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叫号〜Io ripeto un incubo〜

3霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2012/01/24(火) 22:28:23 HOST:i125-202-254-245.s04.a001.ap.plala.or.jp
 「他の仕事が入ったならそっちを優先していいですよ? 一人でも何とかなります」

 飾り付けの図案を睨みつけながら風雅がそういう。電話で仕事が入ったと勘違いしたのだろうか? そう考えて刹は小さく笑った。

 「大丈夫です。ただの定時報告ですし。と、言うか会長一人で終わらせられるんですか?」

 からかうように刹が言うと、風雅はムッと頬を膨らませた。失礼な、とも思ったのだが一人じゃ無理だから手伝って欲しいと泣きついたのは風雅の方である。文句を言っていいものかと考える風雅を刹は心底面白そうに見ていた。
 頬を膨らませたまま風雅は体育館を見渡す。ある程度飾りつけは終わっていたが入学式は明日だ。やはり準備は今のうちに終わらせておく必要がある。教師に丸投げしてもいいとは思うのだが、一度引き受けてしまった仕事だ。途中で投げ出すのは、自分の中で納得することができない。
 それについては刹も同じようで、面倒くさいだの何だのと呟きながらも飾り付けを進めていた。

 「闇の副会長でもいないよりはマシなんですけどねぇ……いや、後処理が面倒か」

 ポツリと刹が呟く。深くため息をついて手に持った花の飾りを眺めた。濃紺の造花……その色を見て、刹は思わず造花を握りつぶす。嫌な人物の顔が脳裏に浮かんで、首を振った。イライラする。何度も何度も浅く息を吸っては吐き出す。
 握りつぶされていた造花を見て風雅は慌てたように刹に駆け寄ってきた。不味いな、そんな風に呟いて、刹は握りつぶしてしまった造花をジッと見つめる。バツが悪そうに風雅は頬をかいていた。

 「まぁ一つくらい大丈夫ですよ。気にしない気にしない」

 思いつめないように、そう思って風雅は明るく笑った。それを聞いた刹は俯いて「……申し訳ありませんでした」とだけ言うのだ。必死に刹を慰めようとする風雅だったが、謝られるだけだった。
 不意にカツンと静かな足音が聞こえてくる。規則的な足音が二人分……ふと刹が顔を上げる。

 「やれやれ、他人の髪色と同じ花を握りつぶすなんて……不愉快極まりないね?」

 濃紺の髪に、透き通った赤い瞳の少年が言った。ふわふわと揺れる濃紺の髪は高い位置でポニーテールにされている。前髪の右側だけが異常に長く、目を隠してしまっていた。
 制服は風雅のものとよく似たデザインのものである。しかしその制服は風雅や刹のものとは違い、黒を貴重としていて、襟や裾には白いライン……要するに風雅たちの制服と配色が逆になったものである。
 その胸元には黒ずんでいながらも、鈍く光を発する六芒星のバッチをつけていた。刻まれているのは“闇高等部生徒会副会長”という文字。……少年の学園内での地位。闇、というのは学園の派閥の一つ。もう一つの派閥は風雅が会長として率いる光である。
 光は、闇を受け入れようとして、闇は光を拒む。そんなことの繰り返し。
 双方のトップは高等部の生徒会のリーダーが引き受けることになっている。……もっとも闇を率いる会長はいつの間にか失踪してしまったため、現在は少年が代理としてトップとして闇を率いているのだが。闇を率いるその少年の名は秋空 湊(アキゾラ ミナト)。
 その後ろには風雅に良く似た姿の少年が無表情で立っていた。伸ばしきった白金の髪をポニーテールにしていた、濁ったような濃い緑の瞳。湊と全く同じデザインの制服。
 刹がポツリと湊と同じ髪型じゃないかと呟くと、少年は心底嫌そうな顔をした。

 「そんなに怒らないでくださいよ。事実なんですし」

 軽く笑って刹が言う。それを見た少年は顔を顰めて、胸元のポケットから拳銃を取り出した。それでも慌てる様子を見せることなく、刹は小さく手を上げる。刹を鋭く睨みつけて、拳銃を向けるその少年の名は、白鷺(シラサギ)。
 まぁ白鷺というのは偽名で、本名は別にあるのだが、それを名乗ることはほぼない。それ故に白鷺の本当の名を知っているのは数えるほどしかいないのだ。

 「やはり貴方、嫌いです。あの時殺しておくんだった」

 白鷺が呟くと、僅かに刹は目つきを鋭くした。それなのに弧を描く唇が酷く不気味なように感じて、白鷺は唾を飲む。

 「無理ですよ。貴方と僕には実力差がありすぎる」

 下らないとでも言うように刹が吐き捨てる。そんな刹に白鷺は馬鹿にされているような気がして、無意味だろうと思いながらも引き金を引く。それを見ても刹は動かなかった。唇は弧を描き、その瞳はただただまっすぐと白鷺を見つめている。
 本来ならその身体を貫くはずの銃弾は刹の目の前で急に失速して、地面に転がった。ギリッと歯軋りをして白鷺は右手を振り上げる。黒い光がゆっくりと渦巻いて……火花を散らしていく。その光が放たれる寸前、動いたものがいた。


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