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エクストリームクライシス(翼の章)
136
:
彗斗
:2013/04/10(水) 04:39:13 HOST:opt-115-30-217-109.client.pikara.ne.jp
第57話 時空を統べし者
「……っ! 破壊者達の魂(ブレイカーズ・ソウル)!!」
一方的な優劣とは、正にこの事だろう。禍々しいまでの雰囲気を放つ神に、真正面から衝突した黒い塊は爆炎と黒い煙を上げて神を包んだ……が
「……その程度か? やはり人間は人間、と言った所だな」
放った魔法も打撃攻撃も全て、空間の歪みに吸収されているようだ。結果として、その歪みの内部にいるクロスへのダメージはゼロ。ただ無駄に、魔力のみを消費していく一方だ。その現状にノゾミは、苦虫を噛み潰した様な表情しか出来なかった。
「空間の歪みだけでダメージを0にさせるとはね……。流石は無敵と謳われる神様ね」
「……皮肉の様にも聞こえるが……本当に褒めているとは到底思えないな」
クロスはゆっくりと、今まで一歩も動きもしなかった場所から一歩踏み出した。重々しい重厚な存在感が静かに、ゆっくりと近づいて来る……。その恐ろしさと言ったら、この上ないだろう。勿論、ノゾミが何もせずに接近を許す訳が無かった。
「――ワイルドコロナモード」
一気に能力を発動させたノゾミは、陽炎の様な揺らめきを残しながら神話の頂点に立つ神、クロスに近づいた。その覇気と言ったら他の戦士や、魔導士とは比べ物にならないほどである。
(この技が決まれば……どうにかなるかもしれない!)
クロスが漂わせるただならぬ覇気に躊躇いながらも、ノゾミはある秘策を仕掛けた。目の前にまで接近した後、残像を残し高く跳躍、そしてクロスの後ろを陣取り利き手である右の掌に紅く煌めく炎を迸らせた。
「獄炎・覇掌!!」
背後に気配を感じ取るまでの間、何秒のロスタイムを費やしたことだろう……。クロスは、目の前から消えたノゾミを見失ってしまっていた。その隙にノゾミは……
――紅い炎に染まった右腕をクロスの背後に突き立てた!
「……それでどうにかなるとでも思っていたか?」
クロスの一言で、彼を除く周りの風景が色を失った。彼の防御方法は空間の歪みを利用し、シールドを作り上げ、敵の攻撃を防ぐ。もし万が一攻撃を受けそうになったのなら、今度は時間を止めて、その攻撃の範囲が及ばない所に逃げればいいだけの話だ。
彼は戦闘能力ではなく、防衛能力の方が遥かに優れている。無論、時空の歪み、時間の停止を駆使していろんな攻撃もできるが、結局は敵の攻撃を防ぐ為の切り札でしかないのだ。その事は、長年この能力と付き合ってきた自分が、一番よく分かっている。
クロスは踵を返し、彼の背後で右手を突き出したままの状態で停止しているノゾミを見て耳元で呟いた。
「……一瞬の機動力は本当に大した物だ。だが気配を殺す事が出来ていない……」
そう言った後、そのまま歩きだしノゾミの背後にジッと立っていた……。
「start clock」
その言葉を、ずっと待っていたかと言わんばかりに時が動き始めた。いきなり消滅したクロスを探して、技の発動を寸前で止めたノゾミが、キョロキョロしている。
「そんな小手先騙しは俺達、神には通用しない」
背後から聞こえたクロスの声に驚いて、ノゾミが距離をとるために後ずさりをする……。その時クロスの双眸が……
――紅と蒼に煌めいた……!!
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