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小説家になろう!
21
:
傷羽
:2012/03/15(木) 15:43:46 HOST:ntehme084254.ehme.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
04 ころすもの
男は窓辺に立っていた。
傍らにある大型デパートの包み紙が目に入り、自然と微笑が浮かんだ。
男は、忙しい身の上だった。
若い頃から今までとにかく仕事に明け暮れていた。
家庭をかえりみたことは、無かった。
妻と会えば口げんかになった。
こんなに忙しい仕事を心の底で恨んだこともあった。
それでも、仕事には全力を注いだ。
そして、老いた、今。
まさか、と思った。
家庭を顧みてこなかった自分が、
それらしいことを一度もしてやれていなかった自分が、
娘の息子―――、孫の誕生日会に呼ばれたのだ。
誕生日祝いは何がいいかと思った。
強面の初老の男が一人でおもちゃ屋にいくのはためらわれ、意地をこのときばかりは無視して、妻を誘った。
妻は驚き、そして照れたように笑った。
自分も、同じように笑っていただろう。
男は、自分が老いていると、初めて気がついた。
もちろん、日常生活の中でも体力の衰えなどは痛感している。
しかし、そういうものではなかった。
若い頃は走っていた。
周りの風景も音も無視し、ただ酸素を取り入れて自分の足を動かすのに精一杯だった。
今は、違っていた。
今は、違う。
変わろう。
あと数年すれば自分も定年退職だ。
そうしたら、もっと、孫にも会いにゆけるだろう。
いいおじいちゃんに、なれるだろうか。
妻のこともねぎらってやろう。
旅行にも行ってみよう。
男のなかで、日だまりの光のような感情がたゆたっていた。
美しく、優しく、温かい。
蛍をとん、と指先に止まらせて、その輝きをほぅ、と眺めるような――――――――、
それは、今までで一番、穏やかなときだった。
ず・・・・、ずっ・・・、
男はささやかな異音に気がついた。
ずず・・・、ずっ、ずっ・・・、
なにかを引きずるような音だった。
ずっ、ず!・・・・・ずずず・・、
なんだ・・?
男はゆっくりと振り返った。
篁家にひとつの知らせが舞い込んだ。
いはく、
警視総監が自宅で、体の半分を食いちぎられたような、無惨な死体となって発見された、と。
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