シンギング・ウォーズ - 1348981229

2：カエルSP：2012/09/30(日) 16:57:25 HOST:softbank219173088094.bbtec.net: ★第1話★　「次世代カラオケ」

起床し、登校し、帰宅し、就寝する。
その決まりきった行為の繰り返し×5・・・①

多少はイレギュラーな日×2・・・②

高校生活における週数をnとおくと
n（①+②）
これが高校生活という限られた日数の公式だ。
多少の誤差は含むがな。

・・・・・・・・・・遅くなったが、今は2015年10月。
この俺、岡本龍星（おかもと　りゅうせい）は高校2年生として
例のn（①+②）を過ごしている。

最初に言っておくが、俺は優れた人材だ。
朝は誰よりも早く学校に登校する。
定期テストの順位は学年180人中90番台をキープ。
部活動としての将棋も、部員2人中最強の腕を誇る。

そして、何よりもこの俺を際立たせるもの・・・・・・・
それは『カラオケ』だ。

俺は今まで数々の人間と
カラオケの採点画面に表示される点数を競ってきた。
だが、1人を除き、俺が勝利したという確信を持てなかったヤツは居ない。

そう・・・・・・・。
俺は圧倒的な歌唱力で常に高得点を叩き出す！
そこら辺の音楽部員にも勝てる自信がある。

しかし、何故そんな俺が音楽部ではなく将棋部なのか・・・・・。
ソレは後ほど語る事としよう。

しかし、昨年冬、
2014年の11月に俺にとって重大な出来事があった。

それまでは全くの無名であった
アブソリュート・アーツ社が新たな
業務用通信カラオケ機器本体、『EXTREME』の完成を発表したのだ。

高グラフィックな映像、
従来のものを越える厳正な採点システムの搭載、
高音質な音源、
そして広域なジャンルをカバーする曲数・・・・・・。

今年に入った2015年4月、
都内のカラオケ店舗数店に
EXTREMEの試験的な導入が決まった。

しかし、前述の差別化しか出来ないようならば
あれ程のスピードで
DAMやUGA等の従来の通信カラオケが衰退する事は無かっただろう。

次世代通信カラオケEXTREMEが
驚異的なスピードで普及した要因・・・・・・。
それは同じく、
アブソリュート・アーツ社が運営するオンライン・ゲーム、
『シンギング・ウォーズ』
の存在に間違いないだろう。

簡潔に言うと、
『カラオケの採点画面の点数を
そのままポイントに変換し、
そのポイントを使って遊ぶ
対人対戦ゲーム』
である。

画期的なシステム、と言わざるを得ない。

EXTREMEに搭載されたカード読み取り部に
自分専用のICカードをかざすと、ワンタッチで読み込みが完了。
歌った後に表示される点数がそのまま
自分のシンギング・ウォーズのプレイヤーファイルに蓄積されていく。

ただし数人でカラオケに行く場合、
自分の歌う番が訪れる度にカードをかざす手間があるが、
あまりの読み込みの速さに、特に気に掛けない人間が多いらしい。

初めてプレイする場合、
各カラオケ店舗で個人のICカードを購入。
そのICカードに記載されているID名
及び自分のメールアドレスを
シンギング・ウォーズのプレイヤー登録画面にて登録。

返信されたメールに記載されているパスワードを
ログイン画面でIDと一緒に打ち込んで
自分のプレイヤーファイルが作成完了、という事だ。

長くなったが、
このEXTREMEのおかげで
カラオケは社会的なブームと化した。

俺が住む街のカラオケ店にも、
1週間前にEXTREMEが全室に導入された。

しかし、困った事に
昼:150円／1時間
であったこの店舗の料金制度が崩れ、
昼:1000円／1時間
という有り得ない値段設定に変更されてしまった・・・・。

しかし、客足は以前よりも増え、
今では平日休日問わず3，4時間待ちは茶飯事だという。

おそらく
シンギング・オンラインの面白さが
狂った値段設定の中でも客を寄せているのだと思う。

だが、酷い事に俺の家にはネット環境が整っていない。
母子家庭のため、過剰な節約を強いられている。
ケータイしか情報伝達手段が無い、俺の立場からしたら
ただカラオケ料金がボッタくり価格に変更されただけの変化、という訳だ。

・・・・・・・・こんな事を話しているうちに
もう学校が見えてきてしまったでは無いか・・・・。

★第１話★　「次世代カラオケ」　完結