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叫号〜Io ripeto un incubo〜

7霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2012/03/03(土) 23:41:04 HOST:i121-116-249-115.s04.a001.ap.plala.or.jp
 静かに近づいてくる足音に湊は顔を顰めた。本格的にバレずにお片づけが出来なくなっている。せめて来る人物が自分の従者なら、と考えたがそれはあまりにも都合が良すぎるのだ。深く息を吐いて、湊は目を閉じた。寝たふりをすればバレないだろうと言う魂胆である。
 灰色の箱の中に入ってきたのは白鷺だ。無造作に転がされている塊を見て呆れたように笑ったかと思えば、乱暴に塊を持ち上げ、そのまま姿を消す。……瞬間移動という奴である。数分もしないうちに白鷺は戻って来て、軽く湊の横っ腹を蹴った。

 「……分かりやすい。狸寝入り……禁止」

 白鷺の呆れたような声を聞いて、湊はゆっくりと目を開く。都合のいい展開があったものだなんて考えて、満足そうに笑った。それを見た白鷺は僅かに怪訝そうにしながらも、あたりに飛び散った紅をふき取っていく。湊はぼんやりとそれを眺めているだけ。しかしその表情は、申し訳なさそうなと言うよりは、当然だとでも言いたげなものだ。
 そんな事気にするのも無駄だと言うように、白鷺は淡々と辺りを拭いていく。どうせ湊に指示をされるのだからその前にやってしまえと言う考えだ。……単純に飛び散る紅の中で冷静に話せる自身がなかったと言うのもあるのだが。ごしごしと自分の制服の上着を使って汚れを拭きとっていく。
 いくら拭きとっても、終わりが見えない赤の拭き取り作業に白鷺は顔を顰める。おかげで制服の上着は鉄臭い臭いを放っていた。自分のものだったら気にならないのだが、人のものだというだけでこんなにも不愉快になるものか、と白鷺は考える。そもそも、掃除をするのに自分の制服を使うことが可笑しいことに白鷺は気づいていない。
 しばらくは制服の上を片手に紅と奮闘していた白鷺だが、突然意味の分からないことを呟いて紅に手を翳しては能力で消し始める。……最初からそれを使えばよかったじゃないかと、湊が呆れたように言葉を投げかけると、短く「面倒。だから、能力嫌い」とだけ返した。

 「で? 白鷺は何しに来たのさ?」
 「報告。そろそろここから出られる。馬鹿刹、ここに向かってる」

 湊の問いかけにピシッと敬礼しながら白鷺は答える。その白鷺の答えに湊はため息をついて頷いた。大方忘れられていたのだろう、そう考えると不思議と脱力感に襲われる。色々と周りに影響を与える行動ばかりしてきたはずなのだが、と考えて深く息を吐き出した。印象を与えるために与えてきた行動は全て無駄だったと考えると、自分の行動が馬鹿らしくなってくるものだ。
 湊の様子を見て首をかしげた後、白鷺は黙って自分の後ろに目をやった。紫色の髪飾りで毛先に近いところでまとめた、毛先に近づくほど黒くなる白銀の髪を持つ華奢な少年……刹が心底退屈そうな表情で、箱の入り口の壁に寄りかかって腕を組んでいる。
 ゆっくりと視線を刹に向けて湊は笑う。早く拘束具を外せよとでも言うような、威圧感たっぷりの笑みだ。そんな事気にせずに、刹はゆっくりと歩いて白鷺の横に並ぶ。しかしその表情は、何処か申し訳なさそうなものだった。

 「すいません。今回の件は僕に一任されていたのですが、すっかり忘れてました。人間どうでもいい事ってすぐ忘れちゃうんですよね」
 「分かってた。アンタはそういう人物だったよ」

 深く、深く息を吐いた後、刹はその表情を笑みに切り替えて言う。湊のほうも半ば呆れたようにしながらそう言った。白鷺は何も言わずにジトーという効果音が似合いそうな目つきで刹を見ている。身体を起こそうにも自由に動けない湊を見て、刹は「何か繋がれたままの方が大人しくて良いんじゃないでしょうか?」と呟いた。
 それを聞いて湊はムッとしたような表情をする。僅かに足を動かして鎖を鳴らした。さっさと外せと言う催促だ。それを見た刹は深くため息をついて、ズボンのポケットの中に手を突っ込んで何かを探し始める。何処か面倒くさそうな表情だが、一応拘束を解く気はあるようだ。

 「まぁ、入学式もありますからね。ちなみに今、十九時です。手続きに戸惑ったもので」

 ポケットから鍵を取り出した刹がそう言って、湊に近づいて歩いていく。拘束を解いた瞬間に襲われるのではないだろうか、なんて心配もせずにその鎖に触れる。そこで何かを考えるようなしぐさをした後、そーっと湊の足に指を這わせた。
 僅かに身体を震わせて、刹の指から逃れるように、湊は足を動かす。しばらく散々遊ばれたが、白鷺が不機嫌そうに刹に声をかけたことで開放された。必要以上につけられて絡まった鎖の鍵、ぶつぶつと文句を言いながら、刹は湊を縛るその鎖の鍵を外していく。
 最後に残った首のチョーカーを見て、刹は呆れたような表情をする。チョーカーから伸びる管の数本が乱暴に引きちぎられていた。丁寧に管の一つ一つをチョーカーから取り外して、床に並べていくと、白鷺が露骨に顔を顰める。


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