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小説家になろう!
30
:
傷羽
:2012/03/17(土) 12:27:19 HOST:ntehme084254.ehme.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
06
還ってきた。
この報告書を読んだ感想は、その一言に尽きる。
彼は手に持っていた湯飲みをテーブルの上に置いた。
報告書の束をじっと据わった目で凝視した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
隣の台所から食器を洗うカチャカチャという音が異様に響く。
ちら、と視線をわずかに上げる。
彼の相棒の後ろ姿が映り、ラフな大学生、という格好と所帯じみた姿に思わず苦笑する。
そしていつもと同じ光景にわずかな安らぎを感じる。
もう一度、報告書に視線を戻す。
「・・・・・・・。」
還って・・来た。
アイツが。
彼は額を手で押さえた。
・・・・・・・・・・・勝てる、のか?
いや。勝つ。
勝たなければいけない。
自分たちの敗北は陰陽師の敗北。
それは“この世”が蹂躙される、ということ。
しかしはっきり言って、今回の戦いはかつてないほどの苦境になるだろうと彼は確信していた。
前回での戦いはすさまじいものだった。
幾つかの陰陽師一族が壊滅し、自分たちの中でも数多くの犠牲者を出した。
かろうじて、アイツを追い払ったに過ぎない。
勝利ではない。一時的な休戦は勝利ではない。
そしてアイツは・・・・・・・、また、目覚めた。
還ってきた。
勝たなければならない。
それは理屈の上でよくわかっているのだ。
しかし、彼の頭に浮かぶのは否定的な、もしくは弱気な言葉ばかりだ。
理由は分かりきっていた。
どうすればいい?
自分たちも、決して戦えない人数ではない。
だが・・・・・。
予想していなかったのだ。
陰陽師がここまで弱体化していたなど。
「お茶、入れましょうか?」
物思いにふけっている彼を気遣ったのか、一人の少女が急須を片手に聞いてきた。
彼は視線を上げた。
日だまりのように笑っている、彼の仲間が映る。
「ああ・・。頼む。」
苦い物思いにやや精神が疲労したのか気の抜けた返事になってしまった。
少女はそのことを気にもとめていない――、というより気づいていても指摘しない気遣いでただ微笑んでお茶を入れた。
彼が何を気にしているのか、気づいているのだろう。
長いつきあいだ。
気付かないほうがおかしい。
この不吉に過ぎる報告書は彼女も目を通している。
いや、それよりも気にすべきはあの少年のことか。
さきほど部屋をのぞいたときには視線だけで人を殺しそうなほどすさまじい殺気を放ていた。
今すぐ飛び出そうとしている、というほどでもないが、討伐の命が下ればすぐにでも行きそうだ。
・・・・・・・・勝つ。
頭が痛くなるようなことばかりの中で、彼はせめて気持ちだけでも強くもつ。
勝つ・・・。
それでも、ため息は多くなるばかりだった。
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