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放課後デイズ

7かもめJP@:2013/05/26(日) 13:32:39 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 和乃は教室の扉の前でゆっくり深呼吸をする。
 彼女の出身中学で星河学園を受けたのは彼女だけなので、知り合いも友達も一から作らないといけない状況なのだ。仲の良い友達を作って、学校生活を快適に過ごす。部活動よりもそっちを先に何とかしないといけない。
 和乃は意を決し、勢いよく扉を開ける。
 ――と見せかけて、やや遠慮がちにゆっくりと扉を開けていった。
 そろっと中を見回すと十人程度の生徒が既に自分の席に座り、本を読んだり、携帯電話をいじったり、クラスメートと話したりとそれぞれ始業式までの時間を過ごしている。
 和乃は黒板に貼られている座席表に目を通し、自分の席へと向かっていく。窓際の前から三番目の席。場所的には全然悪くない場所だ。欲を言えば一番後ろが望ましかったが。
 自分の席まで歩き、鞄を机の上において席に座って溜息をつく。すると、前の席の女子がこちらを向いて気さくに声を掛けてきてくる。
「おっはよ! 席前後だからよろしくね!」
 不意に声をかけられたため、和乃は思わずびくっとしてしまう。
 前の席の女子は肩くらいの金髪をした少女だ。髪の左側を耳の上にかけ、ヘアピンで留めている。一見して快活そうな少女であり、同性の和乃から見ても中々の美少女だ。
 少女の言葉に『どうも』と引きつった表情を浮かべながら、短く返事を返す。これは会話打ち切られそうだなー、などと思っているとその少女はくすっと笑って、
「どうもって……それじゃ会話打ち切られるよ?」
 まさか思ってたことを言われるとは思っていなかった。
 返しづらい返事をしたにも関わらず、それでも会話を続けてくれる彼女はきっと優しいのだろう。少女はにっこりと笑って自己紹介をする。
「あたしは小野塚玲花(おのづかれいか)。よろしく」
「あ……桜宮、和乃です……」
「桜宮さん、ね。あたしのことは玲花って呼んでいいから」
「じゃあ、わたしも和乃でいいよ」
 はにかみながら和乃はそう言う。玲花は小さく笑って、改めてよろしくと言った。
 すると玲花は頬杖をつきながら、教室中を見回して、
「いーなー、みんなは。中学の頃の友達とかと一緒でさー」
「玲花も同じ中学の子いないの?」
「そだよー。ってことは和乃も?」
 言葉で察したのか、僅かにきょとんとした表情で聞く玲花。和乃が頷くと玲花はにっと笑って、
「じゃあお互い友達第一号だね! 一応クラスの人ほとんどに声かけたけど、なっかなかなじめなくてさー」
 それを聞いた和乃は素直にすごいなー、と思ってしまう。
 自分だったらクラスの人に声を掛けるなんて絶対に出来ない。人見知りということもあって、相手から声を掛けてくれなきゃ自分から話すこともない。しかも一つのことに一つしか返さないので、会話も全く進展せず終わってしまうことがほとんどだ。
 和乃は教室を見回して、『ほとんどの人に声を掛けた』という玲花を改めてすごいと思った。
 十人程度しかおらず、数としてはそんなに多い方ではない。だが、廊下側の列の一番後ろの席に座っている人物が異様だったからだ。異様、というよりは雰囲気が明らかに違った。
 黒髪の少年だ。静かに本を読んでいて、綺麗な顔立ちをしている。一目見れば女子と間違えてしまいそうだが、今の彼を見てそう思う者は恐らくゼロだ。ただ本を読んでいるだけのなのに、目つきがかなり鋭い。目が合うと固まってしまいそうなくらいだ。
 和乃が少年を見て固まっていると、視線の先にいる少年に気付いたのか玲花が『あー』と疲れたような声を漏らした。
「……彼は無理だった。話しかけようとしたら睨まれたし」
「……名前とか、分かる?」
「……えーとたしか……鹿野忠次(かのただつぐ)くん、だったかな……」
 和乃は心で彼の名前を反芻し、じっと彼を見つめた。一瞬睨まれた気がしたので、すぐに目を逸らしてしまったが……。
 やがて教室にはクラスメートが全員集まり、教師も入ってくる。
 始業式が始まる放送が流れ、教師の先導にしたがい和乃たちは体育館へと向かっていった。


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