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邪気眼少女と桜の欠片

23ピーチ:2013/03/30(土) 23:29:37 HOST:EM114-51-184-84.pool.e-mobile.ne.jp
その日からのお仕事






 ―――腕の傷、どうしたの?
 柚木園様の言葉が、何回も頭の中で反響する。
 同時に、あの時の言葉も。
 ―――約束、破っちゃったねぇ……?
「…………っ…!」
 考えたらいけないって、分かってるのに。
「大丈夫?」
「え?」
 いつの間にか部屋に居たお母さんの言葉に、私が思わず聞き返した。
「青い顔してるわよ? あぁそれと、葉月ちゃんからの伝言」
「え……、先輩から?」
 うん、と頷いて、お母さんが笑う。
「あの馬鹿どもが、まーた性懲りもなく誘ってたよー、だって」
 面白い子たちよねぇと笑って仕事に戻ったお母さんを見送って、私も立ち上がる。
 ……前のことばっかり引きずってるわけには、いかないもんね。
 柚木園様に謝ってないし。
 そう思って、私は慌てて部屋を飛び出した。






「日永様」
 いきなり呼びかけたからだと思う、驚いたような響きが声にあった。
「え? あ、はい?」
「他のお客様がお休みになられてきたので、お布団の準備をさせて頂いてよろしいでしょうか?」
「あ、はい」
 日永様の言葉を聞いて、私がなるべく静かに襖を開ける。
「失礼いたします」
 そう言って部屋に入った私を見て、日永様が何とも形容のしがたい表情になった。
「……? どうかなさいました?」
「え? あ、いや、別に」
 そう、ならいいけど……。
 しばらく布団を出したり色々としてる私を眺めていたらしい日永様が、ぽそりと呟いた。
「そう言えばさ」
 前置きのように言って日永様が首を傾ける。
「何でこの旅館って、わざわざおかみさんたちが一つ一つやるの?」
 日永様の質問を聞いて、私は思わずその場に固まる。
 いや、確かにおかみや仲居さんが準備しないような旅館もあるけど。今はそっちの方が多いらしいけど。
 でも、間違っても困惑を見せるわけにはいかない。何とかぎこちないながらの笑顔を、それなりに頑張って作った。
「簡単ですよ」
「え?」
「だって、折角泊まりに来て下さっているお客様に一つ一つさせるなんて、失礼でしょう?」
 折角来てくれるんだから、敬意を込めないと…ってことで、うちは昔からそうしてるらしい。
「それだけ……で?」
「はい、それだけです」
 そう言ってる間に準備が終わり、そのまま部屋を出る。
 ……で、どうしよう…
 ―――柚木園様と結野様のお部屋? もう終わってるわよ?
「あー……」
 …明日こそ謝らないと。明日は何があっても謝る。
 変なことを心に誓って、私はそのまま部屋に戻った。


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