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放課後デイズ

13かもめJP@:2013/06/05(水) 14:23:55 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 3

 和乃と玲花は四時くらいに別れた。
 和乃としては時間的にまだまだ全然余裕があったが、玲花は高校では寮で生活をするらしく、そろそろ荷物が届くだろうから荷解きをしないといけないらしい。一人暮らしに若干の憧れがある和乃だが、両親から『お前じゃ無理だ』と言われ、大学を卒業するまでは一人暮らしは許されていない。
 このまま家に帰っても良かったのだが、家に帰ってもすることがない。彼女の家族構成は父、母、姉、弟の自分を含めて五人構成だが、姉は現在不在である。両親の帰りも遅いため、家事の全般をこなしている和乃だが、晩御飯の支度をするにもまだ早い。家に帰ってひとまず寝ようとしたら、そのままずっと寝てしまいそうな気もする。
 彼女は特に何かを買うわけでもないのだが本屋に立ち寄ることにした。彼女は、趣味でよく本屋へと足を運ぶことが多い。
 和乃はすぐに少年漫画のコーナーへと足を踏み入れる。個人的に少女漫画より少年漫画の方が、和乃の好みの作品が多い。
「ややっ?」
 和乃は見覚えのあるタイトルとキャラクターが描かれている漫画を手に取った。発売日はごく最近のものだ。週刊誌連載のその漫画は立ち読みをしていた作品で、最近は立ち読みすらもしていなかったので、話が全く分からなくなっていたのだが……。
「……もう最終巻かあ。結構好きだったのになあ、これ」
 三年目で連載終了。和乃としてはちょっと早い気もするが、打ち切りなのだろうか、と適当に解釈した。
 和乃は右側に移動し、本棚の上の方にある漫画を並べている。気になった作品を手に取って、内容と絵が気に入れば買おう、と思っていた。
 そして少し惹かれるタイトルが目に入った。和乃はその漫画へと手を伸ばしもうちょっとで掴みそうなところで、

 不意に、右側にいた他の客と手がぶつかった。

「あっ……」
 まずい、と思って和乃は右側を向くとほぼ同時、勢いよく頭を下げて謝罪した。
「すいません! 周りを見てなかったもの、で……」
 和乃は顔を上げる。
 そして戦慄した。
 手がぶつかった人物を、和乃は知っていた。よく知っていた、といえないほどだが、名前は知っている。今日の朝に玲花から名前を聞いていたから。
 黒髪の何処か女性的な顔立ちを思わせる美少年。だが、目つきは鋭く目さえ隠せば女性といわれても何の違和感も無い少年……鹿野忠次がそこにいた。
「……あ……」
 和乃は固まってしまった。表情が引きつる。どういう表情を浮かべれば正解かが全く分からない。
 一方で、相手の鹿野忠次はこちらをじっと見つめている。身長差のせいか、相手はただ見下ろしているだけなのだろうが、彼の目つきの鋭さから何処となく見下されている気がする和乃。
 とりあえずすぐにここから去ろうと思い、和乃はゆっくりと後ずさって行く。すると、
「――あの」
 彼から声を掛けられた。
 思いもよらない言葉だった。『おい』や『待て』とかじゃなく、『あの』というこれから敬語でも話しそうな呼びとめ方だった。
 和乃はぎくっとして動きを止める。すると、鹿野忠次は目つきを鋭いものから、優しさの宿るものへと変えて、
「……えっと、同じクラスの人……ですよね?」
 敬語で話しかけられた。
 彼への『怖い』というイメージが一瞬で消え去った。和乃も身体の緊張を解いて、戸惑いがちにこくりと頷く。
 すると、彼はホッとしたように息をついて、和乃の目の前まで歩み寄る。
「……時間、あります?」
「……少し、だけなら……」
「じゃあ、ちょっと話しませんか?」

 彼にしては、和乃が抱いていた鹿野忠次のイメージとはかけ離れた優しい口調だった。


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