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小説家になろう!
12
:
傷羽
:2012/03/13(火) 20:33:31 HOST:ntehme084254.ehme.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
02 あやかし
・・・ミシ、
社が、きしんだ。
見えない手が古い木材を思い切り、内側から突き破ろうとしている。
ざ、ざざざ・・・・・・・
それに呼応するかのように、もしくは恐怖に震えるように、葉と葉がこすれ合って不気味な音を奏でてる。
ミシ、
ざざざざざ・・・・・、
ミシ、
ざざざざざざざ・・・、
「・・・・・・・・・・。」
いい加減八重はじれったくなってきた。
もともと直情型の性格であり、ただでさえ仕事で張り詰めた心は八重の我慢という導火線をいつも以上に短くしていた。
ミシミシ、
ざざざざ・・・・、
「・・・・・・・。」
ミシ、
ざざ「あーもー!うっとおしいのよ!!」
ついに導火線が焼き切れた八重は風船が破裂するように叫ぶと、
ぱんっ!
両の手のひらを、神社全体の鬱屈とした空気を払うかのように強く打ち合わせた。
瞬間、炎が――――、否。
金色の炎のような何かが、八重のたおやかな手の内に突如生まれた。
それは炎のように自ら光をともし、ゆらゆらと華麗に舞いながら、その舞の中で一つの形をとる。
それは、一振りの刀。
そりのない諸刃の直刀。
柄を彩る絵巻は目が覚めるような朱色。
光を鋭く跳ね返す刀身の銀は、触れるすべてを切り裂くような殺伐でどう猛な美しさ。
それはまるで一個の芸術品。
しかし、少女はそれを愛で楽しむものにはしない。
本来の武器としての使用用途・・・・・、つまり命を散らす刃として握る。
八重は柄を両手に握り、足をこれからの反動に備えてしかと踏み込む。
すぅ、と息を吸う。
ひやりとした空気が気管をとおり、肺に満ちるのを感じる。
己の中に湧く――闘争心という、熱い、清水が流れるのを、感じる。
・・・・・・・・・ミシミシミシミシミシミシミシ、
社がきしむ音が、まるで虫が羽をこすり合わせるかのように響き、そして。
ばんっっ!
社と一緒に破裂した空気が音となった。
それを待ち焦がれていたかのように、八重は会心の笑みを浮かべた。
可憐な美少女のものでは決してない。
それは一週間待ちに待った獲物を見つけた、狩人の笑み。
もしくは、己が使命を果たす、武人の笑み。
フゥッー・・・・・・・・、
それは社の破片を振り払いながら現れた。
生々しく呼吸音を響かせる、ずらりと不揃いの、それ故に見る者に不快を与える牙を持つ顎。
ぼさぼさと荒々しい印象の灰色の毛皮。
ただただどう猛な力を込めた四肢。
それは一言で言うのなら、獣だった。
狼や狐や猫などの獣の特徴をごちゃ混ぜにミキサーにかければこのような姿になるかもしれなかった。
「えやぁつ!」
八重は練っていた気を自分の研ぎ澄まされた感覚に従って弾丸のように打ち出した。
撃たれたそれは、黄金に煌めく炎のような形状の、力の塊。
それはこの世が定めるところの“火”ではない。
人間が持つ、“陽”の気を練ることによって顕れる力。
称して、“神気”。
その“神気”は刀の切っ先から放たれ、砲弾に似た圧倒的な威力で、いとも簡単に獣を貫いた。
否、押しつぶした。
それはジャガイモを調理器具で押しつぶすかのような、たやすく、そして凄惨な光景だった。
ぎっ―――――――、ぎゃぁ!
苦悶の声を上げて、獣は四肢を砕かれ、胴体をつぶされ、頭を消し飛ばされ、端からぼろぼろと塵になって風に解けていく。
「・・・・・・・・・・・・・。」
その獣がすべて塵になるのを見つめ、そして風に解け果てると、
「・・・・ふぅ。」
ようやく、八重は吐息をはき出した。
古来より、“あの世”から降り立ってきた、異形の者達・・、
称して“妖”たちは“この世”の者達・・、すなわち人間達を害して来た。
そのために力を結集し、人々を守るという大義の下、現代にまで在り続ける、国の最高機関の、一部の人間しか知らないような秘密結社。
それに属する、“神気”をもつ戦士達・・・・・。
彼らを称して、“陰陽師”。
篁八重はそのなかでも最強の名をほしいままにしてきた『篁家』の、一人娘であった。
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