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放課後デイズ

17かもめJP@:2013/06/09(日) 00:07:44 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 和乃は忠次に言われて、自分が彼から目を逸らしていたことに気付く。
 ほぼ無意識ではあったものの、若干の意識はしていた。『目を合わせたくない』とか『目が合ったら何かされそう』と思ったからでもある。
 俯きながら悪いことしたなぁ、と思う和乃は少し顔を上げながら忠次に言う。
「……わたし、今は鹿野くんのこと怖いと思わないよ? 教室では目つきが怖かったから……」
 そこで和乃はっとする。
 何故今の忠次は怖いと感じないのか、という理由に気付いたのだ。
 教室の彼と今の彼とで圧倒的に違うところ……それは目つきだ。
 教室での彼は今にも射殺しそうな瞳をしていたが、今の彼は極めて穏やかな目つきだ。イメージ的には困ってる人は見捨てないような、横断歩道などで困っているおばあちゃんに手を貸しそうだ。
 和乃は忠次に問いかける。
「ねえ、教室ではなんであんな怖い顔してたの?」
 それが原因で目を逸らしてしまったのだが、どうしても気になった和乃は思い切って訊ねてみた。
 忠次は困ったような表情を浮かべながら、言葉を慎重に選びながら答える。
「……人付き合いが苦手なので……話しかけられないように……」
 そりゃあ誰も近づかんわ、と思ったがあえて口にはしなかった。
 だが、彼の気持ちが分からない和乃ではない。自分だって玲花に声を掛けられるまでは机に突っ伏して寝ているふりでもしようかな、と思っていたりしたのだ。
 和乃は彼の目つきの理由を知ると、にこっと笑って彼の肩に手を置いた。
「じゃあ、わたしが鹿野くんの友達一号になる! 明日、玲花も紹介してあげるね!」
「えっ……でも、僕と仲良くすると周りから……」
「いいの! わたしが好きでやってるんだから! 嫌って言っても強制だからね!」
 和乃は人差し指を立てながら、子供に注意するように言った。
「それと、わたしのことは和乃って呼んでね。苗字で呼ばれるのあんま好きじゃなからさ」
 それを言われた忠次は少しうろたえる。
 初めて知り合った女子を名前で呼ぶのは少し照れくさい。子供のときならまだしも、高校生にもなって異性を名前で呼ぶのは勇気がいるだろう。
 逡巡している忠次を見た和乃は、
「じゃあわたしも忠次くんって呼ぶからさ!」
 それが交換条件になっていると思っているのか、どこかしてやったような顔をする和乃。
 小さく溜息をついて、忠次は少し微笑みながら、
「分かったよ。慣れないけど頑張ってみる。ありがとう、和乃」
「うん! また明日学校でね、忠次くん!」
 二人は笑みを交わして、連絡先を交換してからそれぞれの帰路につくことにした。
 
 時刻は六時前。夕飯の準備に丁度いい時間帯である。


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