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短編小説

2:2013/07/05(金) 18:34:48 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―届かない―」前編



朝日が眩しくて目を開けた。

あれ……?あたし寝てたんだっけ?

すぐ傍には元気のないあたしの彼氏の蒼甫の姿。

「蒼甫?どうしたの?」

ここはワンルームの彼の部屋。床にはあたしのバックや部屋着の着替えが散らばっている。

「ねぇ、蒼甫?」

蒼甫はあたしが名前を呼んでも返事をせずに、あたしの散らばった荷物をぼーっと眺めている。

「寝呆けてんの?大丈夫?」

蒼甫の目の前に立ってみても彼はあたしに視線を向けない。

彼の茶髪が日に照らされてキラキラと輝いている。

壁に掛かってる時計を見ると時刻はAM8:38。



「ちょっと蒼甫!遅刻じゃん!早く仕事行きなよ!」

部屋の端につまれた洗濯物の中に蒼甫のペンキで汚れた作業着が見える。

「何よぼーっとしちゃって!親方に怒られるよ!?」

完全に放心状態の彼にあたしは首を傾げた。

その時蒼甫の携帯が着信音を響かせた。


《……PPPPPP》


「電話だよ?」

蒼甫はその音にも気付いていないようだ。

「親方怒ってるんじゃないの?鳶職ナメんなってまた怒られるよ?」

何を言っても蒼甫は動かない。ただ息をしてるだけって感じ。

テーブルの上にはあたしの携帯。昨日寝る前に飲んでた二人の缶ビール。

ベッドの下にはくしゃくしゃになったあたしの服。


「あ。」

散らかった床の上にあたしのペアリングを見付けた。

そうだ。今朝早くに蒼甫とあたしは喧嘩をしたんだ。それであたしはペアリングを床に投げ付けて……

「喧嘩の事怒ってんの?」

あたしは蒼甫の隣に腰を下ろして、無表情な横顔を見つめる。

なんだか青ざめているようにも見える見慣れた横顔。


「ごめんって。あたしがちっちゃい事でギャアギャアうるさくしなきゃ喧嘩になったりしなかったよね?反省してるよ……」

蒼甫は何も言わないし表情の変化もない。

「ねぇ怒らないでよ。仲直りしようよ?」

ちょっと甘えた声を出してみても蒼甫は表情を崩さない。

「もう蒼甫!?」


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