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Breather

128ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/12/16(日) 13:24:40 HOST:EM117-55-68-51.emobile.ad.jp






   ( 学校一可愛い超絶美女の落とし方。 )






「悠莉ちゃんって本当可愛いよね」
「だよね、憧れちゃう!」
「めっちゃモテモテだしね」
「性格も良いしさ〜!」
「顔良くて性格も良いとか、完璧じゃん」




 ――――そんな褒め言葉聞き飽きた。



 わたしが可愛いとか当たり前。
 憧れるとか、ろくに努力もしない人に言われたくない。
 モテるのは可愛い子の特権だし。
 性格良くなきゃモテないもん。
 完璧な子になりたくて努力したんだから。





 心の底からの「可愛い」が通用する女の子になりたい。
 そう思って必死に努力したのに、わたしが心から思うたった一人の君は振り向いてくれないのかな。




     ×




「悠莉ちゃんおはよ〜」
「おはよ、朱里ちゃんっ」





 逢沢悠莉、高一女子。
 学校一可愛い超絶美女の称号を持つ……とか言ってはみるけど、実際そんなもの興味ない。




 そしてわたしがたった今挨拶を交わしたのが春乃朱里。
 同じクラスで――簡単にいえばわたしの嫌いな人。





 朱里ちゃん、とか呼んでるけどそれは言葉だけ。
 実際心の中ではそんな親しく呼んでない。
 春乃朱里はかなり性格に裏がある女子でぶりっ子するくせにたいして可愛くない。



 まあ、裏ありまくりのわたしが人のこと言えるようなものじゃないけど。




「よ、朱里」




 笑顔で教室に入ってきたのは朝月蓮。




「わ、吃驚したあ……蓮くんおはよ〜」




 頬を赤く染めてぶりっ子する朱里を見て勘付く人は分かっちゃうけど、蓮くんは朱里の彼氏。
 そして蓮くんは、わたしの好きな人でもある。




「蓮くんおはよっ」
「はよ、逢沢」




 春乃朱里は名前呼びで、わたしは名字呼び。
 かなりの距離感があるのがはっきりと伝わってくる。




 でも、学校一可愛い超絶美女が春乃朱里みたいな地味な女に負けるわけにはいかない。




「蓮くんっ、この前借りたCD! すっごいよかったよ、ありがとー!」
「だよな! やっぱ逢沢は趣味合うから話しやすいわ!」




 蓮くんに良く見てもらえるように、蓮くんの好きな歌手を調べたんだ。
 ちょっとマイナーだったから趣味が合う人も都合良く少なくて、春乃朱里よりも趣味については分かり合える仲になった。




「この歌手のファン少ないから、蓮くんくらいしか話せる人いないんだよね」
「俺も! 逢沢くらいしか趣味の話通じねえわ」
「今度さ、近くでライブするらしいんだけど……いっしょに観に行かない?」
「マジ?! 行きたい!」




 わかってる。
 蓮くんが好きなのはわたしじゃなくてその歌手だってこと。
 わたしが同じ趣味だから仲良くしてくれるだけだってこと。




 でも、ぜったい奪ってみせるんだ。




「え〜、ふたりともライブ行くの〜? 朱里も行きた〜い!」





 ちっ、と心の中で舌打ち。
 趣味のことも何も知らないくせに、彼女気取んないでよ。




「ごめん……もうチケット買ってあって、二枚しかないんだー……」




 残念そうに言いながら、心の中ではにやっと微笑んでいた。
 元々チケットが二枚しかないのは事実だしね。




「えー、じゃあ普通はカレカノで行くべきでしょ〜」




 朱里がむっと口を尖らせて、少し本性を出しつつぶりっ子して言った。
 いらっとしても、わたしは本性はぜったい出さない。




「そう、かな……やっぱり蓮くんもわたしとじゃ嫌かな」




 さり気ない上目遣い。
 ちょっと引き気味に、それでも完全には引かずに寂しそうに言う。


 どれもこれも、全部計算通り。




「このチケット、逢沢が俺と行くために買ってくれたんだろ?」
「うん、どうしてもいっしょに行きたくて」
「なら俺逢沢といっしょに行くよ」




 蓮くんが笑った。
 悔しそうに朱里が俯く。




 やっぱりみんな、わたしの計算通りに動いてくれるのね。



     (きる)

129ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/12/16(日) 13:37:48 HOST:EM117-55-68-51.emobile.ad.jp






   ( 学校一可愛い超絶美女の落とし方。 )





「でもぉ、蓮くんと悠莉ちゃんふたりっきりなのは朱里不安だよお……」




 まだまだ粘る朱里。
 しつこい女って、嫌われる対象なんだよ。
 馬鹿な朱里は気づいてないみたいだけど。



 蓮くんは少し困ったように俯いて言った。




「ごめん、でも……俺がいっしょに行きたいのは逢沢なんだよな」
「蓮くんは朱里のこと嫌いなの?! 朱里より悠莉ちゃんがいいの……?」
「それは、」
「蓮くんのばかぁ……」




 泣きじゃくる朱里。
 きっとこれは朱里の計算なんだろうけど、大誤算だと思う。



 しつこくて急に泣き出す女って、一番嫌われるタイプなのに。




「……ねえ、いい加減諦めたらどう? 蓮くん狙いなの丸わかり、キモイんだよブス」




 朱里は泣きながら教室を立ち去るふりをして、わたしの耳元でそうつぶやいて言った。




 わたしがあんなやつにブスって言われる筋合いない。
 そんなことわかってる。




 なのに、





「朱里っ」





 朱里を追いかけた蓮くんの背中を見つめて、ものすごく胸が苦しくなった。




 可愛くなっても無意味なんだ。
 性格が良くても無意味なんだ。




 どうしたら蓮くんは振り向いてくれるの?




 悔しくて、気づいたら涙があふれてた。




「悠莉ちゃん?!」
「逢沢さんどうしたのっ?」





 クラスのみんながざわめいてわたしを心配する。




 心配なんてそんなのいらない。
 蓮くん以外の心配なんて意味がない。





「……ごめんね、大丈夫。ちょっと具合悪いから保健室行ってくるね」




 ついていこうか?、と声をかけてくれた子もいたけど断ってしまった。
 だってわたしが行く場所は保健室じゃないから。




 すれ違い様にさり気なく朱里に渡された紙に、三階の女子トイレで待ってると書いてあった。




 素直についていくってわけじゃないけど、ちゃんと立ち向かいたい。
 そう思って、重い足取りでゆっくりとトイレに向かった。




     (きる)





 かなりぐだぐだなお話だしタイトルどうでもよくなってます←
 許してねてへ←

130ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/12/23(日) 12:30:01 HOST:EM117-55-68-24.emobile.ad.jp







   ( 放課後の教室で、 )





 わたしは君が好きで、
 君はあの子が好きで、
 あの子は君が好きで、




 いらないのは誰ですか?




     ×




「ねえ奏汰ー」
「んー?」



 英語の課題未提出で居残りを食らったわたしと奏汰。
 二人しかいない教室には放課後特有の不思議な雰囲気が流れていて、わたしは流れに身を任せてぽつりと言った。



「好きだよ」



 ふいに言ったその言葉で、プリントに英文を書いていく奏汰の手が止まるのがわかった。



 あ、わたし振られる。
 本能的になんとなくわかってしまったから、へらりと笑って誤魔化してみた。




「何真に受けちゃってんのー、嘘に決まってんじゃん」
「ちょ、吃驚させんなよ」
「ばーか、奏汰が皐月ちゃんのこと好きなのくらいみんな分かってるってば」




 皐月ちゃんが奏汰の好きな人って結びついたのは思いのほか簡単だった。
 女子があんまり好きではない奏汰が自分から進んで話しかけに行くめずらしい女子の一人だし。



 それに何より、皐月ちゃんと話している奏汰の表情はそれは優しげで特別なものだったから。




 勝ち目なんてないってわかっていても、
 奏汰を好きでいたいと思う気持ちのほうが大きいんだ。




「皐月ってさ」



 奏汰が英文を書く作業をやめて、楽しそうに笑って話し始めた。



「素直で健気ってイメージだったんだけど、喋ってみたら全然違くてさ……なんかすげえ素直じゃなくて強がりなんだよな」




 やめてよ。
 そんな楽しそうな、特別な顔して皐月ちゃんのこと話さないで。




「そんなとこに惹かれて、いつの間にかすげー好きになってた」




 そんなのわたしに言わないでよ。
 わたしは奏汰が好きなの、大好きなの。





 ねえ、気づいてよ。





「……里乃?」




 奏汰が不思議そうに、俯いたままのわたしの名前を呼んだ。
 



「奏汰ってほんと馬鹿、鈍感」
「え?」
「人の気持ちに気づけないくせに自分の気持ちばっか押しつけないでよ」




 戸惑う奏汰。
 それもそうだよね、馬鹿なのはわたしだ。





 でも。



 この状況に耐えられなくて、課題のプリントを放置して鞄だけ持って急いで教室を出た。




「里乃!」




 後ろからわたしの名前を呼ぶ奏汰の声なんて聞こえない、






 聞きたくない。





   ( つづきます )

131ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/12/23(日) 13:11:22 HOST:EM117-55-68-24.emobile.ad.jp







   ( 放課後の教室で、 )






「あ、里乃ちゃんだー」




 課題を提出しないまま校内から出ると、下駄箱の近くに皐月ちゃんが立っていた。
 おそらく今一番会いたくない相手であろう皐月ちゃんに、何故かわたしは冷たい態度をとってしまった。




「今急いでるから、ばいばい」
「奏汰に振られたの?」




 くすっと鼻で笑うような調子で皐月ちゃんが聞いてきた。
 出た、皐月ちゃんの女子にしか見せない本性。




「まず告白してないし」
「残念だねーっ、奏汰はあたしのことが好きなんだっけ」
「……告白されたら付き合うの?」
「うん、まあ来る者拒まずだしねー」




 そんなのやめてよ。




「いい加減な気持ちで付き合うのはやめてよ」
「別にそんなのあたしの勝手じゃん」
「そうだけど……奏汰には幸せになってほしいの」
「そういう偽善者マジうざい」




 思わず泣きそうになった瞬間。
 後ろから、大好きな人の声が飛んできた。




「皐月、やっと本性を現したなー」




 にこっと笑った奏汰の顔。
 もしかして奏汰は皐月ちゃんの本性に気づいてた……?




「奏汰、あたし……里乃ちゃんに言わされてただけなの」




 泣き落としかよ。
 そんなツッコミもどこへやら、奏汰は笑って言った。




「はいはい、面白くない冗談はいいからさ……里乃、行くよ」
「う、うんっ」




 戸惑いながら、奏汰についていった。
 行き先は、さっきの教室。






     ×




 夕日に照らされた教室は、やっぱり放課後独特の不思議な雰囲気が流れていた。
 そしてわたしはきっと、これから奏汰が言う言葉を予想していたように思う。




「俺、里乃のことが好き。付き合ってくれませんか?」




 恥ずかしそうに微笑む奏汰。




「お願いしますっ」



 わたしも泣きながら微笑んだ。






 放課後の教室が、わたしたちを結んでくれました。
 大好きだよ、奏汰。




     fin.





 駆け足でごめんなさい!
 そして雑でごめんなさい!


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