[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
メール
| |
叫号〜Io ripeto un incubo〜
33
:
霧月 蓮_〆
◆REN/KP3zUk
:2012/12/31(月) 21:09:30 HOST:i118-20-98-64.s04.a001.ap.plala.or.jp
水槽を見上げ、湊はうっすらと笑みを浮かべる。その手が、僅かに淡い光を放ち始めていた。
「副会長、何を」
「見ていれば分かるよ。さぁウィンディーネ、手伝っておくれ」
白鷺が動こうとしたときにはもう遅かった。僅かだったはずの光は、どんどんと強くなっていく。堪えきれず、白鷺を目を閉じたが、湊は真っ直ぐ水槽を見つめていた。水槽の中の液体が不自然に揺らいだかと思えば、一瞬で水槽は砕け散った。
突然の出来事にも関わらず、警報は鳴り響かなかった。水槽の中にいた少女も、なんてことはなしに、ふわりと湊の後ろに着地する。ただ、その様子を白鷺は見ていなかった。ゆっくりと目を開いたころにはもう、少女と湊は向かい合っていて、湊の後ろには無数のガラスの破片が散らばっていた。
「大丈夫だよ。ここはもう保護はされてないんだ。殆ど生徒も来ないからその辺は甘くなってしまったんだよ。守護者の中にも情報が行ってない……つまり、理解できるだろう?」
「見捨てられた中枢部……」
白鷺は少し驚いたように目を見開いた。そして、数秒間の沈黙の後に白鷺は小さく頷いた。湊は満足げな笑みを見せた後、顔を少女に向ける。少女は不思議そうな表情で首をかしげた。状況が全く理解できていないようだ。
湊は静かに笑う。好青年に見えるような笑みに少女は幾分か安心したようだった。研究室のパネルの薄い明かりが、部屋の中を照らす。
「君はどうしたい。帰りたいのなら道は用意しよう。……と、その前に名乗っておこうか。僕は秋空湊、そっちにいるのは白鷺だよ。君は?」
「紅零……ねえ、主人は?」
「主人……? ああ、月条 流架(ツキジョウ ルカ)だっけ」
湊の言葉に、紅零は静かに頷いた。白鷺はもう頭を抱えている。報告書をどうしようかとか、処分はどうなってしまうのだろうかなんて考えている。セキュリティが甘いと言え、一応は学園の中枢部となっている部分だ。
ふうっと湊が息を吐く。そして何かを言おうとするよりも早く、紅零は何かを思い出したような表情をした。彼女の中にデータが流れ込んできたのだ。見た目は人間でも彼女は“犠牲(サクリファイス)”と呼ばれる特殊な存在。それぐらいはなんでもない。
やがて、紅零は一人で頷く。その表情は硬い決心を宿しているように見えた。僅かに湊が首をかしげると同時、紅零は言葉を吐き出す。
「……もう主人はいない。百年が過ぎた……でも桜梨(オウリ)はまだ生きてる」
紅零の言葉に湊が驚いたような表情をする。紅零の口から出た名前に思考をむけた。そして、一つの可能性を導き出す。
「桜梨というのは君と一緒に残されたサクリファイスの一人の名前かな?」
「そう。あの子は進むこともできず一人。だから私は戻る。……でも、」
湊の問いに紅零は静かに頷いた。しばらく考えるような動作。沈黙。どちらも何も言わない。紅零は壊された水槽を見上げ、何かを考えているようだった。白鷺は未だに始末書について悩んでいるようで使い物にはならない。
静かに笑って、湊が腕を組む。ジロジロと紅零を見るその目は何かを確かめるようなものだった。その目に紅零が僅かにたじろいだ。
「その子が心配なんだね。大丈夫だよ。確かに中枢部はここなんだけどね。月条が死んだ後、核は別のものに作り変えられたんだ。だから君を逃がしても問題はないんだよ。行ってあげればいい。もう君は“犠牲”なんかじゃない」
静かに言いながら笑う湊に紅零は僅かにその瞳を輝かせた。湊の言葉に白鷺もフッと顔を上げた。ただその表情は傍から見れば無表情にしか見えないものである。でも湊には白鷺が安心しているのが手に取るように分かった。面白いものだ、そう湊は考える。
「核が変えられたのは何で?」
「うん? いやね、君の力だけだと色々と足りなかったらしい。だから君を核から外して、別の核を作った。まぁ基本的な形は変わってないよ。ただシステムが能力者の余剰分の力をエネルギーにする形に変わったんだ。まぁ詳しいことは僕にも分からないんだ、ごめんね」
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板