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+不死鳥+

81日陰:2013/07/07(日) 14:36:33 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 「っえ……」

 唐突に自分の名前を出され、困惑しながらも透はそう口走った。

 そして、同時に考えた。

 ――殴る? 僕が……彼らを……?――

 そんな事やってみろ。透は今後、綾本達から今まで以上の行動を取られるだろう。

 「あぁ゛? んな事言ったって、ソイツ絶対コイツらの事殴らねぇだろ?」

 雅日の言う通りだ。だが、「殴る」を連発するのはいささか好ましい言動ではない。

 しかし、透は雅日の言葉に賛同しかねなかった。出来ることなら「そうだよ」と賛同の声を上げたかった。

 「そんなんじゃ、駄目だって。まぁた透君いじめられちゃうじゃん。っね! 透君」

 無邪気に笑って言われると透は「っえ……っあ……いや」と言葉に詰まった。

 「ぼ、僕は……な、殴るとか……そんな事したくないし……。そもそも、その人達がもうやめてくれるなら……僕、構わないし……」

 戸惑いながら言う透。実際のところ殴ってやりたかった。殴ってうさを晴らしたかった。しかし、そんな事をしようものなら透は明日から生きていけないだろう。

 透に言われた一夜はと言うと――

 「あぁー……。なんか、透君勘違いしてねっ?」

 ――と言いながら笑った。

 透は「?」と思いながら一夜の笑が浮かんだ顔を見る。

 両手を左右に開き、困ったように笑いながら、一夜は続けた。

 「別に俺は‘正義のヒーロー’になりたい訳じゃない。君にコイツらを殴れと言ってるのは、君を‘弱虫’から‘抜け出させる’ためだ」

 不意に一夜の顔が真面目になる。

 透は「僕を……抜け出させる……?」と、言葉の意味を理解するために、一夜が言ったことを口ずさむ。

 「弱い人間は一生弱い人間のままだ。抜け出す覚悟と気力がないと一生惨めに生きていく。俺はそういう人間が嫌いなんだよ」

 最後に「だから、俺は君を向上させたかった」と付け加える。

 一夜の背後で雅日は表情を険しくさせる。

 透は何共言えない感情に押し流され、何も考えれずにいた。


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