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小説家になろう!
35
:
傷羽
:2012/03/18(日) 16:54:57 HOST:ntehme084254.ehme.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
07 はんこう
篁家。
その一室。
かこん。
日本庭園のししおどしが鳴らす、風情のある音が耳に入ってくる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
八重は私室にいた。
少女らしい可愛らしい、しかし和室の雰囲気が壊れない程度に落ち着いた趣味の調度品が置かれてる。
和風な柄のふかふかのまるいクッションがいくつか転がっている。
足の低く、黒い丸テーブルに、写真立てのように立てかけるタイプのカレンダー。
やや背の高い棚には和綴じの書物や雑誌、小さな観葉植物やちょこんと乗ったぬいぐるみ。
漆塗りの鏡台は落ち着いた雰囲気を与えている。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
八重は和柄の趣味の良いまるクッションに、顔を埋めていた。
さらりと流れる黒髪を鬱陶しそうにはねのける仕草は荒々しく、彼女の苛立ちが見て取れた。
八重は・・・・苛立っていた。
というより、不満だった。
父が、自分に討伐の命を下さなかった。
あの口ぶりは・・・・・、他の者にその命を下しているようだった。
その者のことさえ、父は教えてくれなかった。
不満だった。
よもや・・・・、よもや、この自分が、ないがしろにされているのでは・・・・・・?
ありえない。
そう。
それは八重にとってありえないことだ。
というより、それはもはや八重にとって禁忌に等しい。
陰陽師最強とうたわれる篁家。
その当主の一人娘として生を受け、当然のことながら一族ではお姫様扱いをされて育った。
そして分家、宗家から姫君として扱われるにふさわしい才能を、八重は持っていた。
その才能を幼い頃から開花していた。
10歳で初陣に出陣し、分家立ち会いの下、妖を一刀で滅した。
幼い八重にとって初陣はそれなりに緊張したものだが、確かな自信もあり、その自信が自意識過剰でないと証明されたときだった。
そして17歳になった今、彼女をしのぐ実力者は、もはや宗主以外いなかった。
それはすなわち、陰陽師の中でも最も強い部類になったということ。
齢、17という若さで。
八重は己の陰陽師としての強さを疑っていなかった。
疑う意味が無かった。
破魔刀で妖を容易く蹴散らし、陰陽術を持って滅する。
その様たるや、ひれ伏さぬ陰陽師など存在しないほど。
それなのに・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
落ち込みが深くなるにつれて、だんだんと腹が立ってきた。
自分は、次期宗主なのだ。
成り行きを見守れ、と?
・・・・・・信じられない。
ふつふつとわき上がっている沸騰した水のような感情。
それは、反抗心だった。
敬愛する父に、八重は生まれて初めて反抗心を抱いていた。
警視総監の惨殺、あきらかな挑発。
しかし自分に命は下らない。
反抗心を抱かせるには、八重にとっては十分すぎる理由だった。
「・・・・・・・いいわ。」
ゆらり、と八重は体を起こす。
クッションが妙な形になっており、しかしそれを気にせずに八重は立ち上がる。
ふ、とあげた顔の、大きな双眸にあるのは、
戦意に燃える陰陽師・・・、ではなく。
使命を遂行する武人・・・、でもなく。
親に反抗する、子供っぽい憤怒だった。
「私は私で動いて妖を討伐してみせるわよ!!」
そう高らかに宣言する八重は一転して可愛らしい笑顔になり・・・・、
「ふふん。」
ケイタイを手にとって、いたずらを企む子供そのもので登録番号の中からある人物を探す。
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