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狂気の沈黙科学者〜マッド・サイレンティスト〜

2黒椿:2011/10/24(月) 22:18:58 HOST:59-166-114-239.rev.home.ne.jp
「あー、えっと・・・」
言葉も出てこなかった。逆に今の状況で気丈に振舞いつつ、ジョークのひとつでも言える人間だったのならどれだけ楽だったか。
耀にとっては、それほどに緊急事態だった。普段どおりに家に帰ってきて、二回にある自分の部屋に荷物を置いて、洗面所でうがいをしてからなにげなく入ったリビング、に何を隠そう今現在、堂々と少女が座り込んで茶を啜っていたのだ。
「・・・どなた様ですか?」
気まずい沈黙に耐え切れなくなった女性経験ゼロの耀が、がんばってのどの奥から言葉を搾り出すと、少女はやっと耀に気づき無言で振り向く。
その動作だけでも、目を引かれるものがあった。日本人にはありえないほど色素の薄いパールグレーの髪の毛をしているが、外国人にしてはまったくの手ぶらだった。
一言その少女を形容するなら―――――美しかった。「とても」とか、「絶世の」とかいくらつけても取るに足らない、言葉も要らないぐらいに。
そんな少女は、さっきから耀のことを見つめて離さない。その癖、耀の質問に答える気配はまったくなかった。ここにいることがさぞ当たり前のように居座るその少女は、耀の狼狽をじっくり楽しんだ後、電話の横に歩いていき、紙とペンを手に取った。


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