叫号～Io ripeto un incubo～ - 1326182384

12：霧月　蓮_〆 ◆REN/KP3zUk：2012/03/31(土) 00:14:43 HOST:i121-116-249-115.s04.a001.ap.plala.or.jp: 　保護者たちが居なくなった瞬間に和気藹々とした雰囲気になる生徒達に教師が告げると、歓声が上がる。若いと言う言葉と皆さん好みという言葉に多くの生徒が反応したようだった。毎年の恒例行事の一つで、外との係わりの少ない生徒達にとっては、待ち遠しいものだ。
　その教師がステージに上がった瞬間、女子から黄色い歓声。対して男子からは大ブーイング。ステージに上がったのは肩に付くか、付かないか位の長さの濃紺の髪に、右が赤、左が青の瞳を持った男、霧月　蓮(ムヅキ　レン)だ。服装は黒いケープを赤いリボンでとめ、左の胸の三センチメートル下辺りから、大きくスリットが入っている。両袖にも大きく切込みが入っていて、その両袖の一部、黒くなった部分と、ケープの裾には、キラキラと光が散りばめられていた。ズボンはシンプルに黒いものだが。……会場設営のときに刹たちを眺めていたうちの一人だ。
　その男を見た瞬間に刹は少しだけ目つきを鋭くする。まるで警戒するようにジロジロと蓮を見ていた。

　「新しく特殊能力実技を担当することになった霧月蓮だ。教師になったばかりで頼りないとは思うが、よろしくお願いする」
　「はーい、続いて遠野(トオノ)先生、お願いします」

　蓮が後ろに下がると、今度は男子から歓声。蓮のときは興味なさそうにしていた湊と白鷺も興味を示したようで、ステージに目をやる。ゆっくりとステージに上がる女を見て、刹は目を見開いてきつく手を握る。まるで怒りを抑えるようなそんな様子に気づいた風雅は心配そうに刹を見あげた。
　ステージに上がったのは肩位までの銀髪をサイドテールにして、右目を隠すかのように包帯を巻いた女、遠野　紅零(トオノ　クレイ)。左目の色は透き通った水色の瞳だ。服装は真っ白な長い上着とその下に薄い水色のワンピースを纏っている。その身に纏っている服の左袖だけが綺麗に切り落とされて、外気にさらされた腕には右目と同じように包帯。蓮と共に刹たちを眺めていた一人だ。

　「新しく特殊能力知識を担当することになった遠野紅零よ。まだ至らない点は沢山あると思うけれど、どうぞよろしく」

　刹の方に目をやって、微笑を浮べた後紅零は言葉を発する。生徒達の半数は大興奮である。その賑やかさに僅かに顔を顰めながら蓮は体育館の中を見渡す。そして、不気味な笑みを浮かべる湊に目をやれば、深くため息をついた。刹は回りのことなど一切気にせずに冷たい表情。
　静かに紅零が後ろに下がって礼。その後は淡々とクラス担任の紹介と、学園内設備の説明についての説明。その間中紅零と蓮は晒し者なわけだが、本人たちは気にしていないようで、涼しい顔で体育館の中を見回していた。
　ふと、一人の教師が声を上げる。それを合図に生徒たちが立ち上がって光(ルーチェ)は体育館の左側、闇(ブイオ)は体育館の右側に分かれて座った。何も分からずにおろおろとしていた新入生は刹や白鷺に連れられて、分かれた二つの中に紛れ込む。不安そうな表情をしている新入生とは対照的に、教師や新入生以外の生徒たちは瞳を輝かせて“それ”が起きるのを待っていた。
　終始無表情な刹と白鷺に新入生は怯えていたが、二人の目には入っていないようだ。ため息をついた風雅と湊がフォローに入ったほどである。しかも二人とも爽やかな笑顔でフォローしているのに、新入生達は逆にガチガチに緊張。この学園の生徒会選抜制度を聞いた影響だろう、そんな風に呟いて風雅は気にも留めていない。湊も同じようで宥めたり優しく声をかけるだけでさほど目立ったリアクションは取らなかった。

　「ふぅっと……毎度のごとく壁を張っておかないと酷いことになりますよね……」

　小さく呟いた風雅は、懐から先に小さな十字架がついた長いチェーンを取り出す。十字架には細かい装飾が施されていて、光を浴びるとキラキラと輝いた。辺りを見回して深く息を吸い込んで目を閉じると、その十字架は淡い水色の光を発して砕け散る。それと同時に、左右に分かれた生徒達を隔離するかのように透明な壁が現れた。
　砕けた十字架を見て風雅は思わず苦笑い。静かに手を広げれば、残っていたチェーンも砂のように零れ落ちた。白鷺は黙ってその様子を眺めるだけで、近づきもしなかったし、手伝おうともしない。それに気づいた風雅は何かを呟いたが、それはあまりにも小さな声で誰にも届かないものだった。