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界螺旋聖・遠方見聞録
71
:
彗斗
:2013/08/01(木) 01:54:16 HOST:opt-115-30-141-24.client.pikara.ne.jp
第三十四乃呪印 その翼は闇を切り裂き……
彼女に悔いなど無かった。彼の為に全てを捧げる覚悟で、これまで彼に仕えてきたのだから。キット今の彼女であれば、彼を護るその為だけに――自らの命すらも投げ売ってしまうだろう。陽の落ちない世界で出会った彼女の主は、陽の光を嫌った。何もかもを焼き尽くかの様に、広い広いこの大地に光を投げかける。そして……彼女の主は陽の落ちない世界に『夜』を作った。
『落ちない陽などあるものか。陽が落ちないのなら、こちらから落としにかかる気勢ぐらいなくてはならないだろう?』
あぁ確かにそうだ。仮に目の前にいる物が、自分より遥かに大きな力を持つ神や仏だとしても、それを倒す勢いが無ければ勝てる勝負も勝てはしない。それについては、焔自身がよく熟知していた。
――彼を倒さなければ全てが水の泡である。
その事が、唯々彼女の心に重く圧し掛かっていた。仙人族である慧は、天人族である焔達を手足の様に操る事が出来る。それこそが、天人族の一つ上を行く、彼の一番の強みだった。
「私は……私は……」
「甘いぜ! そんなモンじゃ俺を捉える事はおろか、見ることだって出来ねぇぜ!!」
まるで風と同体化しているかの様に、メテオの声が四方から聞こえてくる。だが、圧倒的なスピードを前にしても、決して彼女は動かない。付け入る隙を伺い、彼の行動パターンを頭に入れていた。
(彼の行動パターンは……右、上、左、下のローテーション式。そして……)
そんなパターンを読んでいるなど露も知らないメテオは、改心の笑みを浮かべて真正面に現れた。その時ある事を考えつく。
(攻撃する時のみは……相手の真正面を取る癖がある!!)
メテオが魔法陣を組み、展開する前に、もう焔はカゲロウに光線を発射させる指令を下していた。そして……
――彼の会心の笑みは恐怖に歪んだ顔へと変貌し、それを包み込み爆ぜた。
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