゆっくり目を閉じ、ため息を吐いた。

579追憶5「朝見 呉葉」と事件の真相。6:2018/03/18(日) 23:56:53
――
 ――

――次の休み時間まで……あと10分。

割としたい。早く済ませたい。
下腹部が軽く膨らんでるのがわかる……尿意が大きくなってきてる。
それは、それなりに差し迫ったものになっていて……。

――でも大丈夫、まだ我慢は十分できる……あと3分……。

仕草もまだ出すまでもない。十分我慢できる。

普段お手洗いに行くには遅すぎるくらい溜まってはいるけど、昔とは違う。
あの頃と違って我慢することにはそれなりの自信がある。
仕草に出さないのも多分得意な方。

誰にも知られず、利用者の少ないお手洗いで済ませて、何事もなく教室に戻って来たらいい。

<キーンコーンカーンコーン>

チャイムが鳴り授業の終了を告げる。
日直が号令を出して黒板を消し始める。
私はまだノートに写していなかったところを慌てて書き込み、教科書や筆記用具を片付ける。

――っと、向かう先は視聴覚室近くの2階のお手洗いっ!

私は立ち上がって教室を出る。
焦らず平静を装いまずは渡り廊下を使ってあっちの棟へ。
この前の休み時間とは逆のルートで視聴覚室近くのお手洗いを目指す。

渡り廊下を越えて階段を使い2階へ上がり、お手洗いのある方へ視線を向ける。
お手洗いは反対側の階段に近い位置にあるが、今のところ廊下には誰もいない。
さっきの休み時間は1時限目に移動教室があったはずだから、利用する生徒が居たわけであり
今日は2時限目と3時限目にこの辺りの特別教室を使う生徒は居ないはずなので、私のような稀有な人がいない限りは大丈夫なはず。

――“はず”ばっかりだな……だけど、よし……もうすぐ――

「こっちだよ」
「うぅーやばいー」
「あはは、わざわざこっちのトイレ使いに来なきゃダメとかギリギリかよー」

――っ!!

お手洗いに入る直前、階段から足音と声が聞こえてくる。
このまま見つかる前に個室へ入るべきか、やり過ごすべきか迷い歩みが止まる。

――っ、だ、ダメ、もう見られるかも!

迷いなく歩みをお手洗いの中へ向けていれば個室へ入れたはず。
だけど、迷いがその判断を遅らせて階段から駆け上がってくる足音はもうそこまで来ていて……。

私は足音がする方へ自ら歩みを進め、駆け上がってくる生徒とすれ違う。

580追憶5「朝見 呉葉」と事件の真相。7:2018/03/18(日) 23:57:35
「はい、先にどうぞー」
「ごめーん」『やばい、早くっ! でちゃう!』
「先にしないともらしちゃうもんねー」『もう、本当かわいいなー』

――っ!。

不意に聞こえる主張の大きい『声』。それと……我慢してる生徒を見て興奮を含んだ『声』。
前者は本当にギリギリの『声』だった。

私は階段を下りる。
視線を昇降口の方へ向けると、廊下に2人ほど並んでいる。
どうやら、これが我慢できず2階のお手洗いへ向かったらしい。

……。

今度は視線を上に向ける。
さっきの『声』のためか、鼓動が早くなってる……。
あんな目で見られるなんて想像もしたくない。

私は深呼吸をして視線を下ろす。
結局上の個室へ入っていたとしても、音を聞かれたり出るところを見られてたりしたわけだから
選択を間違ったとは思わない……だけど――

――どうしよう、どこのお手洗い……。

2階のお手洗いは個室の数が少なく2つ。
3人向かっていったから完全に使用者が居なくなるまで4〜5分後くらい。

「わ、昇降口のも混んでるよ……上いく?」
「そだね、上いこっか?」

階段を上がっていく二人……。これで上は個室2つに5人……5〜6分の順番待ちくらい。
休み時間の10分は既に2〜3分ほど消費されている。
上の階のお手洗いを使うという選択は難しくなった。

――……た、体育館の……1年はこの時間と次の時間体育ないけど……。

他の学年までは把握しきれていない。
だけど、私のクラスは4時限目が体育だが、全生徒共有である更衣室に上級生が残っていたことは今まで一度もない。
つまり次の時間に体育があるクラスは存在しないことになる。
更衣室での着替えの問題上、体育の授業は5分ほど早く終わるからさっきまで体育の授業があったとしても
既にお手洗いを終えて更衣室の中、もしくは着替え終えているということになる。

――うん……よし、体育館にしよう。2階はまた人が行くこともあるかもだし……それに――

あの『声』は嫌い……。
私は昇降口とは反対側へ歩みを進め体育館へ向かう。

――また私、変な行動してる……さっきはこの上を反対方向へ歩いてたのに……。

入学当初は他のクラスの時間割がわからず、苦労したこともあったが
今は何時、どこのお手洗いが利用者の少ない場所かある程度見当が付く。
だからこそ、今回のようなことは稀で――だけど、今回も大丈夫……間に合う。

廊下を進み体育館へはもう少し。
此処の階段の横を過ぎれば――

581追憶5「朝見 呉葉」と事件の真相。8:2018/03/18(日) 23:58:15
「わっ!」

――っ!

突然、身体に軽い衝撃を感じて私はよろめく。
それと同時に聞こえた声と散らばるプリント。

……状況は、とりあえず把握できた。

「あちゃー……って呉葉ちゃんじゃーん!」

状況は理解してはいたが、私に呼びかける声に聞き覚えがあり視線をその声の主へ向ける。

「っ! 黒蜜さん……」

教室棟への渡り廊下から出てきて私とぶつかったのは、同じクラスの黒蜜さんだった。

――でも、どうして、黒蜜さんがプリントを……?

彼女は日直でもないし、提出するようなものは出ていなかったはず。
私は廊下に散らばったプリントに視線を向ける。

「これって、さっきの授業で先生が集めてた……」

それはさっき行われていた授業中に提出した問題プリント。

「そそ、先生集めるだけで置いてっちゃうんだもん」

そう言って黒蜜さんが腰を落としてプリントを集める。

「あ、ごめんなさい、私のせいなのに」

それを見て私も慌てて拾い集める。

「気にしないでよー、私もちょっと考え事してたし、ちょうど出会い頭って感じだったし」

仕方がない、そう続ける黒蜜さん。
早足気味だった私、考え事をしていた相手、ちょうど出会い頭。
注意してれば避けられなかったわけじゃないが、非があるのはお互い様。

ただ、お手洗いに行きたいがためにうろうろと変な行動をしていた私と
日直でもないのに問題プリントを先生に届ける黒蜜さんとでは使命の質に差があり過ぎる気がするけど。

――でも、良かった……通り過ぎてるのを見られてたら体育館へ向かう所見られてたし……。

「これで最後っと、……えっと、私は19枚だからそっちは16枚あればちょうどかな?」

私は枚数を確かめる。
早く数え終え、これを渡し黒蜜さんが職員室へ入って……――そうしたら体育館のお手洗いへ。
休憩時間の残りはもう4分程度で……時間的余裕はあまりない。
まだ、尿意は限界じゃない。
だけど、早くしないといけないという気持ちが焦りになり、一枚ずつ数える手が上手く動かず逆に時間がかかってしまう。

582追憶5「朝見 呉葉」と事件の真相。9:2018/03/18(日) 23:58:51
「13…14……15枚? あ、あれ?」

「足りない?」

私たちは周囲を見渡す。だけど、プリントらしきものが見当たらない。

「んー、数え間違いかな? もう一度数えてみよ?」

そう言うと黒蜜さんはまたプリントを数え始める。
私も慌てて数え直す。

「こっちはやっぱり19枚だった」

「12…13…14………ごめん、16枚でした」

「よかったよかった、んじゃこれ出してくるねー」

黒蜜さんは笑顔で私が集めたプリントを受け取ると、職員室の方へ向かう。
ぶつかった事にも、数え間違ったことにも嫌な顔一つせず……。
頭脳明晰でスポーツ万能、気さくで人気者でコミュ力が振り切れてるような人。
あーちゃんのように眩しいくらいの人だけど……どこか必要以上に利他的な印象を感じる。
私が友達と言える立場にないからかもしれないけど、どこか薄い壁を一枚隔てて接しているみたいで。

あーちゃんなら、数え間違いに冗談っぽく怒った気がする。
あーちゃんはもう少し自分勝手で、無邪気で……それなのに私にとって正義の味方のような人だった。

……。

――そんな事、思い出してる場合じゃないけど……時間的にもう間に合わないか……。

済ませる時間はあるが、教室に戻るには走ってもギリギリくらいな時間。
数え間違いがなければ、1分程度早く黒蜜さんと別れることが出来たと思うから……――済ませられないのはきっと私のせいだ。

――だ、大丈夫かな? 次の授業……まだ我慢できるし、1時間くらいなら……大丈夫…だよね?

小さいとは言えない不安を感じる……。
だけど、私は不安から目を逸らすようにして足を教室棟への渡り廊下へ向ける。
自覚できる程度にはゆっくりとした迷いのある足取り……だけど、悩んでいても時間は戻らない。

教室に戻り、自分の席へ座る。
下腹部に感じる確かな重さ――それは、解消されていなければいけないはずのもの。

でも大丈夫、きっと――絶対我慢できる……。
じっと座っていれば大丈夫、そんな気がする。
決して我慢できない尿意じゃない。水分も朝以降取っていない。

「はぁ、トイレ混んでたー」
「そう見たいだね、昇降口の方も混みだしてるらしいよ」
「次私たち体育でしょ? 体育館のトイレあるし、わざわざそこのトイレ並ばなくてもよくない?」
「そだねー、二階とか論外だしー」

クラスの元気のあるグループからお手洗いに関する話題が聞こえる。
体育館のお手洗い……さっきはあれほどまでに使いたいと思っていた。
だけど次の休み時間、きっとクラスメイトの数人、もしかしたら十数人がそこを利用するかもしれない。
順番が回ってこないということは恐らくない。けれど、それなりに混み合うのは間違いない。

――使えない……使いたくない……けど。

使えないわけじゃない。
使わなければいけないなら、使うしかない。

皆が使うトイレ……私はそこにいる“皆”の内の一人……気にする必要なんてない。

<キーンコーンカーンコーン>

気持ちが憂鬱に沈む中、授業開始を知らせるチャイムが鳴った。

583追憶5「朝見 呉葉」と事件の真相。10:2018/03/18(日) 23:59:26
――
 ――
  ――

  「ぷっ、ちょ、なんで朝見さんの学校生活、トイレの使用がハードモードなの? くっ、ふ、あははっ」

携帯の向こう側で、笑いながら質問してくる。
当時の事を思い出しながら話す中、私が人目を避けてトイレに済ませていることを話してしまったせいで……。

「……切ります」
  「わー、ごめん、――って言うか全然真相までたどり着いてないじゃん、我慢する経緯だけじゃん!」

恥ずかしいのを我慢して、そこから話してほしいと言われた我慢する経緯。
それを“我慢する経緯だけ”って言われ、半ば冗談を交えて切るといった言葉を一瞬本気で考える。
だけど、白鞘さんは当時私のせいでもっと辛い経験をしてしまったわけで……私の話で気が少しでも晴れるのなら話を続けるのが道理。
それに……これは私の身勝手な理由だが、自分自身を許す為でもある。

  「ねぇー話してよー」

「わかったから……お願いだから余計な突込みとか言わないで、は、恥ずかしいから……」

私は深呼吸して気持ちを落ち着ける。
ちゃんと話して、許して貰って……ちゃんとケジメを付けないと。

私は再び当時の事を思い浮かべて、言葉を選んで話を続けた。

584追憶5「朝見 呉葉」と事件の真相。11:2018/03/19(月) 00:00:18
――
 ――
  ――

――これ……間に合うよね?

少しずつ我慢が辛くなって来ていたが、なんとか大丈夫だと感じてもいた。
だけど、授業が始まって35分を過ぎてから急激に尿意が膨れ上がって……。

――したい……お手洗いに…おしっこ……したい。

もしかしたら我慢できないかもしれない。
そんな、思いが込み上げる。

――だめだめ……そんなの……――だったら…先生に?

そう、手を上げて言えばいい。
お手洗いに行かせてくださいと言えば何も心配はいらない。

――……そんなこと出来るなら……今、こんな辛いことになってないっ……。

人気のないお手洗いを選ぶ私なんかが、そんな恥ずかしい申告を出来るわけない……だから、ちゃんと我慢するしかない。
そう自分に言い聞かせて腰を小さく揺すり、椅子にその欲求を宥めてもらう。
一番後ろの席とは言え、隣には手を伸ばせば届きそうなところにクラスメイトがいる。
下手な我慢の仕草が出来ない。しちゃいけない。

手で押さえたい。押さえつけたい。
机の上で握る手をもう片方の手で抑え込む。

「っ……」

不意に感じる尿意の波。押さえたい手を必至に机の上に止まらせる。
だけど、波は大きくなり続け、ただ我慢に集中するだけじゃ抑えが効かなくなる。

――っ……だめ、落ち着いてっ、我慢…がまん……うぅ……。

伸ばされていた背筋が前に傾く。力を籠めるために顔が下を向く。
それでも間に合わず、足を不自然に絡ませて小さく震わせる。

――あ……っだめ、我慢して、我慢……こんなの…我慢してるってバレちゃう……お願いだから治まってよっ!

その気持ちが通じたのか波はどうにか引いてくれた。授業の残り時間は6分……。
だけど、もう限界が近い……早く授業を終えて、体育館のお手洗い――っ……待って?

気持ちが先走りしたことにより気が付いた。
体育館のお手洗いに行く前に更衣室で着替える必要がある。
そうじゃないと、私だけ我慢できないから先にお手洗いに行くみたいで……そんなの許容できることじゃない。

――だ、だったら……どうする? 更衣室に行ったとして……普通に着替えられる?

今にもスカートの前を押さえてしまいそうな机の上の手……それに視線を向けながら真剣に考える。
だけどそれは考えるまでもないこと。
今の状態で平静を装い着替えたり出来ない。身体をくねらせながら着替える恥ずかしい姿しか想像できない。

――それなら…やっぱり昇降口かその上の視聴覚室前のお手洗い……でも……。

これまでの休み時間の経験から、走っていかないと結局順番待ちの可能性がある。
お手洗いまで走る……それじゃ駆け込むところを見られたら限界って言ってるようなもの――そんな姿見られるなんて絶対に嫌。
それに廊下を走るのは校則違反、万が一先生に咎められ、足止めを受けたりしたら……。

……。

万が一じゃない。
昇降口のトイレへは一年の教室を4つも超える必要がある。
授業が終わった直後でそのすべての教室から先生が出てくるのは容易に想像が付く。

585追憶5「朝見 呉葉」と事件の真相。12:2018/03/19(月) 00:01:03
――……視聴覚室のお手洗い、さっきの時間通ったルートなら……
いや、結局ダメか少なくとも今此処で授業をしてる先生には走ってるの止められるはず……。

厳しいことでそれなりに有名な先生……引き留められないはずがない。

私は小さくため息を吐いて時計を見る。
もうすぐ授業が終わる、待ちわびていたこと……だけど、どう行動すべきか決まっていない。

私は意味もなく視線を彷徨わせる。
そんなことをしても答えが見つかるわけない……。

――? あれって白鞘さんだよね?

前の席で落ち着きがない生徒を見つける。
彼女は白鞘英子……その動きにピンと来て私は意識を『声』に集中する。

『っ……トイレ…おしっこ……早くしないと、ほんとにやばいよ……』

微かに聞こえる主張の大きい『声』。
それは私が想像していた通りのもので、私と同じかもしかしたらそれ以上に切羽詰まったもの……。
白鞘さんはどうするのだろう……恥を忍んで2階のお手洗い、着替えずに先に体育館のお手洗い。
私と違って選択肢は多いのだろうけど……。
もしかしたら、彼女の行動に私が探している答えがあるかもしれない。

<キーンコーンカーンコーン>

チャイムが鳴り白鞘さんが起立の号令を言う。

――っ! ……これ、思ってたよりずっと……いっぱい……。

背筋が確り伸ばせない。それほどまでに下腹部に沢山の……。
私は視線を白鞘さんへ向ける。彼女は机に手を付き前かがみの姿勢。……私よりも辛そうに見える。

「礼っ」

彼女のその言葉に私を含めたクラスメイトが皆礼をする。
その直後、誰かが駆け出す音がして私は顔を上げる。
呆気に取れる先生を尻目に、教室の前の扉から廊下へ飛び出したのは号令を掛けていた白鞘さんだった。

『間に合うっ! トイレ、早くしないと順番待ちになっちゃう!』

廊下……私がいるすぐ横を駆けていくとき『聞こえた』。

――そうだ、教室前のお手洗い! 授業が終わった直後なら並ばずに済む!

それに私の席からお手洗いは非常に近い。他のクラスの人が同じように急いだとしても距離的な有利がある。
……先入観から此処のお手洗いは使えないと思っていた。
私も慌てて机の上の教科書を纏めて引き出しに入れる。

586追憶5「朝見 呉葉」と事件の真相。13:2018/03/19(月) 00:02:01
<ガシャ>

――っ!

引き出しに入れるはずの筆記用具が音を立てて床に落ちる。
大きい音ではなかったが近くのクラスメイトがこちらに視線を向ける。

私は慌てて、でも下腹部が圧迫されないように慎重に屈む。
チャックを閉めていなかった為、筆記用具入れの中身が散らばっていて……。
こんなことしてたらダメなのに、順番待ちになっちゃうのに。
それでも、これをそのままにしてお手洗いに走るなんてこと恥ずかしくて出来ない。
拾っている間も、尿意は膨らみ踵を使いさり気無く押さえて……こんなに我慢してるのに。

全て筆記用具を拾い集め、筆記用具入れに詰め込み、引き出しにしまい……その動作の一つ一つはほんの些細な時間。
だけど、廊下に出たときにはお手洗いに入っていく人が一人二人……私はその後ろに並んだが、結局私は4番目。

――白鞘さんは個室の中……っ、すぐだったら……筆記用具を落としてなかったら、私がその…次だったのに……。

足踏みしたい。
手で押さえたい。
屈んで踵で押さえたい。
歩き回っていたい。

……。

だけど……だめ。抑えて……平気な顔して並んで……。
自分自身に言い聞かせる。前に3人なんて大した数じゃない。
一人2分掛かるかどうか6〜7分後には個室の中。
朝からずっと我慢出来て来た、さっきの授業も切羽詰まってきていたけどなんとかなった。

――あと少し……っ! あぁ、したい……おしっこ……我慢……しなきゃ、なのに……なんで……。

もう少し、あと少し。
だけど、だんだんと尿意が膨れていくのがわかる。
それは思っていたよりも遥かに早い感覚で限界に近づいていく。
さっきまでは座っていたから落ち着いていられただけ。
今は立っていて、視線があって思うような我慢の仕草が出来なくて……もうすぐって油断もあって。

「あー、やっぱり……」

私は背後で聞こえた声に身体を強張らせる。

「ねぇねぇ、朝見さん?」

私を呼ぶ声……私は少し俯いて視線を合わせないようにして振り向きその人を確認する。
それは確か同じクラスの――えっと…紺谷香澄さん? だった。

「えっと、この行列我慢できる?」

「っ!! だ、大丈夫ですっ」

突然の言葉に私は焦りそう返して逃げるように視線を前に向ける。

「そ、そっか……」『はぁ、やばいな……割と漏れそうだよ……』

――え……『声』が…紺谷さんも……?

だけど、そんなこと心配してい場合じゃない。
『漏れそう』と表現しているが、私の尿意とは比べるまでもない程に余裕がある。

「うーん、私別のトイレいくわ」

そう言って後ろから私の肩を一回軽く叩いて列を抜ける。
私は少し前に言った彼女の言葉の意味を理解した。

たぶん……他のお手洗いに一緒に行こうって……そういうつもりで言った言葉。
それに対して私が返した言葉は、きっと紺谷さんにとって断りの言葉だった。

――だ、だからって…言い方……っ、一緒に、行くべき……だったのかな?

587追憶5「朝見 呉葉」と事件の真相。14:2018/03/19(月) 00:03:03
ようやく個室の扉が開き、白鞘さんが出てくる。
あと私の前に二人……。

「っ……」

急な波に足が震える。前には二人――あと二人なのに……。
幸いなことに後ろに新たに並んでくる人はいない、前の人はこっちを見ていない。廊下にいる人もそれほど多くはない。

――……っだめ…ダメなのに……。

足をクロスさせたり小さく腰を揺らして……そしてさり気無く手をスカートの前に持って行って……。
そのままその手でスカートに谷を作り、そして指先を持ち上げるようにして押さえて……。

あと少し。
波を抑え込んで、落ち着かせて……。
ほんのわずかな時間だけ押さえて――そのつもりだった。

――……や、な……なんで……早く、お願い、治まって……早くトイレ…おしっこ……っ…。

離せない。離せば溢れてしまうかもしれない。
こんな……はしたない恥ずかしい姿……続けたくないのに、見られるかもしれないのに、嫌なのに。

「えー並んでるじゃーん」
「どうする? 次私ら移動教室だから時間ギリギリかもだけど」

廊下で話す声が聞こえる。
手を離しかけるが――だめ、まだ離せない。
でも、後ろからなら……多分押さえてる所なんて見えないはず。

「昼休みでいいや」
「さっきの時間も行けなかったんじゃないの? 大丈夫?」
「えー、なにそれ? 大丈夫だって、中学生にもなって我慢できないとかありえないじゃん?」

<じゅ……>

――ぁっ……や、嘘? 我慢できないとか……ありえない……ありえないのに……。

それは下着に小さな染みを作る程度の極僅か失敗。
だけど、後ろで喋っていた二人の会話が、そんな私を馬鹿にしているみたいで……。
でも、実際その通り……それは自分自身が一番よくわかってる。

誰かにお手洗いに行くところを見られるのが嫌で、済ませることのできる機会を何度も逃して、我慢できるって過信して……本当に馬鹿……。

<ガチャ>

私はその音に視線を上げる。それは個室の扉が開く音。
そして当然中から人が出てくるわけで、私は前を押さえていた手を慌てて退ける。

588追憶5「朝見 呉葉」と事件の真相。15:2018/03/19(月) 00:03:53
<じゅ…じゅぅ……>

――ぁ……や、だめっ出ないでっ!

手を離したことで抑えが効かなくなり、下着を再び熱く濡らす。
下着だけじゃない、不快な感覚が内腿を一筋……。
私はそれを誤魔化すように足を擦り合わせる。

限界まで張り詰めた膀胱が震え、溢れてくるのを確りと堪えることが出来ない。
視線がある中、手でスカートの前を押さえることが出来ず、ただ真っすぐに下ろされた手は意味もなくスカートの生地だけを握りしめる。
熱く荒い息を漏らさないように出来ているのか自分じゃもうわからない。
周りから見て平静を装えているのかわからない。

個室から出てきた生徒は手を洗い終えて廊下へ。
個室の中に一人入って、私の前には残すところあと一人。

私は再び前を押さえる。
恥ずかしく濡れた下着……それをスカートの上から押さえる行為がスカートも汚してしまうということだとわかっている。
だけど、そうしないと、押さえないと我慢できない……。

下着の水分がスカートに移り、押さえる手に少しずつ湿った感覚が伝わる。
学校で……すぐ近くに人がいるのに……見えていない部分だけじゃない、スカートにまで染みを作り始めてる……。
大変なことをしてしまってる……そう自覚してるのに。

――っやだ、またっ! だめ…来ちゃうっ……んっ!

押さえることでどうにか押しとどめていたはずだった。
それなのに――

<じゅう、しゅぅ……>

スカートの押さえ込まれた部分、手で触れているスカートの生地から熱い感覚が浮き出す。
押さえたまま視線を落とすと押さえている手の周りのスカートが僅かに色を変えていて……自分がしている失敗の大きさを理解するには十分だった。

――ダメだっ…んっ! だめ、間に合わない……もう、間に合って……ない? いやっ、そんなの……。

もう誤魔化せるレベルの被害じゃない。
目の前にはまだ一人いて、しばらくすれば個室からまた人が出てくる。
個室の中では今まさに水を流す音が聞こえる……もう数秒先……私は――

我慢出来ない尿意に焦り、視線を向けられ失敗が――おもらしが見つかってしまう恐怖。
胸が苦しくなり息苦しくなるが、呼吸を乱すことも出来ない。

<ガチャ>

個室の扉が開く音。手を離すことはもうできない。私は咄嗟に身体の向きを壁側に少し変え下を向く。
見られているのか、見られてないのか分からない。……確かめるのが怖い。
直ぐ近くの洗面台で水の音が聞こえ、個室の方では扉が閉まる音がする。

<じゅ……>

そんな短い時間の中でも尿意は膨らみ続けまた溢れ、スカートの染みを更に拡げてしまう。
今、おもらしが見つかったら、声を掛けられたら……その人の目の前で惨めに尿意に屈してしまえば。
その姿が浮かび目の奥が熱くなっていく。

<コツコツ……>

洗面台から離れていく足音。
極度の緊張が解けていくのがわかると同時に涙が床に落ちる。

「(んっ……ぁっ! や、あぁ……これ、もうっ……)」

緊張が解けたためなのか尿意がさらに膨れ上がりこれ以上我慢できなくなる。
膀胱が断続的に収縮して下腹部を波打たせて。

589追憶5「朝見 呉葉」と事件の真相。16:2018/03/19(月) 00:04:38
<ガラガラ>

背後……廊下で引き戸の音がする。その音は――私の教室?
私は震える足を動かし、洗面台の方へ身体を向けて、数歩だけ廊下の方へ歩みを進める。
そこから視線だけを廊下の方へ移すと教室の後ろの扉が閉まっているのが見て取れた。

――と、戸締りっ…?

鍵を閉めるわけではないので余り意味のあることではないが、体育の時は教室の扉を閉じておくことに決まっている。
だけど、私が今気にしているのはそういう事ではなくて。
……教室にはもう日直の白鞘さんしかいないという事。
そして、その白鞘さんももうすぐ前の扉か出て行き、教室が無人になる。

……。

私は個室へ一度視線を向ける。
まだ1分程度は開くのに時間の掛かるであろう場所。
今はその1分が果てしなく遠く、そして開いたとき今個室にいる彼女には私の失敗を知られてしまう可能性が高い。

――だから、教室で……? ちっ、違う! 一時的に視線のない、所に…避難してっ…そ、それから済ませに…戻れば……っ。

「(あぁ、ダメっ)」<じゅ……じゅうぅ……>

再び広がる熱い感覚。スカートもこれ以上水分を吸うことは出来ない……それほどまでに押さえ込まれた前の部分は濡れてしまって。

それでも尚、際限なく高まる尿意に座り込みたくなる。
もし今お手洗いに新たに人が来たら……どうすること出来ない。
この上ない醜態を曝してしまう。

<ガラガラ>

再び聞こえる引き戸の音。ただ、今度は教室の前から聞こえた。
私はお手洗いから顔を出して、その音が白鞘さんの出ていく音だと確認した。

――……んっ、廊下には……人いるけどっ…近くには、居ない…し、……教室に入るくらいならっ……。

私は片手でスカートの前を押さえたまま、自分の教室へ走る。

「はぁ……はぁ…んっ! あぁ……」<じゅう、じゅうぅー…>

押さえる手を超えて手の甲にまで熱水が伝わる感覚。
私は慌てて扉を開けて教室に入り、後ろ手で扉を閉めた。

「あっ、あ、っ…だめっ……」
<じゅ、じゅうぅー…じゅぃー…じゅうぅー――>

【挿絵:http://motenai.orz.hm/up/orz70747.jpg

上半身を前に90度近く倒して必死に押さえてるのに止められない。止め方がわからない。
くぐもった音を響かせ、押さえるスカートに染みを広げ、足に熱い流れを何本も感じて、スカートの中から溢れる雫が教室の床を鳴らして……。

「はぁ……っ、ぁぅ……はぁ……んっ」
<じゅうぅ――><ぴちゃぴちゃ>

お手洗いに戻るなんて、出来るわけがなかった。
ただ、人目を避けること……教室に戻る選択をした時点で、結果は見えていたのかもしれない。
お手洗いで待つ選択。それが出来なかったのはスカートの染みを見られる恐怖や恥ずかしさだけじゃない。
開くまで持ちこたえてる私が想像できなかった……。

590追憶5「朝見 呉葉」と事件の真相。17:2018/03/19(月) 00:05:20
「はぁ……はぁ……っ」
<ぴちゃぴちゃ…>

くぐもった音は止み、水たまりを鳴らす音も静まって……。
教室なんかでしてはいけない、恥ずかしい失敗――おもらしが終わる。

極度の我慢から解放されてふわふわした感覚を感じるが、次第に後悔と悔しさが湧きあがる。
だけど、その気持ちも長くは続かず、すぐにこの醜態が見つかる恐怖に捕らわれる。

――こ、こんなとこ…誰かに見られたら……えっと…とりあえずは――

着替え……この言い訳の効かない見っとも無い姿の解決。
次は体育だったことを思い出し、ポケットからハンカチとちり紙、机の横から体操着入れを机の上に置く。
周囲を見渡した後、濡れたスカートを脱ぎ、下着も迷った挙句脱いで、ハンカチやちり紙で足や靴下などを確りと拭う。

そして体操着をそのまま履いて――――下着なしってなんだか気持ちが悪くて落ち着かない――――上の制服も脱ぎ着替え終わる。
濡れた服は持っていたコンビニ袋に丸めて入れて口を結び、更にそれを袋に入れて二重にする。
そしてそれをカバンの一番奥へ隠すように押し込む。

可能な限り急いで着替えはしたが、僅かな時間でも恥ずかしい姿を晒していたことに不安と情けなさを感じる。

そして――

「……これ、どうしよう……」

自分の机のすぐ後ろに出来た大きい水たまり。
これをどう処理すべきか……バケツや雑巾は教室にあるがそれをもってお手洗いを往復なんて出来るわけもない。
ましてや授業開始の時間も迫っていて先生に見られたら咎められ――……授業開始?

――体育……遅れたらだれか探しにくるんじゃ?

以前、何も言わずに保健室へ行った人がいた。
体育に来ないその一人の生徒を探しに、体育係が更衣室や教室、保健室を探しに行っていた。

私は時計に目を向ける。
授業開始まで残り1分と少し。
これをどうにかしていては探しに来たクラスメイトに見られる可能性が出てくる……。

だからと言って、このままにして体育に向かえば、教室に戻ってきたとき当然これは発見される。
そして、一番教室を出るのが遅かった人、つまり体育に来るのが一番遅かった私に疑いが向けられる。

――どうしよう…どうしよう……。

私が失敗したって誰にもバレない方法。
どうすれば疑いが掛からない?

……。

――っ! そうだ、日直の白鞘さんは自分が教室を出たのが最後だと思ってるはず!

だったら、更衣室に着替えに言った白鞘さんより早く体育館へ辿り着ければ疑いはこちらには向かない。
問題は、間に合うかどうか。
私は一縷の望みに賭け、体操着の袋に被害のない制服の上を入れ、それを持って教室を飛び出す。

更衣室前を通るとき足音を抑え、人の気配を伺う。

――……あれ? 音、微かに聞こえる……。

そうあって欲しいとは願っていたが……それは意外な結果だった。
白鞘さんが教室を出たのは私が教室に戻る前。
つまり私が恥ずかしい失敗を終え、さらに着替えるまでの時間、彼女は更衣室に居たことになる。
着替えは直ぐに終わらせたし、ありえない話ではないが……。

私は白鞘さんが出てくる前にその場を後にする。
手に持った体操着の袋は体育館に行くまでの廊下にある掃除用具入れに居れて
あとは……恥ずかしいけど理由をつけて体育を抜け出し
保健室で下着とスカートを借り、隠した体操着の袋もって更衣室へ置きに行けばいい。

<キーンコーンカーンコーン>

体育館へ着くと同時にチャイムが鳴る。
白鞘さんは――居ない。
更衣室にいたのは白鞘さんで決まり……私は安堵から溜め息を吐いた。

591追憶5「朝見 呉葉」と事件の真相。18:2018/03/19(月) 00:06:21
――
 ――
  ――

「以上……です」

今にして思えば私が視聴覚室近くのお手洗いに行かなかったのは順番待ちとか先生に咎められるとかだけじゃなかったと思う。
意識するのも嫌でなるべく考えないようにしていたが……あの時あの場所で聞いた『声』……使いたくなくなるには十分な理由だった。

「その……白鞘さんに疑いが向くとはその時は考えてなくて……本当にごめんなさい」

私は再び謝る。
恥ずかしさもあり、掻い摘んで話したため時間にしてみれば10分にも満たない話。
事件における重要な所は話せたと思うので……これ以上追及は出来ればやめてほしいところ。

  「なるほどね、――って言うか、……なるほどねー」

なぜか“なるほど”という言葉を続ける。
一回目は納得のいった語調で、二回目のは落胆したような語調。

「えっと……?」

  「え、あぁ、トリックがわかったのと……あぁ、私のミスか〜――って事」

――私のミス?

ますますわからない。
さっきまでの私の話に白鞘さんが気にするようなミスがあっただろうか?

  「聞きたい? ――って言うか、聞いて欲しいのかも……」

「えっとよくわからないんだけど……?」

私の問いに携帯越しでも変わるくらいの深呼吸をして白鞘さんは答える。

  「わ、私も……間に合って無かったのよ…ね」

少し言い淀み、恥ずかしそうに言う白鞘さんの言葉。直ぐには理解できなかった。

  「つ、つまりは個室に入った瞬間に下着がもう、えっと――そう、濡れ濡れだったのよ」

「へ?」

私はようやく彼女の言う意味を理解して――でも呆気に取られた。

白鞘さんはあの日、私と同じく恥ずかしい粗相をしていた。
あの時の彼女は確かにもの凄く切羽詰まっていたし、それ自体あり得ない話じゃない――ないけど。

  「あの時は本当に焦ったわ、トイレは順番出来てきて、中で変に処理してたら感づかれるんじゃないかって思って最低限の事だけして適当に出て来たわ良いけど
  もう本当、どうしようもないくらい濡れ濡れで、教室に戻ってもわざと踏み台使わないように黒板消してみんなが居なくなるまで時間稼いだり
  ジャンプして風入れれば、乾くかなーとか思ってみたり……」

「……ジャンプじゃ無理でしょ……じゃなくて、なんでそんな話をわざわざ……」

話さなければ誰にもその失敗を知られることはないはずなのに。
白鞘さんは一呼吸置いてからさっきまでの勢いに任せた喋り方ではない、落ち着いた語調で言葉を紡ぐ。

  「初めは真犯人に本気で怒ってたけどさ……同じ日の同じ時間くらいにおもらししちゃうとか、考えれば考えるほど可笑しくてさ
  謝罪の手紙も貰ったし、おもらししちゃった同士、変な仲間意識勝手に感じちゃって……その子――朝見さんの事助けられたなら別にいいかなって思えてね」

……。
そう、私は彼女に助けられた。

  「更衣室行く前に保健室で下着を貰いに行ったのも、カバンの中に濡れた下着を隠してたせいで強く反論できなかったのも
  それが、誰かの為になったって思うとまぁ、少し腹が立ったけど、なんだか気が楽だった」

保健室で下着……。白鞘さんは更衣室に長くいたわけじゃなく、先に保健室へ寄っていたから……。
反論だってそう。そもそも皆が着替えた後三人が誰にもすれ違わず入れ替わりに着替えるのは不可能ではないとは思うが時間的に厳しい。
授業が始まる直前には更衣室に居た白鞘さんは誰かが嘘を付いているって思っていてもおかしくなかった。
それでも反論材料には弱いそれで強く反論すれば探偵役の人たちを煽ることになり、持ち物検査なんてことを言い出しかねない。

592追憶5「朝見 呉葉」と事件の真相。19:2018/03/19(月) 00:06:44
  「でも、仲間意識感じてたのって、私だけじゃない? だって知らなかったでしょ私がおもらししちゃってたって
  ほかの皆が事実とは違うにしても私がおもらしをしたって思っていたのに、貴方だけはしてないって思ってた」

……。

  「だから決めてたの、名乗り出てきたら必ず自分の失敗も言おうって、本当は私も仲間だったって」

「……良い人過ぎない?」

  「あはは、もっと崇めてよ
  まぁ、おかげで、誰かのこういう話を聞いて楽しめるようにもなったし」

「そう――って、楽しむって…え?」

なんだか、感動する良い話のようにまとめられたけど、最後の言葉に引っかかる。

  「え、だから我慢とかおもらしの話。こんな事件あったから余計に考えちゃって、なんか気が付いたら好きになってたよ」

……。
つまりは私に我慢の経緯から話をさせたのは――

「――へ、変態じゃない!」

  「まぁ、そうかも。朝見さんのおかげでねっ」

「っ……!」

そのことに関しては後ろめたいことが多すぎて言い返せない。
私に我慢の経緯から話をさせたのは変態的な理由なのに……。

……。
わかってる、それだけじゃないって……。

白鞘さんが自身の失敗を語るとき恥ずかしがっていた。
話し始めても妙に饒舌で、勢いに任せて話していた。
言う勇気が足りなかったから、先に私に語らせた。

白鞘さんは「私と同じだよ」って私に伝えたかったわけで……。
変態的な理由はあるのだろうけど、概ね私のためにしてくれた行動。

――ありがとう……。

口にはできなかったが、心の中でそう呟いた。


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