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叫号〜Io ripeto un incubo〜

27春日野遥/月城光流/御坂美琴 ◆FxNjkwwcMg:2012/09/26(水) 21:53:18 HOST:i114-180-35-24.s04.a001.ap.plala.or.jp
 ヒュンッと短い音を立てて、風雅の手から離れたペンダントはぐるりと体育館の中を一周した後、体育館の中心に浮かんだまま動きを止める。その十字架に向かってゆっくりと歩いていく風雅の表情は何処か暗いもので……。

 「まぁ、使わなくてもいいけど、有る方が楽なんですよねぇ……。さて、皆に癒しを、私には夢を」

 ふわりと優しげな光が広がる。慌てたように起き上がる生徒達は、モニターに表示された結果を見て息を飲む。気を失っていた間の決着。体育館の中心で暗く、悲しげに微笑む、勝者の姿。
 目を開いた紅零はぼんやりと風雅の姿を眺める。ああ、どこかで見た、誰かに似ているとそんな風に考えて。何時の間にか横にいた蓮の手を借りて起き上がる。辺りは優しい光と匂いに包まれていた。それはまるで争いや、派閥などないとでも言うかのようで……。
 光が生まれて、漂って吸い込まれて、消える。その繰り返し。一人また一人と起き上がる生徒達はただただぼんやりとその光景を眺めることしかできなかった。誰も何も言わない。身動きすら取らずに光の中に立ち尽くしていた。
 ふと風雅は自らの傍に倒れる三人の能力者に目をやる。自らに良く似た少年、少しだけ変わった髪をしている少年、髪も制服も、暗い色に包まれた、誰よりも心優しかったはずの少年……。風雅の知らないうちに変わってしまった風雅の大切な人たち。
 気づけば風雅の頬には涙が伝っていた。

 「っく……」

 三人の中の一人が立ち上がる。白鷺だった。何処か苦しげな表情をしたままだった彼も、ゆっくりと顔を上げて、光を見あげた。他の生徒と彼が違ったのは、彼が光に向かって手を伸ばしたこと。まるで縋るように、頼るように……。
 やがて、長いこと宙に浮いていた十字架は、色を、輝きを、力を……そして形を失っていく。まるで風に舞う細かな砂のように、静かに、音も無く。
 ガクリ、と風雅は片膝をつく。いつもは一定のところで魔法の行使を止めていた。でも今日は止めなかった。……何時まで経っても、硬く目を閉じた二人が目を覚ましてくれないから。動いてくれないから。だから力を使うのをやめなかった。
 しばらく呼吸を整え、風雅はそっと刹の胸に耳を当てた。聞こえてくるのは静かな鼓動。同じように湊の胸にも耳を当てる。こちらも聞こえてくるのは静かな鼓動。……良かった死んではいないようだ、そう考えて風雅は息を吐く。

 「その二人が目を覚まさないのは、周りと比べて能力の桁が違うからだろうな。お前の使った魔法は相手の力量に応じ負担をかけるもの。相手の力がデカイほど相手が受けるダメージはデカくなる。……違うか?」
 「……その通りです。見ただけでそこまでの分析を? ……私が見たところ貴方は魔法使いではないようですが」
 「まぁ過去に同じような魔法を使うやつを見たことがあったからな。俺は魔法使いではない。ただの能力者さ」

 風雅に問いかけたのは蓮だった。僅かに目を細め、静かに言葉を並べていく。
 蓮の問いに対し、風雅が返したのは肯定の言葉だった。それを聴いた瞬間に蓮は深く、深くため息をついて、そして表情を“無”へと変えた。まるで気味の悪いものを見るような目をする風雅は、黙り込んで何も言わなくなってしまった。
 この魔法は風雅の作り出したオリジナルのはずである。それなのに同じような魔法を見たことがあるという蓮。一体何処で、誰が? そんな簡単な問いでさえ風雅は口に出すことができなかった。何故かはわからなかったが、ただ一つ、風雅の頭には浮かんできた結論が合った。
 ……いくら問い詰めたところでこの濃紺の男は真実を語らないであろう。

 「さて……申し訳ないがこの子は借りるぜ。少しこの子と話したいことがあってな。ついでに回復も済ませてやる。紅零、お前はそっちのやんちゃ坊主を頼むぞ」
 「了解したわ。……そこの子はついてきて頂戴。この子の能力系統を教えなさい。それに合った回復パターンを作るから」

 軽々と刹を担ぎ上げた蓮はため息混じりに言う。紅零の方は小さく頷いた後、白鷺に要求。そのまま姿を消してしまう。風雅がとめようとするも間に合うわけはなかった。

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久しぶりの更新。書き溜めがありますので次もすぐに出します


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