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パープルストリーム・ファンタジア 幸運の紫水晶と56人の聖闘士

381彗斗:2013/03/28(木) 23:49:30 HOST:opt-115-30-217-109.client.pikara.ne.jp
第四十一乃策 蒼き毒の名
「……やっぱりか。サツキ達も動いてるね〜」
「そ…そんな呑気に……お前、大丈夫か?」
 ここは山の奥地、誰にも知られない場所で人知れず、二人の青年がコソコソと話をしていた。青年達の特徴と言えば、燻った碧い髪と緑味を帯びた碧い瞳を持った青年と、焦げ茶色の髪と瞳を持った青年である。発言の内容からして碧い瞳を持った青年は楽天家で焦げ茶色の瞳をした青年は心配性である事が伺える……。
 そんな時、碧(へき)色の瞳をした少年はある言葉を口にする。
「大した連中だよ。何たって僕の竜の力を応用してこの雲を創り出したんだから……」
「……技術面に関しては、俺達が劣っていると……?」
 焦げ茶の瞳を鈍く光らせた青年の言葉に、軽く頷く碧色の瞳を持った青年。コクリとうなずいた後、青年は言葉を続ける。
「僕達は傭兵種族だ。戦乱の時代に対抗する為だけにこんな力を身につけた……でも、それを逆に平気で利用してしまう所が凄いと思っただけだよ」
「本当の所は?」
 その短い問いを聞いた途端、青年は悪魔と言う表現も良い所な極悪人面でこう吐き捨てた。
「こうもあっさりと利用されたんじゃ傭兵一族の恥だよね? 本当はこの組織を完璧に潰したいぐらいだよ?」
「……シアン、お前本当にドス黒いな」
「ロイ、忘れたかい? その言葉は僕にとっては大層なほめ言葉だって!」
 この思いっ切り貶すために使われる言葉を、大層な褒め言葉だと思っている半ば壊れている彼の名はシアン=ロドロス。そしてシアンの言葉に呆れた顔をして、片手を額に当てている青年がロイ=アルカイドだ。勿論の事、二人とも同じ傭兵一族の出である。
 因みに二人は慣れ親しんでいる仲なので、フルネームで呼ぶことはまず無い。
「シアン〜!? さっきから何を物騒なこと言ってるの?!」
「本当ですよ! 何事ですか!? さっきから組織を潰すとか……」
「……ついでにこの二人にも聞こえていたようだな……クロナ、ソティ」
 このクロナ、ソティと呼ばれた二人の本名はクロナ=ベンセルとソティ=ビーギスである。流れから読める通り、この二人もシアンやロイの顔馴染みの仲間であり、従ってフルネームで呼び合う事もまず無い。
「クロナ、それにソティまで……! それじゃ役者が揃った……と言う事かな〜?」
「ん? シアン今お前なんて……?」
「ううん、何でもないよ。だけど君たちと僕がいないと出来ないことがあるんだ。それを思いついただけだよ」
 慌てて誤解を招かない様な発言をしたシアンだったが、かえって仲間たちに興味を抱かせるような発言をしてしまっていた。だが、そんなお構い無しに彼は自身の思っている事を正直に仲間たちに伝えた。
「「「なっ……何だってぇぇぇぇ!?」」」
「うん♪ そのまんまの意味だよ♪」
「おま……本当に正気か!?」
「だからさぁ……ロイ、さっきから言ってるじゃん? サツキ達をウンと困らせるにはこれしか方法がないよ。それに僕達は怪獣を駆使して奴等を足止めする役割を担っているんだよ? そこのところ分かってる?」
 言っている口調は、どこか無責任さと言うか能天気と言うか……そんなものを漂わせているが、言っている内容自体には筋が通っている様な感じがしている。その予想外の反論には流石のロイやクロナも反論が出来なかった。
「それは確かにそうだが……」
「で…でもあれを使ったら……」
「危険過ぎる賭けなんじゃ……」
 その三人の抑止を止める様に、掌を前に出したシアンは先程とは打って変わって冷徹に呟いた。
「君達が心配している点については僕も痛いほど熟知している。そこについては僕も最善を尽くす。それでいいかい?」
 いつもは能天気で何をするかわからないシアンがいつにもまして真面目に語るのを見て、その気迫に押されたのか、彼等は渋々ながらも頷いた。
「それなら覚悟はいいね? アレを開放するよ……」
 そう言った後、シアンは胸の前で飛び切り複雑な術式を組み解放した。
「解き放つ……『真・覇厳獣 ヴァン・タトナス』!!」
――その術式を開放した途端、大地が、大気が、時間が、空間が悲鳴を上げた様な風の音が聞こえた……

382彗斗:2013/03/30(土) 13:14:51 HOST:opt-115-30-217-109.client.pikara.ne.jp
第四十二乃策 力に勝る物
――耳を劈く様な激震が轟く!!
「っ! ハヤテ、七聖徒はここに残れ! 行くぞ皆!!」
 そのクロスの言葉にその場にいた全員が屋敷の外から荒廃した街に飛び出していく……。その様子を傍で見たハヤテは、ふとある事に気が付いた。
「……お前たちは行かなくても良いのか?」
 ハヤテが話しかけたのは……その場から動こうとしない絶や∞達であった。と、その問いかけに対して絶が冷たさの混じった発言をした。
「あいつ等の事だ。俺達が居なくてもやってくれるさ」
「ちょっ……それはどういう事よ!! 無責任過ぎない!?」
 そこまで言っていたセンを片手で制し、ハヤテは説得をしてみた。
「いいからセンは黙っていてくれ。……お前達は知らないのか? 人伝に聞いた話だが……民衆の中に、紅蒼の髪をした少年や黒い髪の少年に命を助けられた……と口にしている人達がいるんだ」
 その話を聞いた時、七聖徒は信じられないとでも言うような表情になった。だがハヤテは構わず話を続ける。
「これが指し示す意味は自分達で理解している筈だ! 俺が知る限りは絶、お前達は変わったんだと……」
 そう言った時、絶達はハヤテから目を逸らした……。それでもなお、ハヤテは話をつづけた。
「俺が聞いた話が事実なのなら、頼みがある――ノゾミを、仲間を……助けてやってくれないか」
「……俺達が誰か分かっていて、あえてそんな事を言うか?」
 ハヤテの思いがけない言葉に、絶はハヤテに聞き返した。ハヤテは、真っ直ぐ絶の目を見ている。そして静かにこう答えた。
「今この状況で、敵味方は関係無い! 大切なのは、昔の事を忘れて今の相手を信じれるかどうかなんだ!! 助けてくれ絶、∞! 少なくとも俺はお前達を信じる!! だから、お前達も俺達を信じてノゾミを……仲間を助けてくれ……!!」
 ハヤテは、心の底から懇願しているように見えた。七聖徒も、黙ってその言葉に聞き入っていた。その時、絶が踵を返し、ハヤテに向かってこう言った。
「……信じてみよう。お前達を」
「もしお前がコウだったとしても……同じこと言ったあろうな」
「行ってくれるのか!! 絶! ∞!」
「「……そこまで言われたら動くしかないんじゃないか?」」
 そう言った直後、十色の流星が空に飛び立った……。

383彗斗:2013/03/31(日) 13:03:23 HOST:opt-115-30-217-109.client.pikara.ne.jp
第四十三乃策 覇恐の権化
「ちょ…ちょっと何よアレ!!」
「正に規格外……どころの表現には収まらないな」
 空を飛ぶ事のできるノゾミやクロス達十四人は、荒廃しきった中心地にやって来た。そこに待っていたのは―――規格外という表現も該当しない、巨躯の怪物が街の残骸を跳ね飛ばしていた……。
「正直、これだけの人数で戦って勝てるのか?」
「それはやってみなくちゃ分からないぜ! 行けっ!! クサナギ! ベルク! アヌビス! デュラフ!」
 ギークは、先陣切って駆動人形を起動。先制攻撃を仕掛けた。そのギークの様子を見てクロスは……
「出来る限りのことをしてこの場で食い止めろ!! 『歪刀 神威』!」
 自らも持てる力を出すことに決めたようだ。クロスの持つ『歪刀 神威』と呼ばれる刀は普段、クロス自身も使う事を控えている代物だ。その能力は――刀として肉体を斬る事は勿論の事、霊体や空間、果ては時間まで切り裂いてしまうと言うとんでもない代物なのだ。
「俺達も加勢しなくては……ネクロ! 合体技だ!」
「リアス! 私達も!!」
 ジャッジとネクロ、サエリアとリアスもギークとクロスの後に続く。そして……
「ノゾミ、それとアスカ、サツキと言ったな……ここは俺達に任せて元凶を絶やしに行け。化け物自身の意思で暴れているようではなさそうだ」
 ギーク達の奮闘を見て……ロイダー達四人組も動く……その後ろ姿は嘗ての邪悪さを纏った禍々しい神々の雰囲気ではなくなっていた。
「ロイダー……! ここは任せたわよ!」
「それなら……みなさん、ここはお願いします!!」
「すまない……ここは任せた! 急げ! 時間が無いぞ!」
 三人は元凶の姿を追って荒廃した街の奥へと足早に去って行った……

384彗斗:2013/03/31(日) 22:54:51 HOST:opt-115-30-217-109.client.pikara.ne.jp
第四十三乃策 限界への挑戦
 正に化物……その呼び名が相応しい程の巨躯を有する怪獣。人間であるノゾミ達が使用する程度の魔法程度では……到底効き目はないだろう。そこで珍しくクロス達が重い腰を上げた……と言う事である。
 とここでノゾミ達を化物から離した張本人達は……化物を前にまちまちな反応をしていた。
「久々だよな? こんな強い奴と戦えるなんてよ!!」
「押し通る!!」
「アンタ達……私の力で生き返ってること忘れてない!?」
「アイツ等は能無しだからな……痛い目見て帰って来なければ良いが……」
 ロイダーは、アテナの言う事を聞いている様だ。だが……カイザーとスカルは、強い相手を見ると興奮する性なのか、見境無く挑みかかっている……。となると結末は一つしかなく……。
「チッ! 何て奴だ! 俺の駆動人形の攻撃が一切通ってねぇ!!」
「! スカル、前だ! よく見ろ!」
「「あ? ウゲェェェェ!!?」」
 何の前触れも無く、いきなりカイザーとスカルの元に合流したギーク。
 だが、同じ場所に三人も集まっていたら、当然の事だが攻撃も集中する訳で……。結果として、巨大な足での踏みつけ攻撃に気が付いたカイザーが、二人に注意した。が、哀れな事に反応に遅れた二人は……当然の如く巨大な足の下敷きにされてしまった―――プチッと言う哀れな音と共に……。
「馬鹿じゃないのアイツ等……」
 呆れた口調で、間抜けな事をした二人を貶すような発言をするアテナ。だがロイダーは全てを見透かしたような口調で、アテナに言った。
「確かにあいつ等は頭が足りない馬鹿だ。……だが、アイツ等には共通して言える事もある。それは……」
「こっ……この程度で……」
「くたばるような俺達じゃねーぞ……!!」
 ロイダーが続きの言葉を言おうとした途端、彼らを踏み潰した足がグラグラと不自然に激しく動き始めたのだ! その様子を驚きで目を見張るアテナを脇に、ロイダーは静かに呟いた。
「――アイツ等、ギークとスカルは……不死身だ」
「「うりゃぁぁ〜〜!!」」
 その瞬間、化物の視界が上下反転する事態になったのは、誰も予想しえなかったに違いない……。

385彗斗:2013/06/23(日) 16:38:55 HOST:opt-115-30-217-109.client.pikara.ne.jp
第四十四乃策 FLIGHT ON!! 〜音速飛翔!〜

「……大丈夫なのか? ノゾミ達は……。」

「大丈夫……と考えるしかないですよ。なんたって珍しくクロスやギーク、七大神とロイダー達が居るんですよ?」

 いつまで経っても心配を拭い切れていないハヤテを励ますように、センが話しかけた。他の七聖徒メンバーは既に準備は出来ていた。だが、ノゾミにもしもの事があったら……そう考えると飛び立つ準備が進まなくなるのだ。

(確かに絶たちや∞達がノゾミ達の援軍に向かったが……何か嫌な予感がする……!)

 そう考えたハヤテの脳内にある豆電球が、いきなりピカリと光る。それと同時にハヤテはどこかへと駈け出した。それを見てセンが声をかける。

「ちょ…ハヤテさん!? 何処に行くんですか!?」

「すまないちょっとシュオン達に用があるんだ。準備が出来ているのなら先に行ってくれ。」

 そう言って小さく笑って見せたハヤテは扉を開け、その先に消えて行った……。その後、センはハァ……と短くため息を吐いた後、こう言った。

「こんな状況でシュオンさん達に聞かなくちゃいけない事なんてあるんですかね……? まぁ、いいか。皆さっさと支度が出来たらそこら辺を旋回してウオーミングアップをしていくよ!!」

 この時、センは気が付くべきだった。なぜこのような時にシュオン達に聞かなくてはいけない事があるのか。そう、この言葉は嘘なのだ。それならハヤテは何処へ行ったのか……? そんな事は聞くまでもないだろう。

――彼はノゾミの元へと向かったのだ……。


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