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ムーン☾クロニカルズ
23
:
彗斗
:2012/09/17(月) 01:42:24 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
六乃欠片 人混みと雑踏の中で……
「…あのバカ達は一体何が言いたいのよ!! こんな人の中でこの人だけを探せるか〜〜っ!!」
麗奈は、突発的に手に持っていた似顔絵が描かれた紙を地面に叩きつける。広い路上を覆い尽くす様なとんでもない量の人混みの中から、この紙に書かれている人物を探し出す事など到底不可能だ。
ひょっとしたらこの中に居ないのかもしれないのに……
「仮に対象の人物を割り出す事が出来たとしても何処に住んでるか何てどうやったら割り出せるのよ!? 似たような人物もいるってのに……」
麗奈は行き次も入れずにそこまで愚痴った後、ゼイゼイと肩で息をしている。つまり、麗奈の言いたい事を要約すると……
この量の人物から特定の欠片の所持者のみを割り出す事は今の状況では不可能だ。と言いたいらしい……
そのまま一人でギャーギャー騒いでいると……住人達の噂話が耳に飛び込んできた。その言葉に聞き耳を立てて聞いていると……何とも暗い話題が飛び込んできた。
「ねぇ……知ってる? あのラベンダー畑の近くに住んでるリウシス家の息子さん、婚約者に先立たれたってね……」
……好きな人に先立たれた…か……と麗奈は胸中で住民の言っていた事を自分の境遇に重ねてぼそりと呟いた、その月色の眼には何処か悲しげな感情が籠っている。
……と、麗奈はその考え事を即座に止めてリウシス家の息子とか言う人物から当たってみる事にした。
「一応目星は付いたね、いこっか。ムーン」
その後ろにいたムーンを連れてそのラベンダー畑の近くに住んでいると言うリウシス家を探しに人混みの中から向けだそうとし始めた……
〜〜〜〜〜〜〜〜
「あ〜〜っ!! しまった〜ぁっ!!」
「? 一体どうしたんです? ブライト?」
ここは月光の門のある部屋、ここはブライトとシャインがいる場所だ。
不意に大声を出して騒ぎ始めたブライトを怪訝そうな視線を投げかけながらシャインは尋ねた。すると間髪いれずにこんな答えが返ってきた。
「ヤベ〜って!! アイツに「凶獣」の事を言うの忘れてたんだよ〜〜っ!!」
「!! 何ですって! 貴方は一体どれだけの失敗を重ねれば気が済むんですか!! このままでは彼女の身に危機が……!!」
凶獣……それ即ち、心に巣食う闇が生み出した闇の怪獣。その凶獣は欠片の力を悪用してパワーを増幅させたり相手の生気を吸い取り自らのエネルギーとしたりするのだ。
その様な凶暴極まりない化け物の存在を説明し忘れていたブライトは……間違い無く後で麗奈に殺されるなりなんなりされる事だろう……
「お前等は全く相変わらず鈍臭いなぁ……」
その時、慌てる二人の前に現れたのは……麗奈にムーンを託した男だ。その男の姿を見るなりブライトは片膝をついて一礼してから。
「すみません!! オーナー! 俺の不注意で……!!」
真っ先に言葉で謝罪した。そして謝罪の言葉を続けようとしたが前に男がブライトの元へ歩み寄って自分の口に人差し指を当ててからこう言った。
「いつまで経ってもチンタラチンタラ理屈は並べるな。それが約束だっただろ?」
ブライトは投げ掛けられたその言葉に返す言葉も見つからなかった。
その時、シャインがブライトの隣に歩み寄って一つ意見を述べた。
「お言葉ですがオーナー、凶獣の件についてですが……いかが致しましょう?」
「それなら問題無い。俺が行って来る」
その言葉を聞いた時、ブライトとシャインは顔を見合わせて瞬きをした後、両手を前に出してその発言を無かった事にして欲しいと懇願した。
しかし、オーナーである男は二人の意見を聞き入れずこう言い返した。
「お前たちは下界には降りれない。それなら霊体である俺が行くしかないんじゃないのか?」
「ですが……それは危険過ぎます!! どうかお止め下さい」
シャインも必死に止めるが男はそのまま二人を説き伏せて月光の門を開けさせた。
流石に、どこまでも呑気な二人の顔にも心配の表情が浮かんでいる。男が飛び込む前にブライトが一声かけた。
「では……行ってらっしゃいませ……マスターO」
「あぁ……行ってくる」
ブライトの言葉に短く答えたマスターOは開かれた門の中に静かに入って行った……
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