波にうたれて

5：ゆず：2013/01/11(金) 18:43:47 HOST:p28182-ipngn100202kobeminato.hyogo.ocn.ne.jp: 「ねー。あたしさ、骨折してて水泳できないのよ。海人くん、一緒に見学だね。」
同じクラスの太田恵が寄ってきた。
海人は無表情で恵を一瞥する。
「見学って初めてでさ、教えてよ。次だよ水泳。」
「……別にいいけど。」
答えると、恵の顔がパッと明るくなった。
「ありがとう！」
クラス一の元気少女とクラス一暗いといわれている海人が話している姿は珍しい。
「まずどうすんの？」
「更衣室に行って、靴下だけぬぐ。それからプールサイドのベンチに座ってあとはみるだけ。」
「へぇ。じゃあ更衣室行こ。」
海人はいやそうな顔もせず、かといって嬉しそうな顔もせず恵と歩いた。
「じゃ、女子更衣室に行くね。」
「……うん。」
海人は男子更衣室に入り、適当な棚に靴下を置いた。
出ると、恵が待っていた。
「やった！わたしの勝ち。」
勝負していたのか、と海人は呟く。
「プールサイドに行くのよね。早く行こ。」
「……ん。わかった。」
すぐそこにあるプールに入った。キラキラと水面が輝く。
「きれいだねぇ……。わたし水泳初日骨折したつぎのひで休みだったから、今日が初めてなんだ。今年初めてだよー、プール見るの。」
ベラベラしゃべる恵に海人は驚いた。
「ね、どうして水が嫌いなの？2年のころからずうっと水泳サボってるでしょ？」
ドキッとする。
そして海人は『あの日』を思い出していた……。

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