したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

界螺旋聖・遠方見聞録

57彗斗:2013/07/06(土) 23:37:20 HOST:opt-115-30-141-24.client.pikara.ne.jp
第二十七乃呪印 大蛇と天狼と天女

「…………」

「…………」

「…………」

 飛び出してきた事に気が付いた二人は、巨大な蛇に向き直り相手の様子を見る。だが蛇の方も、ジッと相手の様子を見ているのか、手を出してこない。蛇が手を出してこないのはこちらが動かないからだと思うが、二人が動けないのにはちゃんとした訳があった。

――二人とも人界に降りてきて、人間以外の動物を見るのは初めてなのである。

(こ、これが人界に住むと聞いていた蛇とか言う生物か……! 本の中とは違い、本物はやけにデカいな……!!)

(え、えぇ〜〜!? こんなにデカい生物だなんて聞いてないわよ〜!? もっとこう……紐みたいな生物だって聞いたのに……!?)

 確かに穹の言う通り、『普通の』蛇はここまで巨大な訳が無い。正体こそ不明ではあるが、これは何か蛇ではない別物である。だが、『蛇』と言う物を見た事の無い彼等、仏界の住人はこの化物を『蛇』と認識してしまったようだ……。

「……確か、蛇ってのは大半の場合こちらから仕掛けなければ、まず襲ってくる事は無い……と呼んだことがあるが?」

「いやいや……こんなのに襲われたら確実にお終いだから?!」

「……貴方達は一体……?」

「「ギャアァアアァァァ!? シャベッタァァアァァアアァアッ!?!」」

 いきなり喋りもしない筈の、文字通りの『大蛇』に話しかけられた二人は、悲鳴を上げてその場で腰を抜かした。その大声に驚いた『大蛇』は周囲を気にして、慌てて静かにするように言った。

「しぃぃっ!! そんな大声出さないで下さい!」

「だ、だってぇ……!」

「…………こ、この世界には俺達、天人の知らない未知なる物が沢山あるな……。蛇が喋るなどとは、本には書かれていなかった……。」

 蛇の姿を見て、己の顔面を蒼白に染める響。最早逃げる力も失ったのか、その場でへたり込み、べそをかいている穹。その両者を見て、『大蛇』は呆れて声も出せない有様だった。

「ちょっと……私の話を聞いてます? ……そうだ。この姿なら……」

 そう言うと『大蛇』は蜷局を巻き、自身を光の中に埋めた。そして光が止んだ時には……。『大蛇』は『少女』に変じていたのだ。

「「…………」」

 その姿を見た響と穹は、ただ茫然と目の前で起こった出来事を目を丸くして見つめていた。そして響が一言。

「……変化も出来る蛇とは……。全く、人界には驚くべき物がまだ隠されているようだな……。」

「だから……私は人界の者ではありません。『甓瀧 響』さんと、『鷸谷 穹』さんですね?」

 そう言った後、黒い瘴気を纏い、少女はゆっくりと立ち上がる。そして顔を上げた時、無慈悲な笑みを見せこう言った。

「――月代 慧様からの命令です。『奴等、神と巫女を抹殺しろ』と……。」

――その直後、響と穹の周囲を、黒い瘴気が取り巻いた。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板