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永遠に変わらない心、変わらない誓い

6上総(カズサ):2012/10/27(土) 14:36:11 HOST:zaqb4dc9d7e.zaq.ne.jp



     side皐月/着飾ることは



『準備完了。』


背中をポンッと叩いた私は海を通り越して鏡を覗くと、本当に”奇麗”という言葉しか出なかった。
私の家系は洋服を世界企業へと進めている企業で親は有名なファッションデザイナー。毎日毎日、契約者との打ち合わせやパソコンとの睨めっこが普通だった。
几帳面でマメな母親は、人を見る目が優れており可愛い女の子を見るなりワクワクした目でデザインを考える。そんな母親の娘だからこそ、私にはこんな才能が出て来たのかも知れない。






『ありがとう。今日もやっぱり可愛い』





――――”ありがとう”
この言葉は誰かに言われたことは無かった。企業として当然のことで当たり前だったから、その言葉に嬉しさを覚えたのかも知れない。
幸福そうな表情を見るのは、人間誰だって嫌いな訳じゃない。服も大好きな私にとってはこの時間と場所は特別な魔法の基地だった。家に居ても、こんな気持ちは込み上がらない。
たぶん、海もそうだと思う。私よりも大変な苦労を抱えていることを私は知っていた。あの日、幼かった私にとって海の存在は憎くて仕方が無かった。



++


名高い企業で、私は海の一家が成り立つからこその有名ブランドの洋服を売れている。
両親も毎日、海の両親には頭が上がらなくただ一生懸命に働き続けていた。そんな両親を私は扉の隙間から見ていた。あんな扱いをされている姿を見るのは嫌だった。
頑張って働いているみんなを見てきたからこそ、海の両親を許すことが出来なかった。誰かを見下すような冷たい視線――…。
あんな父親の娘だ。きっとあんな風に誰かを見ているんだ。高い所にいる彼らとは違って、私たちは必死で働きその努力を同情も無く笑いながら。



だけど、全然違った。
初めて屋敷に行った時、彼女を見つけた私は酷く驚いた。広い屋敷の中に一つの部屋が空いておりそこをこっそり開けると難しそうな機械を使っている女の子が居た。
初めて対面した海。不思議とあのときビックリした性か憎しみや怒りは無く、その横顔だけが目から離れなかった。初めて彼女に会ったのに、初めてじゃないみたいな感覚があった。




そして、あの事実を聞いてしまった。
あのときは海の後ろ姿を追いかけるしか出来なかった。何故追いかけたのかも私自身では分からなく、ただその場に居た衝動で走った。
その日から私は海の強さを知った。海の優しさを知った。海の孤独さを知った。いっぱい、いっぱい色んな海のことを知れた気がした。


――――だから、側にいようと心で思ったのかも知れない。


++






『朝食はもう取った?って言っても、もうお昼だけど』
『蒼生が作ってるなら、頂こうかな。料理の腕はアイツもプロ並みだからね。』




彼女の背中をまた追いかけた。
今度は私が海のあの涙を拭えるように、傍に居る決意を込めて――――…。


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