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ソラの掟

81ピーチ:2013/06/23(日) 18:57:41 HOST:em1-115-11-52.pool.e-mobile.ne.jp







「……とにかく」
 呟いて、羽音がエイファックを睨む。
「私たちだけじゃない、空牙さんたちにまで迷惑かけたのよ。相応のことは理解してるわね?」
「…ふざけた真似を」
「どっちがだよ」
 ミレーユの攻撃をもろに受けて未だに動けないエイファックが、悔しそうに歯ぎしりする。
 その傍で、空牙とミレーユが警戒しながら彼の次の行動を伺っていた。
「大丈夫です。ミレーユさんのおかげでこの男の魔力は無に返りましたし、今のこの怪我でこれ以上の抵抗はできませんから」
 そう言って二人に笑みを向けた羽音が、次にエイファックを見て。
「エイファック=アーロン。汝、離脱の罪(ざい)此処に示されん者。―――不死の魔力をその身に宿し、永久(とわ)の罪業をその身に受けよ」
 刹那。
 少女の身体から、翡翠色の妖気が膨れ上がる。
 直後、ふっと男の両腕に赤黒い輪(リング)が表れた。
 それを認めたエイファックの表情が強張る。
「ま、待て! 俺以上の罪を犯した者だって居る! そいつらを先に―――」
「―――無論、そんな者が居るなら次を仕留めるわよ。……貴方の罪だって、相応のもの」
 無情な声が響き、
「…汝が罪、その身を以て知るがいい」
 酷薄な笑みを浮かべた少女が、己の中指に備わった淡い無色の指輪を眺める。
 そして、その指輪に小さく何かを語りかけた。
 唐突に、彼女傍らで何かが琥珀の妖気を放った。
 金とも見紛うそれを放った彼は、彼女の傍で膝を折っていて。
「お呼びしましたか? お姫様?」
 悪戯っぽく笑んだ彼に、羽音は呆れたように息を吐いた。
「まだそんなこと言ってるの? いつも通りでいいって言ってるでしょう?」
「まぁね」
 すっと立ち上がり、彼は怯えたように小さくなっているエイファックを見て。
「《離脱者》か。また随分と面倒をかけてくれそうな顔を」
「まったくその通りだわ。私たちだけじゃなくて、彼らにまで迷惑かけて」
「相当な奴だなぁ」
「そう。それで」
 青灰の瞳がすっと細められ、形の良い唇の端が、笑みの形を取った。
「その《離脱者》、今すぐ送ってくれない?」
 青年の瞳が呆気にとられたように瞬く。
「俺が、今? え、ひょっとしてもうやっちゃった後?」
「えぇ。だから今回は送るだけ。簡単でしょう?」
 しばらくえー、と呟いていた青年が、やがて息を吐いて。
「分かったよ。まったく、どうせなら追い詰めるところから呼んでくれよなぁ」
 ぶつぶつ言いながらも、彼の右の中指に嵌った指輪を外し、それを天(そら)へ突き上げる。
 それまで呆然と突然の来訪者を眺めていた空牙たちが、はっと一か所に視線を向けた。
「あ、あれって……?」
「封印の儀を執り行う場所です。あれは、私たちが立ち入ることはできません」
 多くの者が、苦しそうに呻いている。なるほど、あれはすべて罪人か。
「下がってください。巻き込まれます」
「へ?」
 ミレーユは羽音の言葉より早く危険を感じとり、すっと青年との距離を置く。
 一方の空牙は、言われてもまだ理解できないように鵜日を傾けていた。
「―――天空の儀式、出でよ《アンドルフ》」
 瞬間。
 さぁっと辺りが明るく照らされた。
 いや、明るいというよりも、これは。
「次の罪人は、誰だ」
 厳かな声が響く。
 羽音が小さく笑って、エイファックに視線をくれた。
「この者です。どうぞ、永きの炎(えん)を」
 標的(ターゲット)を認めてようやく姿を現したそれは。
 ―――老人、だった。
 たくさんのひげを蓄えた、片手に炎を託した老人。
「え……?」
 二の句が継げない空牙に苦笑を返し、羽音が彼に言う。
「私たちのような種族は、普通とは年の取り方が違うんです。彼は老人の姿をしていますが、実際あの見てくれで…」
 二人とシルヴィアに耳打ちして、再び老人を見て。
「アンドルフ、どうぞよろしく」
「心得た」
 そう言ってエイファックを引きずり、そのままふっとっ姿をくらませる。
 その軌跡を辿り、やがて羽音が息を吐いた。
「ありがとう、アルヴィン。もう戻っていいわよ」
「相変わらず、ひと使いが荒いなぁ」
 苦笑しながらもふっと姿を消した彼を見送って、羽音があっと呟いた。


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