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エクストリームクライシス(翼の章)

146彗斗:2013/06/22(土) 13:06:14 HOST:opt-115-30-217-109.client.pikara.ne.jp
第60話 華厳の神殿

――こ、ここは……? どこ……?

 ふと息を吹き返した少女はムクッと起き上り、当たりを見渡した。だが、当たりは黒一色で塗り潰され、何があるかすらも感知できない。その時、ふと彼女の胸中にある感情が沸き起こった。

――恐怖。

 今となっては昔の話だが、一人ぼっちになっていた記憶が、彼女の脳裏に蘇る。一人だけ佇む何もない空間。周囲の人間の虐げる様な視線。その時、その瞬間、彼女は頭を抱え、絹を裂く様な悲鳴を上げた。

「止めてっ!! 私を一人にしないでよ! 誰かいないの!?」

――泣く事なんかない。私達がいる。お前の隣にずっと……

「えっ……?」

 突然頭の中に響く声。優しくも威厳を持った声が少女の悲鳴を遮った。そして、暫くして二つの別の声が聞こえた。

――俺達は四人で一人だ! お前が一人で何もかもを抱え込む必要なんか無いんだぜ?

――お前が孤独になる事は無い。やられっぱなしは性に合わないだろう?

 何処からともなく聞こえてくる三人の励ましの言葉。何処の誰かも分からないが。これだけはハッキリと少女には分かっていた。『彼等は私の唯一無二の理解者達だ』と。

「貴方達は? 一体誰なの?」

――俺達か? 俺達は……

 そこまで言った後、当たりが黒から白に反転した。眩しく煌めく白の空間にはある三つの姿があった。彼女は初めて見たものだったが、少女には分かっていた。

――龍、三体の龍だった。

 彼女も遠い昔の神話や古い言い伝えには聞いていた龍が、今彼女の目の前に三体も立っていたのだ。だが、この龍達は彼女の伝承で聞いた龍達とは明らかに違う点があった。右に佇んでいる目の蒼い龍は、月の様な光を放つ白銀の鱗を纏っている。そして左にいる目の紅い龍は、燻り煌めく星の様な赤銅の鱗を纏っていた。

「奴等も酷い話だぜ。俺達を人間の体に封じ込めたまでは良いものの、封じ込めた人間が誰だったか忘れたなんてよ!」

「全くだ。だが、奴の力があってこいつも俺達の存在に気が付いた。そこは感謝するべき点だな。」

「少しお前達は黙っていろ。私は彼女と話をしたい。」

 そう言って訳の分からない会話を打ち切らせた中央にいる緑眼の龍は、華麗な黄金の鱗を纏っていた。それは宛ら煌めく太陽の様な輝きだ。その龍は優しく、しかし威厳をもった声で少女に問いかける。

「一つ問いたい。お前は私達『龍』の力を必要とするか?」

「……それはどういう意味なの? 私をボコボコにした奴に仕返しをしてやろうって言ってるの?」

「まぁ、大胆に言えばそうなるな。私達も奴等に関しては良い思い出が一つも無いんでな。」

 そこまで言った後、少女は胸の前で手を組み、考える仕草を見せた。そして、暫く考えた後……こう言った。

「私の名前は『橘 望』。アンタ達は?」

「俺は『ラギア』! 白銀のラギアと呼ばれてた龍だ! よろしくな!」

「……俺は『ガルザ』。赤銅のガルザだ。よろしく頼む。」

「そして最後に……私がこいつ等のリーダー、『ラルド』だ。別名は黄金のラルド。これから宜しく頼むぞノゾミ。」

 そう言った三体の龍は大きな拳を少女の方に突き出した。その拳を見た少女―――ノゾミはニヤリと会心の笑みを浮かべた。

「アイツをぶっ飛ばさないといけないのは一緒みたいね。その話乗ってあげるわ!」


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