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+不死鳥+

92日陰:2013/07/13(土) 21:56:44 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 透は、自分自身どうして一夜を殴ったのか殴った瞬間は分からなかった。

 だが、その疑念は殴られた頬をさすりながら薄く笑う一夜の言葉で理解できた。

 「……それが、抜け出すって事だよ透君」

 先ほどまでとは違う優しげな笑だった。

 一夜の背後で驚いた風に目を開く雅日の顔が平常に戻るのが透に見えた。

 「プライドを傷付けられて相手を殴るのは、‘野蛮行為’だ」

 唇の端から血が流れだした。

 それを見て、透は初めて自分がやった行為の重みを感じる。

 一夜は笑いながら続ける。

 「だが、今までその‘野蛮行為’をされてきた君が‘野蛮行為’に走るのは間違ったことかな」

 問いかけるような言い方だった。

 透は眉根を潜めて優し気に、だがどこか寂し気に笑う一夜を凝視する。

 「……まぁ、それを決めるのは俺じゃないけどね。悪かったね、透君。本当のこととは言え、デリケートなところ付いちゃって〜」

 一気に表情が変わり、明るく笑う今時少年の顔に戻る一夜。

 「切り替え早」と思う透。

 「っで、どうすんの? やっぱ、こいつら殴――いっでぇ!?」

 「もう殴る、殴らんの話は良い。つか、しつこい。押し売りでも、もうちょい引き良い」

 頭を抱えてその場に座り込む、一夜の背後で拳を作った雅日が目の下に影を作って言う。

 その光景に透は不謹慎ながらも吹き出した。

 それを見て、二人は顔を見合わせ同時に小さく吹き出す。

 場の状況を上手く把握出来ない者達の前で、三人は小さながらも微笑んでいた。


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