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放課後デイズ
32
:
かもめJP@
:2013/07/30(火) 16:12:44 HOST:zaq3a55fbfd.zaq.ne.jp
7
放課後、星河結は職員室にやって来ていた。
理由はごく単純なもの、入部届けを提出しに来ていたのだ。この学校の理事長の孫娘である彼女も、入学した以上学校のルールを守らなくてはならない。
それが『一ヶ月以内に入部すること』だ。
彼女は成績も優秀で運動神経もいい。だからどの部に入部しても彼女の力は遺憾なく発揮されるのだが……。
入部届けを手にした担任の教師は顔を青くしたまま、彼女の入部する部活名を見ながら絶句していた。
「……!」
「……どうしました、先生? 早く手続きを済ませてください」
この学校の入部手続きは一度担任の教師に見せなければならない。
入部届けにある担任教師が、この生徒をその部に入部させることを認める、というはんこを押し、その後その部の顧問に提出する、というのが手続きだ。
結が待っているのは、担任教師がはんこを押すことだ。
「……星河、考え直す気はないのか……?」
担任教師は震える声で結に問いかける。
「考え直す、とは?」
「お前は成績も優秀でスポーツも申し分ない。だから、お前のような逸材はもっと然るべき部に入るべきだ。それをこんなワケの分からん異端児どもが集まるような部に入部させるわけには――」
それこそが、彼の失態だった。
自分の生き方に干渉されたくなかったのか、単に自分が入ろうとしている部活を蔑視されたことに腹を立てたのか、結は教師の言葉の途中で自分の手を机に叩きつけていた。
バァン!! という思わず耳を塞ぎたくなるような大きな音が教室に響き、職員室内にいた数名の教師が全員結へと視線を向ける。
結はその視線を気にする風もなく、冷たい瞳で教師を睨みつけ、
「早く、手続きを済ませてください」
半ば強引に教師から入部を認めさせた結は入部届けを持って職員室を出た。
それと同時に、一人の男性に声を掛けられる。
「随分と面白いマネをしたな。君があんなことをするとは思わなかったよ」
「見ていたんですか? 意地が悪いですね」
結は言いながら声の方向へと視線を向けた。
いたのは白衣を纏った黒髪に眼鏡をした三十代くらいの男だった。口ぶりからして、二人からは初対面ではないようだ。
男は楽しそうににっと笑みを浮かべてから、
「しかし私も驚いているよ。君があの部に入部するとはね」
「まあ特にしたいこともないので、そういう人にはうってつけでしょう、あの部は」
それもそうか、と男は納得したように頷いた。
結はその男の方へと歩み寄り、彼の胸に押し付けるように入部届けを渡した。
「……本当に入部するのか、結?」
「聞き返さないでくれる? 私が決めたことよ、今更答えを変える気なんてないわ」
結はそのまま彼の元から去っていく。
男はその入部届けに目をやり、彼女の綺麗な筆跡で記された部活名を見つめた。そこにあったのは、彼が顧問を務める部活の名がきちんと記されていた。
――『多文化研究部』と。
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